特許とは?制度の意義と取得方法
特許とはどんな制度か?ビジネス上のメリットや注意点、出願の流れを解説
特許制度は事業を営む上でも、重要となってくることがある制度です。
独自の技術を使って事業を営む企業などは、特許制度を上手に使うことで、ライバルより優位に立ち、ビジネスを牽引できる可能性があります。
必要のない業種もありますが、制度を利用できるのにしていない企業もあるため注意が必要です。
特許権や特許制度の意義や特許権のメリットを解説します。これまで検討したことのない経営者は、自社の事業に関わりがあるかどうか知ることから始めてみましょう。
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この記事の目次
特許制度とは
特許制度とは、発明を保護する制度です。発明をした人に国が特許権を与えることで、発明した技術などを保護し、他の人が勝手に利用することを制限します。
特許制度や特許権について知らない人は、その概要や定義について理解しておきましょう。
特許制度の概要
発明を保護・奨励し、産業の発達に寄与することが特許の目的です。
国が発明を守り、かつ発明した技術を公開し、産業の発達に生かすことも特許制度に求められることとなります。
特許制度では、発明した人が特許の出願を行い、それと同時に出願公開として出願内容が一般に公開されます。
発明を公開する代わりに、一定期間、その発明を独占的に使用することができる権利(特許権)を与えるというのが特許制度の特徴です。
自分の発明を公開されてしまうのは危険な気もしますが、特許を取得することでその発明を他の人や企業は勝手に利用できなくなります。
また、発明を公開するのは、特許制度の持つ意義にもつながる大切なことです。
発明した技術内容を公開することで、多くの人にその技術を知ってもらい、活用してもらうことができます。
もちろん、勝手に使用することはできず、特許を持った人以外がその発明を利用するためには、ライセンス料などを払うことが必要です。
発明を独占的に使用し、ライセンスなどを与えることができる期間は、原則として20年間認められています。
発明の定義
特許制度を理解するためには、発明とはどんなものを指すのか、その定義をはっきりとさせておくことも大切です。
特許制度は、発明した技術を守るものですが、どんなものがその範囲に当たるか知っておきましょう。
まず発明とは、自然法則を利用したもの、創作されたものであることが必要です。自然法則を見つけるだけでなく、それを利用して新しく作り出さなければいけません。
また、技術的思想であることであるとともに、誰が行っても同じ結果を生むことができる、技術は具体的・客観的であることも必要です。
これに当たらないものは、発明として認められることはなく、特許権を得ることもできません。また、類似したものも認められにくくなります。
特許権をとるメリット
特許権と特許制度は、新しい技術などを思いついた人(法人を含む)にとって非常に役に立つものです。
事業で優位に立つこともでき、特許を利用して収益を上げることもできます。こうした特許のメリットを理解し、自社の事業に生かせることがないか考えてみましょう。
市場で競争優位を築ける
特許権は、市場で競合他社との競争に打ち勝つことができる切り札になります。
特許権があることで、その技術を独占することができ、競合に使わせないことも可能となるためです。
特許権を獲得した技術は、独占禁止法の適用にも当てはまらず、発明を独占することができます。
特許を出願すると発明の内容は公開されますが、そもそも市場に製品が新しく投入されると他社は真似しようと研究し始めるものです。
そのため、特許を出願しようがしまいが、いずれ模倣されるリスクはあります。
しかし、自社で特許を取得しておくと、他社が模倣品を出すことを法的に防ぐことができるのです。
具体的には、模倣品を販売された時に差し止め請求をする、模倣品を販売、製造したことによる損害額に相当する金額を請求する損害賠償請求などが可能となります。
もちろん、競合にとってこのような訴えはマイナスでしかないため、競合他社は特許権を侵害しないよう留意して自社製品を製造販売することになるでしょう。
ライセンス料により収益が得られる
特許権は自社でその技術を使用し、製品を製造、販売するだけでなく、ライセンスとしても使えます。
特許を取得した技術を他者に教え、製造や販売する権利を与えて、ライセンスの使用料(ロイヤリティ)を受け取る方法です。
ロイヤリティの支払い方法や契約期間などを取り決めし、ライセンス契約を結びます。ライセンスの主な種類は、専用実施権許諾契約と通常実施権許諾契約です。
ライセンス契約をすれば、自社は製造や販売のコストをかけずに収益を上げられます。
実際に製品を作り販売するのはライセンスを与えた側なので、自社には在庫リスクなどもありません。
「特許取得済み」で技術力をアピールできる
特許を取得した技術によって作られた製品などには、「特許取得済み」や「特許第12345号」などの表示をするようにという規定があります。
表示は義務ではないので、付けなくても罰せられることはありません。
しかし、こうした表示は製品の技術力を裏付けする効果が期待できるため、積極的に付ける傾向があります。
「特許取得済み」の表示があることで、新しい会社や小さな会社でも対外的なアピールとなり、自社の知名度や製品の信頼性を高めることができるでしょう。
特許権で資金調達ができる
特許権を取得すると、製品や自社の技術力が証明されたと見なされ、企業としての信頼度も高くなります。
そのため、金融機関からの融資やクラウドファンディングなどの資金調達でも有利に働くことが考えられます。
特にスタートアップや中小、ベンチャー企業など、企業としての信用度がまだあまりない状態の場合、特許権を取得することでプラスアルファになるかもしれません。
特許出願の流れ
特許のメリットが理解できたら、特許出願を検討してみましょう。特許の出願方法は、取得するためには必須ですが、することが多くて手間や時間がかかり、難関です。
特許出願の準備から審査、出願公開までの流れを解説します。
出願を考える前にやるべきこと
特許の出願前には、特許を受けられるかどうか調査を行い、問題がなかったら特許願という書類を作成します。
事前準備を滞りなく終えておくことで、よりスムーズな手続きができるでしょう。
他の企業にて既に登録されていないか確認
特許前の調査では、すでに同じような技術が登録されていないかを確認することが必要です。
他社がすでに同じ技術が特許を受けていたら、認められません。また、他社の特許技術を勝手に使うと特許の侵害になってしまうため、他社の特許に目を向けることは大切です。
他社の特許の内容は、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)を使って検索できます。ここでは特許公報を無料で閲覧でき、キーワードで検索することも可能です。
さまざまな検索オプションがあるため、調べたい内容に応じて絞込みましょう。
特許願を作成
特許願の様式は、「知的財産相談・支援ポータルサイト」からダウンロードできます。
出願内容によって様式が分けられているので、特許を選択しましょう。用紙はA4を縦で使用します。手書きする場合には、黒色の消えない筆記用具を使うことが必要です。
出願の手順
特許出願は、書類を提出する方法とインターネットで電子出願する方法があります。
書類出願の場合
書類を提出する出願方法としては、直接受付窓口に持参する方法と郵送する方法があります。持参する場合には、特許庁の出願受付窓口で行います。
受付は平日9時~17時までなので、間に合うように余裕をもって出かけましょう。
土日や祝日、年末年始は閉庁します。郵送の場合には、特許庁長官あてに書留、簡易書留、特定記録郵便で送ってください。
出願後に払込用紙が届くので、手数料を納付する必要があります。
インターネット出願の場合
インターネット出願では、ネットを使って電子証明書と専用ソフトで出願します。
電子証明書は事前に購入が必要です。インターネット出願ソフトをインストールし、申請人利用登録をしておきます。
書類はワープロソフトで作成し、インターネット出願ソフトで提出フォーマットに変換し提出します。提出はSSLを利用した暗号化通信で行うので安全です。
金額
出願や登録をする際には、所定の料金の納付が必要です。
出願時には、出願料として14,000円、書類出願の場合にはプラス電子化手数料として1200円と書類一枚あたり700円かかります。
さらに、審査請求の際には138,000円と請求項数あたり4,000円が必要です。
登録時には、特許料として2,100円と請求項数あたり200円を3年分支払います。その後も3年後から特許料が3年ごとに発生します。
出願後の流れ
特許の出願が済んだら、それで終わりではありません。特許は出願しただけでは審査してもらえず、話が進まないため注意しましょう。出願後の流れを解説します。
審査には別途「審査請求」が必要
特許の審査は出願後に「出願審査請求書」を提出しなければ行われません。
請求書を送付すると、出願が審査の順番待ちに入ります。審査請求書も特許願と同じサイトからダウンロードが可能です。
審査には時間がかかり、何らかの通知が来るまでに平均で9.5カ月ほどと言われています。
拒絶理由通知が来ることも
審査請求を出し、審査が行われたとしても、登録されるとは限りません。登録できない場合には、拒絶理由通知が届きます。
登録できない理由が書かれているので、出願した人はそれに対して意見書を提出したり、手続補正書でその理由を解消したりといった対策をします。
出願公開
出願した内容が公開されるのは、出願日から1年6カ月経過後です。特許庁の発行する特許公開公報に書類全文がのります。公開は、以下の2つの考え方から行われます。
-
- 同じ内容の出願を防ぐため
- 世の中の技術発展に貢献するため
ただし、権利化されるかどうかとはまったく関係無く、時間の経過で出願内容が自動的に公開されるため、注意が必要です。
特許を出願する際の注意点
特許取得はメリットの多いものですが、出願では注意すべきこともあります。
大切な自社の技術を守り、自社を発展へと導くために、特許出願をする際には注意点にも目を向けましょう。
出願は早い者勝ち
特許を取得できる技術はこれまでになかった新しいものに限られます。
また、出願自体も早い者勝ちで、同じ技術を出願した場合には先に出願した人だけが特許を取得することができます。
そのため、特許の価値がありそうな技術を開発したら、製品化する前に出願することが大切です。
製品化すると技術を模倣する企業も現れますし、先に特許を取得しようとされるかもしれません。
また、無駄足を防ぐために、出願前には特許公報のチェックはもちろん、特許公開公報も見て、同じ内容がないか確認することも大切です。
出願が済むまで発表しない
前述の早い者勝ちのルールがあるため、自社で特許出願を検討している技術の発表は出願が済むまで避けましょう。
出願前に公表した際の救済措置もありますが、あえてリスクを取る必要はありません。大切な技術を他社に奪われ、出願で先を越されないように守りましょう。
取得まで時間がかかる
特許の出願から何かしらの通知が来るまでには10カ月ほどかかります。
研究開発の期間から考えたら、そう長くはないと感じるかもしれませんが、すぐに取得できるわけではないことは認識しておきましょう。
ただし、審査中でも製品に「特許出願中」と提示できるため、アピールの材料にはなりそうです。
まとめ
特許制度や特許権はビジネスに大きな影響を与えることもあるものです。
他社の特許権は自社の脅威になりますし、自社で特許権を取得できれば競合他社を退け、独り勝ちするチャンスも作れます。
また、特許があれば、ライセンス契約によって自社のコストやリスクを抑えて収益を上げることも可能です。
ただし、特許を取得するためには手間と時間がかかります。
また、注意しなければいけない点もあるため、準備は慎重に行いましょう。特に特許出願する技術の内容を他社に知られるタイミングには注意が必要です。
(編集:創業手帳編集部)