飲食店向けの保険とは?起こり得るリスクに対応できる&保険の種類や・選び方を解説
飲食店経営の様々なリスクに備えて保険への加入も検討しよう
飲食店を経営する際、リスクに対応できる体制を整えておくことも重要です。
飲食店が抱えるリスクに対応できる保険商品はいくつもあり、万が一の時に備えて自分たちの経営スタイルなどに合う保険に加入しておく必要があります。
しかし、どれに入っておくべきか迷ってしまうケースも少なくありません。
そこで今回は、飲食店向けの保険について解説していきます。保険の種類や選び方について知りたい方は参考にしてください。
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
この記事の目次
飲食店向けの保険とは?
保険は、万が一の時に備えて契約しておくものです。ちょっとしたトラブルが大きな損失につながる可能性があるのは飲食店も例外ではありません。
まずは、飲食店向けの保険がどのようなものか解説していきます。
飲食店向け保険の特徴
飲食店向けの保険は、店舗保険と呼ばれているものです。飲食店の場合、休業することで利益機会が損失します。
休業日なら自己都合ですが、予期せぬ形(感染症の拡大・自然災害・雇用トラブル・食中毒事故など)で休業を余儀なくされた場合に補填してもらえます。
起こる可能性が高いトラブルは店舗の立地などによって変わってくるため、自分たちの店舗にはどのような補償が必要なのか見極めてから契約することが重要です。
飲食店の保険で軽減できるリスク
飲食店の保険に加入することで以下のリスクは軽減できるとされています。
-
- 損害リスク
- 賠償リスク
- 休業リスク
- 需要減退リスク
続いては、これらのリスクについての詳しい解説です。
損害リスク
損害リスクは、自然災害(火災・落雷・水害など)や偶発的な事故によって生じます。店舗保険に加入していれば、損害リスクの軽減につながります。
店内設備の火災や、水道管の破損で水漏れが生じて階下のテナントに損害が生じた場合も補償を受けられるので、加入しておくと安心です。
店舗内の設備に損害が生じた場合にも保険を利用できるため、加入しておくメリットは大きいでしょう。
自然災害などで設備に何らかの損害が生じる可能性は低いと感じる方もいますが、いつ起こるかわからないからこそ保険に加入し、その時に備えた対策を準備しておくことが大切です。
賠償リスク
賠償リスクは、以下のような事故が該当します。
-
- 建物や施設が原因となって起きた事故
- 食中毒など提供する商品で起きた事故
- 接客中に起きた賠償事故 など
特に多いのは、提供した商品が原因で発生した食中毒です。
飲食店を経営する中で食中毒対策を万全にしているつもりでも、起こってしまう可能性をゼロにすることはできません。
そのほかにも、店舗の看板が落下して通行人にケガをさせてしまったり、店内の床が濡れていて来店した人がケガをしてしまったりする場合に、保険が適用する可能性があります。
保険適用になるのは、店舗側の責任が認められた時ですが加入しておくと安心感が大きいです。
休業リスク
店舗設備が何らかの理由で故障してしまったり、食中毒などが発生したりすると、休業を余儀なくされます。休業すると、前述したように利益機会の損失につながります。
利益機会の損失につながるだけではなく、雇用している従業員への補填、仕入れた食材の廃棄など、多くの損失が発生するのでデメリットは大きいです。
そのような損失をカバーするために役立つのが店舗保険です。
飲食店を経営している期間が長くなるほど休業リスクに直面する可能性は高くなるので、加入を前向きに検討する価値は大いにあります。
需要減退リスク
飲食店は近隣に店舗が増えて競争が激化したり、トレンドが変化したりすることで、需要が減退する可能性があります。
特定の飲食店を利用する人が増えた場合も経営に大打撃を与えることになります。
季節性やトレンド性を意識した飲食店だと、特定の飲食物の需要が減少するとともに経営にもマイナスな影響を及ぼす可能性が高いため、リスクは大きいです。
景気の後退や不況が原因で外食需要が減少することも、飲食店がネガティブな影響を受ける原因のひとつとなります。
様々な原因が重なって継続的な需要減退が起こると、飲食店の経営に大きな影響を与えるため、リスクに備えた対策をすることは必要不可欠です。
飲食店向け保険の種類
飲食店向けの保険にも様々な種類があります。それぞれの特徴を踏まえた上で、どれに加入するか検討してみてください。
火災保険
火災保険は飲食店の火災や風災、水災、落雷、盗難をカバーする保険です。損壊してしまった設備や什器などを補償します。
しかし、加入しているプランによって保障内容が変わるので、加入時にはどのような補償をしてくれるプランなのかしっかり確認してから契約しなければいけません。
飲食店は厨房で火を扱うので、ほかの業種よりも火災リスクは高めです。そのような理由からも、火災保険への加入は必要不可欠です。
自身の店舗では火を使わないとしても、近隣に同業がいる場合はそこから出火する恐れもあります。
周囲で発生した火災に対する保証にも対応した保険に加入する価値は大いにあります。
いくら万全の体制で経営をしていても、火災などの事故を100%回避することは難しいでしょう。そのため、万が一に備えて火災保険に加入しておくことをおすすめします。
PL保険
PL保険は、製造業者などが製造・販売した製品や工事業者などが行った業務の結果が原因となって、他者を死傷させたり、他人の物を壊したりした時の損害賠償を補償する保険です。
Product Liabilityの頭文字から命名されており、日本語だと「生産物賠償責任保険」と呼ばれています。
1995年7月に施行された製造物責任法(PL法)によって製品の欠陥が理由で損害を受けたと証明できれば、製造元や販売元に過失がなくても損害賠償が請求できるようになったことを機に、作られた保険です。
PL保険は飲食店も対象になります。飲食店で作られる料理も製造物責任法だと加工に該当するためです。
食中毒などが発生した場合、製造物責任法によって損害賠償を負わなければいけません。そのため、PL保険に加入しておいたほうが安心です。
施設賠償責任保険
施設賠償責任保険は店内の設備に欠陥や不備があって事故が発生し、お客様へ損害賠償責任が発生した時に使える保険です。
損害賠償金は高額になるケースが多いため、飲食店や小売店を経営する経営者にとって欠かせない保険のひとつとなっています。
お客様と接する業種だけではなく、商品の管理を行う倉庫や製造工場も対象です。
飲食店で比較的多く見られるのは、従業員が誤って熱いスープをこぼして火傷を負わせたり、コーヒーなどの飲み物でお客様の衣類が汚したりするなどのトラブルです。
火傷をした場合は治療費や慰謝料を支払うことになり、衣類を汚した場合はクリーニング代・購入費・お直し代などを負担しなければいけません。
これらの賠償金を補填するのが、施設賠償責任保険です。
店舗休業補償保険
店舗休業補償保険は、何らかの理由で突発的な休業を強いられた時の収入減少を補償する保険です。
飲食店は休業していても、店舗の賃料や正社員への賃金、水道光熱費などの支払いは発生します。
経費の支払いだけが続くようになると、どこかのタイミングで内部保留が尽きてしまうので経営は破綻してしまいます。
店舗休業補償保険の補償範囲は、保険会社や契約する保険商品によって異なるので、いくつか候補を挙げて比較してから契約するのがおすすめです。
火災や風災、盗難などが保証対象になるケースが多いです。
ただし、経年劣化や1時間未満の停電による損害、地震・津波・噴火による損害などは、店舗休業補償保険が支払われません。
労働保険
労働保険は、労災保険と雇用保険を総称した保険制度を意味します。
飲食店を含む事業主であれば、ひとりでも雇用したら労働保険に加入して保険料を納付する義務があります。
そのため、知らなかったでは済まされません。従業員が通勤や退勤中の事故で負傷した場合や死亡してしまった場合などの治療費・遺族給付金が出ます。
雇用保険は、正社員だと入らなければいけません。
しかしパートやアルバイトの場合、1週間の所定労働時間が20時間以上であること、31日以上継続して雇用されていることなど、条件を満たしている場合に限り、加入義務が生じます。
また、パート・アルバイトでも学生の場合は原則として雇用保険の対象外です。
店舗総合保険
店舗総合保険は火災保険やPL保険などをひとまとめにした保険で、保証範囲が広いという点が大きな特徴です。自然災害による損害はもちろん補償してもらえます。
さらに、デモなどで店舗が開けられなかった場合や、店舗の設備・什器に何らかの損害が生じた場合も補償対象です。
飲食店では様々なリスクが想定されるため、幅広い保障内容を有する保険に加入したほうが安心です。
単体でいくつもの保険に加入するよりもコストを抑えられる場合があります。様々なリスクに対応できるように備えておきたいなら、店舗総合保険がおすすめです。
ただし、野外に置かれている物の盗難や、戦争や内乱などの武力行為による損害が発生した場合など、保証対象外となるケースもあるので事前に確認してください。
飲食店向け保険の選び方
飲食店向けの保険には様々な種類があるので、どれに加入するか迷ってしまう方もいるかもしれません。
続いては、飲食店向け保険の選び方について解説していきます。迷っている方はチェックしてください。
業種・業態
業種・業態に合う保険を選ぶことは特に重要なポイントです。
起こる可能性があるリスクに備え、いくつもの保険に加入してしまうと保険料の支払いが大きな負担になってしまう可能性があります。
路面店なら浸水のリスクが高い、空中店舗(2階以上に出店している店舗)なら排水管設備の不具合で階下に被害を及ぼすリスクが高いなど、状況によって想定されるリスクが異なります。
また、店舗の広さや従業員数によっても起こりやすいリスクは変わるため、ニーズに合う保険商品を選んでください。
補償内容
保険を選ぶ時は、保証内容も必ず確認してください。同じような名称の保険であっても、保険会社や保険商品によって異なるケースは珍しくありません。
どのような場合に保証してもらえるのか、対象外となる条件は何か、などをチェックしてから契約先を決めるのは鉄則です。
保険会社によっては、様々な補償が最初から含まれている場合もあります。
しかし中には、特約を付けなければ思ったような補償が得られない保険もあるため、事前のリサーチは重要です。
保険料
毎月支払う保険料がどのくらいかも、保険商品を比較検討する際に大切なポイントです。
補償内容に対する保険料が妥当かどうかを考え、問題ないと感じるものを選ぶようにしてください。
飲食店向けの保険は、補償内容や範囲、補償金の上限などによって毎月の保険料が大幅に変わります。
必要な補償を備えていて、保険料に妥当性があるかを加味した上で保険選びをすると、後悔することは少なくなるでしょう。
特約
特約は、メインとなる契約に任意で補償内容を追加するオプションです。特約を付けると補償内容や範囲、補償金の上限などを変更できます。
そのため、より自分たちの店舗に合う保険にカスタマイズできるといえます。
飲食店でおすすめの特約は以下のとおりです。
-
- 施設賠償責任特約
- 生産物賠償責任特約
- 受託者賠償責任特約
- 食中毒見舞保険金
- 人格権侵害賠償責任特約
これらの特約を付けると、飲食店で起こり得るトラブルにも対応しやすくなります。
自己負担割合
自己負担割合も保険に加入する前にチェックすべききポイントです。保険商品によって、免責金額や支払限度額が異なるためです。
これらの金額は保険料に比例して決まります。保険料が低すぎる場合は細かい部分をチェックし、自己負担割合が大きすぎないか確認しておくことが大切です。
例えば、施設賠償責任保険で免責金額が20万円であれば、20万円までは自己負担になります。
支払限度額が1,000万円となっているのであれば、1,000万円以上の損害額は自己負担です。
飲食店向け保険はどのタイミングで見直すべき?
飲食店向けの保険に限ったことではありませんが、保険は定期的な見直しが必要です。最後に、飲食店が保険の見直しを行うべきタイミングについて解説していきます。
・新たな店舗をオープンする
開店する土地や環境は店舗によって異なるので、手厚く補償すべき部分も変わってきます。立地条件などを踏まえ、適した保険を再度確認する必要があるのです。
・保険更新や年度切り替えのタイミング
保険更新や年度切り替えのタイミングで、保険を見直すといったケースも多く見られます。細かい部分までチェックし直してみると、より安心度の高い保険に加入できます。
・休業が明けたタイミング
休業明けのタイミングは、保険を見直す絶好のチャンスです。心機一転し、再オープンするためにも見直しておくと安心できます。
まとめ
飲食店には多くのリスクがあるので、万が一に備えた保険に加入しておくことは重要です。
補償内容が実態と乖離(かいり)していると、万が一の時に困ってしまう可能性が高いです。
保険を選ぶ時は、自分たちの店舗に適している補償内容かどうかを確認するようにしてください。
創業手帳の別冊版「飲食開業手帳」では、その他リスクとして考えられるお客様の迷惑行為への対応と対策なども掲載。実際に被害にあってしまった場合の対応などについても掲載しておりますので、1冊持っていると安心です。無料でお取り寄せ可能ですので、お気軽にどうぞ。
(編集:創業手帳編集部)