ティール組織とは?ヒエラルキー組織との違いや日本で成功している企業事例をご紹介

創業手帳

ティール組織はマネジメントをどう変える?


世の中のニーズが変わるように、組織も時代と共に変化をし続けています。近年、経営者の中で注目を集めているのが「ティール組織」という組織モデルです。
次世代の組織として、日本だけではなく世界で注目されています。

今回は、ティール組織の概要について紹介するとともに、ヒエラルキー組織との違いやティール組織に到達するまでの組織体などについて解説していきます。
実際に日本においてティール組織で成功している企業事例もご紹介していくので、次世代の組織モデルを理解したい人は、ぜひ参考にしてみてください。

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ティール組織とは


トップによる細かなマネジメントがなく、従業員がそれぞれの判断で行動をして、対等な関係性の中で目標達成を目指す組織をティール組織といいます。
マネジメントの現場で注目を集めている背景や特徴、ヒエラルキー組織との違いについて解説していきます。

注目された背景

ティール組織という言葉が使われるようになったのは、2014年に出版されたフレデリック・ラルー氏による著書「Reinventing Organizations」で紹介されたことがきっかけです。
フレデリック・ラルー氏は、長年組織改革プロジェクトに携わってきた人物で、約2年半にわたって世界中の組織調査を実施しました。
新しい組織モデルについての考察をまとめた著書がReinventing Organizationsです。

書籍は世界各国でベストセラーとなり、日本では2018年に「ティール組織」というタイトルで出版されています。
これをきっかけに日本でも新しい組織モデルとして注目を集める結果となり、企業でもマネジメントとして取り入れようと考える企業も徐々に増えてきました。

組織モデルに関する書籍は多数存在していますが、ティール組織が注目を集めた理由は、これまでのマネジメントにおける常識や考え方とはまったく異なる内容だったからと予想できます。
実際に成果を上げた事例も報告されており、同じように進化を遂げたいと考える企業が多いことで、より注目を集めたと考えられます。

ティール組織の特徴

ティール組織は、社長や上司などのマネジメントがなくても、従業員一人ひとりが判断をし、主体的に動いて目標達成を目指す組織を指します。
ティール組織では、組織をひとつの生態系のように捉えており、「組織はメンバー全員のもの」といった考え方に基づいて行動をしていきます。
メンバーがそれぞれ自主的に行動して、柔軟に役割や責任を引き受けることで、組織全体が効率的に機能する仕組みです。

スキルや能力に応じた役割を各従業員に与えることで、当事者意識が芽生え、自発性もアップするでしょう。
自発性がアップすれば状況に適した対応策や意見交換が活発になり、様々なアイデアが誕生するため、時代の変化に対応できる柔軟な組織を目指せるようにもなります。

ヒエラルキー組織との違い

ヒエラルキーは「階層」を意味する言葉です。そのため、企業において「ヒエラルキーが高い」という表現は、社長や管理職といった役職上位者を指します。

会長や社長、監査室や営業本部、管理本部や生産技術部など、明確な序列のある企業をヒエラルキー組織といいます。
ヒエラルキー組織においては、組織のルールが徹底され方針に従うことが求められるため、個々の能力や価値を最大限発揮できない点がデメリットです。
一方、ティール組織では従業員一人ひとりが判断をして自発的に仕事に取組み、能力や経験を活かせる点が強みといえます。
意思決定の権限も管理職から、現場で働く従業員に移っているのも画期的な変化のひとつです。

ティール組織に到達するまでの組織体


フレデリック・ラルー氏による著書では、組織のフェーズを5段階に分けてそれぞれ紹介しています。
ここでは、ティール組織に到達するまでの、それぞれの組織体を4つ解説していきます。

Red(レッド)組織

「オオカミの群れ」と比喩される組織モデルがRed組織です。
リーダーとなる人物の圧倒的な権力によって支配される最も原始的な組織体となり、目の前の利益を得ることを優先して、短絡的な思考に基づいた判断が実施されることが特徴となります。

リーダーによる支配的なマネジメントとなり、力や精神的な恐怖によって統制を図る仕組みですが、組織の構成員となる人物が不満を感じているわけではありません。
強い力に従属することで安心感を得ているケースもあります。
組織ではなく、個人の力によって結果が左右されるため、優れた成果が生まれたとしても再編成が低い点がデメリットです。
また、トップが交代した場合には、組織の規模やルールが一変することもあります。

Amber(アンバー)組織

計画的な成果の達成が難しかったレッド組織から成長し、「軍隊」と比喩される組織モデルがAmber組織です。
Amber組織には、堅固なピラミッド構造による階層が存在しており、トップダウンで構成員の役割が明確に定められています。
上下関係が絶対で、工場であれば基本的に以下のように構成されています。

  • 工場長
  • 部門長
  • ユニットマネージャー
  • ラインマネージャー
  • 作業長
  • 作業員

それぞれが何をするのか明確に定められたルールがあり、下の階層は命令に忠実に従うことが求められます。
明確なルールがあるため安定した組織運営を実施できる点が強みですが、臨機応変な行動がとれない点がデメリットとなるため、環境の変化に弱い特徴があります。

Orange(オレンジ)組織

Amber組織で対応が難しい環境の変化にも適応するために発展した組織がOrange組織です。「機械」とも比喩されています。
基本的には階級に基づいたヒエラルキーがありますが、成果に応じて評価や昇進を図れる点が特徴です。

成果を上げるために数値によるマネジメントを重視し、従業員それぞれの個性や才能を活かして成果を上げることで、新しいアイデアの誕生や社会環境の変化に対応していく仕組みです。
徹底した数値管理による生存競争が起こることで、過重労働や精神的なプレッシャーで従業員が機械化してしまう点が大きな問題点となっています。

Green(グリーン)組織

Green組織は「家族」と比喩される組織モデルで、個人の価値観を重要視して意思決定を行う組織です。
階層によるヒエラルキーがありますが、意思決定の場面では現場で働く従業員から意見を聞くボトムアップ型となっており、企業文化や共有価値を育み、守ることを大切にしています。

組織内の最終決定権はマネジメント側にありますが、従業員の個性や多様性が認められる組織となっており、心理的な安全性が担保されやすい点が特徴です。
意見を出しやすい環境になる点がメリットですが、複数のチームを設けて権限を分散させることで、組織内の意見をまとめ上げるのに長い時間を要する点がデメリットとなります。

日本の企業はOrange(オレンジ)組織が多い


ティール組織 ヒエラルキー組織
意思決定 一人ひとりの従業員 社長、上司、管理職、監督などの役職上位者
仕事への取組み方 自発的 従属的
心理的な安全性 保証される 保証されるとは限らない

日本の企業はOrange組織が多いという特徴があります。階級に基づいたヒエラルキーがあり、成果に応じて評価される仕組みです。
リーダーを中心にして活動をしていきますが、リーダーは固定ではなくプロジェクトごとに任命されるケースもあるため、階層構造内で流動的に付与される権限です。

明確なデータに基づく経営計画が掲げられ、目標達成を目指す体制が構築されます。
しかし、実績を残した従業員が出世しやすい特徴があるため、従業員同士の競争による人間関係の悪化や長時間労働の常態化が問題点となっています。
その結果、モチベーションの欠落やアイデアの枯渇を生み出すことにつながり、社会全体で働き方改革による現状の見直しが必要と判断されるようになったのです。

一方、ティール組織には「ホールネス」という考え方があります。
従業員が対等な立場で安心して互いを認め合える状態のことで、心理的な安全性が高い環境です。
精神的な安定性があるため、従業員の幸福度が高まることが予想できます。企業の成長を促すためにも、ティール組織への進化を検討してみてください。

企業がティール組織になるための要素


企業がティール組織を目指す上で重要となる3つの要素を解説していきます。

セルフマネジメント(自主経営)

上司の指示を受けて行動するのではなく、一人ひとりが独自の判断で行動をして成果を上げていくやり方がセルフマネジメントです。
具体的には、人事や経理、企画や営業の業務判断を、チームや個人に任せていく仕組みです。
ただし、リールや意思決定の仕組みがないわけではありません。
状況に合わせて流動的にチームを結成し、ルールを作り上げる点が特徴となっており、一人ひとりが自然とリーダーシップを持てる点が強みとなっています。

しかし、トップや部門ごとに行っていた意思決定を個人やチームで適切に実施できるかが問題です。
そこでティール組織では「助言プロセス」という仕組みが取り入れられています。
専門家や関係者からアドバイスをもらえる制度となるため、助言を役立てながら意思決定をしていきます。

エボリューショナリーパーパス(進化する目的)

ティール組織は、常に進化を繰り返すことが前提となっています。企業のビジョンや具体的なサービスは従業員の意思で進化すべきという考えです。
また、未来を想定して戦略を練り、目標達成に向けて組織全体が動く従来のビジネススタイルとは異なります。

しかし、未来は不明確に変化していくため、予測やコントロールは難しいです。
そのため、ティール組織では事前に入念なプランニングを実施するのではなく、事業計画を推進している過程で対策を発案し、調整していくことが基本的な経営イメージとなります。

ホールネス(自主経営)

ティール組織ではホールネスという考え方があります。従業員同士が対等な立場となって意見を交わせる関係性で、心理的安全性が高い状態です。
それぞれの従業員が背伸びすることなく、本心を伝え、安心して働ける環境となるため、恐れや不安を感じることなくアイデアを出せる状態となります。
積極的な行動がみられるようになれば、成功や失敗を経験しながら成長していけるため、セルフマネジメント能力も自然と身に付くでしょう。
その結果、新しい才能の発見やチャレンジ精神の芽生えといった組織全体の活性化が進む仕組みです。

通常の組織モデルでは、上司から評価される立場になるため、能力や個性、疑問や不安にフタをしてしまう人もいました。
それではホールネスを実現できないため、社内全体で意見を交わせる風土づくりをすることが何よりも大切です。

ティール組織で活動している日本の企業事例


日本にも、ティール組織で活動し進化を遂げている企業が複数存在しています。
ここでは、日本の企業事例を紹介していくので、自社に取り入れられる仕組みがあるかどうかをチェックしてみてください。

独自の評価制度で成長支援と心理安全性を両立

独自の人事評価制度を作り上げたことで、企業の成長や従業員の心理安全性を確保した企業が株式会社ネットプロテクションズです。
新人事制度として「Natura」を導入しています。
Naturaはマネージャー職の代わりに「カタリスト」と呼ばれる役割を作り、社内情報や知識の共有、メンバーの自立や自走を支援する役割を果たします。
従業員間の情報や知識の偏りがなくなり、フラットな組織を作り上げることが可能です。

ホールネスの具体化に成功

フレデリック・ラルー氏による著書で唯一紹介された日本企業が株式会社オズビジョンです。
著書では、「Thanks day」と「Good or New」の2種類の制度が取り上げられています。
Thanks Dayでは、希望者に対して年に1度誰かに感謝をする特別休暇と現金20,000円を支給しています。
Good or Newは、普段仕事で関わりのない人とも会話をする機会を設けるために、毎朝ランダムに少人数のグループを作り、メンバーの長所もしくは24時間以内のニュースを順番に発表していく制度です。

2つの制度はしばらく実施されていないようですが、社内のコミュニケーションが活性化する取組みとなり、ホールネスの具体化に成功している点が特徴となっています。

組織モデルが評価されホワイト企業大賞に選出

人材紹介事業や不動産関連IT事業を行う株式会社UPDATAも、ティール組織の組織モデルを取り入れています。主な特徴は以下の通りです。

  • 給与は従業員全員が参加する会議で決定
  • 役職や肩書きを廃止
  • 労働時間は従業員が決める
  • 従業員の副業や起業推進
  • 社長や役員は年に1回の選挙で決定

独自の組織モデルが評価され、2017年にはホワイト企業大賞に選出された実績があります。

経営者意識の芽生えに貢献

訪日外国人観光客を対象にした旅行手配業やホテル業を手掛ける株式会社フリープラスでは、社長を含めた役職すべての階級を撤廃しました。
事業ごとに存在する本部や部も撤廃し、訪日旅行やホテルマネジメントといったサークル単位で事業を実施しています。

従業員は自由にサークルに所属し、業務内容も自分で決定し、助言ルールを参考にして新規事業の立ち上げにも関われます。
その結果、従業員それぞれに経営者意識が芽生え、コスト増にもつながる残業の減少や意思決定が早まるといった様々なメリットが得られているようです。

まとめ・企業成長を目指すためにも組織モデルを見直してみよう

これまでのヒエラルキーを主体とした組織ではなく、従業員同士フラットな関係性で目標達成に向けて行動していく組織モデルがティール組織です。
セルフマネジメント力が求められますが、従業員それぞれが主体的で能動的な取組みを実施すれば、円滑な運営が可能です。
企業の成長を目指すためにも組織モデルを見直して、事業内容や環境、組織形態に合う仕組みを取り入れてみてください。

創業手帳(冊子版)では、組織マネジメントや経営に役立つ情報を発信しています。企業成長を促進させるための情報も満載なので、ぜひご活用ください。

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(編集:創業手帳編集部)

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