2025年は健康保険料が値上げ!社会保険料負担を軽減する方法を解説
コストを削減する工夫をして最終的な利益を増やそう
日本は少子高齢化が進展しており、社会保険料の値上げが続いています。2025年も、国民健康保険料の上限が引き上げられたり、都道府県によっては協会けんぽの保険料率が引き上げられました。
社会保険料は、事業主と従業員にとってコストとなります。特に、国民健康保険に加入している自営業者は全額自己負担となるため、より負担に感じやすいでしょう。
今回は、2025年に社会保険料がどの程度値上がりするのかを解説します。個人事業主が国民健康保険料を抑えるための方法も解説するため、ぜひ参考にしてみてください。
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この記事の目次
【協会けんぽ】2025年度に健康保険料が値上げとなる都道府県
会社員が加入する健康保険は、各企業や業界ごとに設立された組合である「健康保険組合(組合健保)」と、主に中小企業が加入する「協会けんぽ(全国健康保険協会)」に分かれます。
多くの企業が加入する協会けんぽでは、保険料率を都道府県ごとに協会が決定しています。2025年度において、2024年度から保険料率が引き上げられた都道府県は以下のとおりです。
北海道・東北 | 関東 | 中部 | 近畿 | 四国・中国 | 九州 |
---|---|---|---|---|---|
・北海道 ・青森県 ・宮城県 ・秋田県 ・福島県 |
・茨城県 ・栃木県 ・千葉県 |
・新潟県 ・富山県 ・長野県 ・岐阜県 ・愛知県 ・三重県 |
・滋賀県 ・和歌山県 |
・鳥取県 ・島根県 ・岡山県 ・広島県 ・山口県 ・徳島県 ・愛媛県 ・高知県 |
・佐賀県 ・長崎県 ・宮崎県 ・鹿児島県 |
保険料率が改定されるのは3月からで、4月納付分から納付する金額が変わります。
なお、以下の都府県は2024年度よりも保険料率が下がります。
北海道・東北 | 関東 | 中部 | 近畿 | 四国・中国 | 九州 |
---|---|---|---|---|---|
・岩手県 ・山形県 |
・群馬県 ・埼玉県 ・東京都 ・神奈川県 |
・石川県 ・福井県 ・山梨県 ・静岡県 |
・京都府 ・大阪府 ・兵庫県 ・奈良県 |
・香川県 | ・福岡県 ・熊本県 ・沖縄県 |
協会けんぽのホームページで最新の料率を確認できるため、確認してみてください。
なお、40歳以上64歳以下の方は、介護保険第2号被保険者として介護保険料を納付します。2025年度の介護保険料率は1.59%で、2024年度の1.6%から引き下げとなりました。
【国民健康保険】年間保険料の上限が3万円引き上げ
自営業者やフリーランスの方が加入する公的医療保険が、国民健康保険です。会社員や公務員などが加入する健康保険や後期高齢者医療制度に該当しない方は、都道府県と市区町村が共同で運営する国民健康保険に加入します。
2025年度は、国民健康保険料の年間上限額が3万円引き上げられています。具体的には、2024年度の上限額は106万円でしたが、2025年度は109万円です(介護保険料を納めない方は92万円が上限)。
年収約1,170万円以上の高所得世帯が、今回の引き上げの影響を受けます。個人事業を営んでおり、事業が順調な方は負担増に備える必要があるといえるでしょう。
今後も健康保険料が引き上げられる可能性が高い理由
日本は高齢化率が上昇を続けている一方で、出生率が毎年のように過去最低を更新しています。少子高齢化に歯止めがかからない状況であるため、今後も健康保険料の負担増を覚悟しなければなりません。
以下で、今後も健康保険料が引き上げられる可能性が高い理由を見ていきましょう。
高齢化の進展
「団塊の世代」の全員が75歳以上となり、高齢化率が上昇する問題を「2025年問題」と呼びます。医療や介護をはじめとしたサービスの提供に支障が出ることが懸念されていますが、社会保障制度の維持に関しても、2025年問題は大きな影響を与えます。
一般的に、高齢者が増えるほど働く人が減り、社会保障の「受給者側」に回るためです。また、高齢になるほど医療サービスを利用する機会が増えるため、高齢化の進展は「社会保障制度の維持」という観点から考えるとマイナスなのです。
厚生労働省の資料によると、2040年の日本の高齢化率は全人口の約35%に達すると推計されており、今後も高齢化率は上昇するでしょう。また、現役世代の減少により、2040年には「1.5人の現役世代が1人の高齢者を支える」という構図になると見込まれています。
実際に、協会けんぽの保険料率も国民健康保険料の上限額も、毎年のように引き上げられています。人口動態に急劇な変化が起こらない以上、今後も社会保険料の値上げは避けられないと予測するのが自然です。
医療費の上昇
高齢者人口の増加に伴って、医療費の上昇が続いています。日本の公的医療制度では、医療費と介護費の公費負担が7割~9割となっています。
一般的に、高齢になるほど医療と介護サービスを利用する場面が増えるため、今後も医療費が上昇すると見込まれるでしょう。医療費が上昇すると財政を圧迫し、最終的に保険料の負担増として加入者へ転嫁されます。
つまり、「高齢者人口が増える→医療費負担が上昇し続ける→国の財政が圧迫される→保険料増という形で加入者へ転嫁される」という悪循環に陥ってしまうのです。
社会保険制度の維持
少子化・高齢化・医療費負担の上昇に歯止めがかからないと、社会保険制度の維持が困難になります。社会保険制度を維持するためには、国による公費援助だけでなく、安定的に保険料を徴収する必要があります。
少子高齢化によって社会保険料の払い手が減る一方で、公的サービスの利用者が増えると、当然ですが現在と同じ水準の社会保険制度を維持することはできません。社会保険制度の安定性が揺らぐと安心して生活できないため、保険料の値上げは避けられないのです。
社会保険制度を将来にわたって維持するためには、給付の適正化とあわせて、負担の見直しを含めた総合的な対策が必要です。今後も「現役世代が減り、高齢者は増え続ける」という構造が続く以上、社会保険料の値上げは続くでしょう。
中低所得者層への配慮
国民健康保険料の上限が引き上げられた一つの理由に、「中低所得者層への配慮」があります。
被保険者の所得が十分に伸びない状況で全体的な保険料率を引き上げると、中低所得者層の可処分所得が減少してしまいます。これにより、消費が減りさらに経済が停滞する悪循環になりかねません。
しかし、保険料負担の上限を引き上げることにより、経済的に余裕がある高所得層の負担は増えるものの、制度を維持できるでしょう。
簡単に言うと、国民健康保険料に関しては「高所得層に負担してもらい、中間所得層の被保険者に配慮するための引き上げ」といえるでしょう。これにより、国民健康保険の制度を維持しつつ、中間所得層の保険料を抑制し生活への悪影響が出る事態を防いでいるのです。
個人事業主が国民健康保険料を抑えるための方法
今後も健康保険料の値上げが継続すると見込まれる以上、各事業主が対策をする必要があります。以下で、合法的に個人事業主が国民健康保険料を抑える方法を解説するため、参考にしてみてください。
なお、法人経営者の方が社会保険料を抑える方法は、以下で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
青色申告特別控除を活用する
個人事業主の方は、青色申告特別控除を最大限に活用しましょう。国民健康保険料は所得に応じて計算されるため、青色申告特別控除を活用し課税所得を抑えることにより、国民健康保険料の負担を軽減できます。
青色申告特別控除には10万円・55万円・65万円の3種類があり、ぜひ65万円の控除を受けたいところです。65万円控除を受けるには複式簿記や電子申告などの要件がありますが、会計ソフトを活用すれば、簡単に65万円の控除を受けられます。
お住まいの自治体や課税所得によって差があるものの、課税所得が65万円減少すれば、納付する国民健康保険料額が5万円以上安くなることもあります。決して無視できない金額といえるでしょう。
税務署に青色申告承認申請書を提出していない個人事業主の方は、今からでも提出することをおすすめします。
経費を適切に計上する
経費を適切に計上し、課税所得を抑えることで、税金だけでなく国民健康保険料の負担を軽減できます。法律上認められた範囲内で経費を計上し、税金と国民健康保険料を最適化しましょう。
経費とは、簡単にいうと業務に関連した支出です。事務所の賃料や通信費、広告宣伝費などはわかりやすい経費ですが、消耗品費や接待交際費も立派な経費です。
生活費を経費に計上するのは脱税ですが、業務に関連していれば経費に計上して問題ありません。自宅を事務所にしている場合は、家事按分をして家賃や水道光熱費を適切に計上することも忘れないようにしましょう。
創業手帳では、23の経費科目についてそれぞれ「削減する」方法と「節税する」方法と2パターン解説した「経費で損しないためのチェックリスト」を無料でお配りしています。こちらもあわせてご活用ください。
マイクロ法人の設立を検討する
マイクロ法人とは、代表者1人またはごく少人数で運営される小規模な法人です。本業の事業とは異なる事業をマイクロ法人で行うことにより、社会保険料を削減できる可能性があります。
マイクロ法人を設立すると、社会保険(健康保険と厚生年金保険)に加入します。役員報酬を低く設定すれば、健康保険料と厚生年金保険料を抑えることが可能です。
マイクロ法人とは別に個人事業で収入を得た場合、個人事業で得た収入に社会保険料はかかりません。つまり、役員報酬を調整することで、社会保険料の負担を最小限に抑えることが可能なのです。
ただし、マイクロ法人の事業と個人事業は別物である必要があります。また、法人の設立や運営に関する事務的な負担が発生し、利益に関係なく法人住民税均等割として年間で約7万円が発生する点に注意しましょう。
免除・減免制度を利用する
世帯の所得が一定以下の場合、国民健康保険料の免除・減免を受けられる可能性があります。基準は自治体によって異なるものの、例えば東京都品川区では、国民健康保険料の均等割について以下のような減免制度を設けています。
減額割合 | 前年中の世帯主と加入者全員の所得金額の合計 |
7割減額 | 43万円+10万円×(給与所得者等の数-1)以下 |
5割減額 | 43万円+(加入者数×30.5万円)+10万円×(給与所得者等の数-1)以下 |
2割減額 | 43万円+(加入者数×56万円)+10万円×(給与所得者等の数-1)以下 |
減額判定の基準となる「所得」は、世帯全員の合計所得で行います。
減免を受けるためには世帯全員分の所得の申告が必要であり、国民健康保険加入者の中で住民税の未申告者が一人でもいると、減額の判定ができません。そのため、必要に応じて住民税の申告を行いましょう。
国民健康保険組合の保険に加入する
国民健康保険ではなく、「国民健康保険組合」に加入することで、保険料を抑えられる可能性があります。国民健康保険組合とは、建設業や理美容業、デザイナーなど特定の職種ごとに設立された組合です。
代表的な国民健康保険組合として、以下が挙げられます。
- 医師国保組合(医師・歯科医師・薬剤師などの医療関係者)
- 建設国保組合(建設業従事者)
- 理美容国保組合(理容師・美容師)
- 芸能国保組合(芸能関係者)
- 弁護士国保組合(弁護士)
- 印刷国保組合(印刷業従事者)
- 農林水産業国保組合(農林水産業従事者)
国民健康保険組合では、所得にかかわらず保険料が一定です。組合ごとに保険料は異なるものの、所得が高い方ほど保険料を抑えられるでしょう。
業種や居住地が限定されているため、すべての個人事業主が加入できるとは限りません。しかし、加入できる組合があれば、保険料の仕組みを確認したうえで加入を検討するとよいでしょう。
まとめ:2025年に行われる健康保険料の値上げに対応しよう
日本は今後も高齢者率の上昇と少子化が進むと考えられており、健康保険料の値上げは避けられません。健康保険料と国民健康保険料の負担が重くなることを見越して、事業を運営する必要があるでしょう。
公的医療保険制度の中でも、国民健康保険料は負担が重くなりやすい特徴があります。そのため、自営業者や個人事業主の方は青色申告特別控除を活用したり経費を適切に計上したりして、負担を軽減するための方法を実践しましょう。
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