最新!企業経営者が知っておくべきITトレンドキーワード10選

創業手帳

今後必須となるIT経営・IT戦略!業務効率アップやマーケティングに活用できるITを詳しく解説

ITトレンドキーワード
企業経営にはITが欠かせないと知っていても、その変化のスピードについていくことが難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。

目まぐるしい進化を遂げるIT技術。5G、AI、IoB、DXなど聞き覚えのあるワードも多々あるかと思いますが、詳細を説明できるほど理解している人は多くありません。

本記事では、起業家や経営者に必要な業務改善やマーケティング、新技術にかかわるIT関連用語について詳しく紹介していきます。企業のIT戦略にお役立てください。

経営者に必要なITとは?自社にとって必要なIT技術と活用法を知る

IT経営・IT戦略を身近なものに
「IT経営」という言葉が多用されている昨今において、IT経営はITコーディネーター(※)協会によって以下のように位置付けられています。

「IT経営とは、経営環境の変化を洞察し、戦略に基づいたITの利活用による経営変革により、企業の健全で持続的な成長を導く経営手法である」

※ITコーディネータ:真に経営に役立つIT利活用に向け、経営者の立場に立った助言・支援を行い、IT経営を実現する人材を認定する資格。経産省推進資格。

IT経営の目的はIT技術で経営を行うことではなく、情報(技術)を活用して企業経営をよりよいものにしていくことです。そのため、最新の技術を導入すればいいとは限らず、自社にとって必要な技術を取捨選択していくことが求められます。

ITが企業経営に与えるインパクトは大きく、企業・事業戦略と合わせたIT活用は、企業の競争力を高め、ビジネスモデルや業務プロセスを変革するといった効果があります。

だからこそ、企業規模によらず、経営者はITについても関心を持ち、自社の事業に必要な技術の活用に前向きに取り組むことが大切です。ITは経営者の仕事ではありませんが、社内に大きな影響を与えるIT技術を導入するには経営者の決裁が必要不可欠です。

ITに関して正しい判断を行いリーダーシップを発揮するためにも、経営者はIT技術の動向に関心を持つ必要があるでしょう。

ITキーワード10選

すでに活用されているITを知り、経営に活かそう
2021年4月時点で注目されているITキーワードを10個紹介します。関心のある分野については、続けて動向を追いかけていくとよいでしょう。

業務改善関連、新技術・コンセプト関連、マーケティング関連の3つに分けてそれぞれの用語を説明していきます。

業務改善関連のITキーワード

1.DX(デジタルトランスフォーメーション)

DXは「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念で、本来は社会全体における情報との関わりについての概念であり、ビジネスに限定されたものではありません。

企業におけるDXは、経済産業省が「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」において以下のように定義しています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

何を行えばDXになるのかは企業によって異なりますが、すでにさまざまな事例がありますので、参考にしながら自社のDXを模索してみるとよいでしょう。

2.ローコード/ノーコード開発

「ローコード/ノーコード開発」とは、プログラミング言語を使ったコーディングを行わない、あるいはほとんど行わずにアプリケーションの開発を行うことです。社内にエンジニアを抱えずに現場の人で業務用アプリを作ったり、開発エンジニアのチームが作業効率化や品質の安定のために利用したりできます。

ビジネス分野ではマイクロソフトのPowerAppsやAWSのHoneyCode、サイボウズのkintoneなどが有名ですが、ローコード/ノーコード開発はさまざまな分野で活用されています。

子供向けのプログラミング教材として知られるScratchや、ホームページ作成サービスのWixなどもこの一例です。操作はパーツを「ドラッグ&ドロップ」するだけと簡単で、それで目的とするアプリケーションを一定の品質で作成できます。

優秀なエンジニアを抱え、IT予算を潤沢に確保できる一部の企業だけがITの恩恵を被るのではなく、多くの人が低コストで簡単にITを利用できることになることを「ITの民主化」と言います。ITの民主化の潮流の中で、「ローコード/ノーコード開発」のように利用しやすい多くのサービスが生まれていくでしょう。

3.ハイパーオートメーション

「ハイパーオートメーション」とは、AIやRPA(自動化ツール)などを利用し、一連の業務を自動化することです。

自動化のためには、発見、分析、設計、自動化、測定、モニタリング、再評価といったプロセスがあります。さまざまなツールを組み合わせ、これらにおいて人が関わっているプロセスを自動化していき、最終的な業務効率化、理想的には完全自動化を目指すといった取り組みです。iBPMS(インテリジェント・ビジネスプロセスマネジメント・システム)やワークフローシステムなどは業務プロセスの把握や改善策の立案に役立ちます。

自動化のメリットは、単純に人手を減らせるだけではありません。場合によっては検算などのチェック工程を丸ごと省けますし、業務量増加への対策コストが大きく低下するためスケーリングが容易になります。

新技術・コンセプト関連のITキーワード

4.ゼロトラスト

ゼロトラストとは、フォレスター・リサーチ社が2010年に提唱した考え方で、「社内(ネットワーク内)は安全である」という前提を廃し、「すべてのトラフィックを信頼しないことを前提とし、検査、ログ取得を行う」というセキュリティアプローチです。

社員のリモートワーク化や、企業ITインフラのクラウド化が進んでいることや、従業員による内部不正の増加がビジネスセキュリティにおける問題となっています。こうした中、従来の「社外は危険、社内は安全」といった考えではセキュリティが担保できなくなってきており、新しいセキュリティ対策の形が求められるようになりました。

ゼロトラストでは、ネットワーク上の動きを可視化・検証し、通信の記録(ログ)を残し、アクセス権限の管理を徹底的に行うことにより、場所やインフラの種類に関係なく安全な通信を可能にします。

「ゼロトラスト」は概念であり、特定の製品やサービスを意味するものではありません。また、セキュリティ製品単体でゼロトラストを実現することは難しいため、範囲を決めて少しずつゼロトラスト型のセキュリティ体制を構築していくのがよいでしょう。

5.5G

5Gは「ファイブジー」と読みますが、本来は携帯電話の通信技術における「第5世代(5th Generation)」を意味する略語です。

5Gの特徴
  • 高速・大容量
  • 高信頼性(遅くならない・途切れない)
  • 従来以上の多数同時接続が可能

スマートフォン・タブレットといったモバイル端末の普及やIoTの登場により、通信量が10年前とは比較にならないほど増加しています。また、インターネットを通じてやりとりされる通信量が増加したことで、快適な利用のためには通信速度もこれまで以上に必要となりました。

5Gの活用により、日常の通信がより快適になることはもちろん、これまでの通信では難しかった、リアルタイム性の高いサービスも実現可能になります。特にVR・ARなどの技術や、工場などで利用されるIoTやリアルタイム性が求められるため、5Gの登場によって高度なサービスの提供が期待されています。

6.AI

AIとは「Artificial Intelligence」の略で「人工知能」と呼ばれます。現在、一般的にAIと呼ばれているものは、特定の課題の解決に特化された機械学習のプログラムのことです。

機械学習は、自動的に学習・処理を実行するプログラムで、ハードウェアの進歩やディープラーニングなどの新しいコンセプトによって、2010年代に飛躍的にその精度が高まりました。この機械学習による画像認識や音声認識、自然言語処理などの技術から、多くのサービスが生まれています。

また、過去のデータやさまざまな条件から将来起こりうる事象を予測することも可能で、商品売上や選挙結果、スポーツにおける選手の分析など、あらゆる場面で活用が進んでいます。

すでにさまざまなサービスや情報が提供されているため、技術的にはAIの実装はそれほど難しくはありません。ただ、AIによる処理の精度を高めるためには、データ分析や統計処理に関する知識や質の高いデータが必要です。そのため、AI活用ではデータ利用に長けた人材の採用・育成が大きな課題となっています。

7.IoB

「IoB(Internet of Behavior)」は「ふるまいのインターネット」と呼ばれる新しい概念です。顔認証や位置情報、ビッグデータなどの情報をリアルタイムに収集して個人のふるまいを認識し、さまざまな処理に活かすことを目的としています。

現在は、マスクを着けていない人に対して警告を発したり、運転中のドライバーが居眠りなどをしていないかを監視したり、介護施設で入所者の管理に利用されたりしています。現在研究が進んでいる自動車の自動運転では、歩行者の動きや顔の向きなどから、道路を横断しようとしているか否かを判断するために使われています。

IoBは今後、さまざまな活用が期待される技術ではありますが、場合によっては個人のプライバシー保護と衝突する可能性があるため、利便性や法律などにも注意が必要です。

8.エッジコンピューティング

「エッジコンピューティング」とは、エッジ(端)においてコンピュータの処理を行うネットワークの形です。ここで言うエッジとは「ユーザーや端末(コンピュータなど)の近く」を意味し、これによって上位のシステムへの通信や負荷を減らすと共に、高速な通信や処理を提供します。

5Gと同様に特にIoTで注目されている技術で、工場などの現場ではセンサや測定器から得られる大容量のデータをほぼリアルタイムに処理し、見える化された情報として処理することが可能になります。中でもAIを活用するエッジAIは、品質管理や装置操作の自動化に活用が期待される技術です。

遠隔地の複数の高機能サーバーを利用するクラウドコンピューティングと比較すると、処理速度では劣っても通信時間が短くなるためトータルでは処理が速く、かつセキュリティを適用する範囲が絞られるなどメリットがあります。また、クラウドサービスは通信量や利用量が増えるとコストも高くなるため、エッジ化することでコストダウンにつながる場合もあります。

マーケティング関連のITキーワード

9.トータルエクスペリエンス

2019年に米国のガートナー社は、会話プラットフォームやVR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)といった技術によって現実の体験が
多様化することを「マルチエクスペリエンス」
と名付けましたが、それがさらに進んだ概念が「トータルエクスペリエンス」です。

トータルエクスペリエンスとは、上記のマルチエクスペリエンスを顧客や従業員、ユーザーエクスペリエンスの各分野と結び付ける戦略です。さまざまなステークホルダーのエクスペリエンス向上を目的としており、特にコロナ禍によって新しい生活様式が進行する中でトータルエクスペリエンス型のサービスへのニーズが高まると予想されます。

ミュージシャンの無観客コンサートなどはトータルエクスペリエンスの一例となるでしょう。ARやVRを利用することで演出の幅を拡げ、グッズ販売はオンラインショップで省力化し、またミュージシャンたちには投げ銭などの機能によってチケット以外にも直接的な収入が入ります。観客の盛り上がりを示すためにチャットの機能を充実させたり、過去の映像から観客席の様子を取り込んだりとさまざまな工夫が行われており、ライブコンサートにはない魅力を打ち出しています。

10.テックネイティブ

「テックネイティブ」とは、マーケティングでは「Z世代」と呼ばれる世代(1997~2012年までに誕生)の人々を指します。生まれたときにはすでにインターネットや電子メールが一般的に利用されており、通話を主要機能とする携帯電話(ガラケー)よりもスマートフォンになじみが深い世代です。

テックネイティブはテクノロジーを身近なものとして使いこなし、新しいITデバイスやサービスの利用に抵抗が少なく、有益なものは素早く取り入れ、発信・共有するのが特徴です。「Z世代」より新しく、テックネイティブとしての特徴をより強く持つ世代を指す「アルファ世代」という言葉もあります。

テックネイティブは今後のITサービスの主要なターゲットとなるだけでなく、すでに労働市場への流入が始まっているためビジネスの戦力としても注目されています。これまでの世代よりもテクノロジーに敏感なため、企業のテクノロジーへの接し方に一石を投じる働きも期待されます。

身近なITから取り入れ、企業規模に関係なく「IT経営」「IT戦略」を!

ITの世界は流れが非常に速く、技術者だとしても自身の専門でない分野はよくわからないということは多々あります。ましてやITが専門でない経営者ならなおさらです。

しかし、最新のIT技術の種類や動向を知っておくことは、今後の社会の流れやビジネスシーズ、企業の経営改善策などを探る上でも役立ちます。定期的にITに関する情報を収集し、自社のIT経営、IT戦略について構想を膨らませてみてはいかがでしょうか。

創業手帳(冊子版)は、資金調達や販路拡大、組織強化などに必要な情報を掲載しています。起業後のサポートにぜひお役立てください。
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(編集:創業手帳編集部)

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