法人税を節税するには?おすすめの対策方法&注意点を解説
法人税の節税対策で安定した利益確保につなげよう

法人税の負担は、企業の利益や資金繰りに大きな影響を与える重要な要素です。
適切な節税対策を行えば、税負担を抑えつつ手元資金を確保でき、事業投資や人材採用など次の成長に向けた判断もしやすくなります。
一方で、方法を誤ると一時的な効果に留まったり、税務上のリスクを抱えてしまったりするケースも少なくありません。
この記事では、代表的な法人税の節税対策や自社に合った対策の選び方、実践する際に注意すべきポイントをわかりやすく解説します。
無理のない節税で経営の安定と将来の成長を目指したい人は、ぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
法人税の節税とは

法人税は、企業活動によって得られた所得に対して課される税金であり、課税所得に税率が乗じることで、法人税額が決定します。
この法人税による負担を節税対策によって軽減できれば、手元に残る資金が多くなり、安定した企業経営にもつながりやすいです。
法人税の節税対策を行うためには、正しい節税について知っておくことが大切です。そのため、まずは法人税の節税について解説します。
節税・脱税・租税回避の違い
節税は、税法の範囲内で正しく税負担を抑えようとする行為です。
例えば必要経費を適切に計上することで課税所得を圧縮したり、税額控除などを活用して納める税金額を少なくしたりするなどが挙げられます。
一方、脱税は税法上課税される要件があるのに、故意に隠蔽して免れようとする行為を指します。
例えば本来は売上げが出ているのに隠したり、架空の経費を計上して課税所得を圧縮したりすると、脱税とみなされてしまうのです。
脱税が判明すると、本来納めるべき税金を納めていないことになるため、延滞税や加算税を納める必要が出てきてしまい、さらに刑事罰の対象にもなってしまいます。
租税回避は、税法では想定されていない形式で税負担を抑えようとする行為です。
脱税と似ているものの、税法には明確に記されていない方法を使っているため、法の抜け穴を突く形になります。
法的には合法となるものの、望ましくないとされているグレーゾーンになるため、租税回避や脱税ではなく、正しく節税対策を行うことが大切です。
法人税の節税はいつから検討すべきか
法人化したばかりで、どのタイミングで節税を検討すべきか迷う人もいるかもしれません。
法人税の節税に関しては、いつからはじめても問題ありません。むしろ、思い立った時にすぐはじめることが大切です。
年度末にまとめて行おうとすると、十分な対策を講じることができなかったり、本来対策できたものが不備によって認められなかったりするため、節税対策は年間を通じて計画的に実行するようにしてください。
法人税の節税対策は2種類に分けられる

法人税の節税対策には様々な方法がありますが、大きく「繰延型」と「永久型」の2つに分類できます。ここで、繰延型と永久型のそれぞれの特徴について解説します。
繰延型
繰延型は、税金の支払いを将来に先送りする節税対策の方法です。
例えば現在の課税所得を減らして実際に納める税金額を抑えたり、損失分を翌年度以降に繰り越したりすることで、将来の利益と相殺し税負担を抑えようとする方法です。
あくまで税金の支払いを先送りにしているため、トータルで支払う税金は変わらないものの、手元資金を保ちながら先行投資などに回せるようになります。
永久型
永久型は、永久的に税金の支払額を減らす、または支払いが発生しないようにする方法です。
非課税所得や税額控除の活用などは、課税所得を永久的に減少させる方法となるため、永久型に分類されます。
来期以降も継続して利益が出る場合、繰延型だけだと単に支払いを先送りにしているだけなので、永久型の節税対策を優先して行うのがおすすめです。
【繰延型】法人税の節税対策

節税対策の中でも手元資金を残すのに役立つ、繰延型の節税対策について紹介します。
未払費用を漏れなく計上する
決算時点ですでに発生しているものの、支払いが翌期以降となる費用は「未払費用」として当期の損金に算入可能です。
例えば、翌月に支払う当月分のリース料や通信費、従業員への給与などが該当します。
これらを正しく計上することで、当期の利益を適切に圧縮でき、法人税の負担軽減につながります。
ただし、実際に発生していない費用を計上することは認められていないため、請求書や契約書など、発生事実を証明できる資料を整えておくことが重要です。
赤字を繰り越す
法人が赤字(欠損金)を計上した場合、最大10年間にわたってその赤字を翌期以降の黒字と相殺できる「繰越控除」が認められています。
これにより、黒字化した年度の課税所得を抑えられ、将来の法人税負担を軽減できます。
繰越期間や控除限度額には要件があるため、適用を受けるためには期限内の申告や適切な帳簿管理が欠かせません。赤字が出た場合でも、正確な申告を行うことが重要です。
ただし、赤字が出ていても、法人住民税の均等割は課税されてしまうので注意してください。
決算月を変更する
決算月を変更することで、利益が集中しやすい時期を避け、税負担の平準化を図れます。
例えば、売上げが特定の月に偏る業種では、決算月の見直しによって課税所得を調整しやすくなるケースがあります。
ただし、決算月の変更は一度行うと頻繁に変更できるものではなく、取引先や金融機関への影響も考慮しなければなりません。
また、税務署への届け出や会計処理の見直しも必要であり、コストや手間についても慎重に検討した上で変更の手続きを進めることが大切です。
設備投資減税を活用する
一定の要件を満たす設備投資を行った場合、特別償却や税額控除といった優遇措置を受けられる制度があります。
これらを活用することで、当期または将来の法人税負担を軽減することが可能です。
特に設備投資が必須となる製造業・サービス業にとって、効果的な節税対策といえます。
設備投資減税は、対象設備や適用期限が定められているため、事前に制度内容を確認することが重要です。
単なる節税目的ではなく、事業成長に資する投資であるかを見極めた上で活用してください。
短期前払費用の特例を活用する
短期前払費用の特例を利用すると、1年以内に支払いが確定しているサービスの費用について、支払時に全額損金算入できます。
例えば、家賃や保守契約料、保険料、広告費などが対象となります。
この特例を活用すれば、決算前に支払いを行うことで当期の利益を圧縮することが可能です。
ただし、継続的に適用することが前提となるため、単年度だけの利用は認められない点には注意してください。
経営セーフティ共済に加入する
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)は、取引先の倒産リスクに備える制度です。
この制度の大きな特徴として、支払った掛金は全額損金算入できる点が挙げられます。
毎月5,000円~20万円の範囲内で一定額を積み立てることで、節税とリスク対策を同時に行うことが可能です。
また、無担保・無保証で掛金の10倍(最大8,000万円)まで借入れることもできます。
取引先の倒産によって売掛金が回収できなくなり、資金繰りが悪化した場合などにも役立ちます。
【永久型】法人税の節税対策

続いて、永久型に分類される節税対策の中でも代表的なものを紹介します。
役員報酬を損金で計上する
役員報酬は、一定の要件を満たすことで全額を損金として計上できます。
定期同額給与や事前確定届出給与など、税務上認められた支給方法を選ぶことで、法人の利益を圧縮し、法人税の節税につながります。
ただし、要件を満たさない支給方法や、業務内容に対して過剰な報酬を支払うと、損金計上が認められなくなったり、役員個人が納める所得税の増額によって、トータルでの納税額が増えたりするかもしれません。
報酬額や支給方法は、慎重に設計することが重要です。
接待交際費を計上する
取引先との会食や贈答品などにかかる接待交際費は、一定の限度内であれば損金算入が可能です。
例えば資本金1億円以下の中小企業では、800万円または接待飲食にかかった費用の50%分が損金算入できる上限額となります。
| 損金算入の上限額 | |
| 資本金1億円以下 | 800万円または接待飲食でかかった費用の50% |
| 資本金1億円超 | 接待飲食でかかった費用の50% |
| 資本金100億円超 | 全額不算入 |
ただし、接待交際費は私的な支出との区別が曖昧になると否認リスクが高まるため、参加者や目的を明確にし、領収書や記録を適切に管理することが大切です。
不要な在庫を処分する
長期間売れ残っている在庫や、価値が低下した商品を処分すると、棚卸資産の評価損や廃棄損として損金計上できる場合があります。
不要な在庫を売却した際に、売却価格が帳簿価額を下回っていると、その差額分が損失として認識されるため、法人税の負担が軽減されます。
在庫の適正化は、節税だけでなく、保管コストや管理負担の削減にもつながります。
ただし、実際に廃棄した事実や、価値が低下していることを客観的に示す資料が必要となる点に注意が必要です。
決算賞与を支給する
一定の要件を満たした決算賞与は、未払費用として当期の損金に算入できます。従業員のモチベーション向上と節税を同時に実現できる点が大きなメリットです。
支給対象者や金額、支給時期を決算時点で明確にしておく必要があり、要件を満たさない場合は損金算入が認められません。
-
- 決算賞与の支給対象者に、事業年度内に賞与の支給額を通知している
- 決算賞与の支給通知から1カ月以内に支給を完了している
- 対象者に支給額を通知した日の属する事業年度に経費処理をしている
社員旅行・健康診断を制度化する
社員旅行や健康診断は、福利厚生費として損金計上できる場合があります。特に全従業員を対象とした制度として運用されていれば、永久的な節税効果が期待できます。
一部の役員や特定の従業員のみを対象とした場合は、給与や交際費と判断される可能性があり、制度設計と運用ルールの明確化が欠かせません。
例えば社員旅行の場合、参加しなかった従業員に対して旅行代金の代わりに金銭を支給した場合、給与扱いとみなされ課税対象になります。
少額減価償却資産の特例を利用する
中小企業などが30万円未満の資産を取得した場合、少額減価償却資産の特例によって取得した年度に全額損金算入可能です。
設備や備品を導入する際に活用すれば、即効性のある節税対策となります。
適用には上限金額や資産の種類などの条件があるため、以下の対象範囲に当てはまるか事前に確認しておくことが重要です。
-
- 従業員が500人以下
- 資本金または出資金が1億円以下
- 青色申告法人
- 通算法人に当てはまらない
- 適用除外事業者(過去3年間の事業年度において平均所得金額が15億円を超える法人)に当てはまらない
社宅制度を取り入れる
社宅制度を導入することで、家賃や管理費などを福利厚生費として経費計上でき、法人税の負担軽減につながります。
従業員の生活支援や採用力の向上にも寄与する点が特徴です。
ただし、役員社宅の扱いや賃料相当額の計算を誤ると、給与課税や経費否認のリスクが生じます。税務ルールを踏まえた適切な運用が不可欠です。
経営者の自家用車を法人名義にする
業務で使用する自動車を法人名義にすることで、車両購入費や維持費、保険料などを経費として計上できます。
業務利用割合に応じた処理を行えば、実態に即した節税が可能です。
ただし、プライベートで利用した分まで経費に含めてしまうと否認される恐れがあるため、使用状況を明確にし、適切な按分処理を行うことが重要です。
賃上げ促進税制を活用する
一定の要件を満たして賃上げを行った企業は、賃上げ促進税制により法人税の税額控除を受けられます。
人材確保や従業員満足度の向上と、税負担の軽減を両立できる制度です。
賃上げ促進税制を活用するには、中小企業などは前年度と比べて雇用者給与等支給額が1.5%以上または2.5%以上増加しているなどの要件を満たす必要があります。
適用要件や控除率は年度ごとに見直されることがあるため、最新の制度内容を確認しながら活用することが求められます。
企業版ふるさと納税を活用する
企業版ふるさと納税は、地方公共団体の認定事業に寄附を行うことで、法人税などの税額控除を受けられる制度です。
寄附額の一部は損金算入され、さらに税額控除が適用されるため、実質的な負担を抑えながら社会貢献が可能です。
ただし、寄附先や事業内容には要件があり、すべての寄附が対象となるわけではありません。制度の仕組みを理解した上で、自社の方針に合った形で活用することが重要です。
法人税の節税は会社の状況に合わせて選ぶことが重要

法人税の節税対策には様々な方法がありますが、すべての会社に同じ対策が有効とは限りません。
会社の利益状況や設立年数、資金繰りの余裕などによって、適した節税策は大きく異なります。
無理に節税を進めると、資金不足や税務リスクにつながるおそれもあるため、自社の状況に合った方法を選ぶことが重要です。
ここでは、黒字企業・赤字企業・設立間もない法人に分けて、考え方のポイントを整理していきます。
黒字企業に向いている節税対策
法人税は原則として事業年度ごとに区切って計算するため、赤字になったとしても納めた税金が戻ってくることはありません。
そのため、黒字が出ている時にもしっかりと節税を行うことで、万が一赤字に転落してしまった場合でも、存続させる経営体力を保持しやすくなります。
黒字が出ている企業は、法人税の負担が実際に発生するため、節税効果が目に見えやすい状況でもあります。
この場合は、設備投資減税や少額減価償却資産の特例、賃上げ促進税制など、税額そのものを抑えられる制度の活用が有効です。
また、決算賞与や役員報酬の適切な設計など、損金算入による節税も検討できます。
ただし、節税を優先しすぎてキャッシュフローを圧迫しないよう、支出と資金残高のバランスには注意が必要です。
赤字企業でも検討できる節税対策
赤字企業の場合、そもそも法人税が発生しない、または少額であるケースも多く、無理な節税対策は不要になります。
一方で、赤字を翌期以降に繰り越す「欠損金の繰越控除」は、将来黒字化した際に税負担を軽減できるため、必ず押さえておきたい制度です。
また、青色申告を行っている法人の場合、前年分が黒字であれば法人税の還付を受けることも可能です。
前年分の黒字から当期の赤字を相殺できる制度であり、前年の法人税が減額されることで納め過ぎた分の還付を受けられることになります。
ほかにも、経費の計上漏れがないかを確認する、短期前払費用の特例を適切に使うなど、基本的な会計処理の見直しが重要になります。
赤字時は節税よりも、資金繰りの安定を優先する視点が欠かせません。
設立間もない法人が注意すべきポイント
設立間もない法人は、売上げや利益が安定していないことが多く、節税ありきの対策はリスクになりやすい段階です。
この時期は、制度が複雑な節税対策に手を出すよりも、まずは事業を軌道に乗せ、帳簿付けや決算処理を正確に行うなど、将来に備えた基盤づくりを優先してください。
特に設備投資などまとまった資金が必要となる節税対策を行うと、キャッシュフローに大きな影響を与えてしまうため、注意が必要です。
また、設立初期は金融機関からの評価も重要になるため、節税によって利益を極端に圧縮しすぎると、融資に不利に働く可能性もあります。
まずは基本を固め、必要に応じて専門家に相談しながら進めることが安心です。
法人税を節税する際に気をつけたいこと

法人税の節税は、つい目先の節税ばかりに目を向けてしまいがちですが、リスクや事業への影響なども踏まえた上で、適切な節税対策を見極めていく必要があります。
ここで、法人税を節税する際に気をつけたいことを3つ紹介します。
資金不足にならないよう注意する
いくら税額負担を抑えたいからといって、節税対策に力を入れていたとしても、いざという時に使える手元の資金が不足してしまったら意味がありません。
例えば、経費が増やすことで課税所得分を圧縮でき、節税効果を得られますが、必要以上に経費を増やそうとすると資金不足に陥る可能性があります。
手元の資金が不足してしまえば、いくら絶大な節税効果を得られたとしても、会社の倒産リスクは高まってしまうものです。
このような事態を回避するためにも、キャッシュフローも明確にした上で最適な節税対策かどうか検討することが大切です。
金融機関からの評価に気をつける
節税対策は企業の利益を圧縮することになりますが、過度な節税対策によって金融機関から「業績が芳しくない企業」と判断されてしまう可能性があります。
金融機関からの評価が下がってしまうと、融資を受けられなくなったり、融資は受けられるものの不利な条件でしか受けられなかったりする場合もあるため、注意が必要です。
今は融資を受けなかったとしても、将来的に利用する可能性はゼロではないため、対外的な評価が悪化するほどの過度な節税対策まで行かないように気をつけてください。
追徴課税にならないよう適切に処理する
とにかく税負担を抑えようと、架空の経費を計上しようとしたり、経費として認められる可能性の低いものを計上したりすると、税務調査などで追徴課税のペナルティを受けてしまう場合があります。
追徴課税を受けてしまうと、本来納めるべき税金額よりもさらに税金を支払わなくてはならないため、本末転倒になります。
また、複数の企業を経営している場合、節税しようとして不自然に受発注を繰り返し、企業間で利益を移転しようとすると、税務調査で指摘される可能性が高いです。
追徴課税や税務調査で指摘されないように、適切な処理を心がけてください。
まとめ・キャッシュフローなどに注意しながら法人税の負担を軽減しよう
法人税の節税対策は、単に税額を減らすことが目的ではなく、事業を安定的に成長させるための資金を確保する手段でもあります。
繰延型・永久型それぞれの特徴を理解し、自社の利益状況や成長フェーズに合った対策を選ぶことが重要です。
無理のない節税を心がけ、必要に応じて専門家の力も借りながら、長期的に健全な経営につなげていってください。
創業手帳(冊子版)は、中小企業の経営者や個人事業主が知りたい節税対策についても解説しています。節税効果を高めたいという人も、ぜひ創業手帳をお役立てください。
(編集:創業手帳編集部)






