電子政府の総合窓口「e-Gov」とは?その目的や電子申請の使い方について解説
行政情報をまとめた電子政府の総合窓口「e-Gov」とは何か?「e-Gov」での電子申請の使い方を解説します。
e-Gov(イーガヴ)とは、行政情報をサイトにまとめ、電子申請や届出の手続きが行える「電子政府の総合窓口」です。
近年の社会のIT化を受け、行政手続きを簡素化するために立ち上げられたサービスであり、煩雑な申請や届出業務を簡単に行えます。
会社起業者や経営者にとっては、様々な手続きがオンライン上でできることから、電子申請の使い方を知っておけば、かなり便利になるはずです。
今回は、e-Govについて解説していきます。
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この記事の目次
e-Govとはどのようなものか
e-Govは「電子政府の総合窓口」と呼ばれるように、行政における情報収集や申請・届出を幅広く行うことができるオンライン上のサービスです。
e-Govの存在を知らなかった人は、この機会にぜひ知っておきましょう。
こちらでは、e-Govの概要を説明します。
「e-Gov」は政府のポータルサイト
e-Govは、政府が提供する行政情報を検索することによる詳細の確認や、省庁への各種手続きの窓口の役割を果たすポータルサイトです。
平成20年に、「オンライン利用拡大行動計画」が立案され、行政制度の総合的な利用がオンラインで行えるよう、政府は運営に積極的に取組んでいます。
e-Govでは、登記や国税関連、各種保険関連の申請や届出をオンラインで済ますことが可能で、会社起業者や経営者にとっては手続きの負担がかなり減り、利便性の向上が図れます。
「オンライン利用拡大行動計画」とは
上記で触れた「オンライン利用拡大行動計画」とは、厚生労働省が編成したIT戦略本部により策定されたもので、従来の行政手続きのオンライン化に注力する方針に沿っています。
特に、申請件数が多い手続きを「重点手続」として71種類ピックアップし、これらのオンライン利用率を向上させる目標を立てました。
利用率向上の目標のために、政府では主に以下のような取組みを行っています。
-
- セキュリティを向上させた申請方法を導入する
- 紙による申請にかかる手数料などを見直す
- 申請時の添付書類を削減する
- システムの使い勝手を上げる
- 地方公共団体のオンライン利用を促進する
- ペーパーレス化を強化する
従来のIDとパスワード方式より、さらにセキュリティを向上させるため、新たな申請方法の導入が図られます。
紙書類での申請や届出において、手数料が発生するものは料金体系の見直しが行われています。
オンライン手続きの利用にあたって、初期設定を簡素化するほか、利用サポートも実施されています。
オンライン手続きの利用にあたって、初期設定を簡素化するほか、利用サポートも実施されています。
国が率先してオンライン化を推進することにより、地方公共団体にもこの流れを促しています。
オンライン手続きを導入することで、膨大な紙書類が発生することを抑制しています。
「e-Gov」の根幹となる「電子政府構築の原則」について
e-Govは、オンライン上に電子政府を構築する目的で導入されたシステムです。
この取組みは、根幹となる「電子政府構築の原則」をもとに行われています。
その内容についての主な概要は、以下のようなものです。
-
- わかりやすい行政サービスを提供する
- 国民の政策参加を目指す
- どのような人も使いやすいこと
- 申請や届出業務の効率化
- 民間の専門家を活用する
- 情報の安全性を確保する
- 各公共機関と連携する
- 社会生活の活性化を目指す
行政機関ごとに区切られたサービスの仕組みを見直し、国民全員がいつでもどこでも、わかりやすく受けられる行政サービス提供します。
e-Govの利用を通して、打ち出されている政策を透明化し、誰でも意見を送ることができる仕組みにより政策への参加を目指します。
年配の方や障害者の方でも使いやすいよう、音声読み上げシステムの導入を促進します。
申請や届出業務を見直し、手続きの効率化を積極的に推進します。
オンラインシステムの構築にあたり、IT技術者の専門家に業務委託するなどの試みを行います。
オンライン化にあたり、情報の安全性や信頼性を高め、個人情報保護法の運用を徹底します。
地方公共団体や裁判所といった各公共機関と連携し、さらに利便性の高いサービスの提供に努めます。
電子政府システムを利用することにより、企業活動へのIT技術導入を間接的に促します。
電子政府を構築する目的について
電子政府の構築には、明確な目的が設定されています。その内容を下記にあげていきます。
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- 国民主体で行政サービスを受けられること
- 業務処理の簡素化やシステムの最適化を行う
国民が、行政サービスを抵抗なく受けられるよう、24時間365日体制で情報取得や手続きを主体的に行うことを目指します。
煩雑な業務処理において、重複の回避やシステムの一元化を推進し、外部委託も利用しながら最終的に費用対効果を高めて合理化を図ります。
電子政府の取組みで実現することとは
電子政府を構築する取組みによって、政府が狙っていることとは行政手続きを含む政策の透明性を確保すること、各種手続き業務の徹底した効率化です。
これまで、私たちが手続きのために役所まで足を運ばなければならないところを、自宅などでいつでも手続きできることは大きな変化です。
また、私たちだけではなく各省庁においても、電子政府の取組みにより煩雑な手続き業務を大幅に省くことができ、さらに人件費も抑えることが実現します。
その結果、私たちが収める税金をより有意義に使ってもらえることも可能です。
「e-Gov」のメリット・デメリットにはどのようなものがあるか
e-Govは、行政において電子申請や届出ができることで、作業を簡素化することを目的としたサービスです。
このサービスには、メリットもありますがデメリットも存在しています。その両面を理解した上で利用することがおすすめです。
下記では、メリット・デメリットについてあげていきます。
「e-Gov」のメリット5つ
まず、e-Govのメリットを見ていきます。
役所に出向く必要がない
前述でも少し触れましたが、行政手続きにおいて役所に出向く必要がないことは、かなり助けられる点です。
役所まで足を運ぶことだけではなく、長い待ち時間が発生することも手伝って、手続きが億劫になることもあります。
その点、e-Govで電子申請を行うなら、オンラインに接続できるPCを持っていれば、自宅はもちろん出先でも手続きを行えます。
役所に出向く手間を省けて、待ち時間もないため、行政手続きがかなり楽になるはずです。
24時間365日電子申請が可能になる
役所では、窓口が閉まるのが比較的早く、夕方には終了していることも少なくありません。
また、土日や祝日は開いておらず、その間に手続きを行うことができないことが難点でした。
しかし、e-Govを利用すれば24時間365日受付け可能で、時間や曜日を気にすることなく手続きを終えることができます。
平日に仕事がある人や、会社の支社が遠方にある際にも便利に使えます。
紙書類の管理が必要なくなる
e-Govで電子申請ができることで、紙書類をいくつも作る必要がなくなります。
紙での手続きは煩雑であるほか、手数料も発生するため、膨大な業務や経費を削りたい会社起業者や経営者にとっては悩みどころでした。
また、紙書類は管理をするのも大変で、保管スペースの確保も面倒です。
しかし、e-Govの電子申請であれば、紙書類が発生せずペーパーレス化が実現するため、紙書類に関連する様々な問題を解決することができます。
業務に余裕が生まれる
行政手続きの簡素化やペーパーレス化により、会社にもたらされる大きな功績は、手続きにかかる作業が大幅に軽減され業務に余裕が生まれることです。会社起業者や経営者としても、手続きに割く時間や手間を省くことができれば、本来のコア業務に集中できるほか、経営にかかる業務に注力することが可能です。
その結果、会社の経営において意思決定が早くなるなど、業績を上げるスピードも上がると考えられます。
電子申請をワンストップで行える
e-Govは、「電子政府の総合窓口」と銘打っていることからもわかるように、行政のあらゆるサービスが一元化されています。
そのため、会社起業者や経営者が行うべき登記や納税、各種保険関係の手続きもこのサイトだけで行うことができます。
さまざまな公共機関への手続きを電子申請にし、ワンストップで行えることは、いくつもの公共機関に足を運ぶ手間を大幅に削減します。
また、行政の情報収集もe-Govだけで完結し、必要な情報をまとめるのも簡単です。
e-Govのデメリット3つ
一方、e-Govのデメリットについても解説しましょう。
電子証明書 の取得が必要である
e-Govの利用にあたっては、会社で電子証明書を取得しなければなりません。
この手順が若干難しく、また有料となる点はデメリットといえます。
また、電子証明書を得た後に手続きを行うと、到達番号が割り振られますが、不備があるとその場で確認ができず、差し戻しまでに時間がかかるほか、再提出後は到達番号が別になってしまいます。
健康保険組合などでは電子申請対応ではないことがある
e-Govで電子申請を行っても、健康保険組合では電子申請に対応してないことが多く、別で紙書類で申請を行わなければならないケースもあります。
その結果、手続きの手間が膨れ上がってしまいます。
紙の控えを取ることができない
電子申請自体の手続きは簡単であり、ペーパーレス化が実現する一方で、紙の控えを手元に取ることができず、不備があるか否かの確認や、内容についての照合をすぐに行えない点も不便ではあります。
「e-Gov」はどのようなことに利用できるか
e-Govでは、電子申請をはじめとして行政に関連する様々なサービスを受けることができます。以下で紹介するサービスをオンライン上で行えることは、従来の手間を大幅に削減できるものです。では、そのサービスにはどのようなものがあるでしょうか。
電子申請・届出 ができる
上記までで説明しているように、行政への電子申請や届出をe-Govによりワンストップで行えます。
電子申請のメリットは前述しましたが、会社の業務外でも自宅で手続きが行えることから、会社での業務に影響を与えることがない点も、忙しい経営者には適しています。
行政関連のことを検索できる
e-Govは、あらゆる行政サービスがひとまとめにされているため、電子申請の手続き方法を検索したり、会社に必要な手続きが何かを調べたりすることができます。
もし、手続きの種類や方法に不明点があっても安心です。
また、法令関係に関しても検索が可能で、会社の設立や経営にかかる法的な問題を洗い出すことも簡単です。
政策についての意見を出せる
あまり国民に浸透していない政策のひとつとして、「パブリックコメント」と呼ばれる制度があります。
これは、公共機関が政策を打ち出すときに、国民の意見を募るものです。
従来は敷居が高かったこの制度も、e-Govにより簡単に利用することができ、意見があれば公共機関に送信して届けられます。
「e-Gov」での電子申請の方法
e-Govで行えることの中で、特に会社起業者や経営者にとって助かることは、行政手続きにかかる電子申請を行えることです。
これにより、手続きの時間がかなり減少できるため、電子申請の方法は覚えておくと良いでしょう。
以下では、電子申請の方法について紹介します。
e-Govで行える電子申請の例
電子申請が行える行政手続きには、主に下記のようなものがあります。
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- 登記関係
- 国税関係
- 社会保険関係
- 雇用保険関係
- 労働保険関係
会社を起ち上げる際の会社設立登記や商業登記、不動産登記などの各種登記手続きができます。
確定申告をはじめ、法人税や住民税の納付のように、国税に関する手続きもe-Govで可能です。
従業員が加入すべき健康保険や厚生年金保険などにかかる諸手続きをひとまとめに行えます。
雇用保険の資格取得・喪失手続きや離職証明書の申請もワンストップでできます。
労働保険の更新や関係成立届に加え、労災にかかる給付請求もe-Govにより行えます。
利用の前にe-Gov電子申請アプリケーションをダウンロードする
e-Gov利用前には、電子申請アプリケーションをダウンロードする必要があります。
ダウンロードからインストールが終了すれば、e-Govアカウントを作成します。
これにより、あらゆる手続きや操作はアカウントにログインすることで可能になります。
電子申請の流れ
こちらからは、e-Govで電子申請を行う際の大まかな流れについて紹介します。
行いたい手続きを検索する
Webページにて、行いたい手続きを検索します。会社の状況や手続きの分類、また名称や公共機関から検索することができます。
e-Gov電子申請アプリケーションを起動させる
Webページで申請手続きを探し、「申請書入力へ」ボタンをクリックすると、e-Gov電子申請アプリケーション起動のポップアップが開きます。
ここで「e-Gov電子申請アプリケーションを起動」をクリックします。
行う手続きを選ぶ
e-Gov電子申請アプリケーションから手続きを検索したときは、そのまま検索結果から該当のものを選んでクリックします。
手続きの詳細を確認する
該当の手続きを選ぶと、詳細について確認することができます。
また、ブックマーク機能もあるため、何度も行う手続きに関しては登録しておくと便利です。
電子申請書の必要事項を入力する
手続きの詳細情報画面の右下に「申請書入力へ」ボタンがあり、これをクリックすると会社情報や添付書類を入力する画面に遷移します。
ここで、個別認証情報が必要となる場合はその情報を入力します。
電子証明書を確認する
入力が完了し「内容を確認」ボタンをクリックすると、電子証明書の選択ポップアップが開きます。
あらかじめ取得した電子証明書を選択し、「OK」をクリックします。
内容に間違いがなければ送信する
最後に、申請内容をすべて確認できる画面に遷移します。ここで、入力情報に誤りがないかをチェックし、問題がなければ「提出」をクリックして送信すれば終了です。
電子申請後に確認すべきこと
電子申請が終了した後には、確認しておくべきことがいくつかあります。
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- 事務処理の状況を見る
- 適宜手数料を支払う
- 申請受理後の公文書の発行を受ける
電子申請が問題なく完了したか、現時点で事務処理が進んでいるかどうかを、マイページから確認します。
もし再提出の通知があった場合にも、このページで確認できます。電子申請に手数料が発生する場合は、インターネットバンキングなどを利用して支払いを忘れずに行います。
問題なく電子申請が受理されていれば、手続きによっては公文書の発行を受けられます。
マイページから確認、ダウンロードすることができます。
社会保険関連で注目されているGビズID
2020年4月に、社会保険関連の手続きに関して電子申請が義務化されています。
これを受け、e-Govとは別に法人に割り振られるGビズIDにより、様々な手続きが行えることが注目されるようになりました。
こちらでは、GビズIDについて紹介します。
GビズIDとはどのようなものか
GビズIDとは、経済産業省が推奨するサービスであり、e-Govと同様に公共機関への電子申請が行えるものです。
特に、社会保険関連の手続きが行えることから、義務化された電子申請に対応するために注目されています。
また、社会保険以外の電子申請も可能です。
登場したばかりのサービスであるため、e-Govよりも機能的に若干劣る部分はありますが、今後もサービス拡充に向けて注力されているツールです。
e-GovとGビズIDの違いについて
e-GovとGビズIDにはどのような違いがあるかというと、まずは無料で利用できるか否かです。
e-Govで用いられる電子証明書の取得は有料ですが、GビズIDは無料で手続きを終えることができます。
また、可能な電子申請の種類も異なり、社会保険関連の手続きだけを見ても、GビズIDはe-Govよりも対応しているものが少ないのが現状です。
GビズIDアカウントには3種類ある
GビズIDアカウントには、gBizIDエントリー・gBizIDプライム・gBizIDメンバーの3種類のアカウントが存在します。
gBizIDエントリーは、アカウントをすぐに作成することができ、手軽です。
gBizIDプライムは、会社の代表者の印鑑および印鑑証明書を登録し、審査に通過することで、社会保険関連の手続きが行えるようになります。
さらに、gBizIDメンバーは、gBizIDエントリーを持っている会社代表者が作成することで、従業員用として利用できます。
まとめ
e-Govは、オンライン上で行政サービスの提供を受けられることから、会社起業者や経営者にはとてもありがたいサービスです。
電子申請によって、手続きの手間が大幅に省けることはもちろん、政府としても手続きの簡素化が行えるメリットもあるため、積極的に活用したいところです。
また、なかなか知ることができない行政の動向が把握できることも利点です。
似たサービスとしてGビズIDにも注目が集まりますが、できることはe-Govの方が多いのが現状であるため、活用して損はありません。
創業手帳冊子版では、e-Govについての詳細や利用方法などについて、詳しく解説しています。煩雑な行政手続きにお悩みの方は、ぜひお役立てください。
(編集:創業手帳編集部)