フリーランスと業務委託は何が違う?業務委託契約を結ぶ際に気を付けたいことも解説
フリーランスとして働くなら「業務委託契約」について知るべき!
フリーランスは、業務委託契約を結んで仕事を受注する立場です。お互いに良好な関係を築き上げるためには、業務契約の内容について理解しておいてください。
業務委託で働くフリーランスは、自分で法律の知識を身につけないと権利を主張できません。
安定して収入を得るためにも、業務委託契約やフリーランス新法について知っておくようにしてください。
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
この記事の目次
フリーランスと業務委託契約の違い
独立や起業でフリーランスになろうと考えたことがある人は多いかもしれません。フリーランスと呼ばれる働き方は、この数年で前よりも認知されるようになりました。
自由度が高い働き方をしたい、スキルを武器にしたいといった思いからフリーランスを目指す人もいます。
しかし、フリーランスとはどういった働き方なのか、業務委託契約との関係は理解しているでしょうか。
ここからは、フリーランスになる前に知っておきたい基礎知識をまとめています。
フリーランスとは
フリーランスは、会社や特定の組織に所属せずに個人で仕事を請け負う働き方です。
同じように働くエンジニアやライター、デザイナーや営業員だとしても組織に属する従業員かフリーランスかによって立場はまったく別です。
従業員であれば会社と雇用契約を結びます。一方で、フリーランスは会社と対等な立場となって業務委託契約を結びます。
契約の種類が違うため、受けられる保護や扱いも大きく異なるのです。
業務委託契約とは
業務委託契約は、企業がほかの企業やフリーランスに仕事を委託をする時に行う契約です。業務委託をする時には、発注者と受注者で業務委託契約を結びます。
業務委託契約はそもそも法律には存在しない契約であり、正確には以下の3つの契約に分類されます。それぞれの違いを知っておいてください。
請負契約
請負契約は、民法632条に規定された発注者が受注者に対してある業務を委託し、受注者はその業務を完成させることで報酬が発生する契約です。
発注者は、成果物に対して報酬を支払うため、成果物を納品できない時には報酬も発生しません。
請負契約で、受注者つまりフリーランスが負う義務は業務の完遂です。納品した後にも修正や損害賠償といった成果物に関わる責任を負う可能性もあります。
委任契約
委任契約は、民法643条に定められた契約です。発注者が受注者に法律行為の遂行を委託して、受注者はその業務を遂行することで報酬を受け取ります。
委任契約では、委託した仕事の遂行にかかる工数や作業時間に対して報酬を支払うため、成果物の納品義務はありません。
委任契約の法律行為とは、当事者の意思表示で何らかの法的効果を生じる行為をいいます。具体的には弁護士や税理士に仕事を依頼する時は委任契約です。
準委任契約
民法656条に規定される準委任契約は、発注者が受注者に法律行為以外の業務の遂行を委託して、受注者はその業務の遂行によって報酬を受け取る契約です。
委任契約との違いは、委託する業務が法律行為かどうかです。
準委任契約でも成果物の納品義務はなく、報酬は業務遂行にかかる工数や作業時間に対して支払われます。
マーケティング施策の実行やエンジニアリングの委託が準委任契約です。
フリーランスが業務委託契約を行うメリット
業務委託は雇用契約や派遣契約とは違います。フリーランスが業務委託を選んで働くことにどのようなメリットがあるのかまとめました。
好きな分野で仕事ができる
フリーランスで働く最大のメリットともいえるのが、好きな仕事、分野を選んで働ける点です。
会社員として働く場合、職場で任された仕事が自分にとって気が乗らないものや不得意であっても遂行しなければいけません。
専門分野でない部署に配属される可能性もあります。
しかし、業務委託であれば、苦手分野や気乗りしない案件は避け、自分のスキルや経験を活かした分野で働けます。
仕事を受けるかどうかの決定を自分でできるため、仕事のやる気も上昇するでしょう。
働き方を自由に選べる
業務委託で働く場合、働き方も自由に選択可能です。会社員は指示された就業場所や就業時間で働かなければいけません。
しかし、常駐型の契約は制限がありますが基本的に業務委託は契約に沿っていれば自由な場所と時間に働けます。
作業を調整して長期休みに旅行や趣味に時間を使うといった方法もあり、プライベートを充実させたい人にもおすすめしたい働き方です。
成果によっては高収入が期待できる
業務委託は、働き方次第で収入アップが期待できる働き方です。特に請負契約は、成果物に対して報酬が支払われます。
単純にいえば、成果物を増やしたり品質を上げたりすれば報酬も増やせます。
会社員であっても努力次第で昇給は可能です。しかし、給与テーブルが決まっていたり、上司からの評価で算出されたり、努力しても大幅な収入アップは難しいかもしれません。
自分のスキルアップや努力次第で高収入を目指すならフリーランスは適した方法といえます。
フリーランスが業務委託契約を行うデメリット
フリーランスが業務委託契約を行うことには多くのメリットがあります。しかし、デメリットが一切ないとはいえません。
どういった点がデメリットであるかを知ってからフリーランスを目指してください。
収入が不安定
会社員は、自分が働かなくても給与が毎月支払われます。しかし、フリーランスは作った成果物の量や品質によって収入が変動します。
Webサイトを運営するといったお金を生み出す仕組みで稼ぐ人もいますが、基本的には稼働した収入しか得られません。
フリーランスはあくまで業務委託なので、業務委託契約を解除や途中解約されてしまう可能性もあります。
収入の柱にしていた案件がなくなれば、収入が大きくダウンしてしまうでしょう。
フリーランスは働いた分だけ稼げることがモチベーションにつながる一方で、働いた分しか収入を得られない点は留意しなければいけません。
事務作業もすべて自分が行う
今まで会社で年末調整を受けていた会社員は、確定申告をしたことがない人も多いかもしれません。
しかし、業務委託で働く時には、一定額以上で確定申告をする必要があります。
さらに開業届の提出や経費処理、各種保険料や住民税の支払いといった作業も行います。
本業に集中するために業務委託で働いているのに、事務作業で本業の時間が少なくなってしまうかもしれません。
労働基準法の対象外となってしまう
業務委託で働くフリーランスは、労働基準法の対象外です。
労働基準法は労働者の権利を守るための法律ではありますが、業務委託で働くフリーランスは労働者ではなく保護の対象になりません。
労働基準法では、労働時間や休憩の規定がありますが、フリーランスは適用されないのです。
労働基準法を守る必要がないため、仕事熱心なフリーランスほど働きすぎてしまうことがあります。
働き方によっては時給換算で最低賃金を下回ってしまうケースもあり、自分で働き方をコントロールする必要があります。
フリーランスの業務委託契約で起こり得るトラブル例
フリーランスの業務委託契約は、残念ながらトラブルが発生することもあります。
トラブルを避けて安定して働き続けるためには、どのようなトラブルがあるのかを知って事前に対策を立ててください。
報酬の未払い
報酬の未払いなどのトラブルは、金銭の要素を含むため頻繁に生じます。
報酬額や支払い方法、期間のほか成果物の合格基準について認識がずれているとトラブルが発生しやすいです。
フリーランス側が契約した業務を遂行したのに報酬が支払われないといったケースでは、どこまでの仕事で業務が遂行されたと判断するかが争点となります。
業務内容や範囲があいまいだとトラブルになりやすいので対象範囲を明確にしなければいけません。
契約解除・途中解約
急に契約解除や途中解約されてしまうトラブルも、業務委託でよく発生します。請負契約はよほどの場合を除いて途中解約、契約解除ができません。
委任契約でも委託者側からの契約解除は難しい場合があります。
業務委託契約を結ぶ時には、中途解約や契約解除について明記しておくことが大切です。
偽装請負
偽装請負とは、業務委託を結ぶ受託者を正社員と同じように指揮命令下で働かせることをいいます。
実態は正社員と同じように働いているのに、業務委託として手当や福利厚生が受けられない立場で働くことになってしまいます。
会社側が業務委託のほうが費用が抑えられるからと、正社員を解雇して業務委託契約に切り替えて、正社員時代と同様の労働条件を課すのも偽装請負です。
情報漏洩・知的財産権の侵害
業務委託では、委託者の業務内容や情報を外部を共有するため、情報漏洩や知的財産権の侵害に注意しなければいけません。
フリーランス側の落ち度や悪意で機密情報が外部に漏れると、企業の信用を損ねるリスクもあります。
さらに、委託者が提供した素材を不正使用した場合には著作権違反となります。
テキストや画像、ソフトウェアは著作権の対象で制作者の許可がない使用や改変は法的に認められません。
成果物に対して知的財産権が発生するような場合であれば、発生した知的財産権がどこに帰属するかも重要なので業務委託契約書に明記してください。
業務委託契約を結ぶ際に気を付けたいこと
フリーランスが業務委託契約を結ぶ時には、必ず内容を確認して理解しておくようにしなければいけません。
一般的にフリーランスが業務委託契約を企業と結ぶ時には、発注する企業側が契約を作成します。業務委託契約を結ぶ時にフリーランスが注意すべきことをまとめました。
契約書の内容をよく確認してから締結する
フリーランスが契約を結ぶ時には、まず内容をよく確認してください。報酬や業務内容が明確に記載されているかどうかは重要です。
口頭での合意だけで契約すると後からトラブルに発展するかもしれません。契約書には支払い条件や業務内容や納品物の範囲、納期も詳細に記載しておくようおすすめします。
2024年11月1日からはフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引きの適正化等に関する法律)が施行されました。
これは、従業員を使用していなければ業務委託で働くフリーランスにも適用されます。
フリーランス新法では、委託者が業務を委託する際に、直ちに取引条件を書面または電磁的方法で明示するよう義務付けられています。
明示すべき取引条件のほか、報酬の支払い期限と支払い義務や発注事業者の禁止行為などが規定されました。
フリーランス新法はフリーランスの就業環境整備に努める内容になっているので、確認しておくようにしてください。
フリーランス新法についてはこちらをチェック!
報酬とは別に経費も支払われるか確認する
フリーランスの仕事では、交通費や備品代といった経費が発生するものもあります。こうした必要経費が支払われるかどうかは契約締結前に確認してください。
必要経費についての定めがない時には、話し合って誰が支払うかをはっきりさせておくようにしましょう。
受注者であるフリーランスがすべて支払う契約にしてしまうと負担が大きくなりすぎることがあります。
継続的に仕事が発生する場合や、交通費が必ず発生するような場合は別に経費の支払いを受けるほうが安心して働けます。
経費の支払いが決まったら、「経費は○○の負担とする」と明確に記載するようにしてください。
修正対応も含めた業務の範囲を明確にする
業務委託契約の中でも細かく取り決めておきたいのが業務の範囲です。どこからどこまでが業務の範囲とするかを明記してください。
エンジニアでいえば、コーディングだけを請け負うのか、顧客対応や修正対応までを範囲に含めるかによって作業量は大きく変わります。
業務の範囲が明確になっていないと双方で認識がズレて「この部分が遂行されていない」もしくは「仕事はここまでと聞いていた」などのトラブルになってしまうことがあります。
契約書には仕事の内容、範囲まで詳細に記載しなければいけません。
詳細の業務が多くて書ききれないような場合には「関連業務や付随業務を含むものとする」といった記載を使います。
著作権の所在がどこにあるか確認する
デザインなどのようにクリエイティブな業務に携わる場合には、成果物の著作権の所在がどこにあるかを明確にしておきます。
デザインやコンテンツといった著作権が発生するものは、権利について明確にしないと後からトラブルになるかもしれません。
フリーランスの視点では、納品した成果物を後で自分の作品としてポートフォリオで公開できるかどうかは重要です。
著作権の所在が発注者に譲渡される場合ポートフォリオに掲載できないことがあります。
仕事の成果物をポートフォリオでまとめて次の案件につなげたいというフリーランスは多いでしょう。
フリーランスが勝手に公開できないので、必ず著作権の所在やポートフォリオへの掲載の可否を確認してください。
まとめ・フリーランスとして契約の重要性を理解しておこう
働き方のひとつとしてフリーランスは定着しています。その一方で、フリーランスだからこそ意識しておきたいリスクについては見逃されがちです。
フリーランスは会社や労働基準法の保護が受けられないからこそ、リスクを把握して対策しなければいけません。
フリーランスとして契約を結ぶ時には、どういった点について確認しなければならないかを理解しておくようにしてください。
創業手帳(冊子版)は、フリーランスを始めようとしている方にももちろん活用できる起業・経営のためのノウハウが満載の冊子となっています。無料でお配りしていますので、ぜひご活用ください。
(編集:創業手帳編集部)