食品販売時の注意点とは?トラブル回避のために準備したいことを解説

創業手帳

食品の販売時の注意点は「必要な許可」と「資格」を理解すること


「食」に関するビジネスは、私たちの身近にあって成長も期待できる事業です。
しかし、食品の販売は、食中毒などのリスクを伴い責任が重いためスタートするのに不安を感じる人も多いかもしれません。
実際に、イベントで販売されたマフィンが原因で健康被害が発生する事件が発生し、大きな話題となりました。

食品に関わるトラブルを未然に予防するために食品販売時には、必要な許可や資格が決められています。
どのような制度があるのか理解して、起業準備を進めてください。

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【食品・業種別】食品を販売するときに必要な許可・届け出


ネットショッピングが普及し、物流も便利になったことで食品のオンライン販売も広く利用されるようになりました。

一方、食品を加工して販売するには、保健所や自治体から許可・届け出が必要です。どのような許可・届け出が必要なのかは、食品を販売するときのパターンによって違います。

ひとつは、営業許可や届け出が一切不要なケースです。
さらに、営業許可が必要なケースと営業許可は不要でも届け出が必要なケースがあります。自分のビジネスがどのケースに該当するのか考えてみてください。

営業許可が必要な食品・業種

食品を扱う業種のうち、営業許可が必要なのは調理業や販売業、処理業、製造業です。
ただし、食品の販売においては食肉販売業と魚介類販売業に限定されています。

食肉販売業は獣の生肉を販売する事業、魚介類販売業は鮮魚介類を販売する事業を指します。
また、自分で作ったお菓子など食品を販売する加工食品販売も営業許可を取得しなければいけません。

以下では、営業許可を取得するときの条件について説明しています。

営業許可を取得する条件①設備要件

営業許可を得るためには、都道府県ごとに定められている施設基準のうち、共通基準と、業種ごとに定められた特定基準の両方を満たした施設が必要です。

営業許可を取得するための施設要件としては、場所は清潔な場所で建物十分な耐久性がある構造といった形で自治体ごとに細かく定められています。
食品取扱設備や給水・汚物処理などについての基準が定められているので、早い段階で該当する都道府県の基準を確認してください。

例えば、床を耐水性材質にするための工事や従事者用の手洗い場設置など設備も整える必要があります。
何から手を付ければいいのかわからない時には、まずは管轄の保健所に出向いて相談してください。

自治体によっても営業に関する要件が違うことがあるので、注意しましょう。
これから製造施設を用意する場合であれば、着工する前に図面を持参し相談するようにおすすめします。
また、同時に他の条件や食品表示ラベルについて確認しておくと後の手続きもスムーズです。

営業許可を取得する条件②食品衛生責任者の選任

営業許可を取得するためには、食品衛生責任者も必要です。本人が食品衛生責任者の資格を取得するか、誰かを選任して食品衛生責任者を設置します。

食品衛生責任者を選任したら、所轄の保健所に届け出をします。
食品衛生責任者は、届出制の業種や食品に関わるときには必須の資格なので、食品を扱うと決めた時点で取得しておくようにしてください。

営業許可の申請には、許可書類と許可申請手数料、食品衛生責任者の資格を証明する書類や設備の配置図が必要です。
書類審査の後に施設検査を受けてから営業許可証が交付されます。

届け出のみで営業ができる食品・業種

食品販売業の中には、届け出のみで営業できる業種も数多くあります。
以下では届け出だけで営業ができる業種を紹介しています。

  • 魚介類販売業(包装食品のみの取り扱い)
  • 食肉販売業(包装食品のみの取り扱い)
  • 乳類販売業
  • 氷雪販売業
  • 調理の機能を有する自動販売機により食品を調理し,調理された食品を販売する営業(食品の自動販売機)
  • 弁当販売業
  • 野菜果物販売業
  • 米穀類販売業
  • 通信販売・訪問販売による販売業
  • コンビニエンスストア
  • 百貨店
  • 総合スーパー
  • 自動販売機による販売業(コップ式自動販売機(自動洗浄、屋内設置)及び営業許可の対象は除く)
  • その他の食料、飲料販売業

魚介類や食肉は、包装品を仕入れてそのまま販売する業態であれば届け出だけで営業可能です。
包装食品とは、容器包装に入れられた状態で仕入れるものでアルミや紙だけ程度の包装ではなく、遮蔽性を確保している状態のものです。
届け出のみであれば、営業許可が必要な食品よりも手軽にスタートしやすく感じるかもしれません。
ただし、届け出だけの販売業でも食品衛生責任者の選任は必要な点には注意してください。

また、密閉包装されている特定の食品も届け出と資格だけで販売できます。具体的にはコーヒー豆や米類、落花生などが該当します。
製造する食品によって扱いが違うので詳しい内容は、保健所に確認してください

営業許可も届け出も不要な食品・業種

食品の中には、営業許可も届け出も不要とされているものもあります。
以下は営業許可も届け出も不要な食品です。

  • 食品又は添加物の輸入業
  • 食品又は添加物の貯蔵又は運輸のみをする営業(ただし、冷凍・冷蔵倉庫業は除く。)
  • 常温で長期保存しても腐敗、変敗その他品質の劣化による食品衛生上の危害の発生のおそれがない包装食品の販売業
  • 合成樹脂以外の器具容器包装の製造業
  • 器具機器包装の輸入又は販売業

上記の飲食事業であれば営業許可が不要です。

例えば、長期保存しても食品衛生上のリスクがほぼないペットボトル飲料やスナック菓子といった食品を仕入して販売だけするような場合は、営業許可も届け出もいりません。
常温で保存できる食品を貯蔵、運搬のみ行う場合も同様ですが、他に営業許可や届け出が必要な業種を併せておこなうときには、それぞれ申請が必要なので注意してください。

食品を販売するときに必要な条件


食品を販売するために必要な営業許可や届け出については前述しました。しかし、それ以外にも食品販売を始めるときには必要な条件があります。
食品販売時に必要な条件をまとめたので、許可の申請や届け出と並行して準備を進めてください。

食品衛生責任者の選任

食品の製造や加工、運搬や販売のように食品を扱う仕事では、事業者本人が食品衛生責任者となるか、誰かひとりを選任して食品衛生責任者を設置しなければなりません

食品衛生責任者は、調理師や栄養士といった特定の資格がある人、もしくは自治体の定める養成講習会を受講して資格を取得した人が勤めなければいけません。
営業者の指示に従って衛生管理を実施したり、アドバイスを提供したりする役割があります。
自身が行うか、有資格者を雇用するか検討してください。

HACCPによる衛生管理

食品衛生法が改正され、2021年6月1日から原則すべての食品事業者に対してHACCP(ハサップ)に沿った衛生管理が求められるようになりました。

HACCPとは、国際基準の衛生管理方法です。
原材料を仕入れて製品として出荷するまでの全工程で危害要因を除去・低減させるための衛生管理が求められます。
営業許可も届け出も必要ない業種のみの事業であればHACCPの衛生管理は不要です。
しかし、営業許可や届け出が必要な業種ではHACCOの衛生管理が求められます。

食品衛生法による商品ラベル貼付

食品を販売する場合、商品へのラベル貼り付けが義務化されています。

バイキング形式のように消費者が食品を選んで詰めるような業態では省略できますが、基本的には食品の名称や原材料名、添加物、内容量、さらに賞味期限と保存方法、製造者などの記載が求められます
扱う食品によって表示の内容が変わるので、食品販売時にはどのようなラベル表示が必要になるのか確認しておいてください。

食品を販売するときの注意点


食品は、注意しなければならないこともたくさんあります。どういったことに注意すればいいのかまとめました。

営業許可の取得や届け出の提出をしないと罰則もある

食品衛生法では、規定が守られなかったときの罰則についても定められています。

食品衛生法では、飲食店を営もうとする者は、厚生労働省令で定めるところによって、都道府県知事の許可を受けなければならないと定めています。
この条文に違反して営業許可を受けずに許可が必要な営業をした場合には、2年以下の懲役または200万円以下の罰金刑です。

さらに、営業の届け出を行わなかった場合にも、罰則で50万円以下の罰金刑の対象となります。
罰則を受けると資金面での負担があるだけでなく、長期的な信頼関係にもキズが残ってしまいます。
飲食店を営業する前には、営業許可や届け出が必要か確認して、手続きを済ませてから営業するようにしてください。

営業許可は更新が必要

営業許可は取得したらそのまま永久に新しい手続きが不要というわけではありません。
営業許可は更新が必要で、都道府県知事による有効期間内の更新や必要な条件を満たさなかったときも、1年以下の懲役または100万円以下の罰金刑の対象です。
場合によっては最大3年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人の場合1億円以下の罰金となります。

更新では開業してから衛生面で大きな変化がないか、設備などの故障がないかをチェックされます。
有効期限までに飲食店営業許可証と更新料を用意して、保健所窓口で手続きしてください。

食品販売にはラベル貼付が必要

食品を販売するには、商品の情報を表示するように義務付けられています。内容を記載したラベルを用意して、見やすい部分に貼付するようにしてください。
記載する項目は主に以下のものです。

  • 名称
  • 賞味(消費)期限
  • 原材料
  • 内容量
  • 保存方法
  • 遺伝子組換え
  • 販売元(輸入した食品の場合は、原産国名と輸入者名を記載する)
  • 添加物
  • アレルギー

添加物やアレルギーの表示は、食品によって違います。
卵と乳、小麦のほかそば、落花生、えび、かにの7品目は、特定原材料に指定されていて表示が義務化されています。

加工食品(手作り食品)を販売するときの注意点


同じ食品の販売業でも、仕入れた食品を加工してから販売する加工食品とそうでない食品は大きく違います。
加工食品の販売は営業許可をもらって設備と人に関わる条件をクリアしなければいけません。

専用の厨房を用意する

加工食品を販売するときには、専用の調理室や厨房を用意しなければいけません。厨房は食品の製造や加工のためのスペースで衛生基準を満たす必要があります。
適切な設備、清潔な環境を整えるようにしてください。

一般的な住宅のキッチンでは、営業許可の施設基準は満たせません。
そのままの状態では営業許可を取得できないため、改装するか他に調理場を用意しましょう。
届け出については自治体によって違いもあるので、管轄の保健所に確認してください。

食品表示の義務がある

食品表示法に則り、加工食品を販売するときには、消費者が理解しやすい日本語で食品の情報をラベル表示しなければいけません。
販売する加工食品の種類によって原材料や栄養成分といった情報を表示します。

加工食品の安全性や栄養分の情報を消費者に提供することは、消費者の健康を守るために必須です。
どのような表示が必要なのか保健所で事前に確認してください。

衛生管理を徹底する

食品の製造と販売において衛生管理の徹底は、絶対に守らなければならない条件です。
そのために食品衛生責任者を設置して設備と食材の衛生管理を厳格におこなわなければいけません。

適切な衛生管理があることで、食品への微生物や異物の混入を防いで消費者の安全を確保できます
定期的な衛生検査や清掃のほか、その設備で働く人の健康管理なども必要になります。
食品を扱う事業をおこなっていれば、日常的に管理しなければならないので従業員に周知徹底できるようルールを定めてください。

まとめ・食品販売の際には許可がいらないか注意点を確認しよう

食品の販売は、その食品や業態によって営業許可や届け出が不要なものと、届け出のみで良いもの、営業許可が必要なものがあります。
許可や届け出が必要なのに、手続きせずに販売すれば罰則を受けるかもしれません。

また、許可や届け出以外にも多くの注意点があります。
食品の販売をスタートするときには、どういった条件が必要なのか調べてから手続きやマニュアル作成を怠らないようにしましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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