東京無線協同組合 村澤 儀雄|ついに解禁された「日本版ライドシェア」の現状や可能性とは
2024年4月「自家用車活用事業」開始!日本版ライドシェアの社会実装に期待が集まる
海外ではUberやGrabを中心とした「ライドシェア」サービスが生活の一部として定着していますが、日本でも数年前から実用化に向けた調整が進められていました。
2024年4月に新制度となる「自家用車活用事業」が開始され、日本版ライドシェアが少しずつ社会実装され始めました。
今後はタクシー業界との連携を図りつつ、ライドシェアの更なる拡大が期待されています。
今回はタクシー協同組合である「東京無線協同組合」の村澤氏に、日本版ライドシェアの現状と未来予想についてお聞きしました。
東京無線協同組合 理事長
1960年東京都生まれ。85年日本大学大学院理工学研究科前期博士課程修了。メーカーを経て、89年日本自動車交通入社。93年専務などを経て、99年から社長。22年から現職。東京ハイヤー・タクシー協会乗務員指導委員長。
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この記事の目次
タクシー会社68社の共同体だからこそ提供できる価値がある
村澤:日本大学大学院の理工学研究課の修士課程を修了して、当時は車のエンジン周りについて研究していました。
その後、大手自動車メーカーに入社し、5年間ほど車の設計をしていました。そこから1年間、別の会社でタクシーの乗務員を経験をした後に、1989年に日本自動車交通に入社いたしました。
1999年に日本自動車交通の代表取締役に就き、2022年には東京無線協同組合の理事長に就任して今に至ります。
村澤:東京無線協同組合はタクシー会社68社が横並びで集まった共同企業体です。
それぞれが共同出資することで無線配車や営業活動を行っていますが、このようなところがフランチャイズとの違いです。フランチャイズの場合は大きな母体があり、そこにぶら下がる形で加盟店が連なるイメージですので。
施策をやるにしても、小さい会社一つでは選択できないことが多々ありました。
そのため、先代から小さい会社同士が結束して、1962年に東京無線協同組合が設立されました。
世界一のタクシー水準をライドシェアでも
村澤:東京無線協同組合としては、昨年末からライドシェア乗務員を募集して、2024年4月にライドシェアサービスをスタートしました。
多数の応募をいただき選考を進めた結果、まずは30名体制となりました。
年齢は30〜50代で、個人事業主の方が空き時間にライドシェアの乗務員をしている場合が多いです。
当初、フードデリバリーをやられている方の応募が多いのではと考えていましたが、そうではありませんでした。
村澤:日本のタクシーサービスの水準は世界一を誇っています。
日本版のライドシェアとしてタクシー会社がきちんと管理し、タクシーが少ない時間帯に通常のタクシーに近い水準で乗務員を提供することが大事だと考えています。
村澤:今までタクシー業務に従事していない方にとっては難しいと思われやすいかもしれません。実際にやってみると、思ったほど難しくないと感じている方が多いようです。
ライドシェアの場合はお客様が乗車する場所と降りる場所が事前に決まっているケースも多く、最近はカーナビもあるので、タクシー業界初心者の方でも安心して働ける環境が整っています。
東京無線協同組合はタクシー業界の人手不足にどう取り組む?
村澤:タクシー業界だけが人手不足なわけではありません。
コロナ禍でタクシー業界を離れてしまった乗務員もいますので、そういった方々に戻ってきていただける様にしたいと考えています。
村澤:元々東京無線協同組合のタクシー保有台数は3,500台だったところ、チェッカー無線と統合後は5,000台に増えました。
この規模のタクシーを一括で管理できるようになったため、東京都内のどこでも当組合のタクシーに乗車いただける体制が整いました。
村澤:おっしゃる通りです。我々は協同組合ですので、手を結びたい方に対してウェルカムです。
タクシー業界のDXが加速!全車両の位置や空車情報を一括管理
村澤:東京無線協同組合では、全ての車両位置と空車・実車の情報をIT技術により常に把握しています。
そのため、お客様から依頼があった際にはすぐに手配できる体制です。電話だけでなく、アプリでの配車にも対応しています。
村澤:組合68社から色々な改善案が出ていますので、それをしっかり取りまとめて業界の発展のために活かしていく必要があります。
どこの国も同じですが、少子高齢化が進んでいます。国内では運転免許を返納する人が増えるため、タクシーのニーズは今後も増えてくると考えています。
そして近い将来、段階的にですが自動運転技術も進んでいくでしょう。
村澤:一社一社の努力があるからこそ、日本のタクシー業界は高い水準を維持し続けられています。
ライドシェアやDXも含めて、これからも進化を続けられる業界でありたいと思っています。
(取材協力:
東京無線協同組合 理事長 村澤 儀雄 )
(編集: 創業手帳編集部)