今注目の農泊とは?始め方・補助金・メリットなどを解説

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農泊ビジネスは農家の新たな収入源になる!


地方の魅力を活かしながら、農業以外の収入を得られる取組として注目を集めているのが「農泊(農山漁村滞在型旅行)」です。
農家が自宅や農地を活用し、都市部から訪れる旅行者に「農業体験」や「地域の食文化体験」を提供することで、地域活性化と収益アップの両立を目指せます。

観光ニーズの多様化により、自然や人とのふれあいを求める旅行者が増えている今、農泊はチャンスの大きいビジネスモデルです。
この記事では、これから農泊を始めたいと考えている人に向けて、具体的な始め方や活用できる補助金制度、そして農泊のメリットをわかりやすく解説します。

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農泊(農家民泊)とは?


農泊とは、観光客が農山漁村に宿泊し、現地の地域資源を活かした食事・体験を楽しむ旅行形態を指します。
元々ヨーロッパでは農村で休暇を取る「グリーンツーリズム」が存在します。
グリーンツーリズムでは休暇に農村や漁村地域を訪れ、自然や文化に触れながら地元の人との交流を楽しむことを目的とした余暇の過ごし方です。
そんなグリーンツーリズムをベースにした農泊は、農林水産省による支援によって2023年度までに全国で計656もの農泊地域が創出されています。

農家民宿との違い

農泊に似ている言葉に、「農家民宿」があります。
農家民宿とは、農林漁業者を含む事業者が旅館業法に基づいて、居宅などで宿泊料を取り宿泊させる施設のことです。
農泊も農家に宿泊することになるため、同じものとイメージする人もいますが、大きな違いとして旅館業法の許可を取得しているかどうかが挙げられます。

農泊が注目される背景

農泊が注目される背景として、単に農家が収入源を得やすくなるだけでなく、地域の様々な課題の解決につながることが期待されている点が挙げられます。
現在、日本では少子高齢化に伴い地方の人口減少や空き家の増加、農地の減少などの問題が浮上しています。
この問題に対して、農林水産省は農山漁村に長期で滞在してもらい、消費を促す「農泊」に着目したのです。

特に、インバウンド需要はこれまで都市部が中心となっていましたが、外国人観光客を地方に呼び込むことでさらなる消費拡大を目指すことも可能です。
こうした農泊の取組によって地方に雇用が生まれ、人口減少や空き家の増加などの地域課題の解決にもつながります。

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農泊を始めるメリット


農家が農泊を始めることで、主に4つのメリットが期待できます。それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。

農業以外の収入源を確保できる

農泊を導入することで、農業以外の分野から収入を得られることが、農家にとって大きなメリットとなります。
農業は季節や気候などの影響を受けやすく、収益が左右されて不安定に陥る場合があります。
安定して収入を得られれば問題ないのですが、それが難しい場合は農泊を取り入れることで農閑期などでもしっかりと収入を確保することが可能です。

また、農泊によって観光客を受け入れることで、運営する畑で採れた農産物の販売促進やブランド化につながる場合もあります。
その結果、収益の多様化を図ることも可能です。

初期投資を抑えられる

農泊を始めるとなると、初期投資にかなりお金がかかってしまうのではないかと不安に感じる人もいるかもしれません。
しかし、農泊の魅力はあくまでも都会では感じられない自然環境や、農業体験・収穫体験など普段は体験できないプログラムなどになるため、高額な設備投資などは不要です。
宿泊スペースも古民家の一部や使っていなかった離れなどを活用することでコストを抑えられ、観光客も地方ならではの風情を感じられるでしょう。

農家が日常的に行っている活動をプログラムに含んで提供できることから、コストを抑えて新たな収入源を確保したい人にも向いています。

地域の活性化につながる

農泊を始めることで地域の活性化につながる場合もあります。
例えば農泊を利用したい観光客が外部からたくさん訪れれば、地域の飲食店や観光施設などなどにも活気が生まれるでしょう。
また、農泊を通じて農業体験だけでなく、その地域ならではの文化や歴史、自然の魅力などを伝えられれば、地域全体のブランド力が向上してさらに観光客の増加も見込めます。

さらに、移住や就農を検討している人がお試しとして農泊を利用し、その地域を気に入ってもらえれば、移住者・就農者の増加も期待できます。

遊休地・空き家を有効活用できる

地方には高齢化や人口減少によって使われなくなった農地・住宅が増えています。
これらをそのまま放置してしまうと、草木が生い茂ったり建物の老朽化が進んだりして地域の景観や安全面に悪影響を及ぼす可能性も考えられます。
しかし、古民家を改修して宿泊施設にしたり、使っていなかった農地を体験型農園として整備したりするなど観光客の受け入れを可能にすることで、地域の活性化や景観保全にも効果的です。

また、既存の遊休地や空き家を活用すれば建設コストを抑えられる点も魅力です。
農泊は、地域のもったいない資源を再び価値あるものとして復活させる取組とも言えるでしょう。

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農泊を始めるデメリット・課題点


農泊を始めることで様々なメリットを得られますが、その一方でデメリットに感じる部分や新たな課題が出てくる場合もあります。
ここで、農泊を始めるデメリットと課題点について解説します。

法規制に遵守する必要がある

農泊を始めるためには、関連する法令・規定について理解し、遵守する必要があります。
近年は農泊の推進に向けて規制緩和も図られていますが、注意しなくてはならないポイントも多いです。

例えば、旅行業法では以下の規制緩和が行われています。

  • 農家民宿は宿泊サービスの一環として送迎輸送や、その一環として行う周遊案内は原則道路運送法の許可対象外となり、道路運送法上の問題はないとする
  • 農家民宿が自ら提供する運送・宿泊サービスに対して、農業体験を付加し販売・広告することは旅行業法に抵触しない

ここでポイントになってくるのが、主体が「農家民宿」である点です。農家民宿の場合、上記でも紹介したように旅行業法に基づいて許可を取る必要があります。

受け入れの準備や清掃などの手間

農泊は農家の日常や地域の自然を提供することが目的となるため、初期コストを抑えやすいというメリットがあります。
しかし、コストは抑えられても受け入れの準備や清掃などの手間がかかってしまうというデメリットもあります。

例えば普段使っていない離れに宿泊してもらう場合、まずは泊まれる環境にするために掃除を行わなくてはなりません。
また、離れに放置していたものを片付けたり、床などに穴が開いていれば補修も必要だったりします。

もし不十分な状態で農泊をスタートしてしまうと、口コミなどで悪評が広まり次につながらない可能性もあります。
このような事態を避けるためにも、しっかりと準備を行った上で受け入れを開始するようにしてください。

収益化の難しさ・季節変動リスク

新しい収入源となる農泊ですが、いざ始めてもいきなり利用客が増えるわけではありません。
特にまだ外部の人からはあまり知られていない地域だと、始めたばかりの頃は収益化すること自体が難しい場合も多いです。
さらに、農泊は各自治体によって料金の設定範囲やルールが決められており、利用客が増えたとしても多額の収入につながらない場合もあります。

また、季節や時期によっては旅行者が増える時期と減ってしまう時期があり、農泊でも閑散期が出てきてしまう可能性があります。

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農泊の始め方・開業手順


実際に農泊を始めるためには、以下の手順を踏んでいくことになります。ここで、どのような流れで農泊を始めればいいのか解説していきます。

1.地域の協議会などに相談する

まずは農泊を勝手に始めるのではなく、地域の協議会など農泊の取りまとめを行っている団体に問い合わせ、相談することが大切です。
地域によって問い合わせ先が異なることから、農林水産省が運営する「農泊ポータルサイト」にアクセスし、「地域協議会等・自治体一覧」から検索して地元の取りまとめを行っている団体を探してみてください。

2.コンセプトやターゲットを決める

次に農泊のコンセプトやターゲットを設定しましょう。
例えばターゲットが若者や家族連れ、外国人観光客など明確になっていると、それぞれのターゲットに適したプログラムを準備することができます。
コンセプトも明確にしておくと、そのコンセプトやこだわりに魅力を感じた利用客から選ばれやすくなります。

3.規定・安全管理など必要事項を学ぶ

コンセプトやターゲットを定めたら、次に農泊を始めるために規定や安全管理など、必要事項を学ぶことも大切です。
例えば、各自治体や協議会ではそれぞれ規定が異なる場合があります。また、宿泊してもらうことになるため、トラブルが起きないよう安全面に十分な配慮が必要です。
自治体や協議会では定期的に、農泊に関するセミナーや研修会なども開催しているため、まずは積極的に参加し、始めるために必要なことを学んでいきましょう。

4.体験プログラムを考える

規定や安全管理などの必要事項を学んだら、提供する体験プログラムを考え、準備に入ります。
例えば米農家が農泊を始める場合、体験プログラムとして田植えや稲刈りといった稲作体験などが挙げられます。
また、野菜を育てる農家なら収穫体験や、畑で採れた野菜を使った料理教室なども体験プログラムとしておすすめです。

普段は農家だけで行っていることを、観光客にもやってもらうにはどのような形でしてもらうのが良いのか、またどのように教えるとわかりやすいのかなどをよく考えた上で、準備するようにしてください。

5.集客・宣伝をする

体験プログラムの準備が完了したら、いよいよ受け入れを開始します。しかし、いくら受け入れを開始してもすぐに利用客が訪れるわけではありません。
ここからは集客・宣伝をして農泊を利用する人を増やしていきます。集客・宣伝方法としてはSNSの活用がおすすめです。

また、民泊系の予約サイトにも登録しておきましょう。
Airbnbなどのプラットフォームに登録すれば民泊や農泊を利用したい人の目に触れやすくなり、予約の増加につながる場合もあります。

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農泊を始める際に活用できる補助金・支援制度


農泊を始める上で補助金・支援制度が活用できる場合もあります。例えば「農山漁村振興交付金(農泊推進型)」です。
農山漁村振興交付金(農泊推進型)は、農泊の推進体制整備や観光コンテンツの開発、Wi-Fiなどの環境整備、人材確保などに使える補助金です。
交付率は定額(最長2年間)になりますが、3つのタイプによって上限額が異なります。

  • 農泊地域創出タイプ:上限500万円/年
  • 農泊地域経営強化タイプ:上限250万円(年基準額×事業期間)
  • 人材活用事業:研修生は上限250万円、専門家は上限650万円

農山漁村振興交付金を受けたい場合は提案書を用意し、賃金や旅費、委託料など経費に関わる必要事項を記入します。
提出期限内に書類を地域の農政局に提出し、審査に通ると選定結果が通知されます。

なお、実際に交付金を受けるためには別途手続きが必要です。
選定結果の通知が届いたら1カ月以内に、農山漁村振興推進計画および事業実施計画を事業承認者へ提出する必要があります。
計画が承認されたら事業に割り当てられる交付金の金額が通知されるので、交付申請書を作成し、農政局に提出しましょう。
交付申請書の審査でも適切と判断されれば、交付が決定となります。

ただし、令和7年度はすでに公募が終了しているので注意してください。
例年通りであれば令和8年度の交付金は2月中旬~3月上旬のスケジュールで公募される可能性があります。

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農泊の成功事例・取組事例


実際に農泊を取り入れ、成功した事例もあります。秋田県仙北市は2008年から魅力的な農山村体験を総合的に推進するために協議会が設立されています。
元々グリーンツーリズムを取り入れており、首都圏の教育旅行の受け入れを積極的に行っていました。
近年では、海外の学生による修学旅行や国際交流団体の訪問を受け入れる取り組みも進められ、農山村地域の国際化が図られています。

そんな仙北市にある「ふる里」という施設では、畑で栽培された農作物が食卓に上がり、採れたて野菜の美味しさを体験できます。
また、翌朝には収穫体験も実施しており、農家の仕事を学ぶことが可能です。
農泊を利用した人にはお土産として自家栽培の野菜をプレゼントしており、その野菜を食べた人が通販サイトで注文することで、直販ルートの開拓にもつながっています。

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まとめ・農泊による収益の多角化で安定した農業経営を実現しよう

農泊は、農業体験や地域の自然・文化を楽しんでもらうことで、農家が新たな収入源を得られる取組です。
遊休地や空き家の有効活用にもつながり、地域全体の活性化にも貢献します。
農産物の販売だけに頼らず、宿泊や体験事業を組み合わせることで、収益の安定化を図ることも可能です。
これからの時代、農泊は「持続可能な農業経営」を実現する有力な手段になると言えるでしょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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