原本証明はどう書く?原本証明の書き方から効力まで徹底的に調べました

創業手帳

手順とポイントを押さえれば原本証明も難しくない


原本証明は様々なビジネスシーンで提出を求められることがあります。必要書類の中で「コピー可、ただし、原本証明をつけること。」と記載されているのを見たことがある人もいるかもしれません。
また原本証明について、形式は自由と記載されているケースもあり、提出先によって求められる形式が違います。

原本証明を用意するときに大切なのは、提出先が求める要件をしっかり理解することです。
原本証明の手順とポイントだけ押さえておけば、原本証明を提出するように求められても慌てることはありません。
原本証明を求められた時のために、基本的な原本証明の書き方や原本証明が持つ効力について覚えておきましょう。

また、原本証明や提出書類のタイミングを把握しておくためにおすすめなのが、創業カレンダーです。創業前後2年間のいつ「やるべきこと」なのか、いつ「提出すべき書類」なのかなど時系列で理解できます。無料ですので、お気軽にお申し込みください。


創業カレンダー

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

原本証明ってなに?


原本証明が役所や銀行で求められることは珍しくありません。原本証明を簡単に説明すると、コピーを提出するものの、内容は原本と内容に変わりがないことを証明するための書類です。
原本証明はコピーした書類の裏面に記載することで作成することができます。印鑑や手書きのような要件を満たしていれば、どんな手法でも構いません。

さらに原本証明付きの写しを提出する場合でもあっても、原本を持参するように求められる場合もあります。
この場合は原本は確かに原本と相違ないと担当者に確認してもらった後、原本を返却してもらうことができます。

定款の原本証明とは

定款は会社の基本的な情報が記載された書類です。
事業目的や商号、本店の所在地等の法律で記載するように決まっている絶対的記載事項のほかに、定款に記載しないと効力が生じない相対的記載事項、記載しなくても定款の効力には影響のない任意的記載事項を盛り込む場合があります。

定款は法人を運営するために基本的な規則を定めたものなので、法人を設立するときには、必ず定款を作らなければいけません。会社設立時に作る定款を原始定款と呼び、公証役場で公証人の認証手続きが必要です。

加えて原始定款の原本は、公証役場と会社でそれぞれ1部ずつは保管しなければいけません。
会社では定款は永久保存、公証役場では20年保存され、株主や債権者はいつでも定款を閲覧、謄写することができます。

定款を見ることで会社の多くの情報を知ることができるため、金融機関との取引や許認可の申請で定款の提出が求められることがあります。しかし、会社には定款の保存義務があるため、原本を渡してしまうわけにはいきません。
そのため定款の提出を求められたときは写しをとって、必要であれば原本証明を付けます。

定款の原本証明提出はどうして必要なの?

定款を確認するだけであれば、公証役場の謄写でも可能です。しかし、会社の成長は社会情勢の変化に合わせて変更されることもあります。

定款の変更は株主総会の決議があればでき、公証人の認証は不要です。
公証役場にも保管されている定款は会社設立時の原始定款なので、現行の定款を確認するためには、会社の現行定款の写しが必要です。

一方で提出を求められた会社は会社に保存されている定款の原本を提出するわけにはいきません。
そこで定款のコピーとそのコピーに原本と相違ないと書かれた原本証明を付けて提出します。

ただし、必要書類が「定款(原本証明をしたもの)」と書かれた場合は原本証明が必要ですが、手続き先によっては必要書類として「定款の写し」とだけ書かれることもあります。
この場合は原本証明が求められない場合もあります。原本証明が必要かどうかがはっきりわからない場合は、提出先に問い合わせてください。

原本証明に決まった書き方はない

原本証明は必要な書類の写しに証明文を添付します。この時に使う文言にははっきりとした決まりがあるわけではありません。
必要な内容を満たしていれば原本証明とすることができます。例として原本証明として良く使われる文言を2パターン紹介します。

「上記が当会社の現行定款に相違ないことを証明いたします。

平成○○年○○月○○日

住 所 ○○○○

商 号 ○○○○株式会社

代表者 代表取締役 ○○○○  印  」

「この定款の写しが原本と相違ないことを証明する。

平成○○年○○月○○日

○○県○○市○○町○○

株式会社○○○○

○○○○(代表者氏名)  印  」

定款の原本証明はどんな時に使うの?


原本証明が使われる場面はいくつかあります。
基本的には会社定款、実務経験証明書、資格証、決算報告書、雇用契約書のように原本が提出できないものを提出するために原本証明が使われます。
どのようなタイミングで原本証明が必要になるのか紹介します。

法人設立の手続き

会社を設立した場合、原則設立してから2か月以内に税務署に「法人設立届出書」を提出します
また都道府県税事務所にも「法人設立届出書」を提出しなければいけません。

ただし、税務署の法人設立届出書の添付書類では「写し」としか記載されていません。
税務署も都道府県税事務所も写しだけで原本証明が必要ない可能性もあります。可能であれば事前に原本証明が要るのかどうか確認しておきましょう。

また営業許可に原本が必要なケースもあります。例えば法人として古物営業を行う場合に必要になる古物商の許可申請も、定款の写しと原本証明が必要です。
加えて社員が資格取得する場合に、受験資格用の書類として事業者の原本証明が求められるケースがあります。

金融機関の口座開設

法人を設立すると、法人名での銀行口座を開設することができます。
金融機関によっては新規法人口座を開設する場合にも、定款の原本証明が必要です。新規口座開設の時に必要な書類は金融機関ごとに扱いが違います。
出向く前に必ず事前に必要な持ち物を確認してください。

また口座開設以外に、一定額以上の大口取引や貸金庫サービスを使うときに、定款の原本証明が求められることがあります。これらの規定は口座開設する前に確認しておくようにおすすめします。

行政機関への書類申請

行政機関の書類申請でも必要書類として書類と原本証明が求められることがあります。
例えば、事業資金を調達するために助成金や補助金の申請をするときに、提出を求められることがあります。

さらに事業の内容によっては行政庁に許認可を申請したり、届け出が必要です。助成金や許認可、届け出といった手続きは種類ごとに違う書類が必要です。
求められる手続きによっては書類と原本証明が求められることも想定されます。事前に必要書類をよく確認しておきましょう。

原本証明の方法をステップで紹介


原本証明と聞くと特別な手続きが必要なように感じられるかもしれません。しかし、原本証明自体は決して難しいものではありません。
原本証明の方法をステップごとに紹介します。

①原本と相違がないと記載

初めに原本の写しを用意します。写しはA4サイズの白黒コピーで問題ありません。写しを用意してから、必要があれば左側の二か所をホチキスでとめて装丁します。
定款は複数枚になるので必ずホチキスどめするか製本するようにしてください。

原本証明の文言は最後の余白や書類の裏面に「原本と相違ないことを証明する」と記載しておきましょう。前述しましたが、文言は同じ内容であればどのような文言でも問題ありません。
原本証明の文言を記入したら、原本証明をした日付を記載してください。下に会社名と代表者名を記載します。

会社名や代表者名はゴム印の押印でも可

会社名や代表者名は手書きしても問題ありませんが、ゴム印の押印にすることも可能です。
書き損じを防ぐため、手書きする手間を減らすためにはゴム印のほうが都合が良いと考える人も多いはずです。
ただし、会社の実印も取り扱うことになるため、押印作業は取締役等の責任者が遂行します

②契印

原本証明する書類が複数ある場合、契印作業が必要です。また書類の枚数によっては製本が必要になるケースもあります。製本した場合とホチキスどめの場合で契印の方法が違います。

契印は書類が複数あるときに、それぞれが関連している書類であると証明するために押す印鑑です。
ホチキスでとめられた書類の場合は、書類を見開きにして左右ページの真ん中、両方の書類にかかるように押印してください。
契印は全ての綴じ目に押印します。袋とじにする場合は裏表紙だけに契印を押します。

契印と割印の違いとは

契印と似た行為に割印があります。また契印を割印と説明された人もいるかもしれません。しかし、厳密にいえば契印と割印は全くの別物です。それぞれの違いを紹介します。

・契印
契印は製本された一つの契約書にページをまたいで押す印鑑を言います。
契約書が2枚以上になるケースで考えなければならないのが、後から署名していないページを改ざんしたり抜き取られたりするリスクです。
そのようなトラブル、不正行為を防ぐために契印を押します。

契印は製本された書類であれば製本テープの境目、ホチキスでまとめられた書類は綴じ目にページをまたがるようにして押します。

・割印
割印は複数部作成した契約書に押す印鑑です。契印が同一の書類の中で改ざんを防ぐために押す一方で割印は複数部の契約書の改ざんを防ぐ目的で押印します。

割印は同じ契約書、正本と副本を重ねてから境目に押すようにします。トラブル防止のためである点は契印と同じですが、それぞれの意味合いが違うため注意してください。

印鑑は使い方によってそれぞれ別の意味を持ちます。訂正印や訂正に備えるための捨印もそのひとつです。
ビジネスの場面では印鑑を使うことは多いので、トラブル防止のためにもその意味や効力を理解して押印するようにしてください。
書類に関しては不安であれば専門家に依頼することも検討しましょう。

③必要に応じて製本する

コピーする書類が多い時や、契印の手間を減らしたいときには。書類を製本してみることも検討してください。
製本は業者に依頼する必要はなく、簡単に自分でおこなうことができます。製本するためには、まず市販されている製本テープを用意してください。

製本は製本テープを使わずに閉じるための紙をカットして糊付けする方法もありますが、作るときにコツが要ります。手軽に製本するのであれば製本テープを利用するのが便利です。

製本テープで製本された書類の場合、契印は製本テープと写しにまたがるように押します。全ページの見開きに貼るよりも事務的なコストは下がります。
書類の枚数や押印の手間を考えて製本するかどうかを決めましょう。

製本テープの使い方

製本テープは使い慣れていないと上手く使うことができません。まず書類を用意して揃えて置いたら、製本テープのを書類よりも少し長めに出します。
テープをカットしてから真ん中で折り目をつけましょう。しっかり折り目をつけておかないと、後からしわが寄ったり汚くなってしまったりすることがあります。

製本テープは中央から半分ずつはがせるようになっています。いきなり全てをはがさないようにしてください。まず半分はがしてから位置を合わせて貼り付けます。
書類の厚みを考慮して後から折り込めるように貼り付けましょう。

片面貼り終えたらもう片方の面を貼ってください。剥離紙をはがしてからシワを伸ばすようにして貼り付けます。端に余った製本テープはハサミでカットします。

製本テープはホームセンターや文房具店で購入することができます。最初からA4で切ってあるタイプと自分で必要な長さをカットして使うことができるロールタイプがあります。
決まった大きさの書類だけしか製本しない、厚みがある書類は製本しない場合は最初から切ってあるタイプが便利かもしれません。

厚みのある書類は少し長めにカットして封をすることもあります。そのため、最初からカットしてある製本テープでは足らず、自分でカットできるロールタイプが便利な場合もあります。

製本テープを使うときはキッチリと製本して、一つの書類にすることが重要です。
一つの書類だからこそ、各ページの契印もありません。しっかり製本されていないと間のページを抜いたり、逆にページを差し込んだりできてしまいます。
原本証明として認められない可能性もあるので注意しましょう。

原本証明は仕様を問い合わせておくと安心

原本証明をおこなう場合は、事前に必要な仕様をしっかり調べておくようにしてください。どのような文言が必要なのかといったことを、相手先に確認しておくと安心です。

また電子定款で会社を設立しているケースもあります。電子定款の場合は公証役場に「同一情報の提供請求」をおこなって交付を受けることが可能です。
この同一情報の提供とは、定款謄本の交付を意味するもので、電子定款として作成されたPDFデータをプリントアウトして交付してもらうことができます。
同一情報の提供請求にかかる手数料は公証役場の公証役場の窓口で納付してください。

取引や申請に使う書類は提出先や用途によって違います。あらかじめ提出先に原本証明が必要かどうか、原本証明の仕様は決まっているのかどうかを問い合わせておきましょう。

まとめ

原本証明は基本さえ押さえておけば、様々なタイプの原本証明に対応することができます。
定款のようにコピーしてからホチキス留めや製本が必要な書類もあれば、用紙一枚で原本証明ができるケースもありますので確認しておきましょう。
原本証明が持つ意義と、原本証明に必要な項目を理解しておけば原本証明が必要な場合でもその時々に合わせて、臨機応変に対応できます

創業手帳(冊子版・無料)は、金融機関での手続きや企業に必要な申請といった創業したばかりの企業に必要な情報を掲載しています。起業間もない時期のサポートにぜひお役立てください。

また、創業カレンダー(無料)では、原本証明にかぎらず、様々な書類の提出タイミングがひと目で分かります。カテゴリ分けされたタスクを対処すべき順に確認しながら、効率的に起業準備をすすめましょう。起業前後のお供に是非ご活用ください。


創業カレンダー

関連記事
会社設立に必要な定款とは|経営者のための基礎知識
確定申告のやり方は?手続きすべき人の条件や申告方法などについて解説

(編集:創業手帳編集部)

創業手帳
この記事に関連するタグ
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す