【2026年10月改正】仕入税額控除の経過措置が2年延長!80→70→50→30→0%の新スケジュール
令和8年度税制改正で3段階→5段階に変更。急な負担増が緩和

インボイス制度の開始により、免税事業者からの仕入れに対する税負担増を心配している方もいるのではないでしょうか。原則として、適格請求書がなければ仕入税額控除を受けられませんが、一定期間は控除が認められる「経過措置」が設けられています。
さらに、令和8年度税制改正大綱では、この経過措置の適用期間が延長され、控除割合の引き下げペースも緩和されました。当初は2029年9月で終了する予定でしたが、2031年9月まで段階的に控除を受けられるようになっています。
本記事では、経過措置の基本的な仕組みから改正後の新スケジュール、具体的な計算方法などをわかりやすく解説します。
この記事の目次 経過措置が設けられた理由は、インボイス制度による急激な税負担の増加を防ぐためです。 2023年10月にスタートしたインボイス制度では、適格請求書(インボイス)がなければ原則として仕入税額控除を受けられません。しかし、制度開始と同時にすべての取引先がインボイス発行事業者になるわけではないため、課税事業者の税負担が急増する懸念がありました。 もし経過措置がなければ、課税事業者は免税事業者との取引で支払った消費税を1円も控除できなくなります。たとえば、免税事業者から110万円(税込)の仕入れを行った場合、本来は10万円の消費税を控除できるはずが、まったく控除できません。 課税事業者が取引先を適格請求書発行事業者に限定する動きが広がれば、免税事業者は取引から排除されるおそれがあります。こうした社会経済への影響を緩和し、事業者が計画的に対応できるよう、段階的に控除割合を引き下げる経過措置が導入されました。 経過措置とは、適格請求書がない取引でも一定期間・一定割合の仕入税額控除を認める制度です。控除できる割合は段階的に引き下げられ、最終的にはゼロになります。 令和8年度税制改正により、当初の3段階から5段階へと細分化されました。80%から70%、50%、30%と徐々に減少するため、各段階での負担増は10〜20%程度に抑えられています。 この仕組みにより、課税事業者は急激なコスト増を避けながら、取引先との価格交渉や契約見直し、会計システムの改修などを計画的に進められます。また、免税事業者にとっても、課税事業者への転換を検討する猶予期間として活用できるでしょう。 経過措置の対象となるのは、以下のような適格請求書発行事業者以外からの課税仕入れです。 これらの取引で経過措置の適用を受けるには、区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等の保存と、帳簿への「経過措置の適用を受ける旨」の記載が必要です。 令和8年度税制改正大綱で示された、新しい経過措置のスケジュールは以下のとおりです。 大きな変更点は、2026年10月からの2年間に「70%控除」の期間が新設されたことです。改正前は80%から一気に50%へ下がる予定でしたが、70%を経由することで各段階の減少幅が10〜20%に抑えられました。 また、経過措置の終了時期が2029年9月から、2031年9月へと2年延長されています。2030年10月から1年間は30%控除が適用されるため、完全に控除がゼロになるまでの準備期間が確保されました。 今回の税制改正は、課税事業者に以下のようなメリットをもたらします。 改正前のスケジュールでは、2026年10月に控除割合が80%から50%へ30%も下がる予定でした。免税事業者から年間550万円(税込)を仕入れている場合、自己負担額は10万円から25万円へと一気に15万円も増える計算です。 改正後は70%を経由するため、2026年10月時点での負担増は5万円にとどまります。その後も段階的に引き上げられるため、年度ごとの利益への影響を抑えられるでしょう。 また、経過措置の終了時期が2年延長されたことで、さまざまな準備に充てる時間が生まれました。具体的には、免税事業者との価格交渉や契約条件の見直し、新たな取引先の開拓、会計システムの改修や更新などに取り組む余裕ができます。 経過措置を適用する場合の控除可能額は、「免税事業者等からの課税仕入れに係る消費税額 × 控除割合」で計算できます。 たとえば、免税事業者から110,000円(税込・標準税率10%)の仕入れを行った場合を考えてみましょう。この取引に含まれる消費税相当額は10,000円です。 控除割合が80%の期間であれば、「10,000円 × 80% = 8,000円」を仕入税額控除として計上できます。残りの2,000円は控除できないため、その分だけ納付する消費税額が増えることになります。 控除割合が70%に下がると、控除額は7,000円となり、控除できない金額は3,000円に増加します。このように、控除割合が下がるほど実質的な税負担が増えていく仕組みです。 免税事業者から年間550万円(税込・標準税率10%)の仕入れを継続した場合、各期間でどれだけ負担が変わるかを見てみましょう。消費税相当額は、50万円として計算しています。 80%控除の期間と比べると、経過措置終了後は年間40万円もの負担増となります。免税事業者からの仕入れ規模が大きい事業者ほど、この影響は深刻になります。 標準税率(10%)と軽減税率(8%)の両方が混在する取引では、税率ごとに分けて計算しなければなりません。 標準税率10%の商品は、税込金額に「7.8/110」を乗じて国税分の消費税額を算出します。軽減税率8%の商品は「6.24/108」を乗じて計算します。それぞれの消費税額に控除割合を掛けた金額の合計が、仕入税額控除の対象です。 請求書や帳簿には、税率ごとの区分を明確に記載しておくことが重要です。区分が曖昧だと、税務調査で経過措置の適用が否認されるリスクがあります。 ここでは、実務で押さえておくべき3つのポイントを解説します。 経過措置を適用するには、帳簿に以下の事項を記載しなければなりません。 特に重要なのは「経過措置の適用を受ける旨」の記載です。「80%控除対象」「免税事業者からの仕入れ」などと個別に記載する方法のほか、「※」や「☆」といった記号を付けて別途その意味を示す方法も認められています。 会計ソフトを利用している場合は、摘要欄への自動入力設定や、取引先マスタで「経過措置対象」のフラグを設定しておくと入力漏れを防げます。 経過措置の適用には、区分記載請求書等と同様の記載事項を満たした書類の保存が求められます。具体的には、以下の項目が必要です。 適格請求書との違いは、登録番号の記載が不要な点です。免税事業者は登録番号を持っていないため、それ以外の項目が正しく記載されていれば経過措置の要件を満たします。 請求書等は紙での保存のほか、電子帳簿保存法の要件を満たせば電子データでの保存も可能です。 経過措置を正しく適用するには、取引先が適格請求書発行事業者かどうかを把握しておく必要があります。 取引先マスタで「適格事業者」と「免税事業者等」を区分管理し、定期的に登録状況を確認しましょう。国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」では、登録番号から事業者情報を検索できます。 新規取引を開始する際は、相手方に登録番号の有無を確認するフローを設けておくと安心です。また、既存の取引先が年度途中で登録した場合や登録を取り消した場合もあるため、少なくとも年に1回は登録状況を確認することをおすすめします。 ここでは、取引先対応・システム・資金計画の3つの観点から、具体的な準備事項を解説します。 免税事業者との取引を継続する場合、控除できない消費税分をどう負担するかが課題となります。 価格交渉を行う際は、一方的な減額要求にならないよう注意が必要です。独占禁止法や下請法に抵触するおそれがあるため、丁寧な説明と合意形成を心がけましょう。また、取引先を見直す場合も、品質・納期・長年の信頼関係などを含めて総合的に判断することが大切です。 経過措置に対応するため、会計システムの機能を確認しておきましょう。チェックすべき主な機能は以下のとおりです。 これらの機能がない場合は、手作業での対応が必要になります。チェックリストの作成やダブルチェック体制の構築でミスを防ぎましょう。控除割合の切り替え時期(2026年10月、2028年10月など)に合わせて、システム更新を忘れずに実施することも大切です。 経過措置の終了までに、各年度の税負担増加額を試算しておきましょう。利益計画への影響を分析し、必要に応じて価格転嫁や経費削減の検討も求められます。 特に建設業や小売業など、免税事業者からの仕入れ比率が高い業種では影響が大きくなりがちです。仕入先ごとの取引金額を洗い出し、経過措置終了後の負担増を具体的な数字で把握してください。 影響額が大きい場合は、金融機関からの資金調達も視野に入れた準備が必要になるかもしれません。「まだ先の話」と先延ばしせず、今のうちから顧問税理士と相談しながら対策を進めていきましょう。 少額特例とは、税込1万円未満の課税仕入れであれば、インボイスの保存なしで仕入税額控除を受けられる制度です。基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が対象となります。 経過措置との主な違いは、金額制限です。少額特例は1万円未満の取引に限定され、経過措置は同一の「適格請求書発行事業者以外の者」からの課税仕入れについて、税込10億円以内の部分が対象です。令和8年度改正では、上限が「税込1億円」に引き下げられる方針です。 なお、両制度は併用可能です。1万円未満の仕入れには少額特例を適用し、それ以上の仕入れには経過措置を適用するといった使い分けができます。 経過措置の適用に、事前申請や届出は不要です。要件を満たしていれば自動的に適用されます。 ただし、帳簿への記載と請求書等の保存は必須です。「経過措置の適用を受ける旨」の記載がない帳簿や、必要事項が記載されていない請求書では控除が認められません。税務調査では、これらの記載・保存状況が確認されるため、日頃から適切に管理しておきましょう。 令和8年度税制改正により、仕入税額控除の経過措置は当初の3段階から5段階へと細分化されました。控除割合は2031年9月まで、80%→70%→50%→30%→0%と段階的に引き下げられます。 この改正で準備期間に余裕が生まれましたが、やるべきことは変わりません。帳簿・請求書の適切な管理、取引先の登録状況の把握、会計システムの対応確認、価格交渉や契約見直し、そして中長期的な資金計画への反映が求められます。経過措置の終了後は、免税事業者からの仕入れにかかる消費税を1円も控除できなくなります。「まだ先の話」と考えず、今から少しずつ準備を進めていきましょう。 (編集:創業手帳編集部)
【完全無料】税金で損をしない!『税金チェックシート』
仕入税額控除の経過措置とは

仕入税額控除の経過措置により、インボイスを発行できない免税事業者からの仕入れでも、一定期間は消費税相当額の一部を控除できます。令和8年度税制改正大綱では、この経過措置の適用期間が延長され、2031年9月まで段階的に控除できるよう見直されました。仕入税額控除に経過措置が設けられた理由
経過措置の基本的な仕組み
経過措置の適用対象となる取引
【重要】税制改正による経過措置の変更点

令和8年度税制改正大綱により、仕入税額控除の経過措置が見直されました。当初予定されていた3段階のスケジュールが5段階に細分化され、控除割合の引き下げペースが緩やかになっています。改正後の新しいスケジュール
期間
改正前
改正後
2023/10/1〜2026/9/30
80%
80%
2026/10/1〜2028/9/30
50%
70%
2028/10/1〜2029/9/30
50%
50%
2029/10/1〜2030/9/30
0%
50%
2030/10/1〜2031/9/30
0%
30%
2031/10/1〜
0%
0%
改正による影響とメリット
経過措置期間中の控除額計算方法

経過措置を適用した仕入税額控除の計算は、通常の計算に「控除割合」を乗じるだけのシンプルな仕組みです。ただし、控除できなかった部分は実質的なコスト増となるため、期間ごとの負担額を正確に把握しておく必要があります。基本的な計算式
期間別の具体的な計算例
期間
控除割合
控除額
自己負担額
前期間比
2023年10月〜2026年9月
80%
40万円
10万円
—
2026年10月〜2028年9月
70%
35万円
15万円
+5万円
2028年10月〜2030年9月
50%
25万円
25万円
+10万円
2030年10月〜2031年9月
30%
15万円
35万円
+10万円
2031年10月〜
0%
0円
50万円
+15万円
複数税率がある場合の注意点
経過措置の適用を受けるために必要な3つの対応

経過措置の適用を受けるには、帳簿と請求書等の両方で要件を満たす必要があります。どちらか一方でも不備があれば控除が認められないため、日常の経理業務で確実に対応しておくことが大切です。1.帳簿記載の実務対応
2.請求書・領収書の保存要件の対応
3.取引先管理の対応
今後の対応策と準備

控除割合は段階的に引き下げられるため、今から計画的に準備を進めることが重要です。直前になって慌てるのではなく、各フェーズに合わせた対応策を講じておきましょう。取引先との交渉・契約見直し
経理システムの見直し
中長期的な資金計画の見直し
よくある質問(FAQ)

インボイスの経過措置に関して、実務でよく寄せられる質問にお答えします。少額特例との違いは?
経過措置は申請が必要?
まとめ







