創業期のTKC税理士の教えが今の自分の指標に

※このインタビュー内容は2020年06月に行われた取材時点のものです。

株式会社 知恵人 甲部昭人社長インタビュー

(2020/06/03更新)

税務や経理はもちろん、創業時の資金調達など、税理士の支援を受けるメリットはさまざまです。では、それがTKC会員の税理士だった場合はどうなるのでしょうか。創業から10年近くにわたってTKC会員の支援を受けている株式会社知恵人の甲部昭人社長に、創業の経緯や税理士の存在について話を伺いました。

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顧問税理士が与えてくれたのは会計を通じて成功する経営ノウハウ

──事業内容について教えてください。

甲部:食品、医療、建設、製造、サービス業など、さまざまな業界の方に向けた社員研修のための講師派遣業を行っています。自らも講師としてパッケージ化した研修のほか、お客様の方針実現のためのオーダーメイド研修も展開しています。初めて研修を受ける企業様の多くはパッケージ研修を導入されることが多いですが、研修の良さを知っていただくにつれ、経営課題の解決など、方針を実現するために研修をカスタマイズされるようになります。

これまで一度に何百人もの方を前にしたセミナーのほか、少人数制でPDCAを回していく会議のようなスタイルの研修を数多く行ってきました。私は年間200日近く研修を担当しているので、オーダーメイドをしながらコアとなる汎用化ノウハウを集積していっています。

──事業を始められたきっかけは?

甲部:独立する前はサラリーマンとして現在と同じ講師業をやっていましたが、東日本大震災をきっかけに自分の生き方を真剣に考えるようになりました。あのままサラリーマンを続けていてもそれなりに楽しく安定した人生を送ることができたと思いますが、あの時は自分のやりたいことは何かを真剣に考えたのです。個人事業主として一時期講師派遣業をやっていたこともあり、自分でもう一度やってみたいという思いに従いました。最終的には、妥協した人生を送りたくないという思いが強かったです。

──「知恵人(ちえと)」という会社名に込めた想いは?

甲部:研修会社の一員として講師をする中で、「甲部さんの研修に参加して上司の言っている意味が良く分かった」「甲部さんの話を聞くと元気になる」「やる気になる」「甲部さんの研修は寝る人がいない」といったお声をいただいていました。そのようなお声を聞きながら、自分が大切にしていることは何だろうと考えた結果、自分の想いを会社名に込めることにしたのです。これからの時代の人材育成は「知恵の創造」がキーワードになると確信していたので、知恵人創りというコンセプトから考えた「知恵人」という社名に一切の迷いはありませんでした。

──創業当時、苦労したことは?

甲部:ラッキーなことに、創業当時はそれまで在籍していた研修会社の仕事を引き続き担当しながらのスタートだったので、財務面では何の心配もありませんでした。ただ、この業界は1人で講師業をやる人が比較的多く、そのまま行くと営業や企画において行き詰まってしまうという組織的な課題が出てきます。私は最終的に40人規模の会社を目指していたので、すぐに営業マンを採用し、研修担当と営業マン育成にと忙しい日々を送るようになりました。

創業期に最も大変だったのはこの営業マンの育成です。これまでお客様に指導はしてきたものの、年間200日もの出張をこなしながら、物理的に離れた場所にいる営業マンの育成は苦労しました。

──顧問税理士の久野賢一朗先生(税理士法人Dream24)には創業当初からお願いしているのでしょうか。

甲部:ええ。久野先生との出会いは創業当時の私の師匠からの紹介でした。最初は会社の立ち上げだけ手伝っていただこうと思っていましたが、さまざまな会社の会計を通じて事業を見ているプロフェッショナルな方だとすぐに分かり、ぜひ長期にわたってお付き合いしたいとお願いしました。実際、久野先生は、自分の経験では計り知れないほどの「会計を通じて成功する経営者のノウハウ」を持っており、現在に至るまで10年近くお付き合いが続いています。

──創業期に久野先生にお願いしたことを具体的に教えてください。

甲部:創業時は、役員の決め方1つ取っても最初が肝心だとアドバイスをいただき、設立登記以外のこともかなりサポートいただきました。事務的な手続きだけをお願いしていたら、久野先生との関係はそこで終わっていたかもしれません。

TKC会員の税理士専用の「TKC継続MASシステム」というシステムを使いながら、経営理念や経営方針などを考え、そして目指すべき売上や利益などの数値計画と行動計画を立てました。このシステムは今でも活用していて、月次決算時には実績と計画比を久野先生と一緒に確認し、アドバイスをもらいながらPDCAサイクルをまわしています。

甲部社長(右)と税理士法人Dream24 久野賢一朗税理士

TKCモニタリングサービスで金融機関の絶大なる信頼を得た

──資金調達についても教えてください。

甲部:初めて銀行から融資を受けたのは、本格的に事務所を構えた時でした。創業時は自宅兼事務所で事業をスタートしましたが、新たな社員の採用を考えると、やはりきちんとした事務所が必要だと思い、それに伴い融資の必要性を感じるようになったのです。

融資に関しては、かつて個人事業主として講師派遣業を行っていた頃に一度金融機関に相談したことがあります。しかし当時は財務状況などもきちんと説明することができず、軽くあしらわれた経験があったので金融機関にはあまり良い印象がありませんでした。今回もしょせん個人事業は相手にされないだろうという印象のまま金融機関に相談に行ったところ、全く反応が違ったのです。

──前回の融資とは何が違ったのでしょうか。

甲部:月次試算表や年度決算書などの財務情報をオンラインで金融機関に開示できる「TKCモニタリング情報サービス」というクラウドサービスを利用していたので、銀行が直近の月次決算まですぐに閲覧できる状態になっていました。そのため会計情報が銀行に包み隠さず共有され、安心感と信頼感は絶大なものでした。久野先生にお任せしておいて本当に良かったと思いましたし、やはりTKCの力はすごいと感じましたね。

それと同時に、きちんと業績管理することの大切さと信頼性を身をもって知りました。その後何度か融資は申請していますが、いずれもスムーズにいただいています。

──久野先生には、日常的にどのようなアドバイスをいただいていますか?

甲部:何年も経営をしていると、当然自分の調子の波や事業の波なども出てきます。久野先生には、社長としての心構えが経営の数字にどのように表れるのかということをその時々で教えていただき、元気をもらっています。

創業当初は、お金の使い方についてよくアドバイスをいただきました。サラリーマンと経営者ではお金の使い方の発想がまったく違うので、それは今でも自分の指標になっています。もともと研修業をやっていたので経営理念やビジョンの大切さについては熟知していましたが、会計という視点で会社を見るのは苦手分野の1つでした。なので、お金という切り口から会社をどう経営していくかという久野先生の話はとても参考になりました。

不景気でも3年は絶対に倒産しない財務体質。会計のプロからのアドバイス

──ではこれまで事業を行う上で転機になった出来事は?

甲部:いくつかありますが、やはり独立前の仕事から自分自身で営業して開拓した仕事にシフトしていった頃が1つの転換点ではないでしょうか。最初に採用した営業マンがそのきっかけを作ってくれて、そのあとパートナーとして売ってくれる営業マンができましたが、そのパートナー営業たちがサラリーマンを辞めて独立した頃からお客様の層が変わっていきました。運も味方をしてくれて、人に恵まれてここまでやってこれたと思います。

──これまでで一番ピンチだった出来事はありますか?

甲部:あえて言うなら突如として訪れた新型コロナウイルスの感染拡大による経営危機でしょうか。2020年2月末から集合研修がキャンセルになり、この時期とても必要とされる新入社員研修や、新任マネジメント研修などがゼロになりました。人事部の方、経営者の皆様は本当に頭を抱えていらっしゃると思います。

ただ弊社の経営的側面でいえば、世の中が不景気になった時でも3年間は絶対に倒産しない状況を作っておこうと、久野先生のアドバイスに従ってこれまでずっとリスクヘッジをしてきたため、たとえ1年間仕事がなくても倒産の心配はありません。

このような考えでこれまで9年間やってこれたのは、ひとえに久野先生のアドバイスのお陰です。ただし、この状況が1年以上続くとさすがに厳しいですし、進めている計画もあるため緊急融資をお願いしました。久野先生の会計事務所にはTKC経由で緊急融資などの情報もいち早く入ってくるので、そのあたりは大変助かりました。

──1年近く危機的状況にあっても会社を継続できる施策とは?

甲部:根底にあるのは、創業期から一貫しているお金の有効的な使い方です。例えば、1,000万の利益が出ているのに税金を1円も払いたくない会社があって、300万円の税金が惜しくて経費として使ってしまう。単純にそこだけ考えて経費を使うと税金はゼロですが、当然残高もゼロになりますよね。そういう経営を10年続けていてもお金は貯まりません。

逆に1,000万の利益が出たら、最低限の節税をしながら300万円の税金を支払って700万は残しておく。すると10年経ったら7,000万円貯まります。そういう会社を作っていかないと、危機的状況に接した時にすぐに会社が飛んでしまいます。内部留保を増やすということだけを言っているのではありません。要は何にお金を使って、何にお金を使わないかです。

節税はいいが、税金を納めることをもったいないと考える経営者は伸びない、お金を生まない投資はただの負債、などという判断基準が自分の中で持てるようになったのは、久野先生との毎月の巡回監査での会話の積み重ねによるものです。納税額はできる限り抑えたいと思うかもしれませんが、税金を払えるようにしておかないと会社の発展はありません。会社の発展を考える上で必然的に税金を納めようになるという、サラリーマン時代の延長では分からなかった判断基準を久野先生に教えていただきました。

──今後の展望についてお聞かせください。

甲部:今後は世の中のパラダイムシフトが起き、おそらく数年間は働き方の二極化が進んでいくでしょう。私は知恵の創造が活発な組織の開発となると考え、組織を離れていかに効率よく個人が仕事をするかということを研究テーマに掲げて研修を行っています。特に、知恵の創造マネジメントにおけるノウハウはかなりの精度で出来上がってきたので、今後は大きく展開する方法を考えていくことになると思います。弊社は事業拡大に向けてはまだまだひよっこで、会社を大きくすることはできていません。ですが、信頼できる営業パートナーや自分以外の講師の方々に恵まれ、10年目を迎えることができました。

創業期から大切にしてきたことは、リスクをどう読んでいくかということです。安心なんて一度もありません。上手くいっている時であればなおさらその状態に満足せず、今後のリスクを考え、手を打っていきたいと思います。

──最後に創業者に向けてメッセージをお願いします。

甲部:私は常々「環境変化どんと来い!」という気持ちで事業を行っています。仕事も人も決して食わず嫌いせず、ここで出会ったのは縁だと思い、何事もプラスに捉えてここまでやってきました。その気持ちが大事なのかもしれません。また、強い会社は人材育成にお金と時間をかけています。数字を生む人を作ることは、能力開発や人格を高めていくことにもつながります。「教育は企業百年の計」です。教育の文化を根付かせてください。そして、会社が経営的に余裕が持てるようになってきたら、ぜひ積極的に外部の研修制度を取り入れていただきたいですね。知恵の創造の時代だからこそ、知恵人創りに貢献したいと考えております。

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(監修: TKCグループ
(編集: 創業手帳編集部)



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