IT導入補助金の活用事例6選!企業が抱える課題と具体的な活用方法をご紹介
IT導入補助金はどう使われている?活用事例を参考にしてみよう
IT導入補助金は、自社の強みや弱みを認識して分析するきっかけとなり、経営課題を把握してそれに合うITツールを導入するための支援です。
自社の経営課題に適したITツールの導入は、会社の経営力を強化することにつながります。
今回は、IT導入補助金が実際にどのように使われているのか、企業の活用事例を6つご紹介していきます。
生産性の向上や売上げアップに向けてIT導入補助金の活用を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
IT導入補助金をはじめ、起業家や経営者のために国が支援策として打ち出している補助金・助成金はいくつかあります。創業手帳では、起業家・経営者の方々がよく活用される補助金・助成金を厳選して解説した「補助金ガイド」を無料で配布しています。審査通過のポイントや、専門家からのアドバイスなど掲載。是非あわせてご活用ください。
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この記事の目次
IT導入補助金とは?ITツールの導入をサポートする補助金
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者を対象にした補助金で、ITツールの導入をサポートしてくれるものです。ここでは、補助対象者となる企業をご紹介します。
補助対象者となる中小企業と小規模事業者
中小企業や小規模事業者にとって、IT導入補助金は業務を遂行する際の効率化や管理強化に向けた支援となる重要なものです。
IT導入補助金の補助対象になるのは、中小企業と小規模事業者となっています。
国内では、中小企業と小規模事業者を法人登記されており、国内で事業を営む法人もしくは個人を指します。
法人登記とは、指定された法人番号が国税庁の法人番号公表サイトに公表されることです。
中小企業 | 飲食業、宿泊業、卸・小売業、医療業、介護業、保育、運輸業、製業、建設業など |
小規模事業者 | 宿泊・娯楽業を除いた商業・サービス業や、その他サービス業のうちの宿泊業・娯楽業、製造業など |
中小企業や小規模事業者が経営力向上を目的としたIT導入を検討している場合は、IT導入補助金が活用できます。
IT導入補助金を利用した企業の活用事例6選
IT導入補助金は、多くの企業が生産性向上や売上げアップのためのITツール導入のために活用しています。ここからは、企業のIT導入補助金活用事例を見ていきます。
IT投資に消極的な林業で森林調査の人員を8割削減│T社 林業
まずは、IT投資に消極的な林業の森林調査人員削減に成功したケースです。ここでは、林業を営むT社の活用事例をご紹介します。
T社の課題「利益の確保が困難な経営状態」
林業は、従業者の高齢化や人材不足の慢性化が著しい業界とされています。T社においても、利益の確保が困難な経営状態が続いていました。
従来どおりの業務では状況を打破するのが難しいと判断したT社は、ITツールを導入して業務のデジタル化を図ろうと考えました。
先進技術であるITツールを導入して業務のデジタル化を図れば、森林内の整備や作業が効率化する可能性があります。
しかし、経営状態の厳しさから、IT投資に踏み切ることも困難な状況だったのです。
一時は、ドローンを使った森林解析を行っていましたが、それでは状況を大きく変えられない状態でした。
そこで紹介されたのが、IT導入支援事業者です。IT導入支援事業者は、会社に合うITツールの導入を提案してくれました。
IT導入補助金の活用方法「解析可能なカメラ付きドローンの導入」
林業は「GIS」と呼ばれる地理情報システムを活用する業種です。
T社に提案されたのは、GISとしても活用可能なITツールで、カメラ付きのドローンが取得した点群データの解析が行える画期的なものでした。
このツールは、整備した作業道をはじめとする地表データの取得も可能なことに加え、国が提供するデータも活用した自動設計ができます。
通常、林業が実施する森林調査では、従業者が実際に歩いて一本一本の木を調査することになります。
その後、調査結果をもとに事務所のパソコンで集計・データ化するため、業務に費やす時間は計り知れません。
しかし、IT導入補助金を活用したことでITツールを使った迅速な森林調査が可能となり、結果的に調査人員の削減を実現しました。
森林調査人員の削減は、調査コスト削減にもつながります。
特産品の新たな販路開拓を目指しECサイトを開設│I社 農業
続いては、特産品の販路開拓に向けてIT導入補助金を活用した、農業を営むI社の事例のご紹介です。
I社の課題「特産品・岩見鴨の販路」
農業を営むI社では、中国地方の地域ブランドとして知られる岩見鴨の飼育や食肉加工、販売を行っています。
岩見鴨は飼料にエゴマを原料としたものを使い、栄養価が高いことで知られています。
これまで、I社は地域のイベントの屋台出店や飲食店の卸などで販路をつないできました。
最近ではホームページの制作やオンラインストア開設なども手掛けており、個人消費者への販売も進んでいました。
しかし、コロナ禍の影響を受けて取引き先が減少し、イベントでの屋台出店の機会が格段に減ったことで、販路の見通しが立たない状況になったのです。
そこで検討したのが、多くの個人消費者への認知度が高まりやすいとされるECサイトへの出店です。地域の商工会では、IT導入補助金制度の活用をすすめられました。
IT導入補助金の活用方法「ECサイトへの出店による販路拡大」
IT導入補助金を活用する上で、I社ではブランドの認知度を向上させられるECサイトを探すことに注力するようになります。
そのような中、地元の商談会で「47CLUB(よんななクラブ)」と呼ばれる地方新聞社厳選のお取り寄せECサイトについて知りました。
このECサイトは全国の都道府県の特産品に特化しているという特徴を持っています。ECサイト運営におけるノウハウや実績もあり、IT導入支援事業者でもありました。
ECサイト出店に向けて、I社はIT導入補助金の申請やショップページの構築などもIT導入支援事業者にサポートしてもらいながら進めていきました。
ECサイトに出店して以降は、地方新聞の広告欄への掲載やイベントに合わせたキャンペーン、割引といった特典を活用しながら販路拡大につなげることに成功しています。
デジタルな勤怠・労務管理の切り替えで残業時間を削減│O社 建設・土木業
建設・土木業を営むO社のIT導入補助金活用事例のご紹介です。
O社の課題「勤怠管理のアナログ手法」
建設業界では、長時間労働という課題を抱えている会社がたくさんあります。
O社もそのひとつで、勤怠管理もタイムカードの打刻を必要とするものだったため、タイムカードを打刻するために事務所に出勤・退勤するケースも少なくありませんでした。
しかし、従業者のほとんどは現場で業務に携わる状況であり、事務所に出向くことで長時間労働につながっていました。
現場から事務所までは距離があり、足を運ぶだけでも長い時間を要します。往復の移動時間は勤務時間となるため、従業者にとっても会社にとっても負担となってしまいます。
そこで考えたのが、勤怠管理のIT化による働き方改革です。
IT導入補助金の活用方法「勤怠・労務管理ソフトの導入による働き方改革」
O社が勤怠管理をIT化しようとIT企業に相談したところ、IT導入補助金を活用して勤怠・労務管理ソフトの導入を提案されました。
検討を重ねて実際に導入したのは、「就業大臣NX スタンドアロン」という勤怠管理システムです。
この勤怠管理システムは、1台のパソコンで勤怠管理が行えるツールとなっており、従業者が事務所に足を運ぶことなく勤怠が行えるものとなっています。
そのため、移動時間をカットでき、残業時間も約3分の1の削減に成功しました。
また、システムで管理することでタイムカードによる勤怠管理業務よりも効率的になり、半分の作業時間で完了するほどになりました。
有給申請もデジタル化したため、有給消化率も上がり、働き方改革につながっています。
積算システムの導入で入札参加件数が増大│H社 建設・土木業
同じく建設・土木業のH社では、主に電気設備工事業に携わっています。続いては、H社の活用事例のご紹介です。
H社の課題「元請比率の厳しさ」
建築・土木業の中でも、電気設備工事業は下請け受注と元請け受注により業績を向上させていくことが基本となっています。
しかし、価格競争を強いられて労働環境が悪化するケースが多く、結果的に人材不足になっている会社も少なくありません。
H社では、下請けが6割、元請けが4割という状況で、元請け受注をさらに増やせないか模索していました。
元請け比率を上げるためには、自治体が実施する公共工事を受注できるかどうかが鍵となります。
公共工事に関しては最低価格の設定がありますが、公平性のために非公開となっており、緻密な生産による落札が必要です。
これまでに公共工事の受注に成功したことは少なく、精算精度を高めるためのITシステムが必要だと考えます。
IT導入補助金の活用方法「清算システム導入による入札参加件数アップ」
精算精度を向上させるため、H社は受注率の高い同業他社が活用しているITシステムに関する情報収集を行い、IT導入補助金の活用の提案を受けて「土木精算システム ATLUS REAL Evo(NET版)」を導入しました。
精算精度を高める画期的なシステムですが、当初は操作方法に不安を抱える従業者が多かったようです。
しかし、IT導入支援事業者によるサポートをはじめ、相談会や同業他社の見学などを経て、うまく活用する方法を見出すことができました。
システムの導入後はすでに数件の入札に参加できるようになり、入札件数を増やすことに成功しました。
また、従業者も進んで入札情報サービスを確認したり、受注率が上げようという意識を持って業務に携わったりするケースも増えています。
会計ソフトの導入で経理業務の負荷が軽減│K社 製造業
製造業を営むK社のIT導入補助金の活用事例をご紹介します。
K社の課題「経理業務に要する時間の膨大さ」
K社は、これまでもITツールやロボットを導入して生産体制や管理システムの自動化を進めてきました。
しかし、問題が起こったことへの対処として導入していただけであり、綿密な計画を立てて導入へと至ったわけではありません。
中小機構によるIT経営管理診断によれば、K社は経理業務のIT化が必要であることがわかりました。
これまでK社が活用していた会計システムは、データ入力の手作業や会計事務所とのやりとりによって長い時間をかけて行っていました。
そこで、新システム導入やクラウド化に向けてIT導入補助金の活用を検討します。
IT導入補助金の活用方法「会計ソフト導入による経理業務の効率アップ」
K社は、IT導入補助金を活用して「FX4クラウド」と呼ばれる会計ソフトを導入しました。
この会計ソフトは、データの比較や財務資料の作成、試算表の作成にかかる時間を短縮できるシステムとなっています。
経理書類はすべて電子化できるため、会計事務所とのやりとりも共有フォルダで完結でき、経理業務の効率が格段にアップしました。
また、この会計ソフトは税理士が実際に活用しているものと同じものです。
IT導入支援事業者によるサポート体制が充実していたため、運用に向けた準備や運用開始後もスムーズに行うことができました。
ひとつひとつの業務時間が短縮できたため、長時間労働や休暇の取得率も向上にもつながっています。
業務効率化&コスト削減でコロナ前より売上げ増加!│Z社 宿泊業
最後に紹介するのは、宿泊業を営むZ社のIT導入補助金活用事例です。Z社は、業務効率化と売上げ拡大を図りました。
Z社の課題「遠方からの空室管理が困難」
国立公園の中にある宿泊施設の経営を行うZ社は、オンプレミス型のホテル管理システムを活用して管理業務を行っていました。
オンプレミス型とは、自社にサーバーや通信回線などのシステムが備わっていることです。
しかし、ホテル内でなければリアルタイムでの空室情報を把握できなかったため、電話やメールでの確認が必要不可欠でした。
そこで、Z社は遠方からリアルタイム管理し、業務の効率化を図るためには、ホテル管理システムのクラウド化が必要だと考えます。
クラウド化ができれば、ホテルの空室状況の確認だけでなく、旅行代理店向けの提案力も向上できます。
ホテル管理システムのクラウド化にはIT導入補助金の活用が必要だと判断し、申請を進めていきました。
IT導入補助金の活用方法「クラウド化による業務効率化と売上げアップ」
Z社が導入したITツールは「陣屋コネクト」と呼ばれるクラウド型で、遠方にいながらでも多くの情報をリアルタイムで入手できるものです。
空室情報はもちろん、売上げの把握や旅行代理店への提案なども行え、業務効率もアップしました。
時には現場では把握し切れない部分に経営部門側が気付き、適切に対処することもできます。
業務効率が向上したことで、ホテル運営におけるランニングコスト削減にもつながり、売上げもアップしています。
また、マーケティングや営業活動にも力を入れられるようになったため、より多くの顧客を呼び込めるようになり、稼働率の向上も図れる体制となりました。
ホテル管理システムをクラウド化して以降は、ITツールを活用した事業拡大を目指しています。
まとめ・IT導入補助金のITツール活用事例を参考にしよう
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者がITツールを導入する際に役立ちます。
今回ご紹介した林業や農業、建築・土木業、製造業のほかにも、多くの業界でIT導入補助金が活用されています。
今回の事例なども参考にしつつ、ぜひIT導入補助金を活用できないか検討してみてください。
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(編集:創業手帳編集部)