なぜ失注したのか分からないあなたへ!見直すべきポイント7選

創業手帳

失注をただの失注にしないために!失注の原因と対策を考えて、次回の成約につなげよう

せっかく獲得した商談も、「なんとなく」で失注していては成長にはつながりません。特に「なぜ失注したのかが分からない」という状況は、営業活動における最も危険な兆候の一つです。
本記事では、失注の原因を可視化し、次回の成約率アップにつなげるために営業現場で見直すべき具体的なポイントを営業支援・コンサルティング事業を展開する株式会社エッジコネクションの代表大村氏に解説していただきます。

大村 康雄(おおむら やすお)株式会社エッジコネクション 代表取締役
延岡高校、慶應義塾大学経済学部経済学科卒業後、米系金融機関であるシティバンク銀行(現SMBC信託銀行)入行。2007年、株式会社エッジコネクション創業。営業支援業を軸に、現在は人事・財務課題も対応する「営業・人事・財務課題伴走型支援企業」として展開。経営危機を乗り越えた経験を生かし、コンサルティング業や、ラジオYouTubeコラムInstagramなど、各種メディアで発信中。

これまでに1600社以上を支援し、継続顧客割合は平均75%台。地元宮崎でも地域振興に尽力し、延岡市立地促進コーディネーターや延岡デジタルクロス協議会人材支援委員長を務める。
2024年7月、「24歳での創業から19期 8期連続増収 13期連続黒字を達成した黒字持続化経営の仕組み」を出版。

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

失注理由が「わからない」は危険信号

「理由がわからない失注」は、顧客理解や営業プロセスに大きな課題を抱えているサインです。放置していると、同じような失注を繰り返し、成果が出せないどころか、営業チーム全体の士気にも悪影響を及ぼします。

例えば、「商談はいい感じだったのに、なぜか通らなかった」「返信が急に来なくなった」といった状況は、営業自身が顧客の反応を深く分析できていないことを示しています。

こうしたケースでは、ヒアリング力の不足、提案内容のずれ、あるいは決裁者との接点不足など、様々な要因が絡んでいる可能性があります。
まずは、「なぜ失注したのかを把握する習慣」をつけることが重要です。

営業現場で多い!失注の主な原因6つ


失注には明確な原因があります。ありがちな失注要因を整理しておくことで、次の商談での改善ポイントが見えてきます。

1.顧客ニーズの把握不足

顧客が本当に求めているものを正確に理解していない場合、提供する提案が表面的で的外れなものになりがちです。

顧客の課題や理想の状態に対する深い洞察が欠けていると、提案の価値が伝わらず、結果として競合他社に魅力で負けてしまうリスクが高まります。

特にBtoBでは、業界特有の事情やビジネスモデルを理解したうえでの提案が求められます。

2.ヒアリング内容と提案のズレ

ヒアリングで得た情報を的確に反映した提案ができていない場合、顧客は「こちらの話を聞いてくれていない」と感じます。

提案の方向性が顧客の関心や目的とずれていると、どれほど丁寧に作り込んだ提案書であっても心に響きません。

ヒアリングした内容を一度言語化・可視化し、顧客との認識をすり合わせる作業を丁寧に行うことが重要です。

3.競合との比較で魅力が弱い

顧客は複数の選択肢を比較して、最も納得感のある提案を選びます。

そのため、スペックや価格だけでなく、導入後のサポートや信頼性なども含めたトータルでの魅力が問われます。

競合との差別化ポイントが不明確な場合、「価格が安い方にする」といった理由で選ばれないことも多いです。

競合情報を収集し、優位性を明文化しておくことが大切です。

4.価格や納期への配慮不足

顧客の予算感や納期の希望を無視して、自社の都合だけで条件を提示してしまうと、信頼関係を損ねてしまいます。

価格に対する価値の説明や、納期に柔軟に対応する姿勢があるかどうかも判断材料になります。

初期段階で顧客の条件を丁寧に確認し、無理のない範囲で調整する工夫が求められます

5.決裁者にアプローチできていない

担当者と良好な関係を築いていても、最終的な意思決定を行う人物にアプローチできていないと、重要な場面で失注する可能性が高まります。

決裁者に対する説明資料の準備や、間接的な接触の機会を設ける工夫が欠かせません。意思決定フローを早い段階で確認し、戦略的に対応しましょう。

6.信頼構築が不十分

商品やサービス自体の内容が良くても、営業担当者としての信頼感が薄いと、受注にはつながりません。

特に高額商材や長期取引になる場合、「この人に任せて大丈夫か」という視点で判断されます。

定期的な連絡や丁寧なフォロー、課題に対する提案姿勢など、日々の積み重ねが信頼を形成します

失注を防ぐ!営業が見直すべきポイント7選


失注を減らし、成約率を上げるためには、営業プロセスそのものを見直す必要があります。以下の7つのポイントを意識して実践してみましょう。

1.初回商談で課題の本質を深掘りする

表面的な要望だけでなく、「なぜそれが必要か?」という背景や真のニーズを探ることで、刺さる提案が可能になります。

顧客が発している要望の背後には、実際には複数の課題が複雑に絡み合っていることも少なくありません。

初回商談では、単に情報を得るだけでなく、信頼関係の構築や課題の輪郭を一緒に整理する意識が重要です。

そのうえで、提案の方向性を早期に共有し、共感を得られる土台をつくっていきましょう。

2.提案内容と顧客の期待値を一致させる

提案書を作成する前に、顧客が求めている成果やゴールをしっかり言語化しましょう。

ズレがなくなれば、信頼も得られます。例えば、「コスト削減」と言っても、短期的な経費削減を望んでいるのか、業務効率化による人件費の最適化を考えているのかでは、全く異なる提案が求められます。

提案前に「期待のすり合わせ」を行うことが、受注の可能性を大きく引き上げるポイントとなります。

3.競合との差別化ポイントを明文化する

競合優位性を「価格」「納期」「サポート体制」などの軸で明確にしておくと、商談時の説得力が大きくなります。

競合他社の特徴や過去の導入事例などを事前にリサーチし、それと比較した自社の強みを数値や実績を交えて説明できるよう準備しておきましょう。

「なぜ御社を選ぶべきなのか?」という問いに即答できるかどうかが成否を分ける場面も多くあります。

4.価格・納期の交渉力を高める

顧客の状況をヒアリングしたうえで、柔軟な提案ができる体制を持っていることは信頼につながります。

すべての商談が定価通りに進むわけではありません。

価格交渉や納期の相談に対して、可能な範囲でカスタマイズや調整ができるように準備しておくことで、顧客に「こちらの事情を汲んでくれる会社」という印象を与えることができます

組織内の調整力も営業の武器です。

5.決裁者にアプローチする導線をつくる

担当者との関係だけで満足せず、上層部への提案資料・説明機会を作ることで、受注の確度が上がります。

担当者に「この提案は上長にもきちんと説明しやすい」と思ってもらえる資料を用意し、必要に応じて一緒にプレゼンする提案を持ちかけるのも効果的です。

決裁者のニーズや視点は現場担当者とは異なるため、その情報を早めに得ておくことも鍵となります。

6.顧客との信頼関係を段階的に構築する

商談の中で小さな期待に応え続けることで、「この人なら任せられる」という安心感を積み重ねましょう。

例えば、簡単な質問に対しても迅速に的確に返答したり、顧客の業界動向に合わせた情報を定期的に提供したりといった行動が積み重なることで、単なる営業担当ではなく「頼れるパートナー」として認識されるようになります

継続的な信頼の積み重ねが、最終的な意思決定に大きな影響を与えます。

7.失注理由を記録・分析できる仕組みを導入する

SFAやCRMに「失注理由」を選択・記述できる項目を設けることで、チーム全体での改善サイクルを回しやすくなります。

失注が発生した際に、「どのフェーズで・どのような理由で・どのような競合に負けたのか」を可視化し、共有できる仕組みがあれば、個人の経験をチーム全体の学びに変えることができます。

月次での分析会や、失注事例をもとにした成功事例の反転共有など、PDCAをチームで回すことが成果向上につながります。

失注分析に役立つフレームワーク・仕組み


失注をただの「残念な結果」で終わらせないためには、分析の仕組みが必要です。属人化を防ぎ、チームで改善できるようにしましょう。

失注後のヒアリングを習慣化する

「なぜ他社に決めたのか」「改善ポイントは?」を丁寧に聞くことで、次の商談へのヒントが得られます。

ヒアリングでは、相手を責めるような聞き方を避け、あくまで学びを得る姿勢で臨むことが大切です。また、失注理由が「価格」や「仕様」など表面的なものであっても、さらに掘り下げることで真因に近づくことができます。

こうした対話を通じて、顧客との信頼関係を継続する契機にもなります。

失注理由をCRMやSFAで分類管理する

「価格」「競合」「提案内容」など、分類を統一しておけば、集計・分析がしやすくなります。

たとえば、どのフェーズで失注する傾向が強いのか、どの競合に弱いのかといった傾向分析にも活用できます。

全社的に分類基準を明確化し、入力のルールを統一することで、営業マネジメントや戦略立案の精度も格段に向上します。

営業チームでの失注共有ミーティング

月1回でもよいので、失注事例と学びをチームで共有する場を作ると、ナレッジの蓄積と属人化の防止につながります。

共有にあたっては、単なる「失敗談」ではなく、「次はどうすればよかったのか」を含めた改善提案までセットで報告するようルール化すると、実践的な学びが広がります。

成功事例ばかりでなく、失敗事例からこそ学べることは多く、心理的安全性のある共有文化が営業組織の成長を支えます。

【実例から考える】実際にあった失注と改善アプローチ

ここでは、ある営業現場で実際に起きた失注のエピソードと、そこから導き出された具体的な改善策をご紹介します。リアルな事例から、明日から実践できるヒントを見つけてみてください。

例1:決まりそうだった商談が失注。その本当の理由とは?

あるITサービス企業では、手応えのあった商談が最終段階で失注しました。中堅製造業に業務効率化ツールを提案し、要件も明確、価格も妥当だったため、高い確度で受注できると見ていました。

しかし、見積提出後に連絡が途絶え、後日「他社に決めた」と一報。価格競争に敗れたと思いきや、担当者へのヒアリングで明かされたのは責任者が独自に決めていたという返答でした。

この経験をきっかけに、営業チームは商談に出てきた担当者の反応がいくら良くても、稟議プロセスを必ず確認し、決裁者が別にいる場合はその方との商談ができないかチャレンジする、無理な場合は担当者と関係性を築き、一緒に稟議対策を行うということをルール化しました。

これにより、相対している担当者以外が知らぬ間に物事を進めているという事態が劇的に減りました。

失注を成長の糧に変えるために

営業における「失注」は、成果につながらなかったという意味ではネガティブな結果かもしれません。しかし、失注の中には「成約よりも大きな学び」が隠れていることがあります。

例えば、競合が強かった理由、提案の弱点、顧客の意思決定プロセスなど、失注を振り返ることで次の商談に活かせる改善点が必ず見つかります。特に、「こうだと思っていたが違っていた」という“見当違い”に気づくことが、営業力の底上げに直結します。

大切なのは、「感覚」で終わらせないこと。仕組みとして失注の振り返りを行い、見当違いの芽を摘むことで、営業活動の精度を上げていきましょう。

まとめ|「なんとなく失注」から抜け出そう

失注には必ず理由があります。「なんとなく失注した」「相手の反応がいまいちだった」という感覚で終わらせていては、改善も成長も見込めません。
失注の原因を明確にし、そこから学びを得ることが、受注率を上げる最短ルートです。ひとつずつ改善に取り組むことで、あなたの営業活動は確実に成果へと近づいていくはずです。

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(執筆: 株式会社エッジコネクション 代表取締役 大村 康雄(おおむら やすお)
(編集: 創業手帳編集部)

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