フェムテック(Femtech)とは? 関連する企業や商品を紹介
近年進むフェムテックの推進
内閣府が決定した「女性活躍・男女共同参画の重点方針2021」において「フェムテック」の推進が明記されました。
女性のライフステージには、さまざまな健康課題が存在しています。課題解決するための手段として、近年注目されているのがフェムテックです。
この記事ではフェムテックについて、詳しく解説していきます。
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この記事の目次
フェムテック(Femtech)とは
フェムテック(Femtech)とは、「Female(女性)」と「Technology(技術)」を組み合わせた造語です。テクノロジーの力で、女性の健康問題やライフスタイルの課題を解決するための商品やサービスを指します。
デンマーク出身の起業家に、イダ・ティンという女性がいます。彼女が2012年に月経(生理)周期予測アプリ「Clue(クルー)」への投資を集めるために使いはじめたことがきっかけで、フェムテックという言葉が広がりはじめました。
これまで女性の健康問題はタブー視されていましたが、日本でも徐々に広がりを見せており、フェムテックへの投資も増加しています。
フェムテック(Femtech)の市場規模
日本でもSDGsが浸透し、女性の社会進出やジェンダー平等の議論が活発になりました。それに伴い、企業の関心も高まり市場規模は拡大しています。
矢野経済研究所によると、2020年のフェムテック&フェムケアの市場規模は約597億円。2021年には約635億円を見込んでいます。大企業の参入に加え、女性のウェルネス課題の解決・支援事業をおこなう「fermata(フェルマータ)」などのスタートアップが続々誕生しています。
さらに世界に目を向けると、フェムテック市場は急拡大をしています。CBインサイツの予想では、2025年には約5兆5000億円まで膨らむ見通しです。
フェムテック(Femtech)の経済効果
市場規模とは別視点で、フェムテックによる経済効果に目を向けてみましょう。
月経や更年期に伴う症状、不妊治療などにより、働き方を変えざるを得なかった女性がたくさんいます。この経済効果は、そうした女性がフェムテック製品やサービスを利用し、仕事とプライベートの両立を果たすことで得られる給与額を推計したものです。
経済産業省によると、2025年時点でのフェムテックによる経済効果は年間約2兆円と推計されています。
約2兆円の内訳は、「月経分野」が年間約2,400億円、「妊娠・不妊分野」が年間約3,000~5,000億円、「更年期分野」が年間約1.3兆円です。
フェムテック(Femtech)3つの分野
フェムテックの分野は、大きく「月経分野」「妊娠・不妊分野」「更年期分野」の3つに分かれています。フェムテックによって、それぞれにどのような効果があるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
1.月経(生理)分野
PMS(月経前症候群)や月経(生理)は、女性特有のものです。月経前や月経中にはイライラしてしまったり、体に不調が起きたりしてしまいます。
フェムテック製品やサービスを活用することで、PMSや月経に関連した症状の正確な情報把握が可能になります。
また、これまで治療などの適切な対応を取れなかった女性が減ると期待されているのです。
経済産業省によると、フェムテックによってPMSや月経に関連したパフォーマンス低下に伴う損失額が半減すると仮定されています。2025年時点で、年間約2,400億円の経済効果があるとの試算です。
2.妊娠・不妊分野
フェムテック製品やサービスを活用することで、不妊治療の負荷が軽減されると期待されています。さらに、フェムテックによって不妊治療の精度や成功率の向上も期待されているのです。産後ケアも、こちらの分野に含まれます。
経済産業省によると、不妊治療と仕事の両立を諦める女性が30~50%減少すると仮定されており、2025年時点で年間約3,000~5,000億円の経済効果が試算されています。
女性の正規雇用が増加し、女性管理職比率も増えるかもしれません。
3.更年期分野
3つの分野の中で、もっとも経済効果のインパクトが大きいのが更年期分野です。
フェムテック製品やサービスを活用することで、更年期に関連した症状の知識が広まります。
これまで治療などの適切な対応を取れなかった女性が半減し、離職や昇進事態も減少すると期待されているのです。更年期症状の負担を軽減することによって、2025年時点で、年間約1.3兆円の経済効果が試算されています。
紹介した3つの分野以外にも、「ウェルネス」「セクシャルウェルネス」「女性のメンタルケア」といった分野もあります。
フェムテック(Femtech)に関連する企業
日本でも、多くの企業がフェムテック市場に参入しています。20年以上前からフェムテックに関する事業をしている会社や、最近参入を決めた大企業を紹介します。
エムティーアイ
エムティーアイは、フェムテックサービスのパイオニアともいえる「ルナルナ」を提供。
2000年に始まったルナルナは、2021年には1700万ダウンロードを突破し、多くの女性に利用されています。このアプリでは、生理日予測や妊活しやすい時期など、女性の気になる情報が提供されています。これまでに貯めてきたデータをもとに開発した独自の排卵日予測アルゴリズムは、特許も取得しています。
丸紅
丸紅は、2020年にフェムテックプロジェクトを発足。フェムテック分野でのビジネス創出を目指しています。プロジェクトチームは同社初となる女性だけで発足され、現在は男性も所属しているそうです。
2022年1月には、日本航空、エムティーアイ、カラダメディカと共同で、女性特有の健康課題改善から効果検証までをサポートする法人向けサービスの活用取り組みを開始しています。
帝人
帝人は、2021年に女性向けの善玉菌サプリメントブランド「melito(ミライト)」を立ち上げました。第一弾として、膣内フローラに着目した乳酸菌「UREX(ユーレックス)」など3商品を販売。
これらは女性の健康をサポートすることを目的に開発された、タブレット状のサプリメントです。帝人はヘルスケア事業で「女性のセルフケア」という新たなフェムテック市場の開拓を目指し、さらなる商品開発を進めるようです。
フェムテック(Femtech)商品・サービス
フェムテックの商品・サービスは近年急激に広がりを見せています。いくつかご紹介します。
給水サニタリーショーツ
吸水性のある布を重ね、1枚の下着として着用できるのが「給水サニタリーショーツ」。生理用ナプキンやタンポンが不要の女性用下着です。
2021年には、ユニクロがエアリズム素材の給水サニタリーショーツを販売開始し、話題になりました。ピーチジョンやワコールなどの下着メーカーからも販売されています。
月経カップ
月経カップとは、生理中に膣内へ挿入して経血を溜める生理用品です。上手に使用すれば、デリケートゾーンの不快感軽減にもつながります。煮沸消毒して、くり返し使用できるので生理用品のごみが減り、環境にも優しいです。目盛りがついているものであれば、自身の経血量を把握できます。
膣トレグッズ
骨盤底筋群を鍛えるサポートをしてくれる「膣トレグッズ」。骨盤底筋群を鍛えることで、尿漏れや冷え解消にもつながると期待されています。専用のスマートフォンアプリと連動させることで、ゲーム感覚で膣トレできるグッズも発売されています。
管理アプリ
先ほど紹介した「ルナルナ」のほかにも、多くのアプリが提供されています。ユニ・チャームは、2021年3月に生理管理アプリ「ソフィ -生理管理アプリで生理を予測&不調ケア」をリリース。医薬品製造販売業社の富士製薬工業も「LiLuLa」という、女性のための健康支援アプリを提供しています。
専門家への相談・サポート
チャットやLINEを利用して、専門家へ相談できるサービスが誕生しています。
Kids Publicが提供する「産婦人科オンライン」は、女性特有の心や体の悩みを現役の産婦人科医師らが聞いてくれます。「TRULY」もチャットで相談ができるサービスです。更年期や膣ケア、性の悩みなど、女性のデリケートな悩みを女性医師や専門家に相談できます。
フェムテック(Femtech)の活用事例
企業が持続的に成長していくためには、女性の活躍が欠かせません。女性が健康に働き続けるため、フェムテックを活用している企業の事例を紹介します。
小田急電鉄
小田急電鉄は、ダイバーシティ(多様性)を重視する観点からフェムテックを活用し、働く女性社員の生活と仕事の両立をサポートしています。
2018年9月から不妊治療や流産の相談窓口となる「ファミワン」を導入。2018年12月からは「産婦人科オンライン」を導入し、女性社員が安心して働ける環境を整備しました。
駅や運転現業の監督者向けに、妊活や不妊に関するセミナーも実施。将来は能力開発の一環として研修への組み込みも検討しています。
花王
『日経WOMAN』と「日経ウーマノミクス・プロジェクト」が実施した「女性が活躍する会社BEST100」(2019年版)で総合ランキング1位に輝くなど、女性が働きやすい職場と知られる花王グループ。
全国の女性社員が、どこからでもメールで産業医に相談できる「女性の健康相談窓口」を設置しています。
また、3か月に1度「Women’s News」というライフステージに応じた女性の健康に関する情報を発信。男性にも女性特有の健康状態について知ってもらう機会を作っています。
まとめ
本記事ではフェムテックについて解説しました。
フェムテックによって解決される問題は、女性だけに関係するわけではありません。妊娠や不妊に関することは男性にも関係がありますし、女性の健康状態を知ることで振る舞い方も変わります。女性も男性も、フェムテックについて知ることが重要です。
(編集:創業手帳編集部)