融資白紙化から周囲の支援を力に再チャレンジ! 「いちわ食堂」の開業ストーリー
”笑顔をつくる食堂”いちわ食堂インタビュー
(2016/11/03更新)
「いちわ食堂」は今年の7月21日にオープンしました。安全・清潔・信頼をモットーに”笑顔をつくる食堂”を目指しているといういちわ食堂の店内は、木目調で統一されており、「年代を問わずに気軽に来て頂けるように」という心遣いが感じられます。
今回は、ご夫婦で仲良く経営していらっしゃる、「いちわ食堂」創業のきっかけや、お店に込められた思いを語っていただきました。
前職での”お客様の一言”がきっかけに
お店を始める前は、今年の3月末までお酒の卸屋に20年勤めており、山形の地酒・山形の特産品、そして四季折々に売れる商品たちに囲まれて生活していました。
昨年の秋頃は、まさか会社を辞めるとは思いもしませんでした。そんな時に、貿易関係の仕事仲間から今の主人を紹介され、お付き合いすることになり、今年の5月にめでたく結婚いたしました。
酒の卸屋に勤めて20年、いろいろな知識・ノウハウを学んできました。お客様とのコミュニケーションの取り方・接客の仕方・酒の知識・特に食品の発注をしていたので、取引ルートなどの知識も豊富です。私の勤めていた会社には県外からいらっしゃる方々も多く、「長井にはラーメン屋は多いのにふらっと入れる食堂がないね・・・。米どころなのに・・・」という言葉を何度も耳にしました。
また、私の主人は神奈川県出身で、結婚前は山形と神奈川を行き来する生活を送っていました。主人からも「山形は、米どころだから米をおいしく食べられる店に連れて行ってくれ」とよく言われました。
長井市は、ラーメン・そば屋・飲み屋が多い市です。長年住んでいる私でさえ紹介できるお店はありませんでした。そこで、自分たちでやってみようという思いが徐々に強くなってきました。
もう一つのきっかけは、親の介護です。社会問題にもなっていますが、会社勤めをしているころ父が介護状態になり、勤務時間が朝から夜まで拘束時間が長く、毎日毎日体も心も限界でした。一流企業に勤めているメーカーセールスの方々が、介護を理由に辞めていく方を何人か見ていましたが、まさか私もこういう立場に立つとは、夢にも思いもしませんでした。私が介護に不安を覚え落ち込んでいると、主人から、「自分で起業すれば時間は自分で決められる」と言われ、発想の転換を致しました。
「この場所では伸びない」融資がおりず苦戦
まずは、20年も勤めた会社を辞める決意をするのも大変で、勇気と戸惑いとの格闘の末、今年2月に食品衛生責任者の資格を取得し、自分の中の第一歩を踏み出しました。
そんな時に、主人が車の中で突然、「店の名前を考えた!“いちわ食堂”でいこう!」と言い出したのです。由来は、主人と私の名前から1文字ずつとって、2人のお店だからと、あっさりお店の名前は決まりました。
最初は不動産屋を回り、何店舗か下見をしました。店舗改装・売価価格はどれくらいか見積もりを取り、1店舗めぼしいところを決め、銀行のほうへ掛け合いました。初めての融資を受けるため、どのように話を切り出せばいいのかわかりませんでした。
不安と緊張の中、開業にむけて一歩ずつ進むはずでした。しかし、私たちの目線とは違い銀行からの返事は、「その場所はこれから伸びない」と一蹴され、そこの店舗では融資は受けられない、ということでした。自分たちの甘さを痛感しながらも納得できず、商工会議所にお話しをしに伺いました。
周囲の支援を力に、再チャレンジ!
話を聞いていただき、アドバイス頂いたことは銀行と同じ内容でした。しかし、長井市の現状を踏まえて、わかりやすく話をしていただいたので主人と再度話し合い、もう一度場所探しから始めました。
数カ月たったころ、”テナント募集”の文字が目にとまりました。そこが、今のお店の場所となっています。隣に今年の二月で閉店したヨークベニマルがある、長井市の中心商店街の一角です。
まだ建設中だったため、自分たちが全て内装を決められる空っぽの空き店舗でした。何度も足を運び、自分たちのイメージ通り造れるかと話を聞き、見積もりを取り、今度は違う銀行へ融資のお願いに伺いました。
一度断られていることから、今まで味わったことのない緊張感・恐怖感に襲われました。融資を受けられるようになるまでは、様々な書類を出さなければならず、自分のありのまま全てを、裸にされ見られているようでした。
さらに、保証協会との面談もあり、融資が受けられるか返答をいただくまでは、不安で不安で毎日神頼みの日々で、生きた心地がしませんでした。
しかしその間に、融資を受けられることを前提でお店のロゴマークを依頼しました。自分たちの不安を振り切り一歩ずつ前へ進むために。
決意が実り、融資決定の連絡が!
地元のIT企業である日本アルカディアネットワークへロゴマークを依頼しました。そこでクリエーターさんを募っていただき、118件の中から今のロゴを選びました。そのようなたくさんの中から1つを選ぶことは難しく、お年寄りからお子さんまで様々な年代の方に見てもらい決定し、最終手直しをお願いしてようやく完成しました。
すずなりに売り上げも実るように、文字のはねるところは売り上げが上向きになるように願いを込めて、そして誰が見てもごはん処だとわかるようにとロゴマークを決めていきました。
そのような中、待ちに待った融資決定の連絡を頂き、店舗契約の運びになりましたが、店舗契約時には、保証人も必要でした。厨房機器も、店舗が決まらないとサイズを合わせて購入できないため、融資決定と同時に注文しました。
創業補助金得て、いよいよ開業へ
はい。それと同時に、長井市役所へ商工会議所の方からバックアップして頂き、起業・創業支援事業補助金の申請をしました。私は、長井市でそのような制度があることさえ知らなかったので、制度の存在をご紹介いただけて、自分が住んでいる長井市から支援金をいただくことができてとても感謝しています。
店舗工事を急ピッチでお願いし、毎日、業者の方と話して徐々に店舗ができていきました。窓にロゴマークが張られたとき、嬉しくて涙が出ました。ようやく、店舗が完成した時にはもう7月でした。4月から準備して3カ月保健所に営業許可書を申請し7/5に許可がおりました。
はい!新品の冷蔵庫・ガス台などの厨房機器の配置場所やメニュー作成といったオープンの準備で寝ている暇もなくなりました。
特に、メニューには写真を載せるのか?色はどうするのか?価格設定はどうするのか?ということを次々に考えていきました。
日本アルカディアネットワークからアドバイスいただき、少しひねりの効いた商品名を使用しています。当店の看板メニューは「中華街仕込みチャーシュー丼」です。おまかせランチ「生姜たっぷりぶたの生姜焼き定食」もですね!
また、当店はラストオーダーが夜8時までとなっているので、ゆっくりご歓談いただけます。
オープンにあたり、招待させていただくお客様リストの作成や、仕入れ業者さんとの打ち合わせも行いました。
その際、いくら顔見知りでも”いちわ食堂”との取引ははじめてなので、全て現金支払いです。オープン直前になって細かいですが予想もしないような出費がかかりました。
オープン時に合わせて、地元コミュニティFMラジオでCMを1カ月お願いしました。慣れてきたところで、チラシを配布しPRしました。
一言!すこぶる大変です(笑)会社勤めとは違い、誰も守ってはくれません。
自分のお店なので、すべて自分の責任です。
会社勤めでは味わえないこと、味わなくてもいいこともありますが、しかし、やりがいはあります。ここまで、様々な方々から支えていただきアドバイスをくださった方、そしてお店の常連さんに本当に感謝しています!
オープンしてから、やまがたチャレンジ創業応援事業に商工会議所の方から支援していただき、めでたく補助金もいただけることになりました。起業したばかりなので本当にありがたいです。
本町商店街の力になりたい
そうですね。私たちのお店があるのは長井市中心部の本町商店街です。しかし、ヨークベニマルが本町商店街から撤退したことで、以前の商店街の賑わいはなくなっています。実際に、中心地からスーパーがなくなったことにより、お年寄りが買い物難民になっています。
お店の常連さんもその一人で、買い物があるときは山形市に住む息子さんに片道1時間かけてきてもらい、そうしない限りパンやお菓子など買い物にさえいけないそうです。
そういった、お年寄りの方々がお惣菜を気軽に買いに来ていただけるように、力を入れていきたいです。
先日嬉しいことがありました!おばあちゃん4人で食事会のために元ヨークベニマル様のお店だったところをみなさんで歩かれていて、うちのお店にも来てくださいました。以前はこんなふうに、お年寄りも自由に商店街での日常を楽しむのが普通だったなと思い出し心がほっとあたたかくなりました。微力でも、少しずつ商店街の力になりたいと思っています。
幅広い世代に寄り添える食堂に
主人が、調理師免許と技術考査の資格を持っているので若い世代の育成にも携わっていきたいですね。
そして、お年寄りの方が増える一方なので介護食の販売、在宅介護が増える中毎日の食事のお手伝いとしても地域に携わりたいです。同じ介護をしている者として、きっと、出来る事があると思います。
また、本当に微力ですが長井中心地にお住まいの方々や近隣にお住いの方々だけでなく幅広い世代に寄り添える”いちわ食堂”になりたいです。実際今は、毎日バタバタで、大きな夢をもてるようになることがまずは夢です。
起業は誰でもできると思います。やってみたから言えることは、それを続けていくことは起業する何十倍も難しく、そして険しい道のりです。
商売を、商いというように”あきないように”やることが大切だ、と先日知り合いに言われました。人生80年だとしてまだ半分残っています。自分らしく進んでいこうと思います。
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(取材協力:いちわ食堂)
(編集:創業手帳編集部)