スタートアップ支援とは?活用するメリットや注意点を解説
日本は起業に消極的?スタートアップ支援を活用して起業成功を目指そう
起業すると資金や経営に関する課題・問題がたくさん生じます。特にスタートアップの時点では経験や実績の少なさから何かと悩みが尽きないものです。
こうした経営に対する不安から、日本人は起業に対して消極的な傾向にあります。
そこで、国や自治体が力を入れているのがスタートアップ企業に向けた支援です。支援を活用することで経営の不安や課題を解消でき、起業成功につながる可能性があります。
この記事では、創業間もない企業や起業に興味を持っている人が知っておきたい、スタートアップ支援をご紹介します。
支援の種類や活用するメリット、注意点を解説しているので、ぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
日本は遅れている?ユニコーン企業の創出が少ない日本
ユニコーン企業とは、創業10年以内かつ企業価値評価が10億ドルを超えている、テクノロジー関連の未上場ベンチャー企業を指します。
そのようなユニコーン企業は、世界で少しずつ数が増えています。日本にもいくつかのユニコーン企業が存在しますが、世界と比べると数は少ないのが現状です。
ユニコーン企業は増えているが世界とは差がある
最もユニコーン企業を創出している国はアメリカです。
経済産業省の「スタートアップ支援について~資金供給面での経済産業省の取組~」によると、2021年時点でアメリカのユニコーン企業数は500社近く存在しています。
第2位の中国も約200社です。
一方で日本は、アメリカの調査会社CB Insightsのデータによると2022年10月時点でわずか12社しかありません。
この結果から、日本でのユニコーン企業の創出ペースはかなり遅れていることがわかります。
さらに、アメリカでは企業価値評価が100億ドルや1,000億ドルを超えるメガスタートアップも存在します。
日本は10~30億ドル程度となっており、企業価値においても格差が生じている状況です。
ユニコーン企業が増えない主な原因
日本でユニコーン企業が増えない主な原因には、起業する人が少ない、スタートアップやベンチャー企業に対する投資額が少ないという2点が挙げられます。
起業する人が少ない
日本の場合、起業家に対する社会的地位の評価は50%程度です。アメリカやイギリスなどほかの先進国は70%台となっており、日本は他国よりも低い評価となっています。
さらに、起業が望ましい職業だと思う割合は、ほかの先進国が50%以上となっているのに対して、日本はわずか23%です。
つまり、日本では起業は望ましい職業選択だと考えていない層のほうが圧倒的に多いことがわかります。
起業に対して消極的となる大きな理由は、失敗への不安です。
起業に失敗すれば、事業を立ち上げるために投資した資産がすべて失われます。
また、融資を受けた際は経営者個人が連帯保証人となるケースが多いため、企業として返済ができなくなれば経営者個人に支払い義務が生じます。
ほかにも安定した収入を得られにくくなる、家族に迷惑をかける可能性があるなど、不安は尽きません。
さらに、身近に起業経験者がいないため、起業に対して関心を持てない人も少なくないようです。
スタートアップ・ベンチャー企業に対する投資額が少ない
経済産業省の「スタートアップ支援について~資金供給面での経済産業省の取組~」によると、国内のスタートアップ企業に対する投資額は年々増加しています。
2013年で約870億円だったものの、2022年には9,400億円以上となりました。
しかし、他国と比べるとスタートアップやベンチャー企業に対する投資額は少ない傾向にあります。
2022年のスタートアップへの投資額は日本が43億ドルです。それに対して、アメリカは1,429億ドルとなっており、約33倍もの差があります。
スタートアップ・ベンチャー企業の成長を支えるためには、リスクマネーの供給拡大が重要となってきます。
しかし、現実は投資額が少ないため、企業は急速に成長していくことが難しく、ユニコーン企業が創出しにくい状況に陥っているのです。
起業する人を応援するスタートアップ支援
起業する人が少ない日本ですが、国や自治体は起業したい人を応援するためにスタートアップ支援を実施しています。
そもそもスタートアップ支援とは何か、どのような目的で行われているものかご紹介します。
国や地方自治体によるスタートアップ支援とは
スタートアップ支援とは、国・自治体・民間企業などが、新規事業を立ち上げる起業家やスタートアップ企業に向けて様々な支援を行う仕組みです。
スタートアップ企業に明確な定義は存在しませんが、一般的には未開拓のビジネスモデルを構築し、短期間での急成長を目指す企業を指します。
創業した時点では、事業計画やマーケティング戦略、人材採用・育成、資金調達など様々な課題を抱えることになります。
スタートアップ支援では、経営に関するアドバイスやサポートを通じて課題を解消でき、ビジネスの成長につなげることが可能です。
起業が少ない理由には失敗に対する不安が大きく関係しているので、支援を活用できれば起業に対する印象も大きく変わることが期待されます。
国や地方自治体がスタートアップ企業を支援する目的
国や地方自治体がスタートアップ支援に力を入れる主な理由は、経済発展や雇用の創出、イノベーションの促進、地域の活性化、社会課題の解決です。
支援を通じてスタートアップ企業が成長していけば、日本経済が発展していき、それは雇用の創出にもつながります。
また、イノベーションはビジネスにおいて革新的な価値を想像することです。
イノベーション力を強化し、新たな製品やサービスを創造していくことは、経済の発展や社会課題の解決に欠かせません。
地方では人口減少による労働力の低下や過疎化が問題となっています。
そのような地域でスタートアップ企業が増え、ビジネスニーズや雇用が増えていけば、地域の活性化につながるでしょう。
これらの効果を期待して、国や自治体は支援を行っています。
岸田内閣は2022年末に「スタートアップ育成5か年計画」を策定し、スタートアップ企業に向けた投資額を2027年までに10兆円規模にすることを目標に掲げています。
さらに、将来的にはユニコーン企業を100社、スタートアップ企業を10万社にすることも目標のひとつです。
この計画からも、国がスタートアップ支援に対して注力していることがわかります。
スタートアップ支援の種類
スタートアップ支援の内容は、補助金・助成金、投資(出資)・セミナーの3つに分けられます。詳しい支援内容は以下のとおりです。
返済なしで資金調達ができる補助金・助成金
スタートアップ企業は、国や自治体から提供される補助金や助成金で資金調達が可能です。
補助金と助成金のどちらも、融資とは違って原則返済は必要ありません。
そのため、融資での資金調達にリスクを感じる経営者にとっては大きなメリットです。
補助金や助成金にも細かく種類があり、要件も様々です。そのため、目的に合わせた制度を利用してください。
助成金は要件を満たしていれば受給できることが多いものの、補助金より金額が少ない傾向にあります。
反対に、補助金は金額が高めであるものの枠に上限があるため、そこから漏れると受給できません。
また、どちらも原則後払いとなるため、支給のタイミングにも注意が必要です。
VCやエンジェル投資家による出資
ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家などのステークホルダーによる出資も支援のひとつです。
ステークホルダーは、将来上場した際の株式益を期待してスタートアップやベンチャー企業に投資を行っています。
出資による資金調達であるため、返済は不要です。しかし、リターンを得ることを目的に投資が行われるので、スタートアップ企業は上場を目指さなければなりません。
そこで出資だけではなく、自らの経験やノウハウで経営アドバイスを受けられたり、経営に詳しい人材を派遣してもらえたりすることも可能です。
将来上場企業を目指すスタートアップにとっては、メリットの大きい支援になります。
経営課題の解決や経営に役立つ知識を学べるセミナー
ビジネスセミナーやマーケティングセミナー、法務セミナーなどを開催し、経営ノウハウを共有する支援も積極的に行われています。
スタートアップの場合、経営の経験も知識も乏しい人がほとんどです。
セミナーでは専門家による講習や演習が行えるワークショップなど様々な形式で、経営に関する知識を身に付けられます。
セミナーは毎回異なるテーマで実施されるので、自社の課題や発展につながるものは積極的に参加を検討してみてください。
スタートアップ支援を活用する3つのメリット
資金調達やセミナーでノウハウを共有できるスタートアップ支援を活用することで得られる具体的なメリットは、以下の3つです。
1.基本的に無料で支援を利用できる
経営コンサルティングは基本的に有料で受けられるサービスです。しかし、スタートアップ支援は、利用するのに費用はかかりません。
補助金や助成金の申請で手数料がかかることはなく、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からも金銭を要求される心配はありません。
経営セミナーに関しては、民間企業によって有料で実施されているものも多いですが、スタートアップ支援であれば無料で参加できます。
スタートアップの時点では、資金面に不安を持つ経営者が多いため、無料で利用できる安心感は大きいでしょう。
お金がかからないからこそ、積極的に活用できることもメリットになります。
2.経営のノウハウを身に付けられる
ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家などから出資を受ける際は、支援企業を通して経営ノウハウを身に付けられます。
独自にビジネスのことをしっかり学んでも、実際に経験してみないとわからないことはたくさんあります。
支援企業から実際の経験に基づいたアドバイスをもらえるので、失敗を避けつつ短期間で成果を上げることも夢ではありません。
経営セミナーでもたくさんのビジネス情報を得られます。同じ夢を持つ人や専門家との人脈を築けるチャンスにもなります。
ビジネスを取り巻く環境は常に変動しているので、最新情報を得ることは企業が成長し続けていく上でも重要です。
3.事業拡大につながる可能性が高まる
スタートアップ支援では、資金調達をはじめ、人材育成やビジネスモデルの構築、販路の開拓、技術提供など様々な支援を受けられます。
資金や人材を獲得できれば、ビジネスの拡大を実現することが可能です。
また、スタートアップ支援により成長や課題が解決した実績があれば、投資家から出資を受ける可能性が高まります。
今以上に多くの資金調達が可能となれば、事業を大きくすることができます。
支援企業からの紹介やセミナーを通じて人脈が増えれば、そこから新しいビジネスチャンスが生まれるかもしれません。
スタートアップ支援を活用する際の注意点
積極的に利用していきたいスタートアップ支援ですが、利用する上で気を付けたいことがあります。最後に、スタートアップ支援を活用する際の注意点をご紹介します。
申請・応募すれば必ず支援を受けられるわけではない
補助金や助成金は申請することで利用できますが、必ず受けられるとは限りません。制度によっては要件の難易度が異なるので、それを満たせない場合もあります。
さらに、上限がある場合、人気の制度は応募が殺到しやすく、採択される確率が下がってしまいます。
常時募集しているわけではなく、応募期間が決まっていることも多いです。そのため、制度を知った時点で募集期間が終了し、利用できないことも考えられます。
特に募集期間がない場合でも、予算の関係で早期終了となるケースもあります。
また、補助金や助成金は原則後払いです。そのため、お金が必要なタイミングに支給を受けられないこともあります。
申請・応募の前にいつまでに受け取れるのか確認することも大切です。
支援企業が経営に介入してくる場合がある
出資による支援を受けた場合、支援企業が経営に介入してくることがあります。
ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家は、早期に企業を成長させてリターンを得ることを目的に経営のアドバイスを行っています。
アドバイスにより視野を広げられることはメリットです。しかし、支援企業の介入により自分が望む経営ができなくなる可能性があります。
特に出資額が大きいと、こちらの決定権が少なくなります。
支援を受ける際は、支援企業との信頼関係を築き、振り回されないようにすることが必要です。
経営方針・戦略は支援企業に対する配慮が求められる
出資してくれた支援企業が経営に介入してくることで、相手に考慮した経営方針や戦略が求められる可能性があります。
早期成長のために財務目標を立てられたり、支援企業との連携を求められたりすることがあります。
出資を受けている以上、基本的に求められた方針や戦略に従わなければなりません。
従うことで経営方針やビジネスモデルなどの改善につながることもあるので、一概にデメリットとはいえません。
しかし、経営に配慮しなければならない分、斬新なアイデアでビジネスを展開していくのは難しくなる可能性があります。
まとめ
スタートアップ支援は、国や自治体などを通して資金調達や経営ノウハウの共有といった支援を受けられます。日本で起業が少ない理由は、経営の失敗に対する不安です。
スタートアップ支援を利用すれば、経営の課題を解消し、自社の成長につながる可能性があります。
スタートアップ支援は無料で利用できるので、起業の成功率を上げたいのであれば積極的に活用してください。
(編集:創業手帳編集部)
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