「出勤簿」とは?役割や作成方法をご紹介

創業手帳

社員の労務管理に欠かせない出勤簿、しっかりと備えておこう


出勤簿は、従業員雇用の際に必要である「法廷三帳簿」のひとつです。
法廷三帳簿とは労働者名簿・賃金台帳・出勤簿のことで、社員の労務管理を行うのに欠かせない重要な書類です。
しかし、この書類を用意しているだけでは管理していることになりません。ここでは出勤簿の重要性や書き方、保管期間を解説していきます。

出勤簿にどのような意味があるのか知りたい方、事業主や管理監督者など社員の労務管理を行う方は、この記事を参考にしてください。

出勤簿とは?


従業員雇用に必要な「法廷三帳簿」のひとつである出勤簿を、何気なく使っている方も多いと思います。出勤簿にはどのような意味があるのでしょう。

社員の労務管理のための記録

出勤簿は、社員の労務管理に必要な記録となります。
なぜ出勤簿という形で記録しなければならないのかというと、会社は従業員の遅刻や欠勤、残業などを正確に把握する必要があるからです。

労働時間は労働基準法によって定められているため、これらを守りながら管理する必要があります。
また、出勤簿での管理によって、違法な長時間労働や割増賃金の未払いがないかもチェックできます。

出勤簿の対象となるのは?

出勤簿の対象になるのは、基本的に従業員全員です。パートタイムやアルバイトなどの雇用形態はまったく関係ありません。
しかし、労働基準法第41条第2項の規定で、管理監督者に該当する管理職は必ずしも出勤簿の記載は必要ではないとされています。

管理監督者というと、管理職をイメージする人が多いですが、管理職と管理監督者は必ずしも同一ではありません。
管理職の中でも経営者と同じような立場にある人物が、管理監督者です。
管理監督者は会社の役職名ではなく、職務の内容や賃金、権限を含めて判断されます。
重要な役割を担っていて、責任や権限を有しているのであれば管理監督者として認められます。地位にふさわしい待遇を受けていることも管理監督者であるための条件です。

タイムカードとはどう違う?

出退勤の記録に、タイムカードを導入している会社も多くありますが、タイムカードは出勤簿と同等の扱いはできないでしょう。
タイムカードには、主に打刻された際の時刻が打たれますが、これが正確な出社時刻、退社時刻を反映しているとは言い切れない場合もあるからです。

例えば出社後、また終業後に私用を済ませてからタイムカードに打刻したら労働時間が変わってしまいます。
つまり、タイムカードだけでは労務管理が不十分だとされるのです。タイムカードを出勤簿扱いにするのであれば、作業日報や残業許可証など、補足資料が必要です。

また2019年の4月から労働基準法改正により、自己申告で労働時間を把握することが禁止となりました。
紙の出勤簿だけの運用が不可となり、客観的な労働時間を把握するためにICカード打刻やスマートフォン打刻、タブレットからの打刻などが厚生労働省で定められています。

出勤簿には何が記載されている?


そもそも出勤簿には、どのような内容が記載されているのでしょう。出勤簿の記載内容について解説します。

出勤簿に記載が必要な項目

出勤簿には、労働者の氏名以外に以下の項目ごとに記載する必要があります。項目ごとに確認していきます。

出勤日と労働日数

出勤簿には、出勤日および労働日数を記録します。
出社した日、労働した日を記載しますが、出張やリモートワークで出社していない場合でも、労働はしているので記録してください。

このように会社以外の場所で仕事をしている場合、離席時間が把握できるツールの活用によって、労働時間の管理がスムーズに行えます。
リモートワークが定着しているのであれば、勤怠管理システムを活用してみましょう。

日別の労働時間数と始業・終業時刻と休憩時間

ここには始業・終業時刻、休憩時間についても個別に記載します。
自己申告だけでなく、客観的な記録として残さなければならないため、正確な労働時間を記録してください用はとても便利ですが、システムの導入はコストが必要となります。

中には導入だけで100万円単位で必要なものもあり、ランニングコストはその後も毎月かかってしまいます。

従業員数の少ない企業なら、この導入コストやランニングコストは収支にも影響を与えてしまうため、手書き管理のほうが良いでしょう。

時間外労働を行った日付・時刻・時間数

時間外労働を行った日付・時刻・時間数を記録します。この時間外労働とは、原則として1日8時間以上、もしくは1週間40時間以上働いた際の時間です。
正確に記録してください。

休日出勤を行った日付・時刻・時間数

休日出勤を行った日付・時刻・時間数を記録します。この休日出勤とは1週間に1日、もしくは1カ月に4日以上と定められている範囲以上働いた場合です。

深夜労働を行った日付・時刻・時間数

深夜労働を行った日付・時刻・時間数を記録します。深夜労働とは、夜22時~翌朝5時までの間が該当します。
深夜労働を行った場合は、割増賃金が発生するため、きちんと記録しておかなければいけません。

出勤簿の書式は任意

出勤簿の書式そのものは、労働基準法などで特に定められていません。また、記録媒体も紙やデータ、どちらで管理できるようになっています。
必要な項目が入っていれば特にフォーマットの決まりもないので、使用しやすいものを選ぶことが可能です。

管理システムや無料のテンプレートをダウンロード、エクセルで自作するのも可能なので、自社に合った方法で管理できます。
無料のテンプレートにはいろいろなタイプがあるので、それを参考にすればそれぞれの業態に合わせて適切な出勤簿を作成できます。
従業員数の多い会社は出退勤管理システムの導入によって、自動で出勤簿の作成もできるので、使いやすさを重視してみると良いでしょう。

出勤簿には保存義務がある?


書式などに決まりはないものの、出勤簿には保存義務が生じます。ここでは、出勤簿の保存義務について解説していきます。

出勤簿の保存期間は3年

出勤簿は、労働基準法第109条の賃金その他労働関係に関する重要な書類となり、保存期間が3年と義務付けられています。
この3年という期間は、従業員が雇用された日からではなく、出勤簿最終日から起算した日です。

労働時間がわかるもの、残業命令書や報告書、タイムカードや業務日報も保存期間が同じになります。また、解雇であっても3年という期間に変わりはありません。
会社側から残業を命じた場合に、作成する残業命令書といった書類をきちんと残しておくことによって、トラブルに発展してしまうことを防ぐ効果も期待できます。

出勤簿を3年間保管するのは、従業員が多い会社では大量になるので、紙のままでの保管はスペースの確保が必要です。
長期間の保管をしなければならないことや、従業員数を考慮して出勤簿の形態を見直すのも良いでしょう。
パソコンなどで保存や管理する場合は、以下の内容を満たす必要があります。

  • 法廷で定められた要件を備えた上で、画面に表示して印字できること
  • 労働基準監督官の臨検の際に、直ちに必要事項が明らかにでき、また提出できるシステムとなること
  • 間違っても消去されることがないようにすること
  • 長い期間保存できること

紛失すると罰金が科せられることも

出勤簿には保存義務があり、万が一3年以内に出勤簿紛失や破棄が生じると30万円以下の罰金が科される可能性があるので気を付けましょう。
これは、出勤簿が労働者名簿や賃金台帳と同じように法定三帳簿と呼ばれ、とても重要な書類だからです。

賃金台帳は、労働基準法第108条で作成が義務付けられている書類です。
出勤簿も従業員にとっては重要な書類ですが、それと同じくらい重要な書類なので不備なく作成しなければいけません。

事業所が複数ある場合は事業所分作成しなければいけませんし、賃金の支払いがあるたびに記入しなければいけなので、月に1度は書かなければいけないということになります。

労働基準法第109条では、賃金その他労働関係に関する重要な書類についての保存義務があるので、紛失しないように管理する必要があります。

退職者の出勤簿は注意が必要

出勤簿の保存期間が3年間であることに意識しがちですが、退職者の場合は5年間保続しておくようにしてください。
これは、労働基準法第115条によって退職金の請求権の時効を5年と定めているからです。
そのため、退職者の出勤簿は扱いが異なると覚えておいてください。

管理は慎重に行う

出勤簿の管理は慎重に行うようにしてください。万が一の紛失は法律違反であり、世間に知られると社会的な信頼を失うこともあり得ます。
社会的な信頼を失ってしまうと、創業後の事業を円滑に進めることが難しくなってしまうことも考えられるため、管理は可能な限り慎重に行うことをおすすめします。

またデータの改ざんされないように、セキュリティ対策も必要です。
閲覧の際にはコピーを渡して原本を保管する、廃棄の際にはシュレッダーを使用するなど情報漏洩にも細心の注意を払ってください。

出勤簿は手書きでも問題ない?


出勤簿には細かなルールがあり、保管期間なども決められているほど重要な書類であることがわかります。
しかし、出勤簿は手書きでも問題なく保存しておけるのか、分からないという方もいるかもしれません。出勤簿の書き方について紹介します。

社員数が少ない場合は手書きでも問題ない

社員数が少ない会社の場合、手書きの管理でも保管場所さえあれば問題ありません。手書きの目安は、従業員数100人未満くらいの規模です。
従業員数100人未満ほどの会社の場合、部署の人数も10人前後になりやすいので、タイムカードの集計も苦になりにくいでしょう。

パートタイムとアルバイトの棲み分けや、集計も対象者が少ないので比較的容易に済ませられます。
また、勤務状態の可視化やマネジメント側の社員も勤務状態が把握しやすいので、手書きのメリットも感じやすいです。

ほかにも、勤怠管理システムの活用はとても便利ですが、システムの導入はコストが必要となります。
中には導入だけで100万円単位が必要なものもあり、ランニングコストはその後も毎月かかってしまいます。
従業員数の少ない企業なら、この導入コストやランニングコストは収支にも影響を与えてしまうため、手書き管理のほうが良いでしょう。

勤務形態が複数ある場合は手書きのほうが便利なことも

会社によっては、パートタイムやアルバイトの方が多くなる業種もあります。このような場合も、手書きのほうが便利だと感じるかもしれません。

社員の場合、常に決まった時間の勤務になりますが、パートタイムやアルバイトといった勤務形態が異なる場合は、出社時間や退社時間の違いのほかに、頻度なども変わってきます。
パートタイムやアルバイトにとっては、働いた時間によって給料が変わってくるため、手書きのタイムカードのほうが時間を把握しやすくなり、会社側も安く勤怠管理ができるということです。

状況に応じて管理方法を見直そう

手書きの出勤簿は、パートやアルバイトにも見やすく、管理する側も利便性があるとしていますが、状況に応じるように手書きを見直す必要もあります。
もちろん、社員数が少ないから紙のほうがコスト削減につながると思うかもしれません。

しかし、常に従業員数が一定とは限らないので、社員数の増加などに伴って勤怠管理が負担にならないように工夫しましょう。
出勤簿以外にタイムカードなどの勤怠管理書類、労働者名簿も3年保存が決まっています。

そのため紙での保存が多くなってしまえば、その分スペースも必要なだけでなく、3年間の保管によって紛失リスク、管理工数が多くなってしまいます。
これらは毎年帳簿の過不足点検をすることで、紛失リスクが減らせるので、状況に応じて管理方法を見直してみてください。

まとめ

出勤簿は、従業員雇用に必要な「法廷三帳簿」のひとつです。この法廷三帳簿は出勤簿、労働者名簿、賃金台帳のことで、どれも労務に欠かせない帳簿となっています。労働基準法第108条で、会社が賃金台帳を作成しなければならないと義務付けられていますが、その記載事項としても労働時間や日数、時間外労働や深夜労働、休日労働などの時間数が決められているのです。

これらの労働時間を把握するための出勤簿ですが、労働基準違反となっていないかを確認するためにも必要です。出勤簿の書式そのものは特定されたものはないため、正しく管理できるものを用意しておかなければいけません。

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(編集:創業手帳編集部)

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