企業防災のための補助金や制度8選!活用時の注意点も解説

創業手帳

2025年版・企業防災に使える補助金


日本では、地震や台風、津波など自然災害が発生する可能性が高く、いつ被害に遭うかわからない状況です。
そのため、従業員や企業資産を守るための「企業防災」が重要となってきます。
しかし、企業防災に取組みたくても予算的に難しい場合があるかもしれません。そのような場合に活躍してくれるのが、企業防災のための補助金や制度です。

今回は、2025年版の企業防災に使える補助金や制度について解説します。企業防災の補助金や制度を利用する際の注意点も解説しているので、ぜひ参考にしてください。

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企業防災の必要性


ここからは、企業防災の必要性や具体例について紹介します。

企業防災とは

企業防災とは、万が一災害が発生した場合に、従業員や顧客の安全や経営資源を守り、事業活動を継続またはすぐに復旧させることを目的とした、企業が実施する災害対策です。
地震や台風、津波などの災害が起これば、企業の事業活動は大きな影響を受けることが考えられます。
なるべく早く事業活動を継続・再開させるための企業防災の取組みが必要です。

企業防災が重要な理由

企業防災に取組むべき理由として、従業員や顧客の命を最優先することが挙げられます。
労働契約法第5条では労働者がその命、体の安全などを確保しながら労働できるよう、配慮が必要であると定められています。
安全配慮義務を怠り従業員がケガを負ったり死亡したりすれば、労働契約法に違反していると判断される可能性が高いです。
社会的責任や安全配慮義務を果たすために、企業は適切な防災対策を講じる必要があります。

また、事前に企業防災の計画・取組みを実践しておくと、災害が発生した際に適切な対応をとれるようになり、自社の被害を抑制したり信頼性を向上させたりできます。
災害で停電が発生した場合に電力供給を行えば、顧客から大きな信頼を得られるかもしれません。

企業防災の具体例

企業防災の具体的な取組みとして、災害時のマニュアル整備が挙げられます。
災害が発生した際の責任者や、各部署の連絡係・救護係・避難時の誘導係などを設定しておくと、スムーズな避難や救護につながります。
また、災害により自宅に帰れない従業員がいることを想定して、飲料水や非常食、発電機などの防災グッズを準備しておくことも大切です。

ほかにも、定期的な防災訓練の実施や、複数の供給ルートの確保やパートナー企業との連携などのサプライチェーン強化、安否確認システムの導入なども企業防災に向けた取組みとして効果的です。

企業が防災に活用できる補助金や制度8選


企業が防災対策を実施するためにはコストがかかりますが、補助金や制度をうまく活用することで、コストを抑えて防災対策に取り組めるようになります。
ここで、企業が防災に活用できる補助金や制度を8つ紹介します。

IT導入補助金

IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者などの労働生産性を向上させることを目的とした、ITツールの導入をサポートするための補助金です。
IT導入補助金の申請枠は5つに分類されています。

  • 通常枠
  • インボイス枠(インボイス対応類型)
  • インボイス枠(電子取引型)
  • セキュリティ対策推進枠
  • 複数社連携IT導入枠

通常枠とセキュリティ対策推進枠は、BCP(事業継続計画)対策のクラウドサービス、ITツール、システム・ソフトウェアの導入に活用できます。
それぞれの補助率・補助額は以下のとおりです。

【通常枠】
補助率:1/2以内または2/3以内
補助額:1プロセス以上で5万円以上150万円未満、4プロセス以上で150万円以上450万円以下

【セキュリティ対策推進枠】
補助率:小規模事業者2/3以内、中小企業1/2以内
補助額:5万円~150万円

防災・省エネまちづくり緊急促進事業補助金

防災・省エネまちづくり緊急促進事業補助金は、防災機能を持つ施設および省エネ性能を備えた施設などを整備する市街地再開発などの施工者に対して、国が建設費の3~7%を補助金として交付する制度です。
要件を満たすと、充足数に応じて国から補助金を交付してもらえます。主な必須要件・選択要件は以下のとおりです。

【必須要件】
  • 高齢者などへの配慮対策(バリアフリー)
  • 子育て対策(バリアフリー、防犯性)
  • 防災対策(都市部における帰宅困難者の支援、構造安全性)
  • 省エネ対策(省エネ誘導基準への適合)
  • 環境対策(リサイクル性の配慮、劣化対策)
【選択要件】
  • 防災対策(地方における帰宅困難者の支援、延焼遮断、雨水対策など)
  • 環境対策(ライフサイクルコスト、都市緑化など)
  • 子育て対策(遮音性の向上、共働き世帯支援など)
  • 生産性の向上(BIM導入)
  • 働き方対策(テレワーク拠点の整備など)

なお、事業の適用期限は2025年3月31日までに着手し、2027年3月31日までに施工が完了する事業部分のみ補助対象となることに注意してください。

建築物耐震対策緊急促進事業

建築物耐震対策緊急促進事業は、病院や学校、ホテルなどの大規模建築物や、災害時に機能の確保が必要となる建築物に対して、耐震診断や耐震改修、建て替えなどを支援する事業です。
地方公共団体からの支援制度の対象外であれば、この制度を活用できます。

事業の対象となる要件は、建築物などによって異なるものの、共通する要件として以下の3つが挙げられます。

  • 耐震診断の結果、倒壊する危険性が高いと判断され、耐震改修・建て替えにより自身に対して安全な構造になること
  • 建て替え後は原則土砂災害特別警戒区域または災害危険区域外、市町村長が不適切な立地と認めたものではないこと
  • 建て替え後の住宅および建築物は、原則省エネ基準に適合していること

地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金

地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金は、介護施設などで防災・減災対策を進めるための改修および整備に関する制度です。
主に定員30名以上(通所介護事業所の場合は定員19名以上)の大規模施設などが制度の対象になります。

また、対象事業は以下のとおりです。

  • 高齢者施設などの非常用自家発電設備の整備事業
  • 高齢者施設などの給水設備の整備事業
  • 高齢者施設などの防犯や安全対策を強化するための事業
  • 高齢者施設などの水害対策を強化するための事業
  • 高齢者施設などのスプリンクラー設備などの整備事業

BCP実践促進助成金

BCP実践促進助成金とは、BCPを策定・実践するために必要な物品や設備を導入するための費用を一部助成する制度です。
助成対象は、東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県・茨城県・栃木県・群馬県・山梨県の関東近郊エリアで、対象となる経費は以下のとおりです。

  • 自家発電装置や蓄電池など
  • 安否確認システム
  • 感染症対策に必要な物品
  • 従業員用の備蓄品
  • 土のう・止水板など
  • 耐震診断
  • 転倒防止装置など
  • データのバックアップ
  • 基幹システムのクラウド化 など

 
申請枠は単独型と連携型の2つに分かれており、どちらも助成限度額は1,500万円(申請下限額は10万円)に設定されています。

中小企業防災・減災投資促進税制

中小企業防災・減災投資促進税制とは、自然災害に向けた対策として設備投資を行った場合に特別償却が行える制度です。
2025年3月31日までに事業継続力強化計画または連携事業継続力強化計画の認定を受けた中小企業が利用できます。特別償却が適用される設備は以下のとおりです

  • 自家発電設備、浄水装置など
  • 30万円以上の自然災害の対策として活用する器具・備品、感染症対策(サーモグラフィ装置)
  • 建物附属設備(自家発電設備、変圧器など)

特別償却は18%になりますが、2025年4月1日以降に取得した対象設備であれば16%になることに注意してください。

社会環境対応施設整備資金融資制度(BCP融資)

社会環境対応施設整備資金融資制度は、災害が発生した際に防災に資する施設などの整備に取組む企業を支援するための融資制度です。
制度を利用できる人は以下のとおりです。

1.自分で策定したBCPなどに基づき、防災に資する施設などの整備を行う人
2.中小企業等経営強化法に定める大企業者で、同法に基づいた連携事業継続力強化計画の認定を受けた、認定連携事業継続力強化を実施する人

上記の人が計画を実行するために必要な設備資金および長期運転資金を受けられます。融資限度額は、直接貸付は7億2,000万円まで、代理貸付では1億2,000万円までです。
なお、融資制度になるため返済が必要で、返済期間は設備資金が20年以内(うち据置期間2年以内)、運転資金は7年以内(うち据置期間2年以内)になります。

事業継続力強化計画認定制度

事業継続力強化計画認定制度は、中小企業が策定した「事業継続力強化計画」を経済産業大臣により認定を受けられる制度です。
事業継続力強化計画認定制度を受けると、税制措置や金融支援、補助金申請時の加点など、様々なメリットを得られます。

BCPとは異なり、事業継続力強化計画は災害を乗り切ることを重視しています。
そのため、災害の発生や影響を想定し、初動対応や事前対応、平時の推進体制などが計画に盛り込まれます。

企業防災の補助金や制度における注意点


企業防災の補助金や制度を活用する場合には注意すべきポイントもあります。ここからは、どのような点に気を付けるべきか解説します。

早めに申請する

利用したい補助金や制度があれば、早めに申請を済ませておくことが大切です。
制度によって異なるものの、認定までにはある程度の日数がかかってしまうためです。

また、応募期間が決まっている制度の場合、募集枠が埋まった段階で早めに締め切られてしまう可能性もあります。
利用する場合には、早めに申請をしておいてください。

必ず補助金を受け取れるわけではない

要件を満たしたとしても、補助金を必ず受け取れるわけではありません。
申請書や添付された書類などをもとに審査を行い、補助金を交付するかどうかが決められます。
審査に通過できるよう計画的に設備導入を行ったり、提出する書類に不備が出ないようにしたりすることが大切です。

補助金は「後払い」

補助金や助成金は、基本的には後払いで支給されます。
補助金の申請をして支給が決定してから、前もって用意しておいた資金を活用して設備の導入や事業を行います。
後日活用した資金の一部を支給してもらう形になるのが一般的
です。
自己資金で補助金までのつなぎ資金を用意できない場合は、短期借入などを活用することも視野に入れてください。

検査の可能性がある

補助金を利用した企業であれば、会計検査院による検査が入る可能性もあります。正確に事務処理を行い、正当な目的によって費用が支出されていれば特に問題ありません。

しかし、正しく事務処理できていなかったり、正当な目的として費用が支出されていなかったりした場合は、会計検査院から指摘を受けてしまう可能性が高いです。
検査が入る可能性があることを考慮して、正確な事務処理を行う必要があります。

まとめ・防災に補助金や制度を活用しよう

災害はいつどこで発生するか分かりません。
一方、災害対策マニュアルや事業継続計画、事業継続力強化計画を策定・実践することで、災害が起きても従業員や顧客の安全を守れるようになります。
防災設備やシステムの導入を検討している場合は、補助金や制度を活用することでコストを抑えて企業防災に取り組めます。
今回紹介した補助金や制度をぜひ参考にしてください。

創業手帳(冊子版)では、中小企業の経営や事業継続に役立つ情報をお届けしています。防災関連以外の補助金・助成金制度についても「補助金ガイド」で詳しく紹介しているので、ぜひご活用ください。

また地方自治体の補助金・助成金最新情報をキャッチアップできる「補助金AI」も無料でご利用いただけます。


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(編集:創業手帳編集部)

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