消費税の中間納付(中間申告)について解説!対象や納付する時期、計算方法を知ろう
消費税の中間納付を活用して納税の負担を分散させよう
消費税の課税期間は1年が原則とされていますが、中間納付制度が設けられており、場合によってはその制度が適用されるケースがあります。
税金を負担することに変わりはありませんが、複数回に分けて納付することで資金繰りの見通しが立てやすい点がメリットです。
今回は、消費税の中間納付について、対象となる企業や納付時期、計算方法などをご紹介していきます。
中間納付で消費税を納付したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
この記事の目次
消費税の中間納付とは?
消費税の課税期間は原則1年となっていますが、中間納付はその期の消費税の一部を事業年度の途中で申告・納税することを言います。
簡潔に言うと、消費税の前払いが可能となる制度です。
消費税の中間納付を行った企業では、決算や確定申告等で税額が調整されることになりますが、そこで控除し切れない残額は還付を受けられるといったメリットがあります。
安定した税収を行うために施行された制度のひとつです。
消費税の中間納付が対象となる企業
中間納付が対象となるのは、いくつかの要件があります。ここでは、対象となる要件についてご紹介します。
前事業年度の消費税年税額が国税のみで48万円以上
消費税の中間納付の対象になるのは、まず前事業年度の消費税年税額が国税のみで48万円以上となった企業です。
消費税は国税と地方税を一括して納付することになりますが、中間納付が対象になるのは国税のみとなっています。
スーパーやコンビニなどで買い物をすると、食品には軽減税率が適用されるため消費税は8%になりますが、食品以外の商品は10%です。
なお、ここで発生する消費税には国税と地方税を合わせた税率となっています。
軽減税率8%の場合、このうちの6.24%が国税、1.76%が地方税とされており、10%では国税が7.8%、地方税が2.2%です。
この税率は「地方税額=国税÷78×22」で計算できます。
前事業年度分の課税売上が1,000万円を超える企業かどうかを基準にして対象かどうか判断することも可能です。
個人事業主も対象に含まれる
中間納付は、法人だけでなく個人事業主も対象に含まれます。本来、個人事業主は前々年の課税売上高が1,000万円を超えた場合に消費税の納税が必要です。
しかし、個人事業主でも前年の確定消費税額が国税のみで48万円を超えた場合は、中間納付の対象になります。
確定消費税額は、確定申告で確定した消費税の年税額のことです。
修正申告や期限後申告を行った場合や厚生・決定が行われた場合も、確定した消費税の年税額によっては中間納付の対象になります。
48万円以下でも任意で中間納付することは可能
消費税年税額が国税のみで48万円に満たず、中間納付の対象になっていない企業でも、自主的に中間納付を行える任意の中間納付制度もあります。
任意の中間納付を行うには、「任意の中間申告書を提出する旨の届出書」を課税期間開始日より6カ月以内に所轄の税務署長に提出しなければなりません。
任意で中間納付する場合には、中間納付税額は直前の課税期間の確定消費税額の12分の6、または仮決算における中間申告税額となります。
6月中間申告対象期間末日の翌日より2カ月以内で中間申告書を提出し、納税する流れです。
中間納付の適用を受ける場合は、これに併せて地方税の中間納付税額も納付しなければなりません。
消費税の中間納付ができる回数や時期
消費税の中間納付は、回数や時期が決まっています。ここでは、中間納付できる回数や納付時期をご紹介します。
中間納付できる回数
中間納付できる回数は、前事業年度または前年度の確定消費税額によって変わります。確定消費税額によって、以下のように回数が決められています。
-
- 48万円~400万円以下:年に1回(前年確定消費税額の12分の6を納付)
- 400万円~4,800万円以下:年に3回(前年確定消費税額の12分の3を納付)
- 4,800万円を超える場合:年に11回(前年確定消費税額の12分の1を納付)
このように、中間納付できる回数は、年に1回、年に3回、年に11回のいずれかとなっています。
中間納付税額も回数に応じて変わるため、自社がどれに該当するかよく確認しておかなければなりません。
納付時期が近づいてくると、税務署より納付書及び中間申告書が送付されます。
課税期間や納付時期
納付時期は、中間納付の回数によっても異なりますが、各中間申告の対象となる課税期間末日の翌日から2カ月以内が原則です。
仮に年度の締め日が3月31日とした場合、課税期間は4月1日~3月31日となるので、納付回数に応じて以下のようになります。
中間納付の納付時期 | |
納付回数 | 納付時期 |
年1回 | 10月1日~11月30日 ※前期の課税期間末日を9月30日とした場合(事業年度を6月で区分した場合) |
年3回 | 1回目:7月1日~8月31日 2回目:10月1日~11月30日 3回目:1月1日~2月28日 ※3回分の課税期間末日が6月30日、9月30日、12月31日とした場合 |
年11回 | 1回目:7月末(4月分) 2回目:7月末(5月分) 3回目:8月末(6月分) 4回目:9月末(7月分) 5回目:10月末(8月分) 6回目:11月末(9月分) 7回目:12月末(10月分) 8回目:1月末(11月分) 9回目:2月末(12月分) 10回目:3月末(1月分) 11回目:4月末(2月分) |
年11回の納付では、4月・5月が確定申告の時期と重なるため、納付も同時期となります。
それ以外は、基本的に各中間申告の対象となる課税期間末日の翌日から2カ月以内となっています。
創業手帳オリジナル「税金カレンダー」で、税金の支払いタイミングを把握しておくことができます。無料で使えるアイテムですので、是非ご活用ください。
個人事業主と法人で納付期限が異なる
納付時期については、個人事業主と法人とで異なります。法人の場合、原則として各中間申告の対象となる課税期間末日の翌日から2カ月以内が納付期限です。
これは個人事業主でも同様ですが、例外もあります。個人事業主の場合、中間納付の納付期限は以下のようになっています。
-
- 1月~3月分:5月末日
- 4月~11月分:中間申告対象期間末日の翌日~2カ月以内
ただし、上記は中間納付の回数が年11回の場合となっています。
また、法人で消費税の確定申告期限の延長特定が適用となっている場合には、中間納付の期間が異なる可能性があるため、事前に確認が必要です。
消費税の中間納付額の計算方法
中間納付額を計算する際には、予定申告方式と仮決算方式の2種類で行えます。
予定申告方式
予告申告方式とは、全事業年度または前年の消費税額に基づいて計算する方法であり、申告回数に応じて分割して計算します。
主に税務署によって行われる計算方法のため、管轄の税務署より送付される納付書に記載されています。
書類に必要事項を記入し、納付書を用いて納税すれば、事業者が自ら中間納付額を計算する必要がありません。
申告書を作成する手間もかかりませんが、業績によっては後述する仮決算方式よりも中間納付税額が大きくなる可能性もあるため、注意が必要です。
なお、納付書とともに送付される「地方税及び地方消費税の確定申告書」は別途提出する必要があります。
仮決算方式
仮決算方式とは、中間納付を行うごとに決算処理にて納税額を算出する方法です。
納付回数が多くなるとその分事業者の負担は増えてしまいますが、実際の利益をもとにして納税額を明確に計算できるため、正確性が高まります。
本決算と同様、消費税及び地方消費税の確定申告書を作成して計算する流れです。業績によっては、中間納付税額の軽減も期待できます。
一方で、算定した中間納付税額がマイナスになったとしても還付を受けることはできません。
予定申告方式に比較すると申告書作成の手間がかかるのに加え、簡易課税制度が適用になるとさらに負担が増える可能性もあります。
消費税の中間納付を仕訳する方法
消費税の中間納付を仕訳する方法としては、税抜処理と税込処理の2つがあります。ここでは、税抜処理と税込処理でそれぞれ中間納付を仕訳する方法をご紹介します。
税抜処理の場合
税抜処理は、取引時の費用から消費税のみを分けて処理する方法です。
基本的には、預かった消費税を仮受消費税、支払った消費税を仮払消費税という区分で分けて決算時に相殺し、その差額を未払消費税として翌年に繰り延べます。
税抜処理を適用しているのであれば、仮払金または仮払消費税などの勘定科目で計上します。
税抜処理のメリットは、消費税が損益に影響しないことや、税率が変動したとしても対応できること、資産購入に関連する課税が軽くなることなどです。
ただし、その分仕訳が煩雑になる可能性もあるので注意が必要です。
税込処理の場合
税込処理は、取引時の費用から消費税を組み入れて処理し、決算の際に精算する方法です。
中間納付をした場合、税込処理ではすべて租税公課勘定を利用して仕訳していきます。
原則として決算時の精算の仕訳をする必要はなく、申告書を提出した事業年度に経費計上する流れとなっています。
税込処理は仕訳が少なくて済む点がメリットです。
しかし、消費税が損益に影響すること、税率の変動で過去の数値との比較がしにくくなること、資産購入に関連する課税が重くなってしまうなどのデメリットもあります。
消費税の中間納付する方法
中間納付は、申告書の作成・提出を経て、消費税の納付を行う手順で進めます。予定申告方式で手続きを進める場合は、税務署から送付された申告書を利用します。
仮決算方式で進める場合は、申告書を新たに作成しなければなりません。国税庁のホームページから申告書をダウンロードできます。
中間申告書は管轄の税務署に提出する必要がありますが、管轄の窓口だけでなく、郵送での提出や、e-Taxでの申告も可能です。以下では、消費税を納める方法をご紹介します。
消費税を納める8つの方法
消費税を納める方法としては、以下の8つの方法が可能です。ここでは、消費税を納める方法をご紹介します。
1.e-Taxによるダイレクト納付
電子納税の一つで、e-Taxによる簡単操作で納税ができます。e-Taxの開始届出書とダイレクト納付利用届出書を提出すれば、預貯金口座の振替で納付が可能になります。
中間納付の申告もe-Taxで行っている方や、日付を指定して納付したい方などはこの方法がおすすめです。
2.振替納税
振替納税は、振替依頼書を提出することで、金融機関の預貯金口座からの振替にて納付する方法です。
個人事業者の消費税及び地方税が対象となっている点に注意してください。特に消費税の確定申告書を毎年提出しなければならない方にとって便利な納付方法です。
3.ネットバンキングからの納付
インターネットバンキングを活用した納付方法です。
e-Taxの開始届出書を提出していて、インターネットバンキングやモバイルバンキングの契約を交わしている場合に利用できます。
申告をe-Taxで行っている方や、普段からネットバンキングもしくはモバイルバンキングを利用している方におすすめです。
4.クレジットカード納付
納付税額が1,000万円未満で、インターネット上での手続きに限りクレジットカードでの納付が可能です。
納付時には決済手数料がかかりますが、クレジットカードがあればすぐ納付できるため、手軽に消費税の納付を行いたい方におすすめです。
5.アプリ納付
スマホアプリを活用して消費税を納付する方法です。納付税額が30万円以下で、スマホアプリの決済サービスを利用できる方のみ利用できます。
対応税目は全税目となっているので、消費税の納付でも問題なく利用できます。
6.コンビニ納付(QRコード)
QRコードを使って、コンビニにて納付することも可能です。コンビニ納付用のQRコードを持っている方は、最寄りのコンビニの窓口にて消費税の納付ができます。
金融機関や税務署が遠方にある方にとって、便利な納付方法となっています。
7.コンビニ納付(バーコード)
同じくコンビニ納付の方法として、バーコードを読み取って行う方法もあります。
QRコードではなく、バーコード付きの納付書を持っている方は、この方法での納付が可能です。
管轄の税務署からバーコード付の納付書が送付されるケースがあるので、その場合に利用できます。
8.窓口納税
管轄の税務署や、金融機関の窓口にて直接消費税を納付する方法です。納付書があれば税務署または金融機関の窓口で納付できます。
上記の方法での納付ができない方におすすめの方法です。
消費税の中間納付で気を付けたいこと
最後に、消費税の中間納付で注意すべきことについてご紹介します。
期限までに申告書を提出する
まず注意しておきたいのが、中間納付の申告期限です。
予定申告方式であれば、納付時期が近づくと申告書が送付されますが、仮決算方式で手続きする場合は期限までに申告書を提出しなければ予定申告方式での消費税額となってしまうからです。
罰則がある訳ではありませんが、仮決算方式で申告したいのであれば、期限内に中間申告書を作成し提出するようにしてください。
消費税の納付が遅れないようにする
消費税の納付も、あらかじめ時期が決められています。納付期限が過ぎてしまうと、納付した日までの延滞税が課せられることになります。
期限後申告書または修正申告書を提出した時点で納付税額がある場合や、更生または決定の処分を受けた時点で納付税額がある場合も延滞税が課せられる対象です。
国税・地方税の合算にかかり、納付期限の翌日から発生するので注意してください。
納付期限の翌日から2カ月までは年7.3%、それを超えると年14.6%の利率が加算されるため要注意です。
まとめ・消費税の中間納付は資金繰りの改善に役立つ!
消費税の中間納付は、年に複数回の納付に分けられることで安定した経営を維持するために役立ちます。
中間納付の対象は要件がありますが、対象になっていなくても申請すれば中間納付が可能です。
資金繰りの見通しを立てたい企業や個人事業主は、検討してみても良いでしょう。
大好評!創業手帳オリジナル「税金カレンダー」無料配布中!是非ご活用ください。
(編集:創業手帳編集部)