会計業務の煩雑さと重要性を再確認!何を使えばどれだけ負担が減るのか?!効率化に必要なサービスや機能とは
人材不足解消や作業効率アップのために見直したい会計業務~使いやすいツールやサービスをITツールマスターが徹底解説~
スタートアップでは人員が少ないため、会計業務に人手や時間を割かれる状態をもどかしく感じている経営者も多いのではないでしょうか。
また、確定申告や年末調整も電子化され、様々な業務が電子化、効率化されているのを実感している方も多いと思います。
企業における会計の効率化は、従業員の時間を効率化するだけでなく、経営情報のタイムリーな把握につながるため、ぜひともマネジメントに取り入れてほしいものです。
本記事では、会計業務の煩雑さを改めて確認しながら、IT観点から会計業務の効率化について解説します。使いやすい会計ソフトや業務効率化に適したサービスなども紹介していきます。
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会計の主な業務
会計の業務には、大きく分けて「経理」と「財務」があります。
※「会計」=「経理」+「財務」
経理は会社内外のお金のやりとりや管理を行うもので、財務は経営管理や資金調達などのために行うものです。経理は「現在」のお金を扱い、財務は「未来の」お金を扱うために行います。
経理業務と財務業務の内容を詳しく見ていきましょう。
経理業務の種類
経理業務は会計業務の中心であり、企業が存在する間継続的に発生します。主な業務には以下のようなものがあります。
出納管理・会計帳簿の管理
日々のお金の出入りを確認し、仕訳(記録)して管理します。会計業務の基本であり、最も大事な業務です。主要簿は「日記帳」「仕訳帳」「総勘定元帳」の3種類で、特に仕訳帳と総勘定元帳は会社法で適切に作成することが義務づけられています。
経費精算
社内で発生した経費の確認や記録、支払いなどを行います。不正な利用が出ないように適切に管理することが大切です。経費申請が期日から遅れることも多く、対応に気を遣います。
伝票記帳、整理
事業で使うさまざまな伝票の記帳や整理を行います。伝票の種類には「入金伝票」「出金伝票」「振替伝票」「仕入伝票」「売上伝票」といった種類があり、企業によって使う種類が異なります。
売掛金・買掛金の管理
即時に現金の出入りが発生しない売掛金・買掛金の管理を行います。実際に現金の授受が終わったら「消込」を行います。口座の残高と請求書や伝票などを突き合わせて確認するため、件数が多くなるほど大変です。
給与計算
労務が多くは行いますが、最終的には諸経費などを含めて支給する必要があるため給与計算には経理もかかわります。給料日に合わせてお金を準備し振り込むのも経理の仕事です。
入出金の確認・処理
取引や支払いの結果、お金の出入りがどのように行われているのかを絶えずチェックし、キャッシュフロー計算書などに記録します。必要なときに必要なお金が準備できるよう、支払いのタイミングなどを調整することもあります。
財務諸表、決算書などの作成
定期的に決算を行い、財務諸表や決算書を作成します。最近は経営状況を即時に確認してスピード感のある経営を行うため、週次や月次で決算を行う企業もあります。小規模な店舗では日次決算を行う場合も多いです。
予実管理
事前に立てた予算と、実際のお金の動きの推移を比較して、適切にマネジメントを行います。会社によっては企業だけではなく、株主や資金調達に対しても影響が大きいため重要な仕事です。
税務処理
企業が支払う税金の申告や支払いを行います。法人の場合は税理士と相談しながら行うのが一般的です。税金対策のための方策の検討や、必要な実務を行うこともあります。
財務業務の種類
財務は企業活動に必要な資金を調達したり、財務状況を理想的な形に整えたりする仕事です。資金調達のために株主や金融機関に足を運んでプレゼンテーションなども行います。経営者と会計部署で行うのが一般的です。
財務会計
財務会計は、資金調達などで必要な会計資料を準備する業務です。企業の財務諸表や株式の状況に関する資料、その他資料の作成など仕事は多岐にわたります。外部に対して経営状況を明らかにするための仕事です。
管理会計
管理会計は、社内での経営状況の把握やマネジメントのための数値指標です。売上高対利益率、店舗あたり利益率など、経営の実態を表す数字や経営目標となる数字を設定し、その達成のためのマネジメントを行います。財務の管理会計では全社的な目標を設定し、その実現のための目標設定は各部署で行うケースが多いです。
ITを活用した会計業務効率化のポイント
会計業務は多岐にわたり、記録や確認といった時間のかかる業務が多いです。その効率化のためにはさまざまな方法がありますが、ここではITを利用した効率化に絞ってポイントを紹介します。
- 業務効率アップの4つのポイント!
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- 電子化
- 自動化
- 見える化
- 快適化
帳簿・書類を電子化する
現在、企業の会計用帳簿・書類については電子データでの保存が「電子帳簿保存法」により認められています。2016年以降は「3万円未満の証憑のみ電子データでの保存が可能」といった金額の定めも撤廃されたため、紙の書類を保管する必要性が低下しています。
紙の帳簿や書類を電子データで保存できることによって、保管スペースの削減や検索速度の向上、印刷費のコストダウンなど多くのメリットがあります。
すべての帳簿や書類を完全に電子化できるわけではなく、また取引先都合によって電子化が難しい場合もあります。それでも少しずつ進めておいて損はありません。
自動化できる部分を増やす
会計に関する業務は種類も多く煩雑ですが、実は会計業務はITと非常に相性が良いといわれています。その理由は、業務が定型的で定期的に発生すること、転記や計算など自動化しやすい要素が多いからです。
しかし、小さな企業ではエクセルなどの表計算ソフトを「職人芸」で管理しているケースも見られます。
「会計ソフト」は自動化できる要素をできるだけ自動化し、会計業務を速く、正確に、負荷を軽くするために作られたシステムです。システムによって必要な箇所への転記や計算が自動的に行われますし、報告用の資料もすぐに整った形で印刷できるようになっています。
会計ソフトだけでなく、経理業務を楽にするための自動化ツールは多いため、うまく取り入れて自動化できる部分の業務を減らすとよいでしょう。
「見える化」できるシステムを導入する
経理や財務などの会計業務においては、できるだけ早く、頻繁に状況を整理することが大切です。お金の過不足に対する見通しは、企業経営における影響が大きいため、経営者も常に注意を払っているところです。
しかし、決算業務や報告用資料の作成は会計担当者にとって非常に負荷の高い業務でもあります。
会計ソフトの中には、入力された情報を随時処理してさまざまなデータを見える化してくれる機能を持ったものが多くなっています。大企業が使うERP(基幹情報システム)のような大がかりなものを導入する必要はありません。
クラウドで利用できる会計ソフトの中には、安価に財務状況を見える化できるものも多いので活用しましょう。
その他
会計を効率化するための方法は数多くあります。ITというほどではありませんが、単純に会計担当者の使うディスプレイのサイズを大きくしたり、デュアルディスプレイにしたりするのも効果的です。
会計担当者は複数のファイルや画面を見ながら作業するため、文字を大きくできたり、画面の切り替えの手間が省けたりするだけでも作業効率が格段に上がります。
また、企業用クレジットカードやインターネットバンキングを使えば、使用データや入出金データは自動的に記録され、csvファイルの形でダウンロードできるため入力や管理も楽です。
他にもレシートをスマホで撮影すると、データを保存するだけでなく文字を読み取って仕訳してくれるサービスなどもあります。会計関係のサポート製品・サービスはどんどん便利になっているので定期的に確認してみることをおすすめします。
どのような機能を導入したら業務効率は上がるのか
上記のポイントを参考に、どのような機能を持った製品・サービスを導入したらよいかを簡単に解説します。
- 負担軽減できる4つの業務!
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- 書類の電子化
- 自動計算
- 請求書作成
- 経費計算、管理
スキャナ:書類の電子化
帳簿や資料を電子化するにあたっては、スキャナが必要です。スマホのカメラで撮影するとPDFの形にしてくれるものもありますが、やはり1枚1枚撮影する必要があって面倒です。
業務用スキャナの中には、複数の書類をセットしておけば自動的に読み込んでくれるものがあります。読み込んだデータは自動的にクラウド上のサーバーに保管され、「請求書」「レシート」など大まかなグループ分けも自動的にできるので非常に便利です。
会計ソフト:自動計算
会計ソフトは、記帳における入力作業さえしっかり行っておけば多くのデータが自動的にできあがるので非常に便利です。機械が計算を行ってくれるために計算ミスも無く、探しているデータもすぐに見つけることができます。
導入にあたっては社内の会計ルールや会計業務を見直す必要がある場合も多いため、十分な検討期間をおいてから導入を決定しましょう。現在の会計ソフトは非常に優秀なので、システムに業務を合わせた方がずっと効率的になる場合が多いことも覚えておくとよいでしょう。
請求書発行ツール:請求書作成
すでに会計用のシステムが企業内で導入されており、一部の会計業務だけを効率化したい場合もあります。こうした場合は業務に特化した形のツールを利用すると低コストで業務を効率化できます。
たとえば、請求書発行ツールなら取引先への請求書発行はもちろん、郵送作業まで行ってくれるものも多いです。売掛金の管理が効率的になるようレイアウトや操作性にも配慮が見られますし、面倒な消込作業がワンクリックでできるので作業がずっと楽になります。
経費精算ツール:経費計算、管理
経費精算に特化したツールもあります。経費精算では、立替金額の記載された精算書類と根拠となるレシートや領収書を上長承認のもとで経理部門に申請し、内容確認、振込処理を行うフローが一般的です。
経費精算ツールでは、こうした手順をすべてシステム化して簡略化してくれます。主に「申請者の入力・申請の省力化」「上司・経理の承認作業の省力化」「会計システムへの自動転記」などの機能が提供されるため、会計の他の部署でも効率的になって喜ばれます。
会計業務の効率化に効果的な製品・サービス5選
以下、会計業務の効率化に効果的な、おすすめの製品・サービスを紹介します。
弥生会計オンライン(会計ソフト)
<主な機能>
入力サポート、会計帳簿作成、決算書作成、レポート作成、その他
<費用>
初期費用 | 費用(年) | 備考 | |
---|---|---|---|
セルフプラン | 0円 | 無料(初年度) | 2年目以降26,000円/年 |
ベーシックプラン | 0円 | 10,000円(初年度) | 2年目以降30,000円/年 |
<URL>
https://www.yayoi-kk.co.jp/products/account-ol/index.html
会計ソフトの定番、弥生のクラウド版です。クラウド上で入力データの仕訳・計算処理が自動的に実行されるので担当者の負担が大きく減ります。
また、最新の法令への対応も自動的に行われるため、会計担当者はデータの入力や確認、分析などに注力できます。経理や財務の業務を助ける実用的な機能が多いのが特徴です。
ソフトウェアの弥生会計との間でデータのインポート・エクスポートが可能で、過去データも管理用にアップすることができます。ベーシックプランではシステムに関することだけでなく、仕訳などの業務に関することも相談できるため、担当者の経験が浅い場合には特にメリットが大きいです。
会計freee(会計ソフト)
<主な機能>
入力サポート、会計帳簿作成、決算書作成、請求書発行、レポート作成、サービス連携、その他
<費用>
初期費用 | 費用(年) | 備考 | |
---|---|---|---|
ミニマム | 0円 | 23,760円 | ユーザー上限3名 |
ベーシック | 0円 | 47,760円 | ユーザー3名まで無料(追加可。上限なし) |
プロフェッショナル | 0円 | 477,600円 | ユーザー10名まで無料(追加可。上限なし) |
<URL>
https://www.freee.co.jp/houjin/
クラウド会計ソフトで最もシェアの高いfreeeは、非常に高機能な会計ソフトです。経理において面倒な入力を補助し、設定したルールやAIによって転記も自動的に行ってくれます。
帳票や資料の出力、状況の見える化など、経理に必要な機能をオールラウンドにサポートできるのが特徴といえるでしょう。
他の会計ソフトと比較したときに最も大きな違いになるのが、freeeが提供しているサービスの全体像です。freeeはその他サービスと連携することでERPを実現できるようになっているため、労務管理用ソフトやプロジェクト管理ツールも導入すると一層の業務効率化や質の高い管理会計ができるようになります。
Money Forward クラウド会計(会計ソフト)
<主な機能>
入力サポート、会計帳簿作成、決算書作成、請求書発行、レポート作成、サービス連携、その他
<費用>
初期費用 | 費用(年) | 備考 | |
---|---|---|---|
スモールビジネス | 0円 | 35,760円 | |
ビジネス | 0円 | 59,760円 | |
エンタープライズ | 0円 | 477,600円 | 要問い合わせ |
<URL>
https://biz.moneyforward.com/accounting
クラウド会計ソフトの中でもMoney Forward(以下マネーフォワード)は、汎用性の高い会計ソフトです。
上記の他サービスと同様に、入力補助やAIによる仕訳、資料やレポートの作成など、会計業務に必要な機能を豊富に揃えています。ビジネスプランで使える振込データの作成機能も便利です。
マネーフォワードの特筆すべき長所は他システムからの移行や、金融機関やレジとの連携がしやすいところにあります。
会計システムは便利だとわかっていても、導入に際して周囲のシステムとの連携が複雑で頓挫することが多いですが、マネーフォワードはシステムの柔軟性とサポートによって導入しやすくなっています。
ScanSnap(スキャナ)
<主な機能>
用紙スキャン、クラウド保存、メール送信、名刺管理、外部サービス連携、その他
<費用>
48,000円(税抜)
※ScanSnap iX1500の場合。機種、販売店によって費用は異なります。
<URL>
https://scansnap.fujitsu.com/jp/product/ix1500/
<参考動画>
https://youtu.be/VEQm2cHAiY8?t=106
富士通が販売しているScanSnapはただのスキャナではなく、さまざまなシーンに対応する多機能プリンタです。会計分野では、書類や帳票の電子データの作成や、上記の動画のように経費処理といった用途で活躍します。
機種がいくつかありますが、会計での使用や書類のデータ化を見込む業務用スキャナとしては、ScanSnap iX1500が扱いやすいでしょう。複数枚の紙資料を手放しでスキャンできますし、経費申請用の端末としても使用できるため、運用ルール次第でコスト以上のハイパフォーマンスを見せてくれるでしょう。
楽々精算(経費精算ツール)
<主な機能>
入力・申請サポート、ワークフロー機能、規程違反チェック機能、自動仕訳、会計ソフト連携、振込データ作成
<費用>
初期費用 | 費用(年) | 備考 | |
---|---|---|---|
基本料金 | 100,000円 | 360,000円~ | ユーザー数によって変動 |
<URL>
https://www.rakurakuseisan.jp/
楽々精算は、経費・交通費・出張費・旅費・交際費といった経費精算のフローを簡便にするクラウド型の経費精算システムです。こうした経費は企業によって申請や承認のためのルールが異なりますが、ほとんどの企業のルールに対応できる柔軟性が特徴です。
経理担当者の作業効率アップだけでなく、自動処理でミスや不正を防止することができます。csvファイルを取り込みできる会計ソフトであれば基本的に連携可能で、多くの会計ソフトで実績があるのもメリットです。
経費精算ソフトとしては国内有数のシェアを持ち、セキュリティ面もしっかりしているので安心して使うことができます。
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会計業務は企業活動の中でも特に重要な業務のひとつで、厳格な期日の中で正確な仕事が要求されます。そのために多くの人員を会計に割いたり、担当者に多くの負担がかかったりしがちです。
定型的で自動化できる要素が多い会計業務は、ITとの相性が非常に良い業務です。ITをうまく活用した企業の中には会計業務にかける時間が半分以下になったケースも少なくありません。
企業にとって大事な部分に経営者の時間や人的資源を投入するためにも、会計業務の効率化をぜひ検討してみてください。
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(編集:創業手帳編集部)