【学生起業の手引き】情熱だけでは成功できない!?学生が起業する手順とポイントを紹介
学生起業のメリットやデメリット、リスクを回避するための注意点とは?成功者の実例と起業したい時にすべきことをまとめて解説
学生起業は、昔から日本でも海外でも行われてきました。多くの若い方が事業を興し、試行錯誤しながら成功を目指してきたものです。ただし、近年では、日本の若者よりも海外の若者の方が活発に学生起業に挑んでいる印象があります。
日本では失敗を恐れ、多くの若者たちが興味を持ちながらも躊躇しているのかもしれません。今回は、企業を目指す学生に対し、学生時代に起業することのメリットとデメリット、注意点を紹介します。
学生が起業するメリット
学生起業は、学生という立場から得られるメリットやチャンスが多いものです。学生が起業するメリットを理解し、起業する際には最大限にメリットを享受しましょう。起業を迷っている学生はメリットについて検討し、一歩踏み出すかを考えてみるのも良いかもしれません。
コスト・リスクが少ない
学生時代の起業では、コストやリスクが社会人になってからよりも少ないことがメリットとして挙げられます。社会人として働き出してから起業を考える場合、現在の本業を辞めなければいけなくなることもあります。これから興す事業が成功するか分からないうちに現職を手放すことは、生活苦に繋がるリスクも。
しかし、学生が起業する場合にはそもそも職業についていないため、本業による収入を失うことはありません。また、養う家族もいないことが多いので、起業に失敗しても家族に迷惑をかけることもありません。
また、学生時代は起業のために大学をフル活用できるため、余計なコストを削減できます。起業仲間との話し合いはカフェテラスを使えますし、構想を練る時間は図書館を利用することが可能です。また、専門知識が必要ならば教授を頼る、OBのつてを探ることもできます。スクールに通いたい場合には学割が利くこともあります。
時間・体力がある
学生時代は、若くて体力があり、社会人より自由な時間が多いため、起業の準備のためにたっぷりと力も時間もかけられます。起業するためには、膨大な準備や手続きが必要ですが、若さで乗り切れることも多いです。
高校生までは難しいですが、大学生になると時間割も自分でコントロール可能です。起業を考えるなら、次年度の選択科目や授業の時間帯を調整して、まとまった時間を確保すると良いでしょう。
将来的に役立つ
学生起業は、将来的にもいろいろな面で役立てることができます。起業に成功し、事業が順調であれば、就職後も副業として事業を回すこともできますし、思い切って就職しないで事業に専念する道も選ぶことが可能です。
起業家人脈を作れる可能性も高く、優秀な起業家と知り合うことでビジネスの力も磨かれます。ずっと経営者として生きる上でも大切ですし、会社員になった上でも大切な力となるでしょう。
失敗しても経験とみなされる
学生時代の起業は、失敗してもいくらでもやり直せますし、経験としてプラスに捉えられることが多いものです。そもそも学生時代に起業すること自体が素晴らしいとされ、成否についてより、経験値に注目が集まります。就職する場合にも、失敗経験でさえプラスの影響を及ぼすことも多いものです。
また、実際に起業によって他人よりも早くビジネスに触れる機会を得ることで、早い段階でビジネスの感覚が身に付き、社会に出てからも経営者としての目でモノを見ることができるようになります。
学生が起業するデメリット
学生時代に起業をすることは、メリットだけでなくデメリットもあります。学生時代という貴重な時期を無駄にしないために、起業のデメリットも理解しておきましょう。また、どうしても学生起業を目指すなら、デメリットを知った上で回避、もしくは軽減できる方法を検討することも大切です。
経験や専門知識がない
学生が起業する際にデメリット、ハードルとなるのが、知識や経験の少なさです。社会人経験もなく、まだ専門知識も少ないため、それが原因で失敗をすることがあります。
社会課題の解決をしたい、社会に役立つ商品のアイデアがあると考えても、周りの大人からすると学生の浅知恵と思われてしまうこともあります。また、学生のアイデアにきちんと耳を貸さない大人も多く、事業への協力を求めても未熟さを理由に検討の余地なく断られることもあります。
学業との両立が困難
学生の本分は学業ですが、一度起業を志すと、やるべきことが多すぎて学業が疎かになることもあります。起業準備から経営を軌道に乗せるまでは、学生や社会人など身分に関係なく、膨大な時間がかかるものです。
学生時代は時間がたっぷりあるとはいえ、授業を受ける、レポートを書く、試験勉強をするなど、勉強時間を確保すべき必要があります。それをおろそかにして起業に打ち込むのは少し話が違うかもしれません。
友達と過ごす時間が少なくなる
大学は学び、そして一生の友人を作る大切な場です。しかし、起業をするとなると、友人とゆっくりと過ごす時間も事業に費やすことが多くなります。同じ志を持つ一部の仲間と濃い時間を共有することも有意義です。
しかし、現代の大学生らしく気楽に友人とたわいもない話をし、サークル活動や恋愛、バイトを楽しむ時間を持たなかったことを、ふと振り返って残念に思うことがあるかもしれません。
資金調達が行いづらい
資金調達がしにくいのも、学生起業が困難であることの主な原因です。ビジネスではある程度のまとまった金額が初期費用として必要です。しかし、銀行融資は経験のない学生には難しく、主にアルバイトで稼いだ資金や貯金が元手になります。
とはいえ、バイトも学業とのバランスを崩すもとになるため、セーブして行うことが大切です。近年ではクラウドファンディングなど、資金調達の方法は柔軟で幅広くなりましたが、実際に必要な金額を不足なく集めるのは大変です。
学生起業の実例
学生時代に起業した例は、日本でも世界でもあります。かの有名な企業の代表者が学生起業家だったケースも多いので、代表的な事例をいくつか紹介します。メリットもデメリットもある学生起業ですが、実際に苦労を経て成功を収めた人々の事例を知ることで、メリットデメリットの実感がよりリアルに沸くかもしれません。
江副浩正
江副浩正氏は、大学サークルの延長として大学新聞の広告会社を興し、その後「リクルート」として年商数千億の大企業への成長させた学生起業家です。東大教育学部で心理学を専攻し、その考えを経営にも生かし、人材の採用に力を入れることで業績を伸ばしました。最終的にはかの有名な「リクルート事件」で有罪判決を受けましたが、その功績は伝説となっています。
孫正義
孫正義氏は、たくさんの専門家、企業との交渉を行い、多く試行錯誤を繰り返した学生起業家のひとりです。成功をつかむことに貪欲で、実に高校生時代から起業への道を探っていました。
高校時代に塾を立ち上げようとして断念し、その後渡米、大学のキャンパスでの食堂が彼の最初の事業でした。そこで友人に売上をごまかされる憂き目を経験し、廃業という最初の失敗を見ます。さらにそれからスピーチシンセサイザーの権威の元で、音声機能付き電子翻訳機の開発を行い、紆余曲折を経て1億円の特許契約金を手にしました。
1億円を元手にゲームのリース販売事業を起こしたのち日本へ帰国、コンピュータ卸売事業を興し、「日本ソフトバンク」を設立します。社長就任や退任、復帰を経て、2020年時点でもなお、ソフトバンクグループの代表取締役会長兼社長として第一線にいます。
ビルゲイツ
ビルゲイツ氏は、アメリカの起業家で、ソフトウェアメーカー「マイクロソフト」の共同設立者です。ハーバード大学在学中に友人とともに「マイクロソフト」を設立し、IBM社のPC向けOSの開発を経て、OS「Windows」を発売しました。「Windows」はOS市場の圧倒的なシェアを占めました。また、「Microsoftoffice」やWEBブラウザ「Internetexplorer」も有名です。
ビルゲイツは数十年に渡ってマイクロソフトの会長職を勤め、個人資産世界一を誇る資産家となりました。慈善団体「ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団」のオーナーでもあります。
マークザッカーバーグ
マークザッカーバーグ氏は、ハーバード大学在学中に、世界最大のSNS「Facebook」を運営する「Facebook,Inc.」を創業しました。同級生とともに立ち上げた「Facebook」は、もともとはハーバード大学の学生交流サービスとして始まり、アイビーリーグの学生たちへ開放、のちに世界中の誰でもメールアドレスを使って利用できるようになりました。現在も、同社の会長兼CEOとして活躍されています。
学生が起業する際の注意点
学生が起業して成功した例は、日本にも世界にもありますが、成功者にも失敗経験はありました。学生起業はメリットもありますが、注意深く進めていかないと大きなリスクを負う可能性もあります。学生が起業する上で、気を付けたい点を紹介します。事前に確認しておき、余計な手間やリスクを抑えましょう。
(未成年の場合)法的な縛り
未成年者が起業すること自体は、法的にもNGではありません。しかし、成人よりも手続きが多く、煩雑になるため、大学生でも未成年の場合には覚悟してかかりましょう。
まず、発起人になるためには未成年者は親権者の同意が必要です。提出書類としては、同意書や戸籍謄本、本人だけでなく親権者の印鑑証明書が増えます。
実現可能な資金調達方法や融資元を探す
資金調達の正攻法は金融機関の融資ですが、クラウドファンディングや自治体の制度融資、ベンチャーキャピタルなども視野に入れましょう。また、いずれの方法にせよ、融資を申し込む際には、事業計画書を作成し、興そうとしているビジネスが実現可能なことを示すことが必要です。
学生起業では初期費用が抑えやすいため、手元にある貯金の範囲でスタートし、実績が出てから資金調達を再考するといった段階を踏むのも良いでしょう。
口座開設・各種届を忘れずに
事業を興すにあたっては、口座の開設や法務局や税務署への届け出が必要です。たくさんの書類が必要ですが、忘れずに提出しましょう。
会社設立登記は以下のような書類提出が必要です。
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- 登記申請書
- 登録免許税の収入印紙を貼付した台紙
- 登記すべき事項を保存したCD-R.
- 定款
- 取締役の就任承諾書
- 払込証明書
- 印鑑(改印)届出書
また、登記後は以下の届け出が必要です。
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- 法人設立届出書
- 青色申告の承認申請書
- 給与支払事務所等の開設届出書
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
- 棚卸資産の評価方法の届出書
- 減価償却資産の償却方法の届出書
会社設立の手順についてはこちらでも詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
この他、従業員を雇う場合には保険関連の手続きが必要です。
遊び気分で始めない
学生であっても起業すればさまざまな責任を負うことになり、場合によっては負債を負う可能性もあります。そのため、遊び半分やノリだけで起業を考えるのはとても危険です。中途半端な気持ちで始めると、途中でつまずいた時にも諦めやすくなります。起業の表面上の華やかさしか見ていない、ノリで起業しようとしている人はいま一度、冷静に考え直しましょう。
起業を成功させるためのポイント5つ
注意すべき点も押さえた上で、起業を成功させるためのポイントを見ておきましょう。学生が起業するにはリスクもありますが、しっかりと一歩ずつ進めていけば、着実に成長できます。
スモールスタート
学生が起業する場合には、そもそもコストを抑えることができそうですが、その中でも支出もリスクも最小限に抑えることを目指しましょう。最初のステップでは、設備や環境をベストまで整えることは考えず、あるものを使う、固定費をかけない状態で始めることをおすすめします。
特技や好きなことを事業にする
まだ経験や知識も浅い大学生が起業する場合には、自分の得意な分野や好きなことを事業にすると比較的有利に進められます。いきなり知らない分野や業種に手を出すのは、市場判断も予測見極めもできず不安です。
そこで、自分が得意な分野でアイデアを出す、自分の好きなことを深掘りし、ビジネスにできそうなことを探ることをおすすめします。市場と乖離してはいけませんが、得意分野や好きなことであれば、熱中できますし、ちょっとやそっとでは挫折しにくくなります。
信頼できる相談相手と仲間集め
契約や法務関連、経理やリスクマネジメントなど、学生には未経験で、知らないことも多いものです。そうした不足した面を相談できる相手や仲間を作ることもビジネスを成功させるための大切なポイントです。経験と知識をもとにアドバイスをもらえるネットワークをあらかじめ作っておくと、いざという時にスムーズに相談に乗ってもらえます。
身近なコンセプト
経験値の少ない学生が起業するなら、学生に興味のある分野や自分たちがほしいと思えるサービスを中心に検討することをおすすめします。学生をターゲットにすれば、同じ視点で展開でき、友人にレビューしてもらうことも可能です。また、友人たちのネットワークを利用し、リサーチから販路開拓までスムーズに進められます。
徹底した下調べ・下準備
学生に足りないのは経験と知識だとしたら、それを補う努力も必要です。大学の授業やイベント・起業サークルを活用するのも良いですし、外部のビジネススクールやオンラインサロンを利用したり、セミナーに参加したりすることも良いでしょう。
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学ばずに起業することも可能ですが、下準備や下調べをしてからの方が自信をもって事業を進められますし、いざという時に大胆に舵を切れるかもしれません。
まとめ
大学在学中に学業の傍らで事業をスタートする学生起業。学生時代の起業は、失敗しても成功しても、一つの経験として認められますし、自分自身にとっても非常に有意義な経験となります。
本気で取り組みたい若者にとって、学生起業はやる価値のある試みです。過去にも、大きな偉業を成し遂げた学生起業家がいました。ただし、学生起業はメリットも多い反面、デメリットもあることを忘れてはいけません。特に事業を興すにはお金が絡むため、慎重に進めて失敗を最小限に抑える努力が必要です。
リスクを回避し、起業を成功させるためには、ポイントを押さえ、慎重に一歩ずつ進めることが大切です。場合によっては専門的な知識や経験を持つ人のアドバイスや自ら進んで学びにいくことも必要となります。
学生起業は、多くの大学生がサークルに恋愛にと遊んでいる間にコツコツと自分たちだけで進めていかなければならない過酷さもあるものです。それでも、乗り越えるやる気や根気、情熱があるならば、そのチャレンジはきっと何らかの実を結ぶことでしょう。
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(編集:創業手帳編集部)