ランサーズはどのように販路拡大をしてきたのか?
ランサーズ株式会社代表取締役社長 秋好陽介氏インタビュー
新たなサービスを始める時、最も気になるのがどのように販路を拡大していくかということでしょう。
国内で初めてクラウドソーシング事業を立ち上げたランサーズ株式会社代表取締役社長の秋好陽介氏に、サービス開始当初の販路拡大について、また今後の販路拡大についてお話を伺いました。
1981年大阪府生まれ。大学在学中にインターネット関連のベンチャービジネスを起こし、卒業と同時にニフティ株式会社に入社。
複数のインターネットサービスの企画運営を担当する中で個人と法人のマッチングサービスを思い立ち、2008年4月に株式会社リート(現ランサーズ株式会社)を創業。
同年12月、インターネットを通じてフリーランスの働き手と企業をつなぐクラウドソーシングサービス「Lancers(ランサーズ)」の提供を開始し、国内最大規模のサービスに育て上げた。
〇〇〇で広まったランサーズ
秋好:ランサーズを立ち上げた当時、僕個人が何千人か読者がいるブログを運営していたので、まずはそこから少しずつ広げていきました。
ブログでは自分の考えを綴ったり、CGM(インターネットなどを活用して消費者が内容を生成していくメディア)などのユーザー参加型のサービスを特集していたりしたんです。
これがきっかけで本も執筆させていただきました。
マーケティング的に広告を打ったというより、口コミで広がっていったというのが初期の流れです。
秋好:我々のサービスを使う方の多くは経営者です。
小規模法人は社員にデザイナーもエンジニアもいない。
ランサーズはそういった状況にすごくマッチするサービスだったようです。
例えば社長さんがランサーズで名刺を作って「カッコいいロゴの名刺だね」なんて褒められると、すぐに「ランサーズというサービスで5万円で作れるんだよ」と言いたくなるんですよね。
それを聞いた社長さんがまた利用してくださるというスパイラルで最初は広がっていきました。
創業当時は「何でランサーズを知っているんですか?」と聞くと、だいたい友達の社長に聞いたという人がほとんどでしたね。
現在は海外向けサービスで販路拡大を狙っています。
また、ランサーズのプラットフォームだけではなかなか難しい部分もあるので、我々が直接営業に行ってサポートをして、フェイスtoフェイスでクラウドソーシングを使える「Lancers For Business」というサービスも提供しています。
こちらはすごく受けがいいですね。
ランサーズでは通常企業が直接個人に仕事を発注するというスタイルを取っていますが、「Lancers For Business」では発注から制作物のクオリティ管理までのディレクション業務をこちらが一括で請け負います。
インターネット上だけで仕事を進めることに躊躇している企業の方も、「Lancers For Business」を使えば直接我々とやり取りしながら進められるという点がいいようです。
秋好:そうですね。営業しながらサポートを行っています。
また、最近ではテレビCMも開始しました。
人に会うべきか?開発に専念すべきか?
秋好:これまであまり意識的に販路の拡大は行ってきませんでしたが、実は2010年頃に一度だけいろいろな販路を追求したことがあるんです。
直接営業だけでなく、Web広告やダイレクトメール、チラシ配りまで行いました。
ところがどれも効果がない。
そこで、これは販路の拡大に重点を置くのではなく、良いプロダクトを作るべきなんだと考えを変えました。
そこからプロダクトに集中したというのが1つの転機です。
同時に、創業時から力を入れていたユーザー様のサポートも、より丁寧に行うようにしました。
サポートに関してはファーストリプライタイム(最初の返信時間)を極力短くして、一度使ってもらった方から「良かった」という言葉がバイラルするように徹底しています。
人数的にも、開発の次にサポートが多くなっています。
また、こちらから販路を拡大したわけではありませんが、2011年の震災以降世の中のトレンドとして「この働き方でいいのか」という空気感が生まれ、時間と場所を選ばずにインターネットがあれば仕事ができるという、ランサーズの取り組みが注目され始めました。
その後『ワールドビジネスサテライト』で「個人の働き方」という特集が放送されたときから一気に伸びたような気がします。
基本的には、仕掛けを作るというより、いいサービスを提供すれば口コミで広がるだろうという考えです。
秋好:信じられないと思いますが、2009年と2010年はどこにも行かず誰とも会わなかったんです。
鎌倉にこもって徹底的に開発をしていました。
1年間で名刺交換2人とか、そういう時代でしたね。
当時はオフィスを鎌倉フィルターと呼んでいましたが、そこには本気の人しか来ない。
普通わざわざ鎌倉まで出向かないですよね。そういう方は年間2人ぐらいしかいませんでした。
秋好:あの頃はゲーム絶世期で、開発をしているならゲームを作らないかという話をたくさんいただきました。
東京でいろいろな人に会っていたら、洗脳されてスマホゲームを作っていたかもしれません。
モバゲーなどが一気に盛り上がって来た頃でしたが、僕は鎌倉にこもり、新しい可能性を信じてひたすら開発をしていました。
秋好:あまりなかったですね。
もちろん他の方の意見も参考にはしますが、最終的には自分を信じて意思決定しないとブレてしまうので、自分の考えに信念を持ってやっています。
物事って意外と人が反対することの方がうまくいったりするんですよね。
当時50人ぐらいにランサーズのサービスを説明しましたが、49人はそんなのうまくいくわけないと言いましたからね(笑)。
それをそのまま鵜呑みにしていたら、このサービスは始めなかったと思います。
自分の信じた道をただ行くのみ。直感は信じるタイプです。
(取材先:ランサーズ株式会社)
(創業手帳編集部)
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