「SaaS」「PaaS」「IaaS」のメリット・デメリット・違いを知っていますか?
業務用クラウド利用に必要な基礎知識「SaaS」「PaaS」「IaaS」をわかりやすく解説
クラウド利用による業務システム構築に必要な「SaaS」「PaaS」「IaaS」正しく理解できていますか?
インターネット上のクラウドサーバーを利用し、業務用システムを構築していく中で、必ずと言っていいほど目にするのが「SaaS」「PaaS」「IaaS」といった分類です。
しかし、これらを正しく理解し、区別できていないという方もまだまだ多いのではないでしょうか。
本記事では、クラウドの利用や検討に欠かせない「SaaS」「PaaS」「IaaS」の違いやそれぞれのメリット・デメリットについて、具体例を踏まえながらわかりやすく解説します。
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この記事の目次
「SaaS」「PaaS」「IaaS」の概略・違い
「SaaS」「PaaS」「IaaS」はクラウドで提供しているサービスの種類を表しています。クラウドとは、インターネット上のサーバー(コンピュータ)群のことで、高機能な処理を実現します。
そもそそも●aaSって何?
「●aaS」は「● as a Service」が正式な表現で、「本来は製品(システムやソフトウェアなど)として提供している●をサービスとして提供する」という意味です。ここでの「サービス」は日本語で言うサービスとは少しニュアンスが違い、「丸ごと買う」のではなく「必要な時に必要な分だけ利用し負担する」というニュアンスです。
例として、自分の髪をカットしたりセットしたりすることを考えてみましょう。この目的のために美容室を買ったり美容師を雇ったり人は(一般的には)おらず、美容室に行って1~2時間ほどカットやセットをしてもらうはずです。利用者は、雇い主のように美容師の給料支払い、スキルアップ、体調などの細かいことを気にせず、利用したい時に必要なお金を支払えば手軽に美容サービスを受けています。
これと同様に、●aaSではある目的の達成に必要なサービスを所定の料金を支払うだけで得られるようにしようという考えです。この場合、利用者はサービスを利用できるだけで、自社保有のシステムのような所有権は持たず、自由なシステムの拡張や変更なども制限されます。
これが●aaSの概略ですが、ここでSaaSやPaaS、IaaSの違いについて簡単に紹介します。
それぞれのサービスの主な違い
各クラウドサービスの主な違いは次のようになっています。
SaaS | PaaS | IaaS | |
---|---|---|---|
提供サービス | ソフトウェア | プラットフォーム | ITインフラ |
主な利用者 | すべての従業員 | アプリ開発者 | システム構築技術者 |
利用難易度 | 低 | 中~高 | 中~高 |
コスト | 低 | 中 | 中~高 |
ここでの「提供サービス」も非ITの人にとっては理解しにくい部分だと思いますので、簡略化したイメージ図を載せておきます。
まだ「わかったようなわからないような」感じの方も多いのではないでしょうか。もう少し違いが明確になるよう、それぞれについて具体的に説明していきます。
SaaS
まずはクラウドサービスの多くを占めるSaaSについて紹介します。
SaaSとは
SaaS(サースまたはサーズ)は「Software as a Service」の略で、ソフトウェアの機能をサービスとして提供します。ここで言うソフトウェアとは特定の目的を達成するためのアプリケーションのことで、表計算ソフトやメールアプリ、ビデオ会議ソフトなど種類もさまざまです。
SaaSでは、Web上に準備されているサービスを利用することで目的を達成できるため、アプリケーションのインストールが必要ありません。また、サービスを従業員に提供するために自社でサーバーを保有する必要もなくなります。アプリケーションの更新もベンダー(サービス提供元)側で自動的に行われるため、システム管理者の負担が大きく軽減されます。
SaaSのメリット
SaaSのユーザー企業(SaaSを導入する企業)の一般的なメリットとしては次のようなものがあります。
- SaaSのメリット
-
- インストール不要ですぐに導入できる
- ライセンスを必要数だけ購入できる(人数増に備えて多めに購入する必要なし)
- 支払いが月々になる(導入費用の全額を経費にできる)
- インターネット接続があればいつでもどこからでも利用できる
- システム管理・運用の手間が省ける
- 解約したい時も、アンインストール作業なしですぐに解約できる
- セキュリティ対策の多くをベンダーに任せられる
SaaSでは、基本的にユーザーは利用者と利用ルール、コスト、利用するデータのみを管理するだけでよく、その他はベンダーに任せてしまえます。そのため、社内に専門知識のあるエンジニアが不足している場合でも導入しやすいです。
SaaSのデメリット
ユーザー企業における、一般的なSaaSのデメリットには次のようなものがあります。
- SaaSのデメリット
-
- ベンダー側のトラブルやメンテナンス時にサービスが使えなくなる場合がある
- カスタマイズがほとんどできない
- SaaS間のデータのやりとりが難しい(乗り換えやデータ連係で手間がかかる)
- 月々コストが発生するため、利用が長期になると総コストは高くなる
- セキュリティルールを従業員に徹底させる必要がある
SaaSは低コストで運用・管理も楽になることが多いですが、一方でシステムやサービスに業務を合わせていく必要が生じます。また、いつでもどこでも接続できるため、社内で承認されていないサービスが勝手に利用される「シャドーIT」などへの対策も必要です。シャドーITは、企業側でセキュリティ管理ができていないサービスを使用されるためセキュリティ上のリスクが高まります。
SaaSの代表例
代表的なSaaSには以下のようなものがあります。どれも有名なサービスですので、名前は耳にしたことがあるではないでしょうか。
・Gmail(メールサービス)
・freee(会計ソフト)
・マネーフォワード(会計ソフト)
・Microsoft Office 365(オフィスソフト)
・Dropbox(オンラインストレージ)
・サイボウズ Office/ガルーン(グループウェア)
・クラウドサイン(電子契約サービス)
・Adobe Creative Cloud(デザインソフト)
・Zoom(ビデオ会議ソフト)
・セールスフォース(SFAソフト)
PaaS
次に、PaaSについて説明します。PaaSは開発を行うIT企業向けのサービスという側面が強く、非ITの人にとっては難しい概念かもしれません。
PaaSとは
PaaS(パース)は「Platform as a Service」の略で、アプリケーションが動くためのサーバーやOS、ミドルウェア(データベースソフトやプログラムの実行環境など)などのプラットフォーム(システムの環境)一式を提供します。
プラットフォームと言われると難しく感じますが、身近な例としてスマホアプリを考えてみましょう。iPhone用とAndroid用のアプリが分けられているのは、まさにこのプラットフォームが違うからで、同じアプリでも開発のためのプログラミング言語や内部の構造も違います。
業務用システムでも、自社保有のITインフラや開発環境ではプラットフォームが合わないためにシステム導入やシステム・アプリ開発で不都合が生じるケースがあります。
PaaSは目的とするプラットフォームを安価・スピーディーに調達することができます。そのため、上記のような開発用環境、ITサービスの研修用環境、システムやサービスの検証用環境などが必要な場合に利用できます。
PaaSのメリット
PaaSのメリットは次のとおりです。
- PaaSのメリット
-
- 環境構築のコストや手間を軽減できる
- 環境の複製や配布が容易
- インフラの設計や管理が不要
SaaSと比べるとメリットの数としては少ないと感じるかもしれませんが、上記は大規模なアプリ開発やシステム開発の場合、数週間から数カ月の期間短縮につながる非常に大きなメリットです。
PaaSはWebサービスやSaaSを開発・提供する企業で使われることが多く、今のところ非ITの企業で意識されることはあまりありません。ただし、PaaSではAI利用やビッグデータ分析のための環境も提供されているため、今後は非ITの企業でも積極的に使うようになっていく可能性があります。
PaaSのデメリット
PaaSのデメリットには次のようなものがあります。
- PaaSのデメリット
-
- セキュリティ面に注意が必要
- 目的達成に必要な環境要件を定義・構築できる技術者が必要
- 使い方によっては高コストになる
- ベンダーのトラブル時にはサービスが使えなくなる
- トラブル時に、顧客に提供しているサービスも止まる可能性がある
PaaSでは、システムやサービスの開発・提供に必要なプラットフォームを準備してくれますが、プラットフォーム上で動作するシステムの設定や、内部に保存するデータの管理はすべて利用者の責任となります。そのため、適切な設定ができていないと情報漏えいなどが生じるリスクがあります。
また、ベンダー側に電源障害や通信障害が発生した場合には、サービスが停止し、関係者に大きな影響を及ぼします。
PaaSの代表例
代表的なPaaSは、国内のクラウド市場でシェアの高い以下のサービスになります。
・Amazon Web Services(AWS)
・Microsoft Azure
・Google Cloud Platform(GCP)
これらのサービスは、PaaSだけでなく後述するIaaSもカバーします。これらは利用者のニーズに合わせて、さまざまな環境を提供しているものだと理解しておくとよいでしょう。
IaaS
最後にIaaSについて紹介します。
IaaSとは
IaaS(イアースまたはアイアース)は「Infrastructure as a Service」の略で、システムが動くためのインフラを提供します。ここでのインフラとは「コンピュータの基礎となる(物理的な)装置」のことで、ネットワークや電源設備、ストレージ(データの保存用ディスク)、CPU、メモリなどさまざまな種類があります。
SaaSやPaaSの機能だけでは実現が難しい高度なシステムを構築する必要がある場合や、システムに柔軟性を持たせる必要がある場合にIaaSは用いられます。ハードウェアの保管や運用などをベンダーに任せ、システムに必要なインフラの構築に専念できるため、開発期間の短縮やシステム担当者の負担軽減につながります。
IaaSのメリット
IaaSのメリットは次のとおりです。
- IaaSのメリット
-
- インフラ構築のコストや手間を軽減できる
- 環境構築の自由度が高い(インフラ上のプラットフォームやソフトは自由に選べる)
- インフラの運用をベンダーに任せることができる
IaaSもPaaSと同様に開発で利用されることが多いですが、非ITの企業でも基幹システムをクラウドに移行するなどのケースでは利用を検討する可能性があります。やはり大規模なシステムになるほど開発期間やコストの圧縮に大きな効果が期待できます。
IaaSのデメリット
IaaSのデメリットには次のようなものがあります。
- IaaSのデメリット
-
- セキュリティ面の責任範囲に注意が必要
- インフラ構築に知識のある技術者が必要
- 使い方によっては高コストになる
- ベンダーのトラブル時にはサービスが使えなくなる
- トラブル時に、顧客に提供しているサービスも止まる可能性がある
IaaSでは、インフラの保守や運用以外はすべて利用する企業の責任となるため、トラブルなく効率的にインフラが稼動するようにしなくてはなりません。そのため、高い知識と技術を持った技術者が必要で、管理負担も大きい点に注意が必要です。
IaaSの代表例
代表的なIaaSは、PaaSと同様に国内のクラウド市場でシェアの高い以下のサービスです。
・Amazon Web Services(AWS)
・Microsoft Azure
・Google Cloud Platform(GCP)
上記以外にも、IaaSは「さくらクラウド」や「IDCFクラウド」といった国内事業者のサービスもあります。国内事業者の場合、データセンターやレンタルサーバーなどを運営してきた事業者がそのノウハウを活かしてサービスを提供しているケースが多いです。国内の事業者はデータセンターが日本国内にあることが多く、国内の利用が主なシステムの場合はレスポンスの高速化も期待できます。
「SaaS」「PaaS」「IaaS」の違いを理解して活用しよう
「SaaS」「PaaS」「IaaS」について理解は深まったでしょうか。もう一度、前出の表とイメージ図を見てみると、よくわかるのではないかと思います。
SaaS | PaaS | IaaS | |
---|---|---|---|
提供サービス | ソフトウェア | プラットフォーム | ITインフラ |
主な利用者 | すべての従業員 | アプリ開発者 | システム構築技術者 |
利用難易度 | 低 | 中~高 | 中~高 |
コスト | 低 | 中 | 中~高 |
それぞれのクラウドサービスは、利用者とベンダーの間の責任範囲や、提供されるサービスの範囲などに違いがあります。クラウドサービスの利用にあたっては、生じている問題をよく考えて、SaaS、PaaS、IaaSの中から適切なサービスを検討しましょう。
(編集:創業手帳編集部)