意匠登録にはいくら費用がかかる?自分で申請する場合の料金、弁理士報酬の相場を紹介

創業手帳

商品等のデザインを保護するには意匠登録が有効です!出願・登録にかかるコストを確認しておきましょう


意匠登録とは、商品のデザイン(形・模様・色)に関する「意匠権」を得るための手続きのことです。意匠登録をすれば、当該デザインの実施(生産・使用・販売等)にかかる権利を最長25年にわたって独占できます。ほかに対して使用差し止めや損害賠償を行うことも可能です。

意匠法の改正により、令和2年4月からは「物品」以外にも「画像」、「建築物」、「内装」のデザインについても、登録ができるようになりました。

そのため、登録をしていないことによるリスクも増加しています。

今回はそんな意匠登録にかかる費用について解説します。自分で登録申請する場合にかかる最低限の料金、弁理士に支払う報酬の相場などを紹介するので参考にしてください。

なお、意匠は出願前に公開してしまうと意匠登録が認められなくなるので注意しましょう。考案したデザインの権利を守るため、公開前に意匠登録の是非をご検討ください。

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意匠登録にかかる費用


意匠登録にかかる費用の内訳は、出願料と登録料(毎年)です。弁理士に調査や申請を依頼する場合は、別途弁理士への報酬も必要になります。

登録に必要な最低限の料金【自分で登録する場合】

■出願料

項目 金額
意匠登録出願 16,000円
秘密意匠の請求 5,100円

※秘密意匠の請求とは、意匠登録から3年以内の期間を指定し、意匠の内容を公報に載せず、秘密にすることを求める行為。

■登録料

項目 金額
第1年から第3年まで 毎年 8,500円
第4年から第25年まで 毎年 16,900円

出典:特許庁公式サイト「産業財産権関係料金一覧」

意匠登録にかかる最低限の費用は24,500円です。出願料(16,000円)と1年目の登録料(8,500円)を足した費用になります。

またその後、登録から最長25年意匠権を維持する場合、25年の合計で413,300円が必要です。以上が、弁理士を頼らず、自分で意匠登録の手続きをする場合にかかる料金になります。

なお、電子申請ではなく、書面での手続きを希望する場合は、下記の電子化手数料も別途かかります。

書面申請では電子化手数料もかかる

電子化手数料は、紙で提出された資料を電子化する費用として徴収される料金です。特許庁では、手続きの処理を効率化するため、ペーパーレス計画を推進しています。電子化手数料を設けているのも、ペーパーレス化の一環です。

電子化手数料の金額は、1件につき2,400円+書面1枚につき800円と定められています。例えば、「意匠登録願」と「特徴記載書」の2枚を書面で提出した場合の電子化手数料は2400円と800円×2枚で4,000円となります。

弁理士手数料の相場【弁理士に依頼する場合】

最低値 平均値 最大値
意匠出願の手数料 20,000円 104,125円 225,000円
意匠出願の謝金 0円 63,562円 150,000円
弁理士費用の合計 20,000円 167,687円 375,000円
+出願料・登録料 44,500円 192,187円 399,500円

※図面2枚,特徴記載あり,物品の説明ありの場合
参考:日本弁理士会「弁理士の費用(報酬)アンケート(平成18年実施)」

意匠登録出願を弁理士に依頼する場合、出願の手数料と謝金(成功報酬)という2種類の費用がかかります。両費用は合計で平均16万円強、特許庁に納める出願料・登録料24,500円を合わせると意匠登録1件につき19万円強の費用が必要です。

ただし、上記のアンケート調査は平成18年(2006年)実施なので、データが比較的古い点にはご注意ください。とはいえ、弁理士事務所のHPを複数参考にする限り、弁理士費用の実態は2023年現在も当時とそれほど変わらないようです。

なお、弁理士に依頼すると、出願書類の作成や出願手続き、出願後の対応(登録料の納付、意見書の提出等)を代行してもらえます。また意匠登録前の事前調査や毎年の登録料納付にかかる納期管理なども任せられます。

審査に落ちた場合にかかる審判請求費用など

項目 金額
審判(再審)請求
※拒絶査定が出た場合に再審査を求める
55,000円
判定請求
他者の意匠が自分の意匠権を侵害しないか調べる等
40,000円
裁定請求
※他者との協議が不成立の場合、特許庁に判断を求める
55,000円
裁定取消請求 27,500円
審判又は再審への当事者の参加申請 55,000円
審判又は再審への補助参加申請 16,500円

出典:特許庁公式サイト「産業財産権関係料金一覧」

意匠登録の出願が拒絶され、再審を請求する場合、55,000円の費用がかかります

また審判請求の手続きを弁理士に依頼する場合は、別途弁理士への手数料や成功報酬も必要です。審判請求にかかる弁理士費用の相場については、以下の表を参考にしてください。

最低値 平均値 最大値
意匠に関する拒絶査定審判の手数料 40,000円 181,754円 300,000円
意匠に関する拒絶査定審判の謝金 0円 171,433円 300,000円
弁理士費用の合計 40,000円 353,187円 600,000円
+審判請求費用 95,000円 408,187円 655,000円

参考:日本弁理士会「弁理士の費用(報酬)アンケート(平成18年実施)」

以上のように、再審請求をすると余分にかなり費用がかかります。そのため、適切な調査・出願手続きによって、なるべく拒絶査定が出ないようにするのが理想的です。

拒絶査定を避けるための注意点

拒絶査定がなされる理由は、「同一ないし類似の意匠がすでに公開されている」「高度な創作性がない」など、さまざまです。

拒絶査定を受けないために注意すべき点として、意匠登録の出願前に意匠(デザイン)を公開しないことが挙げられます。インターネットを含め、出願前に公開された意匠については、原則として意匠登録ができません。意匠権を得たいデザインについては、公開前に出願申請を済ませましょう。

なお、出願前に誤って公開してしまった意匠を登録するには、出願時に「新規性喪失の例外規定」の適用を受ける手続きが必要です。手続きの詳細については、特許庁の公式サイトでご確認ください。

意匠登録のメリット【費用対効果】


意匠登録には、上記で紹介した費用を支払うだけの価値があるのでしょうか。以下では、意匠登録のメリットやしない場合のデメリットを紹介するので、費用対効果を考えるうえでの参考にしてください。

デザインに関する権利を長期間独占できる

意匠登録のメリットは、登録したデザインの生産や使用、販売などにかかる権利を独占できることです。意匠権を得たデザインに関しては、他社は同一または類似のデザインについて最長25年間権利を持てなくなります。

もし他社が意匠権を侵害した場合、権利者は使用差止請求や損害賠償請求をすることが可能です。またはライセンス契約を締結し、使用を認める代わりにライセンス料を徴収することもできます。

さらに意匠登録が完了し、内容が公報に載ることは、事業者の信頼性向上にもつながります。意匠権のある商品のほうが途中で販売ができなくなるリスクが低く、取引先に安心感を与えられるからです。

意匠登録しないと3年後に模倣品が乱立する恐れ

意匠登録をせずにデザインを公開、商品を販売すると、発売から3年経過後、模倣品が乱立して損害をこうむる恐れがあります。

商品の発売から3年間については、不正競争防止法で権利が保護され、他社は模倣品を販売できません。その期間内は、意匠権がなくとも使用差止請求や損害賠償請求も可能です。

しかし、商品の発売から3年が経過すると「不正競争」には該当しなくなり、意匠登録がなければ権利を保護できません。販売停止を求める正当性がなくなり、該当の意匠を使用した商品のシェアを他社に取って代わられる恐れがあります。

意匠登録の費用にかかわるFAQ


以下では、意匠登録の費用についてよくある質問にお答えします。

Q. 意匠登録の費用を抑えるコツはある?

意匠登録にかかる費用を最小限に抑える方法は、自分で手続きをすることです。弁理士に頼まず自分で申請すれば、意匠登録1件あたり24,500円の費用で済みます。また電子化手数料をかけないために、電子出願を選択することもポイントです。

ただし、自分で出願する場合は、事前調査や手続きに不備がないように気をつけなければなりません。拒絶査定がなされ、再審請求となれば、余分に費用がかかってしまいます。

自分での出願に不安がある場合は、弁理士に依頼したほうが無難です。その際、できるだけ安い事務所を選べば費用を節約できます

Q. 費用支払いの順番や流れは?


出典:特許庁公式サイト「初めてだったらここを読む~意匠出願のいろは~」

上記が料金納付を含めた意匠登録の流れです。弁理士に依頼する場合、意匠出願の際に手数料、登録料納付のタイミングで謝金(成功報酬)も必要になります。

また拒絶査定がなされ、再審請求をする場合、請求費用と弁理士費用が別途かかります。

Q. 出願料や登録料の納付方法は?

出願料の納付方法は、郵送の場合、特許印紙を用いた納付になります。電子化手数料は後日送付される払込用紙を用いてお納めください。インターネット出願の場合、予納・現金納付・電子現金納付(ペイジー)・口座振替・指定立替納付(クレジットカード)から選択可能です。

また登録料については、特許印紙・予納・現金納付・電子現金・口座振替・クレジットカードの6種類から選べます。2年目以降の登録料については、自動納付制度(自動引き落とし)もあります。

Q. 複数の意匠登録を出願する際の費用は?

意匠登録の出願は、複数の意匠を一つの願書でまとめて手続きすることも可能です。複数意匠一括出願にかかる費用は、意匠登録出願が一意匠につき16,000円、秘密意匠の請求が一意匠につき5,100円になります(単一出願と同額)。

まとめ

意匠登録には、出願料と登録料が1件あたり24,500円、弁理士に依頼すれば別途16万円強の手数料・謝礼も必要になります。

費用は比較的高いとも言えるかもしれませんが、意匠登録によってデザインの権利を独占するメリットは大きいです。模倣品によって事業を妨げられることがないよう、意匠の公開前に、ぜひ一度意匠登録を検討してみてください。

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