【2024年最新】インボイス制度のルール変更とは?電子帳簿保存法の改訂に伴い

創業手帳

インボイス制度が早くもルール変更!ECサイトやETCにおける電子取引データの保存要件などが大幅に緩和

2023年10月に始まったインボイス制度ですが、2024年から早くも多くのルール変更が加えられました。幸い、ルール変更といっても事業者を悩まされるものではなく、インボイスの保存要件が大幅に緩和されたという好ましい改変です。

変更点の多くは、電子帳簿保存法のルール変更に基づくもの。明確に条文や規則などが変わったわけではなく、国税庁による解釈や指導が改訂されました。これらは国税庁が公開する電子帳簿保存法やインボイス制度などのQ&Aによって明らかになったものです。

この記事では、そんな電子帳簿保存法の改訂に伴うインボイス制度のルール変更をまとめて紹介します。2024年4月時点の最新情報まとめているので、ぜひざっと目を通してみてください。

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インボイス制度の主なルール変更 5つ

2024年4月時点でのインボイス制度の主なルール変更は以下の通りです。

1. ECサイトの領収書等データがダウンロード不要に

《ECサイトを利用した場合の領収書等データのダウンロードについて》
(中略)​​ECサイト提供事業者が提供するECサイトを利用し物品を購入した場合に、
当該ECサイト上で領収書等データの取引情報を確認することができるようになった時点で電子取引の受領があったものとして、電子取引に係る保存義務者(物品の購入者)は、その領収書等データを保存する必要がありますが、当該ECサイト上でその領収書等データの確認が随時可能な状態である場合には、必ずしもその領収書等データをダウンロードして保存していなくても差し支えありません。

出典:国税庁「お問合せの多いご質問(令和6年3月)」 ※電子帳簿保存法に関する追加問答集

これまで、ECサイトで物品等を購入した場合には、その領収書等(インボイス)をダウンロードして保存する必要があると解釈されていました。しかし、ECサイトで領収書データをいつでも確認できる場合には、ダウンロード保存は不要というルールに変更されました。

例えば、Amazonビジネスでは、発行日(商品の発送日)から10年間、適格請求書が保存されます。10年間であれば、インボイス制度が定める保存要件の最大年数を満たすので、Amazonビジネスの領収書は原則としてダウンロード保存不要ということです。

他方、ECサイトによっては、領収書の保存期間が短い場合もあるので注意しましょう。インボイス制度では、電子取引に係るデータは7年間、赤字である場合には10年間の保存が必要です。そのため、7年未満でデータが消えてしまうECサイトでは、領収書データのダウンロード保存が必要になります。

2. 高速道路(ETC)料金の利用証明書もダウンロード不要に

(高速道路利用料金に係る適格簡易請求書の保存方法)
(中略)ETC利用照会サービスにおいてダウンロードできる期間(15 か月間)に、
繰り返し、同じ高速道路会社等の道路を利用しているような場合は、いつでも利用証明書をダウンロードできる状態にあるため、結果として、利用証明書のダウンロードは不要となり、クレジットカード利用明細書の保存のみで仕入税額控除の適用を受けること
が可能です。なお、ダウンロードできる期間を超えて利用間隔に開きがある高速道路会
社等の道路については、利用証明書のダウンロードが必要になりますのでご注意くださ
い。

出典:国税庁軽減税率・インボイス制度対応室「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」

Web上で明細書等を確認できればダウンロード保存が不要というルールは、高速道路料金(ETC料金) にも適用されます。

従来、ETC料金で仕入税額控除を行うには、クレジットカード料金の利用明細と、任意の一取引に係る高速道路の利用証明書のダウンロード保存が必要でした。これが、繰り返し利用する高速道路に関しては、利用証明書のダウンロード保存が不要ということになりました。

「繰り返し」の基準ですが、15ヶ月に1回以上が目安となります。ETC利用照会サービスで確認できるのが過去15ヶ月間の走行明細だからです。15ヶ月に1回以上ETCを利用していれば、いつでも利用照会サービスで証明をダウンロードできる状態にあるため、結果としてダウンロード保存が不要になります。ETC利用照会サービスは無料で利用できるので、忘れずに登録しておきましょう。

3. 金融機関の手数料の明細もダウンロード保存不要

(金融機関の入出金手数料や振込手数料に係る適格請求書の保存方法)
(中略)インターネットバンキングなど、オンラインで振込みを行った際の手数料等について、電磁的記録により適格簡易請求書が提供される場合には、当該電磁的記録をダウンロードする必要があります。ただし、同種の手数料等の支払いが繰り返し行われているような場合において、当該手数料等の適格簡易請求書に係る電磁的記録が、インターネットバンキング上で随時確認可能な状態であるなど一定の要件を満たすのであれば、必ずしも当該適格簡易請求書に係る電磁的記録をダウンロードせずとも、仕入税額控除の適用を受けることが可能です。

(中略)金融機関が適格請求書発行事業者の登録を取りやめないことを前提に、一回のみ取得・保存することで差し支えありません。また、金融機関から各種手数料に係るお知らせ(適格請求書発行者の氏名又は名称及び登録番号、適用税率、取引の内容が記載されたものに限ります。)を受領した場合には、当該一のお知らせを保存することで適格簡易請求書の保存に代えることが可能です。

出典:国税庁軽減税率・インボイス制度対応室「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」

金融機関の入出金手数料や振込手数料に関するインボイス保存についても、ECサイトやETC同様にルールが緩和されています。

まずオンラインの振込手数料等については、インターネットバンキングで記録を随時確認できれば、明細のダウンロード保存は不要です。ETCの場合と同様、この場合もインボイスは任意の一取引に係るもので良いため、直近の手数料の明細が確認できるのであれば問題ありません。

また店舗で支払う手数料については、任意の1回分の適格簡易請求書が必要です。しかし、適格請求書は金融機関による「各種手数料のお知らせ」でも代用できます。そのため、金融機関の手数料に関しては、実質的にインボイスは不要と言って差し支えないでしょう。

4. 自動販売機・自動サービス機の住所や所在地の記帳が不要に

(中略)「自動販売機特例(注1)が適用される取引」や「回収特例(注2)が適用される取引(3万円未満の取引に限る。)」における帳簿の記載事項については、3万円未満の公共交通機関利用時などの取扱いと同様に、「住所又は所在地」の記載を不要とする取扱いを整備していきます(国税庁告示を改正予定)。

 なお、この整備前においても、運用上、「住所又は所在地」の記載を求めないこととします。

出典:国税庁「令和6年度税制改正の大綱について(インボイス関連)」

自動販売機特例とは、3万円未満の自動販売機・自動サービス機では、適格請求書の交付が免除されるというもの。自動販売機・自動サービス機には、飲食料品の販売機のほか、コインロッカーやコインランドリー、ATMなどが含まれます。

従来、自動販売機特例を適用するには、利用した自動販売機等の住所または所在地を帳簿に記載しなければなりませんでした。このルールが令和6年度税制改正によって廃止され、住所や所在地の記帳は必要なくなりました

5. 採用面接者等への交通費は公共交通機関特例の対象に

(中略)出張旅費等特例の対象とならない場合の派遣社員等、内定者又は採用面接者(以下「派遣社員・内定者等」といいます。)に対して支払われる旅費交通費等については、貴社が当該旅費交通費等を派遣社員・内定者等を通じて公共交通機関(船舶、バス、鉄道又は軌道)に直接支払っているものと同視し得る場合には、3万円未満の支払について、一定の事項を記載した帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められます(以下「公共交通機関特例」といいます。)。

出典:国税庁軽減税率・インボイス制度対応室「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」

インボイス制度には、旅費交通費に関わる特例として出張費等特例があります。出張費等特例とは、従業員に対して支払われる旅費交通費は、帳簿のみの保存で仕入税額控除を可能とするもの。金額についての具体的な定めはなく、通常必要と認められる部分は出張費等特例の対象です。

この出張費等特例は、従業員のほか、派遣社員や内定者など、従業員に準ずる者にも要件を満たすことで適用されます。一方、出張費等特例の条件を満たさない派遣社員・内定者、採用面接者への交通費は、出張費等特例でなく公共交通機関特例の対象となります。この部分が今回のルール変更です。

公共交通機関特例とは、公共交通機関への支払いについて、3万円未満まで帳簿のみの保存で仕入税額控除を認めるもの。出張費等特例との違いは、3万円未満という上限があることです。3万円以上となった場合には仕入税額控除にインボイスが必要となります。

インボイス制度・電子帳簿保存法のポイント【今回のルール変更関連】

今回のルール変更のポイントを、インボイス制度や電子帳簿保存法の要点も踏まえて、再度おさらいしておきましょう。

電子取引の記録は最長10年間閲覧できることが必要

2024年1月に完全施行された改正 電子帳簿保存法の最重要ポイントは、電子取引データの電子保存が義務化されたこと。電子取引とは、オンラインで発行された契約書や請求書、領収書、 取引明細などのことを指します。

しかし、電子取引データをpdfなどで一件一件ダウンロードして保存するのは事業者にとって大きな負担になります。そこで、Webで電子取引データを随時閲覧できるならダウンロード保存は基本的に不要であるとしたのが今回のルール変更です。

なお、電子取引データの保存期間は7年間、欠損金の繰越控除を受ける場合は最長10年間と定められています。そのため、ECサイトなどが電子取引の記録を10年間保存してくれるかどうかが重要です。7年ないし10年未満に消えてしまう場合は、やはり逐一のダウンロード保存が必要となります。

「検索機能の確保の要件」は無視できることも多い

電子取引データの保存に関して「検索機能の確保の要件」というルールもあります。電子保存のフォーマットにおいて、国税庁が求める3つの検索機能を確保しなければならないという要件です。

しかし、売上高5,000円以下の事業者においては、検索機能は全て不要となっています。また売上高にかかわらず、「相当の理由」がある場合には、検索要件が免除されます。相当の理由に該当すると考えられているのは、人手不足やシステム選定の時間不足などです。よって、多くの中小企業にとって検索要件は無視できるものといえます。

ともかく肝心なのは、最長10年間電子取引のデータを随時ダウンロードできる状態にあること。保存期間が短いものは適宜ダウンロード保存することです。

少額特例や簡易課税などで多くのインボイス保存は不要に

年間売上 上限金額 期間
少額特例 1億円以下 税込1万円未満 2029年9月30日
簡易課税 5,000万円以下
表:インボイス保存を不要とする諸制度の概要

インボイス制度では、中小事業者の負担を緩和するために、インボイス保存を不要とするいくつかの特例措置が用意されています。よって、インボイス制度や電子帳簿保存法のルール変更に対して神経質になりすぎる必要はないでしょう。

例えば、年間売上1億円以下が対象となる少額特例では、税込1万円未満の仕入れについてはインボイス保存が不要。帳簿の記録のみで仕入税額控除が受けられます。そのため、上述の金融機関の手数料などは、少額特例の要件を満たす中小企業・小規模事業者なら、そもそもインボイス保存が不要です。

また年間売上5,000万円以下で利用できる簡易課税を選択すれば、金額を問わずインボイスの保存義務はありません。実際の仕入れ金額に関係なく、売上に係る消費税額にみなし仕入率を乗じて税額が計算されます。

まとめ

今回のルール変更のポイントは、ECサイト等で過去7年ないし10年間にさかのぼって取引データを取得できるかどうかです。取得できるなら、基本的にインボイスのダウンロード保存は不要です。7年あるいは10年未満で消えてしまうサイトでは、インボイスを逐一ダウンロード保存する必要があります。

なお、インボイス制度や電子帳簿保存法のルールは、今後もなし崩しで緩和されていくかもしれません。経営者や起業家、経理関係の方々は、ぜひ今後の動向を注視しておいてください。


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(編集:創業手帳編集部)

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