自動車税は経費で落とせる!勘定科目や仕訳方法について解説
経費計上できる自動車税とは?法人・個人事業主ともに要チェック!
自動車を保有している場合、自動車税を納める必要があります。個人事業主はもちろん、外回りの営業や荷物の搬送などのために会社が自動車を所有しているケースも同様です。
社有車にかかる自動車税は経費に計上できます。
そこで今回は、自動車税の概要や経費に落とす上で知っておきたい勘定科目、仕訳方法、注意点などについて解説します。
業務のために自動車の所有を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
所有者に課税される地方税・自動車税とは?なぜ経費計上できる?
自動車税は、自動車の所有者が毎年納める地方税です。普通乗用車が対象の自動車税は都道府県、軽自動車やオートバイを対象とする軽自動車税は市区町村に納めます。
納税義務が生じるのは、4月1日時点で自動車検査証(車検証)に記載されている所有者です。所有者と使用者が異なる場合でも、原則所有者に納税義務が生じます。
ただし、ローンを組んで自動車を購入したことで、所有者がディーラーやクレジット会社などになっている場合、車検証に記載される使用者が税金を納めなければなりません。
自動車税の納税通知兼納付書は、毎年5月上旬に届きます。その納付書を使って、コンビニや銀行、郵便局で納税が可能です。
自治体によっては口座振替やクレジットカード、インターネットバンキングで納められるケースもあるので、確認してみてください。
法人・個人事業主を問わず自動車税は経費計上できる
経費は事業活動の中で生じる費用が対象となります。そのため、事業での利用を目的に所有している自動車であれば、自動車税の経費計上が可能です。
個人事業主も日常的に業務遂行のために個人が所有する自動車を使っているのであれば、経費にできます。
ただし、自動車税の納税が遅れたことで発生する加算金や延滞金は経費に計上できません。
本来支払う税額よりも高くなるデメリットがあるので、納付書が届いたら期限内にしっかり納めましょう。
自動車税と自動車重量税との違い
自動車関連の税金には、自動車税とは別に自動車重量税があります。自動車重量税は、自動車の新規登録や車検を実施する際に納める税金です。
国税であるため、国が課税主体になります。
自動車重量税が課税される理由は、公道の劣化を補填するためです。重量が大きい自動車ほど、道路にかかる負担が大きいとされています。
そのため、自動車の重さをもとに税額が決まっています。また、車検証の有効期間分を一度に納税するのも大きな特徴です。
それに対して自動車税は年に1回納める地方税なので、自動車重課税と納税のタイミングや課税主体が異なります。
さらに、自動車の総排出量に応じて課税される点も大きな違いです。
自動車税の税額は用途・総排気量で異なる
自動車税は、主に総排気量や用途が営業用(緑ナンバー)か、自家用(白ナンバー)かによって異なります。
自動車には貨客兼用車やトラックなどもありますが、今回は普通乗用車と軽自動車にかかる税額をご紹介します。
【普通乗用車】
総排気量 | 自家用 (2019年10月1日以降に新規登録) |
営業用 |
---|---|---|
1,000cc以下 | 25,000円 | 7,500円 |
1,000cc以上1,500cc以下 | 30,500円 | 8,500円 |
1,500cc以上2,000cc以下 | 36,000円 | 9,500円 |
2,000cc以上2,500cc以下 | 43,500円 | 13,800円 |
2,500cc以上3,000cc以下 | 50,000円 | 15,700円 |
3,000cc以上3,500cc以下 | 57,000円 | 17,900円 |
3,500cc以上4,000cc以下 | 65,500円 | 20,500円 |
4,000cc以上4,500cc以下 | 75,500円 | 23,600円 |
4,500cc以上6,000cc以下 | 87,000円 | 27,200円 |
6,000cc以上 | 110,000円 | 40,700円 |
普通乗用車の税額は、自家用だと29,500~111,000円、営業用だと7,500~40,700円となっており、総排気量が多くなるほど高いです。
【軽自動車・電気自動車】
自家用 | 営業用 | |
---|---|---|
軽自動車 (2015年4月1日以降に新規登録) |
10,800円 | 6,900円 |
電気自動車 | 25,000円 | 7,500円 |
軽自動車に税額は総排気量に関係なく一律となっており、2015年4月1日以降に新規登録した自家用は10,800円、営業用は6,900円です。
電気自動車は総排気量がゼロとなるため、自家用は29,500円、営業用は7,500円に固定されています。
2019年10月以降に購入した新車は税率が軽減
自動車税の税率は度々改正されており、それに合わせて税額も変更されています。2019年10月以降に購入した新車の普通乗用車(自家用)は、税額が引き下げられています。
9月30日以前に購入した場合との差は以下のとおりです。
総排気量 | 引き下げ前 | 引き下げ後 |
---|---|---|
1,000cc以下 | 29,500円 | 25,000円 |
1,000cc以上1,500cc以下 | 34,500円 | 30,500円 |
1,500cc以上2,000cc以下 | 39,500円 | 36,000円 |
2,000cc以上2,500cc以下 | 45,000円 | 43,500円 |
2,500cc以上3,000cc以下 | 51,000円 | 50,000円 |
3,000cc以上3,500cc以下 | 58,000円 | 57,000円 |
3,500cc以上4,000cc以下 | 66,500円 | 65,500円 |
4,000cc以上4,500cc以下 | 76,500円 | 75,500円 |
4,500cc以上6,000cc以下 | 88,000円 | 87,000円 |
6,000cc以上 | 111,000円 | 110,000円 |
自動車税が減税されるグリーン化特例について
自動車税には、期間限定で減税されるグリーン化特例があります。この特例では、排出ガス性能や燃費性能が優れた自動車を購入した場合、翌年の自動車税が減税されます。
もともと2023年3月31日までに購入した新車が対象でしたが、令和5年度税制改正によって3年間延長することが決まりました。
対象となる乗用車・軽自動車は以下のとおりです。
-
- 電気自動車
- 燃料電池自動車
- 天然ガス自動車(2009年排出ガス規制NOx10%以上低減、または2018年排出ガス規制適合)
- ハイブリッド自動車(乗用車のみ)
2023年4月1日~2025年3月31日までに上記の乗用車・軽自動車を新車で購入した場合、おおむね75%が減税されます。
排出ガス性能に優れていても、ガソリン車やLPG車は特例の対象外となっているので注意してください。
なお、環境負荷の大きな自動車に対しては重課が課せられ、税額が大きくなります。
重課は自動車の種類や新規登録から経過した年数によって、以下のように設定されています。
自動車の種類 | 新規登録からの経過年数 | 重課割合 |
---|---|---|
ガソリン車・LPG車 | 13年以上 | おおむね15% |
ディーゼル車 | 11年以上 | おおむね15% |
三輪以上の軽自動車 | 13年以上 | おおむね20% |
プライベートでも使用している車なら家事按分が必要
個人事業主の場合、事業とプライベート兼用で自動車を所有しているケースがほとんどです。
プライベートでも使用している自動車の自動車税の全額を経費にすることはできず、家事按分が必要になります。ここで、家事按分の意味や求め方についてご紹介します。
家事按分とは?
家事按分とは、時間やスペースなどをもとに計算して、プライベートと仕事で使われた費用を区別することです。算出された仕事にかかった費用を経費にできます。
個人事業主の場合、様々な経費で家事按分が必要となります。
自動車税だけではなく、自宅で仕事をしている人は家賃や光熱費、通信費なども家事按分して一部を経費にすることが可能です。
自動車税の按分比率は、走行距離や使用日数などから求めることが可能です。
そのため、正確に計算できるように、仕事で自動車を使った時は運行記録表を付けることをおすすめします。
運行記録表を付けることで、プライベートでの使用としっかり区別することが可能です。運行記録表に記載する主な項目は以下のとおりです。
-
- 利用した日時(出発・帰着)
- 利用者名
- 走行距離
- 訪問先の名称や地名などの目的地
按分比率の求め方
プライベートでも使っている自動車の自動車税を経費計上するにあたって、まずは按分比率を求める必要があります。
ここで、走行距離と使用日数の2つのパターンで按分比率を計算する方法をご紹介します。
走行距離による求め方
全体の走行距離のうち業務で走行した距離の割合をもとに、自動車税の按分比率を求めていきます。
この場合、「支払った自動車税額×事業で走行した距離の割合」で按分比率の計算が可能です。
運行記録表をしっかり付けていれば、事業で走行した距離の割合は簡単に把握できます。
例えば、全体の走行距離が年間10,000km、業務時の走行距離が7,000kmだとします。この場合、業務で走行した割合は70%です。
36,000円の自動車税を納めた場合、「36,000円×70%=25,200円」を経費にできます。
使用日数による求め方
自動車を業務で使用した日数から按分比率の計算が可能です。
仕事がある日は業務の目的以外で自動車に乗ることがないのであれば、この方法でも合理的に按分比率を求められます。
使用日数から求める場合、「支払った自動車税額×事業で自動車を使った日数の割合」で計算することが可能です。
まずは自動車を使った年間の日数から事業で使った日数の割合を求めてください。
例えば、1年間のうちにプライベートで自動車を使ったのが休日のみで、平日は事業のために使ったとします。年間休日が125日、営業日を240日と課程します。
この場合、事業で使った日数の割合は「(240日(営業日)÷365日(年間の使用日))×100=約66%」です。
36,000円の自動車税を納めた場合、「36,000円×66%=23,760円」を経費にできます。
自動車税の勘定科目は「租税公課」や「車両費」
自動車税の仕訳では、勘定科目を「租税公課」にするのが一般的です。
租税公課は、事業税や固定資産税などの税金や公共団体に支払う会費・罰金などを計上する際に使われます。
また、「車両費」という勘定科目を使って計上することも可能です。
車両費は、自動車の購入費や車検費用、自動車保険料など自動車の維持・管理にかかる費用を計上する際に使われます。
自動車税も自動車の維持に関わる費用であるため、車両費を使えます。
勘定科目は一度決めたら同じ科目を使い続けることが会計処理の原則です。
そのため、自動車に関する経費をどう管理していくのか方針を決めた上で、自動車税の形状で使う勘定科目を選ぶことをおすすめします。
どちらにするか迷った時は、租税公課にすれば間違いありません。
自動車税を経費計上する際の仕訳方法
自動車税を納めたら、その取引情報を仕訳帳に記録してください。支払方法や家事按分を行った場合によって、仕訳方法が少し異なります。
ここでパターン別に自動車税の仕訳例をご紹介します。
自動車税の仕訳例①
自動車税を現金や預金口座から支払った場合の仕訳方法は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
租税公課(車両費) | 50,000円 | 現金(預金口座) | 50,000円 |
自動車税の勘定科目は租税公課や車両費になり、資産・負債・純資産・収益・費用の5つのうち、費用に該当します。
費用の場合、借方は「費用(支出)の増加」、貸方は「費用(資金)の減少」という考えで振り分けていきます。
借方には自動車税の勘定科目である「租税公課(または車両費)」、貸方には支払方法に合わせて「現金」や「預金」といった勘定科目を記載してください。
また、借方と貸方に記載する金額は必ず同じ金額になるのが仕訳のルールです。
自動車税の仕訳例②
自動車税をクレジットカードで支払う場合、後日引き落としが発生するため、納付時とクレジットカードの利用代金が引き落とされた時の取引記録を残す必要があります。
【自動車税の納付時】
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
租税公課(車両費) | 50,000円 | 未払い | 50,000円 |
【クレジットカードの利用代金の引き落とし時】
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
未払い | 50,000円 | 租税公課(車両費) | 50,000円 |
クレジットカードの場合、勘定科目は「未払い」を使用するのが一般的です。
納付時はまだ引き落とし口座から利用代金が引き落とされていないため、「貸方」は「未払い」と記載します。
そして、代金が引き落とされた時は借方が「未払い」となり、貸方に「租税公課(車両費)」を記載します。
自動車税の仕訳例③
自動車税を家事按分した場合、事業の支出と個人の支出を適切に記録して仕訳をする必要があります。
50,000円の自動車税を事業7割、家事3割で按分する場合の仕訳方法は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
事業主貸 | 15,000円 | 現金(当座預金) | 50,000円 |
租税公課(車両費) | 35,000円 |
借方に記載された「事業主貸」は、事業資金からプライベートの支出を計上する際に使用する勘定科目です。
そのため、事業用の現金や預金口座から自動車税を支払った場合、個人が負担する分は「事業主貸」の記載が必要です。
貸方には借方の合計金額と同じ金額を記載します。
プライベート用の預金口座から自動車税を支払った場合の仕訳方法は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
租税公課(車両費) | 35,000円 | 事業主借 | 35,000円 |
個人の資金を事業の支出に使った場合、「事業主借」という勘定科目を使用します。
上記のケースは個人の資金から事業分の自動車税が支払われているので、貸方には「事業主借」を記載します。
自動車税を経費計上する際の注意点
自動車税を経費として落とせますが、計上できないものや、自動車の種類によっては還付制度が異なるなどの注意点があります。詳しい注意点は以下のとおりです。
自動車税の延滞金・加算金は経費計上できない
税金は定められた期限内に納税するのが原則です。自動車税も期限内に納税をしなかった場合、延滞金や加算金が発生し、本来よりも高い税金を納めなければなりません。
延滞金や加算金を支払った場合、これらの費用は経費として計上できないので、仕訳では除外する必要があります。
経費に計上できれば、所得が減るので所得税や法人税の節税につながります。
しかし、計上できない延滞金や加算金が発生した場合、結果的に負担が増えるので、自動車税は必ず期限内に納税してください。
普通自動車と軽自動車で還付制度が異なる
年度の途中で廃車や売却によって自動車を手放した場合、還付を受けられます。ただし、還付が受けられるのは普通自動車のみです。
普通自動車の場合、月ごとに課税される「月税」が採用されているので、年度の途中で車を手放せば月割で自動車税が還付されます。
事業用の自動車の還付金を受け取ったのであれば、仕訳をして経費に計上しましょう。
一方、軽自動車は年単位で課税される「年税」が採用されており、毎年4月1日に課税要件が確定します。
この仕組みによって、年度の途中で自動車を手放しても還付はなく、1年分の軽自動車税を納めなければなりません。
まとめ・自動車税の仕訳・按分方法を活用して実際に経費計上しよう
自動車には毎年自動車税がかかりますが、事業で使っている自動車であれば経費に計上することが可能です。
自動車税を経費に計上して所得が減れば節税につながるので、法人や個人にとっては大きなメリットになります。
プライベートでも同じ自動車を使う場合は、家事按分をしっかり行って計上してください。
また、自動車税の勘定科目や仕訳方法を理解し、会計処理を適切に行うことも大切です。
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(編集:創業手帳編集部)