合同会社の資本金の適正金額とルール
合同会社の資本金はいくらが妥当か?金額設定の目安と資本金のルールを解説
合同会社を設立する際には、資本金を決める必要があります。
資本金は、会社設立では欠かせないものであり、法で定められたルールを守るだけでなく、自社が有利になるように金額を設定することが大切です。
合同会社の資本金の目安と金額や手続きなどのルールを解説します。資本金の意味や役割を知ることで、いくら必要かを検討する際のヒントにしてください。
株式会社などとは違う合同会社ならではの考え方も、押さえておく必要があります。
起業するには資本金以外にもさまざまな資金が必要となります。創業手帳による起業家へのアンケートでは、起業後に予想外の出費があったケースは66%と過半数以上で、さらに平均金額は114万円となっています。
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この記事の目次
合同会社の資本金とは
合同会社は、出資する人が会社の経営権も持つようになる会社です。資本金は合同会社でも、株式会社同様に必要となります。
合同会社の資本金は、出資者であり会社の経営者でもある社員が支払うものです。金額の設定は比較的自由ですが、使い道を考えた上で慎重に決めましょう。
会社設立の元手になるもの
資本金は、会社を設立する際に経営の元手となる資金です。出資者から集めたもので、借入金とは違って返済義務はありません。
また、使い方にも制限はなく、会社経営のためであれば自由に使えます。
ただし、会社の資本金は会社設立時に作成する定款や登記簿への記載が必要です。誰でも閲覧でき、融資の際などにもチェックされます。
合同会社は資本金が1円以上で設立可能
合同会社の資本金は、原則的には1円以上であれば問題ありません。会社の資本金の金額については、会社法で定められています。
資本金額は、以前は最低金額が有限会社で300万円、株式会社で1,000万円と定められていました。
しかし、会社法改正によって合同会社という新しい会社形態が生まれ、出資の最低額は1円となりました。
合同会社も新会社法によって生まれた新しい会社形態ですが、資本金額が1円になったのも同じく新しい原則です。
開業資金や運転資金として使える
資本金は、経営の元手となる資金と前述しましたが、その使途に制限はなく、開業準備の資金としても使えて、開業当初の運転資金としても使えます。
開業には設備費用やオフィス設立費など、まとまった金額が必要です。そうした費用を資本金からねん出し、準備を整えられます。
動産や不動産の現物出資も可能なルールのため、現金ではなく手持ちの設備などを会社の持ち物にして、開業に備えることも可能です。
また、開業当初は売上が安定せず、経費や仕入金額ばかりがかさむこともあるかもしれません。そのような場合にも、資本金を使って補えます。
こうしたお金の流れは実際に会社を経営しなくてはわからないことのひとつです。一方で企業では売上があっても現金が手元にくるまでにはズレがあります。会計上は黒字ではあっても手元に資金がなければ、事業を回していくことができず、最悪の場合は黒字倒産につながることもあります。「冊子版創業手帳」では、こうしたお金の流れを見極めるための資金繰り表の作成ノウハウについて詳しく解説しています。
合同会社の資本金は本当に1円でもいい?いくら必要か
合同会社の資本金は、原則1円以上と定められています。しかし、実際に1円で合同会社を設立した際には、いくつかの問題が発生するかもしれません。
1円での合同会社設立は、法的には不可能ではありませんが、現実的に可能かどうかを考えてみましょう。
1円企業は現実的ではない
資本金1円で会社を作ることは、不可能ではないものの、現実的ではないと言えます。基本的に、資本金は開業準備や経営の安定を図るための運転資金となるもの。
1円だけでは準備もできず、先行きも不安です。
そのため、資本金1円の会社を設立すると、以下のような問題が起こりやすくなります。会社の資本金は自分たちが必要なだけではなく、ほかの人や他社にも見られるものです。
資本金1円の心もとなさは、対外的にも大きな影響を与えるため、資本金の金額は慎重に判断してください。
信用を得られにくい
資本金1円で設立した会社は、取引相手からの信用が得にくいケースがあります。
資本金は「会社の体力」と捉えられることもあり、資本金が少なすぎると安心して取引できない相手だと考えられる場合もあります。
会社の安定性は資本金だけで決まりませんが、見方によっては取引の相手として責任を果たせるか不安に感じさせるかもしれません。
法人口座を開設しにくい
法人口座は、会社として取引先とお金のやり取りをしたり、会社のお金を個人と分けて管理したりするために便利です。
また、法人口座を持つと、「個人と法人の区分けができている」として取引先からの信用も得られます。
法人名義のクレジットカードを使用すると、経費の扱いも楽になるかもしれません。
しかし、資本金1円の場合、法人口座の審査で落ちるケースがあるようです。法人口座の開設には、登記簿や定款の中身を確認され、金融機関ごとに審査を行います。
その際、資本金額があまりにも低いと信用を得られず、口座開設を断られる場合もあります。
金融機関によっては資本金の最低額を決めていることもあり、その場合にはそもそも申し込みの資格すら得られません。
融資が受けにくい
資本金1円の信用力の低さは、金融機関からの融資の場でも影響を及ぼします。
資本金は会社の体力と見られる、と前述しましたが、資本金が少額で体力がないと見なされる会社は、融資する金融機関側でも警戒します。
融資を申し込んでも審査で落ちる可能性が高くなるでしょう。
また、金融機関の中には資本金額を融資の要件に入れているところもあります。
開業したばかりの会社にも積極的な融資をしてくれる日本政策金融公庫ですが、新創業融資制度を利用する場合、融資を受けようとする金額の1/10以上の自己資金が必要です。
資本金が1円では要件を満たせず、融資を受けられません。
融資を受けないで企業を経営することも可能ではありますが、融資を受けておくことによるメリットは色々とあります。とくに創業にあたっては十分な量の資金を準備することが、後の企業の成長にも関わってきますので、その際の資金調達には融資は有効的な手段です。「冊子版創業手帳」では、創業者が利用できる3つの融資制度や、融資を受けるにあたって必要となる事業計画書の書き方について詳しく解説しています。
合同会社の資本金の適正金額はある?
合同会社を設立する際の資本金の金額は、慎重に決めなくてはいけません。
1円での起業は不可能ではないものの、いろいろな不利益を被ると説明しました。やはり、資本金の金額はいい加減に決めてはいけないことがわかります。
では、合同会社の資本金はいくらが適正なのか、いくらに設定すると順調な経営ができるのかを考えてみましょう。
平均的な資本金額や経営に必要な金額を知ると、自社の資本金額を決めやすくなります。
合同会社の資本金は300万円未満が多い
合同会社の資本金は、50万円~300万円と言われています。開業には最低限、登記手続きにかかる費用が必要ですが、加えて多少の設備費用があると安心です。
前述した日本政策金融公庫の新創業融資制度を利用する場合を例に考えてみます。
融資を希望する金額の1/10以上は自己資金が必要という融資要件のためには、多少なりともまとまった額が必要です。
最低限ですが、50万円以上の資本金があれば単純計算で500万円の融資を申し込むことが可能です。
1円の資本金ではリスクが多くなりますが、合同会社は300万円以下で十分に経営していけるでしょう。
また、近年では個人事業主やフリーランスから1人で会社設立することも多くなっており、その場合には50万円に満たない額でも可能です。
3~6カ月ほどの運転資金を資本金として設定
資本金の平均は300万円以下となっていますが、自社に必要な金額を計算して資本金を決めることをおすすめします。
資本金は、開業資金と運転資金になるものなので、開業から経営を安定するまでにいくらかかるかを考えて、金額を決めると安心です。
通常では、開業から3カ月~半年程度は経営が安定せず、資金不足になることが多くあります。
売上があった場合でも、支払いの入金が先になるケースもあり、現金不足に悩まされるかもしれません。
そのため、半年程度は売上金が入ってこなくても経営を続けられる程度の資金が必要です。
開業で必要になる主な費用
開業資金として資本金を使いたい場合には、開業で必要となる費用の項目を知っておきましょう。
主にかかる開業費用は、オフィスに関わる資金や従業員など人に関わる資金、登記費用です。
広告宣伝費や仕入れ費用は、業種によって用意したいものですが、必要のない業種もあります。
まだある!?合同会社の資本金を決めるときに注意したい点
合同会社の資本金の基本的な決め方を紹介しましたが、それ以外にもいくつか注意したい点があります。
業種や合同会社の特性によって注意したい点など、忘れずにチェックしてください。
許認可事業は最低資本金額に注意
事業内容によっては、許認可が必要となり、その条件として資本金額が法的に定められていることもあります。
その場合には、法律で決まっている資本金額の範囲で準備しなければいけません。
以下は、許認可が必要な業種と資本金額の制限の一例です。
-
- 旅行業(300~3,000万円)
- 建設業(500万円)
- 一般労働者派遣業(2,000万円)
- 有料職業紹介事業(500万円)
社員の負担できる限度額の合算になっているか
合同会社は、会社を構成する社員がすべて出資者です。
これは従業員という意味の社員とは違い、合同会社では、出資者であり経営者である人は社員と呼ばれ、会社設立にあたり出資をしています。
出資した金額は資本金となり、会社経営に活用されますが、経営が上手く行かず倒産した際にはその出資額を失うかもしれません。
そのため、必要な資本金額を決める際に、社員に無理がない出資額かを確認する必要があります。
社員それぞれが負担できる金額以上の資本金を設定した場合、責任が重くなりすぎるため、社員の負担の大きさからも資本金額を調整する必要があります。
節税できる金額に設定されているか
資本金額は、少なすぎても問題ですが、多すぎると増税につながることもあります。そのため、資本金額と各種税金の額を確認し、節税できる金額に設定することも大切です。
資本金と登録免許税
登録免許税は、資本金額に0.007%をかけた税額になるため、資本金額が多すぎると税負担も増えます。
そのため、許認可や企業の信用に問題の出ない範囲で金額を抑えることも必要です。
合名会社の場合、登録免許税の最低金額は6万円です。計算上6万円未満になった場合も一律6万円の登録免許税がかかります。
資本金850万の場合、850万×0.007=59,500円となり、6万円を切るため、支払うべき登録免許税は6万円です。
また、資本金900万円では、計算上で6万円を超えるため、計算上の金額である63,000円を支払います。
登録免許税の節税の面から考えると、850万円以下にすると最低金額に抑えられて良いということになるでしょう。
資本金と消費税
消費税は、資本金1,000万円未満の場合、起業後2年間は免除になります。合同会社の平均的な資本金額は300万円以下のため、同じような額の場合、特に心配は不要です。
ただし、設立から6カ月間の課税売上が1,000万円を超えた場合など、2期目から免除されない場合もあります。
資本金と法人住民税
資本金1,000万円の壁は、法人住民税にも関係しています。資本金1,000万円以上になると、定額課税される均等割の法人住民税が高くなるルールです。
ただし、こちらも合同会社の資本金の平均から考えると多くの場合、あまり当てはまりません。
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合同会社の資本金のルール
合同会社が資本金を出資する際には、基本的なルールを守ることが必要です。正しい出資方法を理解して、開業準備を進めましょう。
資本金は2種類の方法で出資
合同会社の資本金には、現金出資と現物出資があります。現金出資は文字通り現金を準備する方法で、その現金は家賃や設備の購入費用に充てることができます。
一方、現物出資は、土地建物やパソコンなど、不動産や動産をそのまま会社の持ち物にするものです。
現金出資のやり方
現金出資は、基本的に口座振込で行います。ただし、会社の口座を作るのは登記終了後のため、会社の口座ではなく代表の出資者の口座に振り込むことが必要です。
全ての出資者が代表の口座に振り込むことで、資本金が集められたことを証明します。
そのため、代表の出資者も自分で自分の口座へ出資する金額を振りこまなければいけません。
現物出資のやり方
現物出資は、その評価額で出資した金額を決めます。
評価額の算出には弁護士などの検査役を選任しますが、金額が500万円以下の場合には必要ありません。価格が決まったら、資本金に計上します。
検査役の選任には費用がかかり、検査役による現物出資の調査には時間がかかります。そのため、現物出資をする際には、できるだけ500万円以下におさえるほうが安心です。
資本準備金がない
合同会社の資本金のルールは株式会社とは違い、資本準備金がありません。資本準備金は、出資額の半分を超えない範囲で積み立てておけるものです。
資本金にしないことで節税でき、それでいて、いざという時には資本金にできます。
株式会社では資本準備金として計上できますが、合同会社では計上できません。
資本金以外の出資金の計上方法
合同会社の場合には、資本準備金がないため、資本金以外の出資金は資本剰余金に計上します。
株式会社では出資金の半分までしか資本準備金にできないことになっていますが、合同会社ではそのルールが適用されません。
そのため、出資額の内訳を自由に決められます。資本剰余金は、資本金のように登記事項ではなく、登記の必要はありません。
資本金0円の合同会社も
合同会社では、出資金の内訳を自由に決められることになっています。そのため、極端な例ですが、出資総額の全てを資本剰余金とし、資本金を0円にすることも可能です。
払込証明書の保管が必要
合同会社を設立する際には、資本金が振り込まれたことを証明する払込証明書を作成、保管が必要です。社員の口座へ資本金全額の振込を済ませたら、証明書を作成します。
払込証明書の作り方
払込証明書の内容は、資本金の総額や日付、商号や代表社員の名前、押印です。
預金通帳の表紙と1ページ目、振り込まれたことが分かるページをコピーしたものに押印、またはネットバンクの明細ページを印刷したものでも、記載内容が満たされていれば問題ありません。
増資も可能
合同会社の資本金は、増資も可能です。増資は開業時に設定した資本金に追加の出資をしてもらい、資本金を増やす方法です。
増資の方法
合同会社の資本金の増資には、2種類の方法があります。
ひとつは、今会社にいる社員から出資してもらう方法で、もうひとつは新しく社員になってもらう方法です。
どちらの場合も、社員の同意書や証明書などが必要です。
手続きに必要な書類は以下の通りです。
-
- 出資額を増加した定款変更にかかわる総社員の同意書
- 業務執行社員の過半数の一致があったことの証明書
- 資本金計上に関する証明書
- 変更登記申請書
- 払込証明書
- 印鑑登録証明書(新社員が代表社員になる場合)
増資のコスト
増資は無料ではできません。手続き費用に登録免許税がかかるため、その費用は準備しておきましょう。登録免許税は、2種類の方法でかかる金額が異なります。
まずは、増資分の登録免許税として3万円、もしくは増資金額の7/1000を乗じた額、さらに、新しい社員による増資の場合には、追加社員分として1万円が必要です。
まとめ
合同会社は、1円から資本金を設定でき、このルールは株式会社と同じです。ただし、実際に資本金1円で会社を設立するのは現実的ではありません。
資本金は信用や許認可などに関係があり、最低限の金額は必要です。
しかし、合同会社では社員すべてが出資者となるため、出資者の負担にならない金額に設定しなければいけません。
様々な視点からバランスを見て、適正な資本金額を設定し、合同会社を設立しましょう。
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(編集:創業手帳編集部)