【新製品・新技術開発助成事業】都内で新しい技術開発をしている人は注目の助成金
創業前や個人事業者でも自社開発に熱意をもっていれば活用できる
企画から設計、開発、リリースまですべての工程を社内で行う自社開発。中小企業における自社開発の悩みは、やはり開発費の確保でしょう。
そのような取り組みに対して、東京都及び(公財)東京都中小企業振興公社が開発経費の一部を助成する「新製品・新技術開発助成事業」があります。
この記事では、助成事業の内容をはじめとして、申請書作成のポイントなどを詳しく解説していきます。
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
この記事の目次
「新製品・新技術開発助成事業」の概要
「新製品・新技術開発助成事業」は、東京都の産業活性化をはかるために東京都内に事業所を持つ中小企業者等を対象とした助成金制度です。創業期の企業、創業予定者、個人事業者も申請することができます。
■新製品・新技術開発助成事業 助成金の概要
新製品・新技術開発助成事業 | |
申請資格 | ・都内の本店又は支店で実質的な事業活動を行っている中小企業者(会社及び個人事業者)等 ・都内で創業を具体的に計画している者 |
助成対象期間 | 令和3年4月1日~令和4年12月31日(最長1年9か月) |
助成限度額 | 1,500万円 |
助成率 | 助成対象と認められる経費の1/2以内 |
東京都中小企業振興公社の資料には、過去の申請者の割合が公開されています。
それを見ると業種別では製造業と情報サービス業が80%以上を占め、創業年数別では創業5年未満の企業が約40%です。
情報サービス業(ソフトウェア業‣ 情報処理・提供サービス業)が半数以上という点に着目すると、さまざまな業務の円滑化に向けて、多くの若手企業がチャレンジしていることがうかがえます。
対象の開発分野
「新製品・新技術開発助成事業」の助成の対象となる開発分野は次の通りです。
新製品・新技術の研究開発
新しい機能を付加した製品や新しい製造技術に関するハード面の研究開発で、試作品の設計、製作、試験評価及び改良など。
事例
・次世代照明機器の開発
・高性能計測器の開発
・高性能性塗料の開発
新たなソフトウェアの研究開発
システム設計等ソフト面の新たな研究開発で、データ処理装置・情報処理プログラム開発及び改良など。
事例
・遠隔ロボット操作システムの開発
・無人店舗運営システムの開発
・ブロックチェーン型配車アプリの開発
新たなサービス創出のための研究開発
新たなサービスの提供による生産性の向上、高付加価値化を目的として、サービス関連業等が外部の技術を活用して行う研究開発など。
*一定の新規性があり、相当程度の市場で普及していないサービスであること
新製品・新技術開発助成事業の採択事例は?
毎年、50~60件の企業が採択されています。一例を挙げてみます。
・AIコンビニの開発
・音声による文章作成支援システム
・車椅子用 列車車両乗り込み装置
・チューブ絞り器
・誰でも簡単に使える眼圧計
このように、ものづくりからソフト開発まで申請テーマはさまざまです。
採択企業一覧は、(公財)東京都中小企業振興公社のホームページに6年分が公開されていますので、今年度だけでなく、今後申請を検討している方は、参考にしてみてください。
助成対象となる経費
助成の対象期間は令和3年4月1日~令和4年12月31日までで、期間内に研究開発が完了し、発注または契約・取得・支払いが完了している費用が助成の対象となります。
・原材料・副資材費
・機械装置・工具器具費
・委託・外注費
・産業財産権出願・導入費
・専門家指導費
・直接人件費
開発にはさまざまな工程があり、多くの費用がかかります。なかでも一番のコストとなるのは人件費でしょう。
研究開発に従事する直接人件費の上限は500万円となっていますが、自社内で直接実施することができない研究開発の一部を委託・外注する、大学や試験研究機関などと共同研究するといった費用も助成の対象です。
申請書類の提出期限とスケジュール
提出期間
令和3年3月15日(月)~4月5日(月)17:00
通常は事前に申請者向けの事業説明会がありましたが、本年度は新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するため実施されません。(公財)東京都中小企業振興公社のサイト内で説明動画が公開されているので、目を通しておきましょう。
その後のスケジュールは下記のように記載されています。助成金の交付は、計画を実施し、完了してからになるので、それまでの自己資金は確保しておかなければなりません。
提出書類について
全申請者 | 一次審査通過者 | |
---|---|---|
提出期限 | 令和3年4月5日(月) 17:00 |
令和3年7月5日(月) 当日消印有効 |
提出方法 | webフォームより送信 | 郵送 |
提出書類 | ・申請書(必須) ・補足説明資料(任意) ・特許等公報(該当者) ・見積書(該当者) |
・確定申告書 ・登記簿謄本 ・納税証明書 (上記は法人の例) |
申請書をダウンロードするとわかりますが、開発計画や資金計画など、多くの事項を記入する必要があります。
申請を検討している場合は、ゆとりをもって準備することをおすすめします。
書類の準備から提出まで
申請者は令和3年3月15日(月)~4月5日(月)17:00までに、下記の方法で申請書を提出します。
1 申請書をダウンロード
https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/shinsei/shinseihin.html
書類はExcelファイルです。作業ができるようなパソコンの準備が必要です。
■Windowsをご利用の方
OS:Windows10以降
ブラウザ:Internet Explorer 11以降/Firefox 最新版/Google Chrome 最新版
■Macintoshをご利用の方
OS:Mac OS X 10.12以降
ブラウザ:Safari 最新版 /Firefox 最新版/Google Chrome 最新版
2 ダウンロードした申請書に令和3年4月1日を基準とした情報を入力し、PDFに変換
補足説明資料(任意)・特許等公報(該当者)・見積書(該当者)などの添付書類もすべてPDFに変換します。
3 申請フォームから提出
PDFに変換した書類を添付して送信します。郵送での提出は受け付けていないので、添付ファイルに不備がないよう、しっかりと確認してから送信しましょう。未提出の書類があると、書類不備として審査されてしまいます。
申請書作成のポイント
新製品・新技術開発助成事業は、「実用化の見込みのある、新製品・新技術の自社開発を行う研究開発を支援」することを目的としています。
申請内容が助成金の目的に合っているかどうかを確認したうえで、下記のポイントをふまえて申請書を作成することが大切です。
1 審査基準と合っているか
まずは要項を熟読して、申請内容が助成金の主旨と合致しているかどうかを確認しましょう。新製品・新技術開発助成事業においては、東京都の産業活性化を図るためといった目的も記されています。
2 過剰な経費は含まれていないか
助成金における経費の交付対象は、助成金の目的に合った必要最小限のものになります。既存事業で使うための経費や創業資金などは、助成対象経費として認められないので注意が必要です。
3 達成目標は適正であるか(製品開発のみ)
助成金の交付には、助成対象事業が達成されたかどうか、成果物の提出、確認が必要になります。この助成金は試作品開発の完了を目的としているものなので、技術的な内容には市場性などよりも新規性や優秀性について特徴的な点を記します。
多くの申請書が提出され、そこから一次審査通過者を選ぶので、難しい業界用語ばかり並んでいる申請書は不利になりがちです。どんなに専門的な内容でも、読みやすくわかりやすい文章にまとめましょう。
一次審査通過後
一次審査を通過すると、確定申告書や登記簿謄本、納税証明書などの提出を求められます(個人事業者、創業予定者等は提出書類が異なります)。通常の業務に追われながらの申請作業は大変ですが、提出期限に遅れないよう、期日を確認をしながら進めましょう。
二次審査では、公社との面接が行われます。申請書や補足説明資料をもとに、説得力のある説明ができるよう、書類の内容をしっかりと理解して記憶し、内容を想定して練習することも大切です。
面接官はさまざまな分野の専門家が担当することになりますが、どの企業の内容にも詳しいわけではありません。事業の主旨や客観的な視点をふまえて、社会にいかにメリットをもたらすものであるか、丁寧に伝えられるような準備をしておきましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。毎年の採択率は12~25%といわれている東京都の新製品・新技術開発助成事業。先進的なサービスを目指して開発に取り組みたい企業、個人事業者には、創業期でも利用しやすい助成金となっています。
ただし、助成金の入金は、提出した計画が実施され完了してからになるので、まずは自己資金として開発費用を全額準備する必要があります。
提出書類に記載した事項と、実施後の状況に大きなズレが生じてしまうと、助成金が受給できなくなる可能性もあります。詳細に記入することも大切ですが、ある程度の幅をもたせておくほうがよいでしょう。
申請書の提出は4月5日(月)17:00までです。ゆとりをもって準備を進めてください。
創業手帳が発行する資金調達手帳では、資金調達方法や各種助成金についてもご紹介しています。創業期はもちろん、これから創業しようとお考えの方にも役立つ冊子ですので、ぜひ一読してみてください。無料でお取り寄せできます。
(編集:創業手帳編集部)