雛形でチェックするオフィス賃貸借契約書のポイント

創業手帳

交渉せずに賃貸借契約をするのはやめよう

オフィスを借りる際の賃貸借契約書のチェックポイント

(更新2015/3/6)

ビジネスにとって契約書は大事で、決してなおざりにしてはいけない。起業直後であれば、人に任せずに社長が必ず確認してほしい。そして、ほとんどの起業家にとって、創業して初めて見る契約書が、オフィスビルの賃貸借契約書となる。

オフィスの選び方については、以下の関連記事を参考にしていただきたい。

【関連記事】創業期のオフィス形態のまとめ

賃貸借契約書は、専門性が高くて普通の人には理解しづらいということがあまりない類の契約書であり、契約書に慣れるのにいい機会になるだろう。そこで今回は、賃貸借契約書をチェックする際のポイントを、賃貸借契約書雛形を参照しながら確認していこう。

貸主側有利に作られた賃貸借契約書

賃貸オフィスを選ぶときには、たいてい不動産会社に行き、物件を探してもらう。

【関連記事】起業して初めてのオフィス選び -賃貸オフィス編・立地の巻-

いざ、物件を決めて、契約書に押印する段階になると、オフィスビルのオーナー、もしくは仲介業者から契約書を提示されることになる。

※下記リンクから業務委託契約書の雛形をダウンロードしてください。

ただし、ここで注意が必要だ。賃貸借契約に限らず、相手側が用意した契約書は往々にして、相手に有利な内容が盛り込まれている。

賃貸借契約の場合、貸主側は、当然ながら貸すことを仕事としている会社であり、自分たちに有利な契約書雛形を使っている。多額の保証金をいれることを求められたり、原状回復の内容が妙に厳しかったりする。例えば、経年劣化は借り主側の企業側が負担しなくても良いのに、企業側が全額負担しなければならなくなっているようなことがある。

なお、今回の雛形の契約書も、基本的には貸主側に有利なものとなっている。もっとも、実際にはこれ以上に貸主側に有利な契約書を呈示されることが往々にしてある。契約書を呈示された際には、必ず内容をチェックして欲しい。

なぜ賃貸借契約書は貸主側に有利なのか?

なぜ賃貸借契約書は貸主側に有利なのか?
フォローするわけではないが、必ずしも貸主側がズルいというわけではない。オフィス用賃貸となると家賃が高いところも多く、特に起業したての会社に貸す場合は、オーナーはテナントの倒産リスクも考えなければならない。1ヶ月の家賃の滞納だけでも貸主側にとっては大きな損失となる。

また、あなたがオフィスを出る際には、借りたときの状況に戻さなければならない。それを借り主側の原状回復義務というが、ベンチャー企業が順調に成長し、あらたなオフィスへ移転するのであれば良いだろうが、倒産してしまえば、原状回復もコストも貸し主側が負担しなければならない。誰も倒産した会社の備品をそのまま使いたいとは思わないので、倒産してオフィスに残された机、いす、コピー機、照明器具、造作した壁などを壊し、処分するための費用は貸し主の負担になる。

これらの理由があるため、貸主側は多額の保証金を要求するのだ。貸主側としても、少しでもリスクを回避するために、経済的に合理的な行動を取っているのである。

借りる側が不利な立場にあるとは限らない

そういった貸し主側の事情を知ってしまうと、貸し主側有利の契約書を受け入れないといけないように思ってしまうが、交渉の余地は多く残っているので、あきらめないで欲しい。

貸し主側が自分に有利な契約書を提示するのは、あなたの弱みを知っているからだ。せっかく見つけて契約直前まで来た物件をキャンセルしても、次に気に入る物件が見つかるかどうかは分からないという不安(実際起業したてのベンチャー企業用の優良物件はそれほど多くない)。ここまで交渉してきて、最終局面で断るという心理的な抵抗。そういったことを見抜いているのだ。

オフィスオーナーは少しでも早く空室が埋まって欲しい

しかし、ちょっと待って逆の立場で考えてみよう。貸主側としても、空室期間が延びることで賃料が入らないのは痛い。少しでも早く空室が埋まって欲しいというのが本心である。

そのために、周辺の物件と比べて見劣りがする物件であれば、なかなか契約ができていない可能性が高い。そういった物件であれば、交渉をすると貸主側はフリーレントという条件を提示することもある。フリーレントははじめの数ヶ月の賃料を文字通り“フリー=タダ”にするというものだ。

フリーレントと聞くと貸主が随分気前がいいようにも思えるが、貸主から見ると、どうせ空室のままで賃料が入らないのであれば、フリーレントで入ってもらうのと、経済的にはほぼ差はない。むしろ、フリーレント期間終了後の入金を確実に確保出来るというメリットがある。

もちろん、空室が出てもすぐに埋まってしまうような人気物件の場合、交渉が困難である。初期費用を抑えたい起業直後のベンチャー企業としては、人気物件を外して、貸主がなんとか借り主を決めようと思っているような物件を探し、交渉するという方法も視野にいれるべきだろう。

賃貸借契約交渉のポイント

ここまで述べてきたように、交渉が可能な物件であったとしても、何でもかんでも要求すると断られてしまう。キャッシュフローが大事なベンチャー企業であれば、特に以下の点に絞って賃貸借契約交渉を検討してみて欲しい。

1.仲介手数料が発生しないようにする。

仲介手数料については、元付の不動産会社を探すというのがポイントだ。詳しくは以下の関連記事を参照するとよいだろう。

【関連記事】起業して初めてのオフィス選び -賃貸オフィス編・不動産会社の巻-

2.敷金・保証金等の金額を抑える

敷金・保証金の金額については、相場はあっても算出根拠があってないようなものである。例えば、関西では、関東に比べて保証金が高額に設定されがちであるが、これは何も法律的な決まりがあるわけでもない。

大掛かりな内装工事等を予定していないのであれば、原状回復に多額の費用がかからない可能性が高いことを伝えて、減額してもらうのがよいだろう。

第12条(保証金)
1 乙は、甲に対し、本契約に関し生じる乙の債務の担保として金120万円の保証金を本契約締結日に預託するものとする。

雛形では、一般によく見られる半年分の保証金が定められているが、前述のように減額を要求するのがいいだろう。

なお、敷金保証金の違いは、一般的には、預けておいて退去後に原状回復費等を引いた上で返還されるのが敷金、返還されないものを保証金と呼ぶ事が多い。もっとも、明確な決まりはないので、名称よりも、その賃貸借契約書においてどのような意味で使われているのかチェックしよう。

雛形では、保証金という名目ではあるが、基本的には返還が予定されている内容となっている。

3.解約の事前通知の時期を短くする

契約書上、将来的に事務所を移転・退去する場合について、契約終了の半年前までに貸主に通知しなければならない等と定められていることがある。

第14条(中途解約)
乙は賃貸借期間満了前に本契約の解約を希望する場合は、解約希望日の6カ月前までに甲に書面で通知しなければならない。なお、解約希望日から6カ月に満たない通知の場合は、通知の日から6カ月を経過した日に契約が終了するものとする。

また、この場合、賃料の二重払いを避けるため、契約終了までに移転先を探す時間的制限がかかることになってしまうが、そのために移転先を探すのにも苦労することがある。実際に移転・退去する際に交渉で通知期間を短くしてもらうことも可能であるが、あらかじめ契約書上で短くするよう求めるとよいだろう。

また、どうしても急に出なければいけなくなった場合であっても、このような規定があるからといって必ずしも半年分の契約が残っているとして半年分の賃料を払う必要はない。次に入るテナントが見つかる物件であれば、実際には、出て行く日までの賃料で納得してもらえるオーナーも多い。少なくとも、オーナーと話し合いはするべきである。

4.空調設備を設置してもらう

直接の契約内容には含まれていないのが通常であるが、後付けの冷暖房の空調設備については、貸主側がつければ、賃借人が入れ変わる際に次の賃借人が入りやすいという面もある。広さや値段等も勘案して、貸主側に設置を要望することを検討してもよいだろう。

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(監修:田中尚幸 弁護士)
(編集:創業手帳編集部)

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