【2025年12月最新】重点支援地方交付金が「賃上げ支援」にも!事例や対策を紹介

創業手帳

「中小企業・小規模事業者の賃上げ環境整備」が重点支援地方交付金の推奨事業に!新たな補助金などに要注目

2025年11月末に閣議決定された総合経済対策および補正予算にて、重点支援地方交付金が拡充され、「中小企業・小規模事業者の賃上げ環境整備」が推奨事業メニューに新設されました。これにより、今後は新たな補助金・助成金を含めた地方自治体の「賃上げ支援」が続々始まると予想されます。

そこで今回は、令和7年度補正予算に基づく重点支援地方交付金を活用した「賃上げ支援」について、具体的な支援事例や中小企業が取るべき対策を含めて解説します。負担の少ない賃上げ環境の整備に関心のある中小企業の経営者や管理職の方など、ぜひ参考にしてください。

yajirushi【完全無料】登録した都道府県の補助金情報をメール配信!『補助金AI』

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

重点支援地方交付金が拡充、「賃上げ支援」が新たな推奨事業に

まずは、今回の重点支援地方交付金の拡充および新しい推奨事業「中小企業・小規模事業者の賃上げ環境整備」の概要を、以下でわかりやすく解説します。

重点支援地方交付金とは

重点支援地方交付金とは、エネルギー・食料品価格の物価高騰の影響を受けた生活者や事業者の支援を通じた地方創生を目的として、国が地方公共団体に交付する交付金です。都道府県や市区町村が地域の実情に応じて行う物価高騰対応の支援に要する費用に充てられます。正式名称を「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」といいます。

重点支援地方交付金を活用した事業内容は、実施する地方公共団体によってさまざまです。生活者支援では「おこめ券」や「プレミアム付商品券」などが話題となっていますが、事業者支援でも補助金・助成金の創設ほか地域によって特色のある支援が予想されます。なお、とくに効果的と考えられる取組の例として国は「推奨事業メニュー」を提示しています。

新・推奨事業メニューに「中小企業・小規模事業者の賃上げ環境整備」を追加

【令和7年度補正予算・重点支援地方交付金の推奨事業メニュー】

出典:中小企業庁「重点支援地方交付金の追加 令和7年度補正予算」

2025年11月21日に閣議決定された総合経済対策には、困難な状況にある事業者を十分に支えるべく、中小企業・小規模事業者の賃上げ環境の整備に向けた取組を強化する旨が盛り込まれました。これに伴い、重点支援地方交付金の新たな推奨事業メニューに「中小企業・小規模事業者の賃上げ環境整備」が追加されました。

また同月28日に閣議決定された令和7年度補正予算では、重点支援地方交付金の追加額は2.0兆円となっています。加えて、上述の通り、事業者支援の推奨事業メニューに「⑥中小企業・小規模事業者の賃上げ環境整備」が追加されています。

ちなみに重点支援地方交付金の追加額2.0兆円のうち、0.4兆円は「①食料品の物価高騰に対する特別加算」に充てられる金額です。よって、残りの1.6兆円をほか9つの推奨事業メニューで等分すると仮定すれば、「⑥中小企業・小規模事業者の賃上げ環境整備」には約1,780億円が投じられる計算になります。

【2025年12月最新】すでに東京都の助成金では「賃上げ重点コース」が新設!

上記、重点支援地方交付金の拡充および推奨事業メニューの新設を受けて、地方公共団体では「賃上げ支援」に向けた取組がすでに始まっています

東京都は、重点支援地方交付金も活用した令和7年度12月補正予算の柱の一つに「中小企業の賃上げ・生産性向上に資する取組」を設定。同月17日には、事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(助成金)に賃上げ重点コースを追加しました。

今後、全国の地方自治体でもさまざまな賃上げ支援の取組が実施されるはずです。

(参考)東京都「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業」賃上げ重点コースの概要

対象者 以下いずれかに該当し、賃金引上げ計画を策定する都内中小企業等

1)直近決算期の売上高が「2023年の決算期」と比較して減少
2)直近決算期において損失を計上
3)米国関税措置による影響により、次期決算期の売上高が、直近決算期の売上高と比較して減少することを見込んでいる

助成限度額 800万円
助成率 4分の3以内(うち、小規模企業は5分の4以内)【注】
【注】賃金引上げ計画を達成できなかった場合、助成率は3分の2以内
助成期間 交付決定から1年間
申請受付期間等 2月下旬から募集

出典:東京都・都庁総合ホームページ「賃上げに向けた生産性向上の取組を後押しします! 「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業」新コース追加のお知らせ」

yajirushi【完全無料】登録した都道府県の補助金情報をメール配信!『補助金AI』

重点支援地方交付金を活用した「賃上げ支援」の事例

中小企業庁は「中小企業・小規模事業者の賃上げ環境整備」の具体的な支援内容として、以下5つの例を挙げています。

①経営指導員による伴走支援
②生産性向上に向けた補助や金融支援
③一定以上の賃上げに向けた取組を行う事業者への支援
④中央最低賃金審議会の目安を上回る最低賃金引上げを行う地域の事業者への補助
⑤公共調達における価格転嫁の円滑化などの支援

以下では、上記5つの支援内容について、同じく中小企業庁が公開する「重点支援地方交付金を活用した賃上げ支援事例」も踏まえて、その概要を紹介します。

①経営指導員による伴走支援

経営指導員による伴走支援は、商工会や商工会議所、よろず支援拠点などの専門人材が経営者に寄り添って賃上げ環境の整備をサポートする取組です。そうした伴走支援体制の強化にかかる人件費・企画委運営費・広報費・事務費などに重点支援地方交付金の活用が想定されます。

実際に埼玉県草加市では、商工会議所の相談員を増員することによる伴走支援の強化に重点支援地方交付金が活用されました。13,000千円が草加商工会議所に交付され、物価高騰に直面した地域企業の創業や再展開の支援が強化されました。

②生産性向上に向けた補助や金融支援

生産性向上に向けた補助や金融支援は、地方自治体による補助金や助成金のことです。先ほど紹介した東京都の「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業」賃上げ重点コースもこれに該当します。

ほかの例では、大分県が物価上昇の中で生産性向上や賃上げに取り組む中小企業等を対象に「大分県省力化・生産性向上支援補助金」を公募しています。国の省力化投資補助金(カタログ注文型)やIT導入補助金(インボイス枠インボイス対応類型)を活用する事業者に、別途補助金(奨励金)を支給する取組です。

また神奈川県川崎市では、物価高騰の影響を受けた中小企業等の円滑化を目的とした「信用保証料補助金」に重点支援地方交付金が活用されました。こちらは金融機関が伴走する市融資制度の信用保証料を補助する取組です。

③一定以上の賃上げに向けた取組を行う事業者への支援

一定以上の賃上げに向けた取組を行う事業者への支援は、従業員の賃金を所定の金額以上に引き上げた場合、一人当たりいくらかの支援金を支給するといった取組です。地方自治体が主体となって行うキャリアアップ助成金のようなものをイメージするとよいでしょう。

例えば、群馬県では2025年4月より重点支援地方交付金を活用した「ぐんま賃上げ促進支援金」を開始。一定額以上の賃上げで、一人当たり3万円または5万円が支給されます。同年12月末時点で申請受付額は6億円を超えており、多くの中小企業等に活用されています。

④最低賃金引上げを行う地域の事業者への補助

最低賃金引上げを行う地域の事業者への補助は、最低賃金引上げに取り組む中小企業等の設備投資費を一部負担するような取組。かつて存在していた小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠のようなイメージです。

例えば、佐賀県は重点支援地方交付金を活用して「中小企業生産性向上支援補助金」を実施。所定の最低賃金引上げ要件を満たした中小企業の設備投資等に要する費用の3分の2を補助しています。

⑤公共調達における価格転嫁の円滑化などの支援

公共調達における価格転嫁の円滑化などの支援とは、地方自治体が民間企業から物品やサービスを調達する公共調達において、労務費を含めた価格転嫁を実施する取組のことを指します。物価高騰等による生産コスト上昇分を製品・サービス価格に反映させる価格転嫁は、賃金引上げの直接的な原資となるため、賃上げ環境の整備において重要です。

例えば、新潟県新潟市では、2025年度途中に清掃事業者、学校給食の調達などで重点支援地方交付金を活用した価格転嫁が実施されています。ちなみに同市は交付金を充当する経費内容について「当該価格転嫁分が実質的な賃上げつながるものとして確認できるような書類の提出を求める」としています。

同様に北海道清里町でも、2024年度途中に公共施設運営費等で労務費を含めた価格転嫁が実施されました。

yajirushi【完全無料】登録した都道府県の補助金情報をメール配信!『補助金AI』

重点支援地方交付金を活用した「賃上げ支援」に中小企業が取るべき対策

重点支援地方交付金を活用した「賃上げ支援」をより効果的に活用するために中小企業が取るべき対策は、最新情報のキャッチアップと賃上げの準備です。定期的に情報収集を行い、すぐに賃上げできる備えをしておけば、地域の支援事業の開始に合わせてスムーズに賃上げ環境を整備できます。

最新情報のキャッチアップには、経済産業省・中小企業庁の支援サイト「ミラサポplus」が便利です。トップページの地図で都道府県を選択すれば、各地域の補助金に関する新着情報を検索できます。そのほか、各都道府県や市区町村、商工会議所などのサイトも要チェックです。もちろん創業手帳でも、最新情報を随時リリースしていきます。

また賃上げの準備としては、まず自社の経営状況の分析、ならびに賃上げの目的と水準の明確化が挙げられます。そのほか、賃上げ方式の選定や必要原資の計算、財源確保のための計画なども必要です。専門的な内容も多く、相応の時間・手間もかかるため、地域のよろず支援拠点や金融機関、税理士など専門家の支援を受けながら進めるのもよいでしょう。

yajirushi【完全無料】登録した都道府県の補助金情報をメール配信!『補助金AI』

まとめ

重点支援地方交付金が拡充され、新たな推奨事業メニューに「中小企業・小規模事業者の賃上げ環境整備」が追加されました。これに伴い、今後はそれぞれの地方公共団体で新たな補助金・助成金の創設をはじめ、さまざまな「賃上げ支援」が実施されると予想されます。

そうした賃上げ支援の強化は、中小企業・小規模事業者にとって、少ない負担で賃上げ環境を整備するチャンスです。賃上げ環境の整備は、人材の確保や流出阻止、ひいては企業の競争力強化ならびに生産性向上にもつながります。

新たに始まる地域の賃上げ支援を有効活用するには、最新情報を漏らさずキャッチアップすることが重要です。また賃上げ支援事業の開始に合わせてすみやかに環境を整備できるよう、賃上げに向けた準備を今から始めるとよいでしょう。


補助金AI

関連記事
【令和8年度税制改正大綱】青色申告75万円控除へ!個人事業主・中小企業への影響をわかりやすく解説
【2026年より】「178万円の壁」とは?いつから?事業主が今すぐ始めるべき準備を解説

(編集:創業手帳編集部)

補助金ガイド
この記事に関連するタグ
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す