主婦起業家が挑戦!経験・知識ゼロからの「ベビー水着」作り 

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※このインタビュー内容は2020年03月に行われた取材時点のものです。

ひなたベイビーの江田真穂代表に、主婦起業ストーリーを聞きました

(2020/03/17更新)

ひなたベイビー」の江田真穂代表は、オリジナルのベビー水着の製造・販売事業を展開している、主婦起業家です。子育てで直面した問題から得たアイデアを元に、宮崎・千葉のビジコンに挑戦。そこから繋がったチャンスを掴み、プロダクトづくりと起業を実現しました。

江田氏は、子育てに悩みながら、起業の経験・知識もゼロの状態から事業化にこぎつけたといいます。パワフルな主婦起業家の創業エピソードを聞きました。

江田真穂(えだ まほ)ひなたベイビー代表

大手人材広告企業での勤務を経たのちに退職、主婦になる。子育て中に経験したベビースイミングをきっかけに、保温性の高いベビー水着の開発を決意。2019年に宮崎県の「女性起業家ビジネスコンテストW-ing MIYAZAKI」、千葉県の「CHIBAビジコン2019」に出場し、ファイナリストに選出される。現在、オリジナル水着ブランド「ひなたベイビー」を開発し、法人起業の準備を進めている。

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娘のために「温かくて着せやすいベビー水着」を作りたい

ー事業の概要を教えて下さい

江田ウェットスーツ素材を使ったベビー水着の開発・販売事業を展開しています。個人事業主として事業を立ち上げ、2020年6月の商品販売開始を目指して調整を進めています。

ー起業に至ったエピソードを教えて下さい

江田:もともと大手人材広告企業で法人営業の業務に携わっていましたが、結婚を期に主婦になりました。転勤の多い夫についていく形です。

娘が生まれてからの子育ては、とても大変でした。夫は仕事で忙しく、なかなか子育てを一緒にできません。転勤先の慣れない土地で、周りには知り合いも親類もおらず、結果として家で娘と2人きりになる時間が多かったのです。孤独で気持ちが塞ぐ時期もありました。

そんな中で、娘がなかなか寝てくれない時期がありました。「これはどうにかしないと!とにかく、外に出るきっかけを作ろう」と思い立ち、ベビースイミングスクールに通うことにしました。

娘はスイミングを始めてからようやく寝るようになり、すこしほっとしました。

しかし、娘とスイミングしている時、プールの利用者から「そんな小さな赤ちゃんをプールに入れたら寒そうだし、かわいそうよ!」と言われました。凄くショックでしたが、確かに、プールに浸かっている娘の唇が紫色になっていることに気づき、「通常の水着だと寒いのかもしれない」と感じました。

そこで、ウェットスーツ素材でできた、寒くなりにくい海外性のベビー水着を見つけて使い始めたところ、体温の低下が改善されました。私は、この買い物に大変満足しました。

ところが、娘が成長するにつれて活発に動き出し、上下が一体となっている海外性の水着を脱ぎ着させることが大変になってきました。

なにより、娘を夫に任せてスイミングに行ってもらった際、夫は1人で、娘にうまく水着を着せることができませんでした。「普段仕事で忙しい夫が、せっかく娘と一緒に育児に参加できる機会を、水着のせいで逃してしまうのはもったいない」と思いました。

そこで、「誰もが子どもにかんたんに着せられて、温かいベビー水着を作れないか」と考えたのです。これが起業のきっかけです。

ーどうして、主婦から起業しようと考えたのでしょうか?

江田:夫の転勤についていくにあたり、これまで培ったキャリアを手放してしまうのが不本意だったことが大きいですね。さらに子どもがいると、再就職先を探すにしても「やりたいことではなく、やれること」という選択を取らざるを得ないのが辛いと思いました。

場所や環境に縛られずに、一生続けられる働き方」としてたどり着いたのが、起業だったのです。

知識ゼロからのプロダクトづくりで学んだこと

ーアイデアの着想から、実際にプロダクトを作るまでのプロセスを教えて下さい

江田起業の経験も知識もゼロだったので、「そもそもベビー水着が起業の種になるのか?」すらわからない状態からのスタートでした。

「主婦・ビジネス・アイデア」といったワードで情報収集する中で、私の地元でもある宮崎県の「※よろず支援拠点」が主催している、女性向けのビジネスプランコンテストを見つけました。思いつきでコンテストに向けたベビー水着事業の企画書を提出してみたところ、最終選考まで残ることができました。これをきっかけに、起業に対する現実感がわきました。

※よろす支援拠点:中小企業・小規模事業者向けの無料で利用できる経営相談サービス

そこから、友人づてに宮崎県内のウェットスーツ工場を紹介してもらいました。水着のアイデアだけ持って相談に行ってみた所、「パターン(型紙)と指示書があれば作れますよ!」と言われました。

となると、パターンと指示書を作れば良いわけですが、アパレル領域のノウハウもゼロだったので、自力ではできません。そこで、よろず支援拠点の方から宮崎県内の洋服屋さんを紹介してもらい、水着のイメージをパターンに起こしてもらいました。

パターンを元に、ウェットスーツに近い素材で試作品を作ってみたのですが、いざ作ってみると着せやすさに問題が見つかりました。4回ほど調整を重ねて、ようやくイメージに近い試作品を完成させることができました。

試作品。厚手の素材で、体温の低下を抑える設計になっている。

こうして出来た試作品を持って、新たに千葉のビジコンに出展した所、こちらも選考が進みました。結果千葉の工場との提携が決まり、協力してくれるデザイナーにも出会うことができ、ベビー水着を製品として本格的に生産する体制が整いました。

ー初めてのプロダクトづくりで苦労した点、学んだことはありますか

江田:まず、「自分の中で譲れない部分を明確にすること」の大事さを学びました。私は未経験の状態からプロダクトづくりをスタートしましたが、デザイナーや工場の方と仕事をするにあたって、専門知識の無さから判断に迷ったり、自分が目指している理想と、先方の意見との兼ね合いに悩むポイントが数多くありました。

プロダクトを作る形の起業を考えている人は、まず「ここだけは譲れない」というポイントをしっかり持って、プロダクトづくりの主導権を握った上で進めると良いと思います。

また、未経験の領域に挑戦する場合は、有識者の意見を取り入れることができる体制づくりが大事だと痛感しました。わからない者同士でプロダクトを作ろうとすると、思わぬトラブルが発生しやすくなります。最初から専門家のチェックが入るような形を作ると、よりスムーズに事業が進むと思います。

ゆくゆくは、女性が子どもと一緒に働ける職場を作りたい

ー起業から得た発見を教えて下さい

江田:子育てで、娘と2人きりになる時間がとても多く、孤独を感じていた時期がありました。でも、起業に向けて自分から動き始めたら、想像以上にいろんな人が賛同してくれ、助けてくれることを知りました。動き出す前は「子どもを連れて商談なんてできるわけない!」と思っていましたが、やってみたらできました。

主婦と起業の両立について、自分でできないと決めつけていた部分が多かったのだとわかりました。やりたいことが本当にできるかどうかは、一歩動き出してみないとわからないものですね。

ー今後の事業の展望を教えて下さい

江田:まず、今年の6月に販売開始することを目指して、商品化を進めています。今は個人事業ですが、段階を踏んで法人化も視野に入れています。プロダクトについては、赤ちゃんだけでなく、シニアや身体障碍者向けの水着も作りたいと考えています。

ーどんな経営者になりたいかを教えて下さい

江田:ゆくゆくは、女性が子どもと一緒の場で働ける職場をつくりたいと考えています。ネット販売をメインとし、利益偏重ではなく、「9時~17時の勤務時間で作って発送できる量しか受注しない」といった形で、子育てや生活を大切にできる事業にしたいですね。

ー最後に、起業を考えている主婦の方に向けてメッセージをお願いします

江田:ツテも経験もない専業主婦が起業を考えた時、目の前の子育ての問題や、事業に対する協力者の問題、現実的な金銭の問題など、多くの課題が壁のように立ち塞がります。事業を立ち上げたあとも、利益を生むためには、もっと多くの課題と覚悟、学びが必要になります。私も、「私には無理かも…。」「いや、やるぞ!」という気持ちの間を何度も行き来してきました。

しかし、自分が感じた「課題」をどうにか解決したい!という気持ちだけはずっと消えず、それが今の原動力になっているのだと感じています。

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(編集:創業手帳編集部)

(取材協力: ひなたベイビー/江田真穂代表
(編集: 創業手帳編集部)



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