商業登記簿謄本とは?使う場面や取得方法、取得にかかる手数料を解説

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商業登記簿謄本が必要になる場面や取得方法を確認しよう


商業登記簿謄本は、会社経営や事業に取り組む上での様々な手続きで必要となる書類です。
また、取引先の企業について知りたい時にも役立ちます。普段、商業登記簿謄本を使う機会がなく、具体的にどのような書類なのかを知らない方もいるかもしれません。

そこで今回は、商業登記簿謄本についてご紹介します。いざ必要になった時に備えて、取得方法や手数料、取得する際の注意点なども解説するので、ぜひ参考にしてください。

商業登記簿謄本とは?


商業登記簿謄本は、法務局で発行できる書類のひとつです。まずは、商業登記簿謄本の詳細や書類が必要となる場面、法人登記との違いについてご紹介します。

取引上で重要な項目が記載されている書類

商業登記簿謄本は、商業登記を行うと発行できるようになる書類です。
商業登記とは、商法や会社法などの法律によって登記すべきと定められた事項を商業登記簿に記載し、公示する制度です。
商号や会社などの関わる信用を保ちつつ、取引きを安全かつ円滑に進めるためにも、会社設立の際に商業登記が必要になります。

商業登記簿謄本に記載されている内容は、会社法の規定により商人に関する取引上で重要な事項です。
具体的には、社名(商号)・所在地(本店)・役員の氏名・法人の目的など、会社の実態がわかる内容が記載されています。

商業登記をすると、法務局から登記事項証明書が発行されます。
商業登記簿謄本と登記事項証明書はどちらも同じ内容が記載されており、正式に登記が行われたことを証明するものなので、明確な違いはありません。

細かく区別すると、紙媒体の登記用紙をコピーした書類が登記簿謄本、パソコンに保存されているデータを印刷した書類が登記事項証明書になります。
現在はパソコンでデータが管理されているため、登記事項証明書を用いることが一般的です。

商業登記簿謄本が必要となる場面

商業登記簿謄本が必要になる場面は様々です。
例えば、金融機関で法人口座を開設する際に、法人の実態を確認するために印鑑証明書や登記事項証明書の提出が必要です。
また、金融機関からの融資、国や自治体の補助金を申請、許認可や入札の手続きなどする時も商業登記簿謄本の提出を求められることが多くあります。

そのほかに、会社名義で物件を借りたり、大きな取引きや新規取引きを始めたりする時に商業登記簿謄本を求められる場合もあります。
商業登記簿謄本には、法律で規定された重要な事項が記録されているので、取引きを円滑に行うためにも公示されている内容のチェックは大切です。
信頼できる取引先なのか、こちらが相手の企業について知りたい時も商業登記簿謄本は役立ちます。

商業登記と法人登記との違い

商業登記と混同されやすい言葉に法人登記があります。
会社を登記したという意味で法人登記と使われることがありますが、実は商業登記とは意味が異なるので注意してください。

商業登記は、商人に関する重要事項を一般に公示するための制度です。
一方、法人登記は会社以外の法人の名称・所在地・役員の氏名などを登記簿に記載し、公示するための制度になります。

2つの登記の大きな違いは、対象となるものが異なる点です。商業登記の対象は株式会社・合名会社・合資会社・合同会社が挙げられます。
法人登記の対象となるのは、一般社団法人・一般財団法人・NPO法人・社会福祉法人などが該当します。

商業登記簿謄本の種類


商業登記簿謄本には、記載内容が異なる書類が4種類存在します。その種類と主な記載内容は以下のとおりです。

履歴事項証明書

履歴事項証明書は、記載事項の履歴を確認できる書類です。請求日から3年前の1月1日以降に変更や抹消された登記記録を確認できます。
例えば、取引先や資本金などが変更された場合に、この書類から履歴の確認が可能です。

主に記載されている内容は、後述する現在事項証明書の記載事項と一定期間に抹消や変更された登記記録に関する事項です。
履歴事項証明書には、すべての内容が記された全部証明書と一部の内容を抜き出した一部証明書の2種類があります。
企業の調査では、履歴事項全部証明書を使うのが一般的です。

現在事項証明書

現在事項証明書は、請求日の時点の登記記録が記載されている書類です。
商号や本店の所在地は直前の内容が記載されています。主に記載されている項目は以下のとおりです。

  • 会社法人等番号(会社や法人を識別するために番号)
  • 商号(会社名)
  • 本店所在地
  • 公告方法
  • 会社が成立した年月日
  • 会社の目的
  • 発行可能株式や発行済みの株式総数・種類など
  • 株券発行に関すること
  • 株式譲渡の制限に関する規定
  • 資本金
  • 役員に関すること
  • 取締役会設置に関すること
  • 監査設置に関すること
  • 登記記録に関すること

現在事項証明書も全部証明書と一部証明書のそれぞれを発行することが可能です。

閉鎖事項証明書

閉鎖事項証明書は、履歴事項証明書には載っていない3年前の1月1日以前に閉鎖した登記記録が記載された書類です。
吸収合併による消滅、管轄外のエリアへの本店移転、清算の完了などの理由で閉鎖した登記記録を確認できるので、過去に会社で発生した登記事項を確認する目的で用いられます。

3年以上前の状況が記載されるため、歴史の長い会社の場合は項目のほとんどが閉鎖事項の扱いになっている可能性があります。
また、閉鎖事項証明書も全部証明書、または一部証明書での発行が可能です。

代表者事項証明書

代表者事項証明書は、誰が会社の代表者を務めているのかを証明するための書類です。
主に契約の手続きや申請、訴訟時の確認などで用いられます。主に記載されている内容は以下のとおりです。

  • 会社法人等番号
  • 商業
  • 本店所在地
  • 代表者の氏名・住所・資格
  • など

なお、上記3種類の商業登記簿謄本とは異なり、代表者事項証明書には一部証明書がありません。

商業登記簿謄本の取得方法


商業登記簿謄本は法務局から取得できますが、そのやり方は窓口・郵送・インターネット申請の3種類があります。ここで、それぞれの取得方法をご紹介します。

地方法務局の窓口で申請

法務局の窓口に直接訪れ、申請書を提出することで商業登記簿謄本が発行されます。基本的にどの法務局でも取得の申請は可能です。

身近の法務局がわからない時は、各都道府県の法務局のWebサイトから検索できます。
なお、法務局の開庁時間は平日8時30分~17時15分までなので、曜日と時間に注意してください。

申請する際は、交付申請書が必要です。申請書は法務局に備え付けてあるものを使うか、法務局のWebサイトからダウンロードしたものを使用できます。
申請書に申請者の氏名・住所・商号・本店の所在地・会社法人等番号・請求したい謄本の枚数など必要事項を記載し、収入印紙欄に手数料分の印紙を貼り付けて、窓口に提出してください。

法務局には印紙売り場があるため、提出する直前に購入可能です。また、法務局によっては証明書発行請求機が設置されていることもあります。
証明書発行請求機であれば、請求書を書く必要はなく、窓口での申請よりも短時間で商業登記簿謄本を発行できます。

地方法務局に郵送で申請

郵送で法務局に商業登記簿謄本を請求可能です。郵送で申請する際は、法務局のホームページでダウンロードできる交付申請書が必要になります。
窓口と同じく、申請書に必要事項を記入して手数料分の収入印紙を貼り付けて、後は最寄りの法務局に郵送すれば申請の完了です。

封筒には申請書と一緒に、返信先の住所の記載と郵送切手が貼ってある返信用封筒を同封してください。
そうすることで、数日後に法務局から商業登記簿謄本が送られてきます。
また、どのような目的で送ったのかが一目で把握できるように、申請書を入れた封筒には「申請書交付在中」と記載してください。

登記・供託オンライン申請システムで申請

商業登記簿謄本は、「登記・供託オンライン申請システム」を利用してインターネットから申請書を作成し、請求することも可能です。
インターネットから申請した場合、指定の法務局の窓口で交付してもらうか、指定の送付先に郵送してもらうか、交付方法を選択できます。
郵送を選択した場合、上記の郵送申請とは異なり申請書や返信用封筒を事前に送る必要はありません。

「登記・供託オンライン申請システム」から商業登記簿謄本を取得する場合、「かんたん証明書請求」と「申請用総合ソフト」の2つのやり方があります。
「かんたん証明書請求」では印鑑証明書の請求ができないため、商業登記簿謄本と一緒に取得する必要がある時は「申請用総合ソフト」を利用してください。

インターネットから申請する場合、事前に申請者の情報登録が必要です。また、システムの利用時間は平日8時30分~21時までです。

商業登記簿謄本の取得にかかる手数料


商業登記簿謄本は一般に公示されるものであるため、手数料を支払って申請すれば会社の代表者以外の人も取得できます。
手数料は請求方法によって異なり、金額は以下のとおりです。

申請方法 手数料
法務局の窓口・郵送での申請 600円
インターネット申請(郵送で交付) 500円
インターネット申請
(最寄りの法務局の窓口で交付)
480円

商業登記簿謄本の取得にかかる手数料は、インターネット申請のほうが安くなります。また、交付の方法によっても金額が少し変わります。
なお、インターネットから申請する場合、手数料分の収入印紙を貼り付けることができないため、インターネットバンキングや「Pay-easy」対応のATMから納付してください。

商業登記簿謄本の取得時の注意点


実際に商業登記簿謄本を取得する場合、いくつか注意点があるのでご紹介します。

取得するために必要な情報をまずは調べておく

商業登記簿謄本は自社だけではなく、他社のものを取得することが可能です。しかし、取得するためには、対象企業の情報を把握しておく必要があります。

商業登記簿謄本の取得で必要となる情報は、会社の商号・本店や事業所の住所・会社法人等番号です。
申請する前に、これらの情報を調べて確認しておいてください。会社法人等番号は、オンライン登記情報検索サービスで確認することが可能です。

なお、商業登記簿謄本はどの法務局でも申請できますが、登記簿が古い場合は本店や事業所が所在する法務局でしか取得できません。
他社の商業登記簿謄本を取得する際は、その点も事前に確認しておくと安心です。

どの証明書が必要なのか確認する

商業登記簿謄本は全部で4種類あるため、どの証明書が必要になるのかを確認することも大切です。
例えば、現状の登記内容を確認したいのであれば、申請した時点の商号・住所・資本金・役員状況などが記載された現在事項証明書を申請することになります。

現在事項証明書の内容と同時に過去の変更履歴も確認したい場合は、履歴書事項証明書が必要です。履歴事項証明書は重要な手続きや契約で度々用いられています。

過去3年よりも前の古い記録を確認したい時は閉鎖事項証明書が必要です。
会社の存在や代表者が誰かを証明するための資料が欲しい場合は、代表者事項証明書が必要になります。

このように、証明書によって証明する内容が異なるため、目的に合わせて請求する証明書を選んでください。

「全部」か「一部」、「現在」か「履歴」かを確認する

前述のとおり、代表者事項証明書を除き、各証明書には全部証明書と一部証明書の2種類があります。
取得する際は、登記事項がすべて記載された全部証明書が必要なのか、それとも特定の項目だけ記載された一部証明書が必要なのか確認してください。

また、必要な証明書は現在のものか、履歴なのかも確認が必要です。一般的に商業登記簿謄本や登記事項証明書というと、履歴事項全部証明のことを指します。
そのため、商業登記簿謄本に対する認識が自分と相手では違った場合、誤った書類を提出してしまうこともありえます。

商業登記簿謄本の提出を求められた際は、現在事項と履歴事項のどちらが必要なのか、あらかじめ確認してください。

目的に応じて請求・閲覧方法を決める

商業登記簿謄本は、目的に応じて請求方法や閲覧方法を決めることをおすすめします。
例えば、提出を目的にすぐに交付を受けたい場合は、窓口申請や法務局が開庁している間に窓口に行けばその場で交付を受けられます。
特に急いでいるわけではないのであれば、郵送やインターネット申請で郵送交付を選んでも問題はありません。

しかし、取引先の企業調査を目的に取得したい場合、わざわざ証明証を発行する必要性はありません。
取得に時間や費用が大きくかかるので、ただ内容を確認したいだけであれば、登記情報提供サービスを活用する方法があります。

登記情報提供サービスを利用すれば、インターネットから素早く登記情報を確認できます。
有料サービスになりますが、商業登記簿謄本の取得よりも安価で済むこともメリットです。

まとめ

商業登記簿謄本は、法人口座の開設や会社名義で取引きや契約を行う場合など、様々なシーンで必要となる書類です。
安全に取引きが行えるように、法律で定められた重要事項が記載されているため、取引先の企業調査にも活用できます。
起業後に商業登記簿謄本が必要になる場面は少なくないため、スムーズに取得できるように、取得方法や手数料は事前に把握しておきましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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