株主との関係や資金調達に影響 「発行可能株式総数」について知っておくべきこと

創業手帳

発行可能株式総数の概要とポイントを解説

(2020/01/21更新)

株式会社の設立時、定款に必ず記載しなければならない発行可能株式総数。「会社が今後どれくらい株式を発行できるか」を示す上限のことで、会社は、定めた上限まで新規の株式を発行することができます。

発行可能株式総数は、株主の利益や資金調達の手段にも影響するとても重要なポイントです。概要と決め方について解説します。

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発行可能株式総数を定める意味

会社を設立するにあたり、株式について「発行済株式総数」と「発行可能株式総数」を登記することになります。発行済株式総数は、設立時に発行する株式の総数、発行可能株式総数は将来的に発行できる株式の総数を示します。

発行済株式総数は事業のスタートに直接関わる情報なのでイメージがつきやすいかもしれませんが、将来的な発行可能株式総数まで定めることにどんな意味があるのでしょうか。

株主にとっては、持ち株の価値が下がる不安を軽減

例えば、株式会社が株主の了承なくいつでも無制限に株式を発行できるとします。こうなると、株主にとっては、会社が新規株式をたくさん追加発行することで、自身の持株比率が下がったり、経営への影響力が弱まるといった不利益を被る可能性が出てきます。

こうした事態が起きないように、発行できる限度を設けることで、株主側に「この会社は将来的にここまでは株式を発行する可能性があります」とあらかじめ示し、株主の権利を保護する意味があるのです。

会社は、機動的な資金調達がしやすくなる

特に変化の目まぐるしい創業期は、思わぬタイミングでビジネスチャンスが訪れることもしばしば。チャンスを逃さないためにも、資金調達を迅速に行うことができる体制づくりが重要です。発行可能株式総数の上限もまた、円滑な資金運用を左右するポイントとなります。

株式会社の資金調達の手段の一つが株式の新規発行です。新規発行に必要な決議の種類は、会社の機関設計によって異なりますが、特に「株主総会の決議」が求められる場合などは、株式発行による増資のハードルが高くなります。

一方、公開会社の場合、発行可能株式総数の範囲であれば、会社は株主総会の決議を必要とせずに発行済株式総数の4倍まで新規株式を発行できます。事業の将来的な計画に沿って、ある程度余裕をもたせた発行可能株式総数を定めることで、スピーディーな増資をしやすくなるのです。

発行可能株式総数を決めるポイント

公開会社か非公開会社か

発行可能株式総数は、定款における「株式の譲渡制限」を設けている会社(非公開会社)か、設けていない会社(公開会社)かによって変わります。

株式の譲渡制限についての概要は以下の記事で解説しています。

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非公開会社の場合は、発行可能株式総数の上限はありません。一方、公開会社の場合は、定款が作成された時点で発行された株式総数(つまり会社設立時に発行する株式数ですね)の“4倍”を超える上限を定めることができません。

例えば、公開会社が会社設立時に300株を発行した場合、発行可能株式総数の上限は1200株以下に定める必要があるのです。このポイントは頭に入れておきましょう。

発行可能株式総数で起こりがちなミス

発行可能株式総数の想定を見誤った場合に起こりがちな問題として、「いざ増資をしたいと思った時に、発行できる株式数が少なすぎる」というケースがあります。

設定した発行可能株式総数を増やしたい場合は、定款を変更する必要があります。定款の変更には株主総会で3分の2以上の賛同を得なければならないので、ハードルも高くなります。

つまり、「増資が必要になってから変更を考えればいいや」ではなく、あらかじめ事業の展開や成長速度を見越した発行可能株式総数を設定するほうが望ましいでしょう。

発行可能株式総数の目安は一概には言えない!

実際に発行可能株式総数はどれくらい設定すれば良いか、という疑問が出てくるかと思いますが、明確な基準や目安があるわけではなく、一概には言えません

発行可能株式総数は、まず登記の際に1株あたりの価格を設定し、最初に発行する株式の価格を定めた上で、それを元に決めていきます。

事業にとってベストな発行可能株式総数は、会社の規模や、将来の展望(将来的に上場を目指すかどうかなど)、株主比率などによって全く変わってきます。ネットなどでは、「1株の目安は〇〇円」、「発行可能株式総数は〇〇株くらいを見込むと良い」といった情報も数多く出てきますが、これらが必ずしも自身の事業に当てはまるとは限らない、という点に注意しましょう。

不安な場合は、行政書士や司法書士など専門家に相談するのも良いでしょう。創業手帳では、専門家を無料で紹介しています。

まとめ

発行可能株式総数は事業の最初に決めなければいけないにもかかわらず、考慮すべき点は株主との関係や事業の将来に関わる重要な事項です。必要に応じて専門家や周りの起業家の助けを借りながら、自身の事業にとってベストな発行可能株式総数を定めましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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