会社を設立するなら知っておきたい!起業時に発生する税金とは?

創業手帳

会社設立時や設立後にかかる税金、節税ポイントを把握しておこう


会社の設立時や設立後には、多くの税金を納付しなければなりません。会社を設立するというだけでもまとまった費用が必要になるため、負担が大きくなる可能性もあります。
どのような税金が必要なのか知り、対策をしておきましょう。

今回は、起業時に発生する税金や節税方法、滞納するリスクについてご紹介します。
会社を設立する前に税金に関して心得ておきたいことや節税対策が知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

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会社設立時にかかる税金


会社を設立する際には、印紙税と登録免許税といった2つの税金を納めなければなりません。税額はどのような会社を設立するかによって変わってきます。
ここでは、印紙税と登録免許税についてそれぞれご紹介します。

1.印紙税

まず必要となるのが、定款の印紙税です。定款は会社のルールや取り決めのようなものです。
株式会社・合名会社・合資会社・合同会社・相互会社などを設立する際には、定款の作成が必須です。

株式会社や相互会社は公証人の認証が必要で、認証を受けていない場合は定款には該当しないこととされています。
特定目的会社や税理士法人などは公証人の認証手続きが必要ですが、定款の印紙税は課税対象外です。

定款には商号・事業内容・所在地といった基本情報と、会社の指針や規則を細かく記載していきます。
これまでは書面での作成が基本でしたが、近年はPDFによる電子定款が一般的になってきました。定款の印紙税には4万円が必要となります。

2.登録免許税

続いて必要となるのが、登録免許税です。登録免許税は、法務局の登記手続きにおいて国に納める税金のことです。
主に、申請手続きの際に印紙を貼り納付する方法と、申請手続き前に法務局の指定口座に振込んで納付する方法があります。

税額は株式会社と合同会社の場合は0.7%、合名会社や合資会社は申請1件ごとに6万円となっています。
ただし、株式会社は最低課税金額が15万円とされているため、資本金の0.7%が15万円を超えた場合はその金額となるため注意が必要です。

なお、登記事項を変更する場合は1件につき3万円がかかります。資本金額の増資を行う場合は増額する資本金分の0.7%となり、最低課税金額は3万円です。

会社設立後にかかる税金


続いて、会社の設立後にかかる税金についてご紹介します。会社設立後には、法人税・法人住民税・法人事業税・消費税・源泉所得税といった税金を納めなければなりません。
ここでは、それぞれの内容について詳しくご紹介します。

1.法人税

法人税は、法人の事業活動によって得られる所得に課せられる税金のことを言います。個人事業主の場合では、所得税にあたる税金です。

法人税は、売上収入となる益金から原価・販売費などの損失費用となる損金を差し引いた課税所得によって決まります。
課税所得は設立月から1年間の事業年度の利益で計算されます。

税率は、資本金が1億円以下の中小企業・中小企業以外の法人かによって変わります。資本金が1億円以下の中小企業なら、課税所得の額が800万円以下で15%の税率となり、800万円を超える場合は23.2%です。
中小企業以外の場合は課税所得に関わらず23.2%となっています。申告期間は、事業年度終了の翌日~2カ月以内です。

2.法人住民税

法人住民税は地方税のひとつで、事業所がある地方自治体に納める税金です。
法人は公共サービスの恩恵を得る代わりとして、事業所を構える地方自治体に対して納税義務があるとされています。
そのため、会社の規模に関わらず課税される税金となり、均等割と法人税割の2つ合計金額を納めなければなりません。

均等割は資本金の額や従業員数に応じて定額で課されるもので、法人税割は法人税額に応じて課されます。
法人住民税を算出するためには、均等割と法人税割を先に明確にしておく必要があります。
また、法人住民税は市町村に納める市町村民税と都道府県に納める都道府県民税の2つがあり、自治体によって標準税率も異なるため事前に確認が必要です。

3.法人事業税

法人事業税は、事業を進める上で利用する道路・消防・警察といった様々な公共サービスを受けるための経費負担として課される税金であり、都道府県に納めます。
前述した法人税・法人住民税と合わせて「法人税」と呼ぶことが多いです。

法人税は、原則として事業を行うすべての法人が納税しなければなりません。ただし、赤字の場合は納付する必要がないという例外もあります。
公益法人や社団などは収益金額課税法人と呼ばれており、収益事業のみが課税対象です。

税率は各都道府県によって異なっているため、会社が所在する自治体に確認が必要となります。
公共法人・公益法人といった公共事業に関連する所得分は、課税対象にはなりません。

4.消費税

消費税は、法人が事業を進める上で、商品やサービスを受けて消費活動を行った場合に課せられる税金です。
一般消費者や個人事業主などと同様に、法人も納めなければなりません。

消費税は、税金を負担する担税者と消費税を納める消費税納税義務者がいる間接税となっています。
法人の場合、顧客から支払われた消費税に仕入れやその他の消費活動で支払った消費税を差し引いた分を納税しなければなりません。

5.源泉所得税

源泉所得税は、会社が従業員に代わって国に納める所得税のことを言います。
従業員を雇用する場合には、源泉徴収を行わなければなりません。源泉徴収は、従業員に給与や報酬を支払う前に所得税を算出し差し引くことです。

本来、所得税は1月1日~12月31日までの1年間の個人所得に対して課せられる税金ですが、個人が仮に一括で支払うとなれば、負担は大きくなってしまいます。
そこで支払元となる会社側が給与から天引きすることで、無理なく税金を納められるようになるわけです。

源泉徴収税額は、国税庁の源泉徴収税額票をもとにして算出されます。月額・賞与・日額などの3種類で設定されているため、会社の給与体制に合わせて計算する必要があります。

会社設立で節税ができるのは本当?


会社設立するためには、準備金や税金などで負担が大きくなるため、経営に支障が出ないか不安な方も多いかもしれません。
しかし、事業が軌道に乗ってくれば節税することも可能です。

ここでは、会社設立で節税する方法をご紹介します。

役員報酬を計上する

事業所得は、総売上高から必要経費を差し引いた金額です。そのため、経費を多く計上できれば所得金額を抑えられ、税金を少なくできる可能性があります。
会社側が役員に報酬を支払う場合、その金額は経費として計上することが可能です。

厳密に言えば、役員報酬には所得税が課税されることになります。
しかし、給与所得控除が適用されるため、所得税課税の際に給与所得控除が差し引かれた上で税率が課せられます。
税務上では、会社を設立して役員報酬として計上したほうが有利です。

社長個人では給与に所得税課税がされるので、そこに給与所得控除を差し引いて課税となります。
差し引く金額が多くなる、役員報酬という形で受け取ったほうが節税につながるでしょう。

退職金を支給する

会社を設立すると5年以上勤務した役員に対して退職金を支給した場合、退職所得控除が受けられるようになります。
退職金は、退職金額に退職所得控除を入れた金額から2分の1にした上で分離課税することになります。累進税率が緩和されるため、その分節税が可能です。

給与所得と比較すれば格段に少なくなるので、税務上のメリットをより感じられる可能性が高いです。
個人事業主の場合は退職金で退職所得控除は受けられませんが、小規模企業共済制度を利用することで退職所得と同様の税制適用となるケースもあります。
また、死亡時の退職金の場合は相続税の非課税枠として算出されるため、相続税法上で有利です。

家族などを役員にする

家族がいる場合は、配偶者や子どもといった誰かに役員になってもらうことで節税が可能です。
家族が役員になれば、その分役員報酬を支払う必要があり、そこに所得税が課せられます。
しかし、その他に収入がない場合は所得税も抑えられるため、節税につながります。

所得税は、所得が高くなればなるほど税率が累進的に高くなるといったデメリットがあります。
しかし、家族を役員にして所得を分散させることで、所得税率を下げて節税できるわけです。

給与所得控除は家族にも適用されるため、所得分散効果が大きくなるという点も魅力です。
個人事業主も家族を事業専従者として給与を支払うケースはありますが、金額に上限や制限があるためおすすめはできません。

保険を活用する

法人の場合、保険を活用することでも節税が可能です。
保険は、会社設立をしている場合、商品によって全額もしくは半額損金算入ができます。そのため、解約時や満期時までは利益を繰り延べできます。

解約や満期を迎えた場合には課税されるため、注意しなければなりません。しかし、役員退職金と組み合わせて活用することで、節税効果が高まるというメリットもあります。
将来的に法人税率は低下していくことが予想されていますが、仮に税率が下がっていけば税務上で有利に働く可能性が高いです。

ただし、個人事業主の場合は、加入する保険も個人対象のものになってしまうため、経費として計上できません。
生命保険料控除が適用になっても、限度額が12万円となっているため節税効果は低いでしょう。

消費税の納税義務免除の適用対象になる

前述しましたが、会社を設立すると、条件によっては消費税の納税義務者になる場合があります。
消費税の納税義務者となるのは、資本金が1,000万円以上の場合や課税売上高が年間で1,000万円を超えた場合などです。
課税事業者になれば、2年後の申告時に消費税を納付しなければなりません。

しかし、資本金が1,000万円未満で設立した場合は、事業規模が急拡大しない限りは消費税が課せられる心配はありません。
設立直後の半年間もしくは給与や報酬の支払総額が1,000万円を超えなかった場合も免税の適用対象となります。
仮に課税売上高が1,000万円を超えてしまっても、その年から2年経過する前に資本金1,000万円未満の会社を設立することで、法人成りさせる方法もあります。

万が一、税金を滞納してしまった場合は?


法人は多くの税金を納付する義務がありますが、万が一滞納してしまったらどうなってしまうのでしょうか。
ここでは、業績の低迷や資金繰り悪化など、何らかの理由で滞納した場合、どのような対応がなされるのかご紹介します。

最悪の場合差し押さえられる

税金の滞納はあってはならないことですが、仮に滞納してしまったとしてもすぐに差し押さえられる心配はありません。
しかし、管轄の税務署からの督促状や電話・書面での催促を無視し続けた場合、差し押さえられてしまいます。

滞納が発覚すると、まず管轄の税務署から督促状が送られてきます。
督促状は差し押さえ前の送付が前提となっており、納付期限から1カ月ほど滞納が続いた場合に送付されるのが一般的です。
その後、電話や書面で催促の連絡が来るようになり、同時に納税者の身辺情報や財産を調べていきます。

それでも滞納を続けた場合、預金や株式といった財産が差し押さえられます。生活するための最低限の財産は残りますが、十分に注意しなければなりません。

差し押さえ以外にもデメリットがある

最悪の場合、税金を滞納すると財産が差し押さえをされる恐れがあります。しかし、差し押さえ以外にも、多くのデメリットがあります。

例えば税務署から目を付けられたことで税務調査が行われるリスクです。税金の滞納は個人信用情報にも記録されます。
社会的な信用が下がることで融資を受けられなくなるのは、企業にとって深刻な問題です。

また、これまで築いてきた資産も公売によって通常よりも低い金額で売却されられることから、非常に不利な状況となります。
差し押さえが実施されれば、当然倒産するリスクも高まるため、損失も多額になってしまいます。リスクを避けるためにも、滞納することがないよう注意してください。

まとめ

起業時や起業後には、納付すべき税金はたくさんあります。税率や納付義務となる条件も異なっているため、自分の会社がどれだけ課税されるか、事前に確認しておくことが大切です。

税金を滞納すると様々なリスクが起こりますので、起業時にはどのような税金がかかるのかを理解し、滞納しないよう気を付けてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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