雰囲気だけで選んでいませんか?起業して初めてのオフィス選び ‐賃貸オフィス編・内装の巻 その1‐
賃貸オフィスの内装は「機能」と「グレード感」がポイント
賃貸オフィスを選ぶとき、「内装の雰囲気が良さそう!」というふうに感覚に頼って何となく決めてしまいがちだ。
デスクワークであれば、就業時間のうちほとんどをオフィスで過ごすことになる。創業直後のベンチャー企業にとって、オフィスはまさに活動の場。その内装の良しあしは、快適性はもちろん知的生産性にも深く関わってくるので、決して疎かにすることはできない。
オフィスの内装に関しても、実用的な観点からチェックするポイントがいくつもある。そこで、賃貸オフィス選びで内装をチェックする際の注意点について、今回と次回の2回にわたって解説する。1回目は「機能」と「グレード感」という観点から見ていきたい。
1. 起業して初めてのオフィス選び -賃貸オフィス編・不動産会社の巻-
2. 起業して初めてのオフィス選び -賃貸オフィス編・立地の巻-
3. 起業して初めてのオフィス選び -賃貸オフィス編・建物とBCPの巻-
4. 起業して初めてのオフィス選び -賃貸オフィス編・エントランスの巻-
5. 起業して初めてのオフィス選び -賃貸オフィス編・共用部の巻-
6. 起業して初めてのオフィス選び -賃貸オフィス編・水回りの巻-
7. 起業して初めてのオフィス選び -賃貸オフィス編・照明の巻-
8. 起業して初めてのオフィス選び -賃貸オフィス編・空調の巻-
この記事の目次
オフィスの内見はメジャー持参で間取りをチェック
賃貸オフィスの室内を見るポイントは大きく分けて2つ。機能とグレード感だ。
機能面で重要なのは平面形と扉の大きさ、柱の位置と数、それに窓の位置と数など。平面形は間取り図でも確認できるが、扉や窓は図面では確認しにくい。
特に扉は重要で、開口部が小さいと什器が搬入できないといった事態も考えられるし、小さな出入り口は閉鎖的という印象を与えてしまう。
柱も同様で、基本的には室内に柱や梁はないほうがいい。もし柱がある場合は、デスクや什器の配置を想定しながら導線などをしっかりシミュレーションしたい。間取りは変更できないので、入居してから「この柱が邪魔だ」といっても後の祭りである。
また間取り図と実際のサイズが異なっている場合もある。室内に設置を予定している什器や家具のサイズも想定しながら、内見時に室内の各所をメジャーで測っておこう。
- 賃貸オフィスビル「内装」のチェックリスト1
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- 使い勝手の良い平面形か?
- 扉の位置や大きさは適切か?
- 柱の位置や太さ、数は適切か?
オフィスの窓は日光・熱・騒音の入口
窓の位置や数、サイズも重要だ。大きな窓は開放感を与える一方、直射日光や騒音の侵入口になる。
特に日光の影響は大きく、ブラインドなどで遮っても熱は侵入してくる。方角を確認し、南向きや西向きであれば遮熱フィルムの施工が可能か否かなども確認しておこう。
オフィスの床荷重はIT系企業で特に注意
見落としがちだが、床荷重の確認もしておきたい。重量のある品物を扱う業種では特に注意だ。
一般的な賃貸オフィスビルの床荷重は1㎡あたり300㎏~500㎏ほど。重量級の複合機でも150㎏ほどなので、一般的なデスクワークなどなら問題はないだろう。
しかし、例えば、IT系の企業は要注意だ。サーバーは一式で400㎏を超えることも珍しくないからである。床に損傷を与えてしまっては、弁償を請求されないとも限らない。
ビル自体の床荷重が高くても、OAフロア(床の上にネットワーク配線などのための一定の高さの空間をとり、その上に床を設け二重にしたもの)など床がかさ上げされていると荷重が低くなる場合もある。
- 賃貸オフィスビル「内装」のチェックリスト2
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- 窓の位置や数、サイズは適切か?
- 床荷重は何㎏か?
オフィスのグレード感は内装で決まる
良いオフィスビルか否かという判断基準のなかでも、オフィスの内装はとりわけ重要ということを考慮にいれてじっくり物件を選びたい。
もちろん、必要以上に見栄を張ってはいけないし、不相応にグレードの高いオフィス賃料が経営を圧迫するようなことになれば本末転倒だが、「良いオフィスビル」に入居しているという評価は、創業直後のベンチャー企業にとっては大きな信用力にもつながる。
グレード感を見極めるうえで重要なのが、使用されている内装材の質だ。
一般的なオフィスであれば、パネル天井に白い壁、それにグレー系の落ち着いた色合いのタイルカーペットという仕様だろう。日本のオフィスの標準といっていいほど定着しているスタイルだが、一見同じに見えても部材の質や機能は物件によって異なる。
例えばタイルカーペットにしても、耐候性や耐汚性、それに歩きやすさや静音性など、製品によって性能はかなり異なる。
壁紙も同様で、耐汚性があるかないかで汚れやすさは異なってくる。入居時には同じように見えても、数年後に差が出てくる。
とはいえ上級品か否かを見ただけで判断するのは難しい。オーナーや仲介業者によく確認するとともに、内見時に写真を撮っておくことも効果的だ。室内の印象や雰囲気、使用されている部材などを記録しておけば、多物件との比較も容易になるだろう。
オフィスの扉は企業の顔
オフィスの扉も、内装のグレード感を大きく左右する。エントランスがビルの顔なら、扉は企業の顔だからだ。コストがかからない割にグレード感を醸し出す効果が大きいので、扉の見栄えには気を使いたい。
【関連記事】起業して初めてのオフィス選び -賃貸オフィス編・エントランスの巻-
味気ない鉄の扉より凝ったデザインの扉のほうがグレードの高さを感じさせるし、何より訪問者に与える印象が違ってくる。
オフィスの天井の高さはグレードの高さ
オフィスの天井の高さも、オフィスのグレード感をアップさせる重要な要素だ。
一般的なオフィスの天井高は2.6m前後。なかには3m近いものもあるが、中小の既築ビルではほとんど見かけない。高い天井はOAフロアにした際の圧迫感を緩和するという実利的なメリットがあるだけでなく、天井の高い建物は「良い建物」というイメージの高評価につながる。
オフィスの天井が高ければ高いほどグレード感がアップすると考えていいだろう。
- 賃貸オフィスビル「照明」のチェックリスト3
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- OAフロアが採用されているか?
- 天井の高さは何mか
【関連記事(続き)】内装を自分好みに! 起業して初めてのオフィス選び ‐賃貸オフィス編・内装の巻 その2‐
(監修:オフィス経営コンサルタント 久保純一)
(創業手帳編集部)