【2026年改正】労働安全衛生法とは?変更点や企業が取り組むべき準備を解説
労働安全衛生法改正で影響を受ける企業は多い

2026年から段階的に労働安全衛生法の改正が行われ、これによって多様な人材が安全で安心した労働ができる職場環境に整備されていきます。
今までは努力義務となっていた範囲も義務化に変わるなど、様々な部分で変更されることが決まっています。
しかし、「具体的にどの部分を変更すべきか」「見直す部分はあるか」などわからないと悩んでいる経営者もいるでしょう。
この記事では、2026年改正の労働安全衛生法が何かに加えて、変更点や企業が取り組むべき準備について解説します。
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この記事の目次
労働安全衛生法改正2026年からの変更点

労働安全衛生法は、働く人の安全や健康を守ることを目的に決められた法律で、働き方や社会などの変化に応じて誰もが安全で安心して働けるように改正されました。
2025年5月14日に改正法公布、2026年1月1日から段階的な施行がはじまりますが、ここでは変更点の内容や施行日などを解説します。
個人事業者の安全衛生対策の推進
2026年4月1日施行の改正案では、個人事業者の安全衛生対策の推進について新たな変更点や義務化される点などがあります。
変更点は、以下の通りです。
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- 注文者等の配慮
- 混在作業場所における元方事業者等への措置義務対象の拡大
- 業務上災害報告制度の創設
- 個人事業者等自身への義務付け
- 作業場所管理事業者への連絡調整措置の義務付け
これらは2027年4月1日までかけて改正されることが決まりました。
義務が強化されるのは建設業、製造業、造船業など特定事業における注文者です。
労働者に限らず現場作業する個人事業者も含めた作業従事者も統括管理対象とし、労災防止のための作業間連絡の調整などで必要な措置を講じなければなりません。
法令で定められた機械や建築物をほかの事業者に貸与する場合、災害防止のための措置が必要でしたが、今後個人事業者などへの貸与でも当該の措置が必要です。
また、個人事業者などが業務上火災を起こした場合、災害発生の状況を厚生労働省に報告することになりました。
報告の仕組みについては関連する法令などで示すことが決まっています。
個人事業者に対して労働者と同じ場所で作業する場合は、以下の措置が義務化されます。
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- 具備しない構造規格や安全装置などの機械の使用禁止
- 特定の機械を対象とする定期主検査の実施
- 危険・有害な業務に就く場合の安全衛生教育受講義務
- 管理場所において自社や請負人の作業従事者のいずれかが危険や有害な義務を行う際には、災害防止の観点から作業間連絡の調整
メンタルヘルス対策の推進
職場でのメンタルヘルス対策推進として、新たにストレスチェック制度が施行されます。
ストレスチェックとは、定期的に労働者のストレス状況を検査して、医師との面談指導や結果に基づく就業上の措置、集団ごとの集計、分析などを行う、労働安全衛生法に基づいた取組みです。
実施については、今まで50人以上の事業所を対象としていましたが法改正後は高ストレス該当者に対する面接指導などを含めて、すべての事業所での実施が義務です。
この制度を活用することで、メンタルヘルス不調が早期発見できる仕組みに変わりますが、さらに労働安全衛生法及び作業環境法を一部改正することも求めています。
化学物質による健康障害防止対策の推進
労働安全衛生法の改正法では、化学物質の譲渡や提供においての危険性および有害物質情報の通知、履行確保のための通知義務違反に対しての罰則が決まりました。
公布後、5年以内に政令で定める日からの施行となり、通知事項を変更した際には再通知義務が生じます。
ただし、企業秘密該当の化学物質の成分名は、有害性が低い場合のみ代替名称の届け出名称が記載可能ですが、人体への影響や応急処置に関連する情報についての記載は必須です。
医師が診断および治療のために成分の開示を求められた際には、開示する必要があります。
ほかにも、危険有害化学物質の取り扱い作業の環境では、作業環境測定士などの資格を持つ者が作業環境測定基準に従って個人ばく露測定が義務に変わります。
機械などによる労働災害防止の推進
機械などによる労働災害防止の促進では、「特定自主検査及び技能講習の不正防止対策の強化」「特定機械等の製造許可及び製造時等検査制度の見直し」が行われます。
フォークリフトなど一定の機械に対して義務となる特定自主検査についての基準を定め、登録検査業者はこの基準に従って検査を行うことになりました。
これは機械に限らず、フォークリフトの運転業務などの業務に従事する際にも指定の技能講習が必須です。
不正に技能講習終了証、紛らわしい書面交付などは禁止され、万が一不正が発覚した際には回収命令、欠格期間延長が規定に含まれます。
「特定機械等の製造許可及び製造時等検査制度の見直し」では、危険作業が必要な特定機器などに対して義務となる製造許可や検査などの制度につき、製造許可申請審査については登録を受けた民間機関が実施できること、対象の機械で可動式クレーンおよびゴンドラについて登録を受けた民間機関の検査実施が可能なことなどが含まれています。
高齢労働者の労働災害防止の推進
近年、高齢労働者増加により労働災害も増加傾向です。そのため、2026年4月1日から事業者に対して災害防止のための対策が努力義務に含まれることになりました。
労働災害防止を図るために、高齢労働者の持つ特性に配慮した作業環境の見直し、改善、作業管理など必要性に応じた措置が求められます。
これらは事業者が指針に基づいて取り組むことが必要です。高齢に限らず、夏は熱中症が起こりやすいため、このような対策も含まれます。
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労働安全衛生法とは

労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を守るために誕生した法律で、時代に応じた変化に対応するために法改正がされています。
ここでは、労働安全衛生法が何かに加えて目的や制定の背景について解説します。
労働安全衛生法の目的
職場での労働災害や健康被害から従業員を守りつつ、安全かつ安心して働ける環境となることを目的としているのが労働安全衛生法です。
これらの目的を果たすために、労働安全衛生法では「事業場での安全衛生管理体制、役割の確立と責任の明確化」「事業場での労働災害防止のための基準」「国による労働災害防止となる基準策定」などが定められています。
労働者が安全と健康を確保できて、職場環境の快適性や促進などを中心とした内容となりました。
労働安全衛生法は、高度経済成長期に建設業や製造業などが主流になったことをきっかけに制定され、時代の変化に合わせて法改正が重ねられています。
対象者
労働安全衛生法の対象者は、事業を営んでいて労働者を雇用している事業者と、事業者に雇用されていて賃金を支払われている労働者です。
労働安全衛生法においての労働者の定義は、「労働基準法第九条に規定する労働者」なので、同居の親族のみを使う事業もしくは事務所に使用される人、家事使用人は適用外です。
なお、陸上での労働者対象となることから原則働いているのが海の上となる船員も対象外ですが、特別法で「船員法」の適用で労働基準法関連の規定は適用されています。
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労働安全衛生法改正に向けて企業が準備すべきこと

段階的な法改正に向けて、対象の企業や個人事業主は施行日までに計画的な準備が必要です。
ここでは、労働安全衛生法改正に向けて企業が準備すべきことについて解説します。
個人事業者が取り組むべきこと
個人事業者が取り組むべきことは、法改正に向けて安全衛生に関しての意識を高めていく必要があります。
今まで労働者だけを守る意識が強かった場合は特に意識をアップデートさせる必要があるということです。
発注者からの指示を守り、安全手順の遵守や保護具の着用などの徹底は必須です。作業に潜む危険性において正しく理解することが求められます。
危険性や有害性などを正しく知り、関連する知識は積極的に習得する姿勢も重要です。
作業環境の整備を行うだけでなく、専門的な知識を習得するために特別教育の受講なども安全を守るために取り組む必要があります。
化学物質を扱う事業者が取り組むべきこと
化学物質を扱う際には、自社で使用している化学物質すべてをリストに書き出し、新たな規制対象となるかを確認する必要があります。
今回の改正によって表示や通知対象となる物質が新たに約700種類追加されました。
政府によってGHS分類が継続し、2027年4月には新たに義務対象物質の拡大も決定しているので、すべてを把握しておくことが重要です。
それにともない、リスクアセスメントが適切に実施できる体制の構築、保護具着用管理責任者・化学物質管理者などの専門的な知識を有する担当者の選任・育成も急がなくてはなりません。
労働者数50人未満の事業場が取り組むべきこと
現在努力義務となっている50人未満の事業場でも、2028年にはストレスチェックが義務化されます。
そのため、この機会にストレスチェック実施体制の整備が求められます。ストレスチェック実施準備において決めておきたいことを紹介します。
1.自社での実施か外部委託かを決める
ストレスチェック実施の際には、自社で行うか外部委託にするかを決めますが、50人未満の小規模事業者の場合は従業員のプライバシー保護の観点において、外部委託が推奨されています。
ただし、外部ならどこでも良いという意味ではありません。
厚生労働省「外部機関にストレスチェック及び面接指導の実施を委託する場合のチェックリスト例」を参考に、以下の点について満たしているかチェックしてから選ぶと安心です。
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- ストレスチェック制度についての理解
- 実施体制について
- 調査、評価、実施方法について
- 職場環境の改善サポートの有無
- 情報管理において第三者から認証されているか
- 外部委託のコストについて
2.体制づくり
ストレスチェックでストレス度が高いと判断された従業員がいた場合、医師との面接指導ができるような体制に整えてください。
面接指導できる医師は、地域産業保健センター、地域の医師会、紹介サービスなどで探せます。
特に50人未満の企業で産業医を選任する義務はりませんが、もしもの場合を想定した嘱託産業医の選任も検討が求められます。
ほかにも、職場環境を改善するために集団分析を行い、ストレスの要因を軽減することも可能です。
50人未満の企業では分析対象者が少なく、結果で個人が特定される可能性もあるので、10人以下の集団にならないように設定するなどの配慮も必要になります。
3.結果の管理徹底
50人未満の企業で注意したいのは、結果の管理体制です。
プライバシー保護の観点から特に結果の保存には注意しなければならず、情報管理体制においての見直しが必要になります。
例えば、以下のような項目を徹底しましょう。
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- ストレスチェック実施者と事業者の情報共有ルールの明確
- 電子データでの保存は徹底したパスワード管理
- 紙媒体での保存では施錠できて鍵も管理できる保管場所の確保
- データについてもアクセス制限
- 権限付与など適したセキュリティ管理体制 など
管理者を限られた人材に絞ることも重要なポイントです。
高齢労働者を雇っている企業が取り組むべきこと
労働安全衛生法改正に向けて、高齢労働者を雇っている企業が取組みたいのは高齢労働者に対する作業環境や管理、改善についてです。
現在、高齢の労働者は経験豊富で高い技能を持っていることから積極的に雇う企業が増えていますが、身体機能や認知機能による変化が起こっている人もいます。
労働力確保や生産性の維持などから厚生労働省が定めている指針に基づき、段差の解消、手すりの設置、照明の明るさなどの職場環境に加えて、作業時間や休憩などの見直し、パワーアシストなどの補助具などの導入により、リスク軽減が期待できます。
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労働安全衛生法に違反した場合の罰則

もし、法律で遵守されている労働安全衛生法を守らなかった場合、どのような罰則があるのか。罰則は民事上、行政上、刑事上、社会的など責任によって内容が異なります。
まず、労働安全衛生法に違反した企業に対して罰金や罰則などが科される可能性があります。
違反の種類や程度で変わってきますが、罰金は50万円以下、300万円以下、懲役は6カ月以下、3年以下などケースによって異なります。
ほかにも、懲役に加えて罰金というケースもあるので、より意識しなければなりません。
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まとめ・改正に向けて準備を進めよう
2026年以降、労働安全衛生法の改正が行われ、様々な部分で変更されます。企業規模によって範囲も変わるので、早めに体制を整えておくのが望ましいです。
特に労働安全衛生法は、労働環境の変化によって何度も改正されているため、最新の情報を知っておかないと法令違反になる可能性があるので注意しましょう。
創業手帳(冊子版)では、起業後に知っておきたい情報が掲載されています。特に法改正がされる労働安全衛生法などに関する情報も含まれているので、経営や業界のノウハウを習得したい人にもおすすめです。ぜひこの機会にご活用ください。
(編集:創業手帳編集部)





