地域課題を新たなビジネスチャンスに!過疎化や観光振興を成功へ導く方法
地域課題は「逆転の発想」でチャンスになる

地域課題が私たちの身近にあるテーマとなり、長い時間が経ちました。
過疎化や高齢化、観光需要の変動といった地方が抱える課題は一見ネガティブなものばかりに見えます。
しかし、課題を深掘りすると新しいニーズや未開拓の市場が眠っており、起業やビジネス拡大の好機です。この機会を活用してチャンスを掴む人も少なくありません。
本記事では、地域課題をビジネスチャンスに変える方法や成功事例を紹介します。事例を参考にしてどういったビジネスが可能か考えてみてください。
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この記事の目次
代表的な地域課題とビジネスの可能性

地域課題とビジネスを結び付けて考えたことはないかもしれません。
しかし、地域が抱える問題を解決しながら収益につなげる地域密着型ビジネスが注目を集めるようになりました。
ここでは、地域課題とビジネスをつなげるためのヒントを紹介します。全国各地で起きている問題なので、身近な地域でビジネスへのつなげ方をイメージしてみてください。
過疎化・人口減少を逆手に取る
過疎化とは、著しい人口減少によって地方の生活や生産機能を維持できなくなる状態を指し、日本の多くの地域で問題になっています。
仕事が多い都市部に若者が流出してしまったり、出生数が低下したりすることが過疎化の一因です。
そこで、過疎地域の空き家を宿泊施設やシェアオフィスに転用して、新しい収益源を確保するビジネスが注目されるようになりました。
国土交通省では、地方創成のため、東京一極集中是正のために二地域居住等の推進をしています。
人口減少地域は移住・二拠点生活の拠点需要があり、長期滞在型ビジネスが展開可能です。小規模地域では「顔が見える関係」を活かしたサービス提供が顧客満足を高めます。
観光需要の変動
地域課題の解決方法として観光需要も使われています。
ただし、経済成長を観光客の消費に頼り過ぎるインバウンド依存はほかの産業やビジネスが育ちにくくなるリスクがあります。
また、インバウンド需要は変動が大きい点も課題です。長くビジネスを続けていくためには、安定して利益が出せるビジネスモデルが最適です。
そこでインバウンド依存から抜け出して地域住民やリピーター重視に転換し、安定した収益基盤を築く方法を検討します。
自然や文化を活かした体験型観光は、他地域との差別化もできます。観光のオフシーズンに教育旅行や農業体験を組み合わせることで、通年集客が可能です。
高齢化社会
地域の人口流出と切り離せない課題が高齢化社会です。買い物に出かけるのが難しい高齢者への支援が日本各地で求められています。
例えば移動販売や配送事業を展開すれば、生活課題解決と収益確保を両立できます。
また、介護予防や健康増進のサービスは、高齢化地域で持続的な需要が期待できるビジネスです。
高齢者向けの生活支援事業は、従業員も必要になるため地域の雇用創出にもつながります。
仕事が生まれることによって人口が増える地域経済の好循環を生み出すきっかけになる方法です。
デジタル化の遅れ
地域課題を解決するためのネットワークづくりに活躍するのが、ビジネスのデジタル化です。
地域事業者へのDX支援は、業務効率化と販路拡大の両面で大きな需要が期待できます。
リモートワーク拠点の整備すれば、都市部の人材流入と地域経済活性化の両面でうまみがあります。
また、既存のビジネスにデジタルを組み合わせるビジネスもあります。オンライン販売や予約システム導入を支援すれば、観光や地場産業の収益拡大につながるはずです。
地域課題を解決するビジネスを立ち上げるステップ

地域課題を解決するビジネスは、制約はあるものの多くの可能性を秘めています。ここでは地域課題を解決するビジネスを立ち上げるまでのステップをひとつずつ紹介します。
1. 地域のニーズをリサーチする
地域課題を解決するビジネスのスタートは、その地域を知ることです。住民や自治体へのヒアリングを通じて、本当に必要とされるサービスを特定します。
データの収集も重要です。統計データや行政の公開資料を参照すれば、課題の実態を定量的に把握できます。
その地域の情報に加えて観光客や移住者など外部視点も取り入れることで、多面的なニーズを抽出可能です。
2. 課題を「強み」に変換する
地域には、交通不便などの弱点もあります。しかし、地域課題は変換次第で強みになるポイントです。
例えば人口が少ない状態を「静かな環境」と捉えれば、長期滞在や学習用途に強みが出ます。
その地域の特徴を活用して不足しているサービスを補うことで、競合が少なく参入障壁の低い市場を開拓可能です。
地域資源や伝統文化を活用すれば、独自性の高い商品やサービスの展開を期待できます。
3. 公的支援を活用する
国や地方自治体は、地域課題解決に向けて様々な支援制度を用意しています。中小企業庁や自治体が提供する補助金・助成金を活用すれば初期投資負担を軽減可能です。
地域おこし協力隊制度は、地域の未来を応援するために都市部から移住して地域活性化に取り組む制度です。
これは、外部人材の受け入れと新規事業立ち上げの両方に有効で幅広い年代の人材が全国で活躍しています。
また、地域の金融機関や商工会議所と連携することで、資金調達や事業展開を加速できます。
4. 持続可能な収益モデルを設計する
地域課題活性を成功させるためには、持続可能な収益モデルの構築が不可欠です。
一時的に活性化するのではなく、地域の人が長く付加価値を得られるような収益モデルを作らなければいけません。
将来的に維持、更新が可能なモデル構築を目指してください。
成功事例に学ぶ|地域課題をビジネスチャンスに変えた取組み

地域課題をビジネスチャンスに変えた事例は全国でたくさんあります。ここからはどういった取組みが実施されたのか事例を紹介します。
また、ビジネスのアイデア構想段階の人も成功事例を参考にしてください。
古い街並みを活かして空き店舗解消
地方にある古い街並みは都会にはない趣があります。この古い建物を活用したのが滋賀県長浜市の空き店舗解消、賑わいづくりの事業です。
この事業では、古い街並みを整備するとともに、ガラスをテーマとして新しい産業を確立しました。
ガラス工芸品を販売し、その売上げを空き店舗改修や街並み形成に活用しています。
黒壁スクエアと呼ばれる地域景観を形成して、空き店舗を統一感のある建物に改修してから新規出店を誘発しました。
さらに町屋の活用を促進するため、市と連携してシェアハウスやコワーキングスペースを運営しています。
若者の創業支援にも力を入れていて、飲食店の出店トライアルとして1時間単位で借りられるキッチンスペースを設置・運営しています。
黒壁といった地域資源にガラス工芸という新しい産業を組み合わせて、移住や創業を活発化させた試みです。
山林を活かした「葉っぱビジネス」
徳島県上勝町は高齢化率は約47%の高齢化が進んだ地域です。自然に囲まれている土地で総面積の85.4%を山林が占めています。
そこで、株式会社いろどりは、中山間地にある葉っぱを地域資源として活用することをビジネスにしました。
料理のつまものに使われる葉っぱや草花の栽培を開始して、当初の約160万円から2003年には2億円を超える事業にまで成功しています。
この葉っぱビジネスが有名になったことによって、インターンシップの受け入れも進み地域活性化に貢献しています。
また、シェアハウスやワンルームハウスの提供、移住推進として上勝町お試し暮らし体験を提供するようになりました。
地域の方の交流や学校や事業所見学などを積極的に提供しているので、これから地方ビジネスをはじめたいと考えている人にも参考になるでしょう。
古民家を活用した宿泊施設
奈良県明日香村は、歴史的文化財を多く保有している魅力的な地域です。その一方で宿泊施設が不足している点が課題でした。
歴史的風土保存地区であるため建築制限が厳しく、新しい建設が難しい状況でした。そこで着目したのが空き家になっている古民家です。
クラウドファンディングを通じて1,500万円を調達し、古民家のリノベーションと内装、運転資金の一部に充てています。
また、ファンド説明会を通じて、開業する前からPRやファンづくりを開始しました。
自転車ツアーや郷土料理を盛り込んだファンド説明会も開催し、明日香村に足を運ぶきっかけも作っています。
実際に来訪してもらうことで明日香村の魅力をアピールして、宿泊施設開業前からのファンづくりが成功した事例です。
田んぼアートを観光スポットに
青森県田舎館村は県内でも有数の稲作地です。そこで田んぼをキャンパスにして色が違う稲で絵を描く田んぼアートで観光振興を図りました。
県の奨励品種であるつがるロマンのアピールにもなり、芸術性の高さから全国各地で話題になりました。
単に田んぼアート観るだけではなく、稲刈り体験ツアーを実施し、農業に触れる機会も提供しています。
これらの取組みは「全国田んぼアートサミット」や冬に開催する「冬の田んぼアート」のように広く展開するようになりました。
内閣府の地方創生加速化交付金、文部科学省の地(知)の拠点大学による地方創生推進事業といった支援も活用して多くの人を巻き込んだ活動を実施しています。
マッチングプラットフォームを活用した移住支援
和歌山県は、人口減少や地方創成の取組みとしてマッチングプラットフォームを活用した移住支援を実施しました。
これは独自のマッチングプラットフォームを設立して移住希望者と県内の自治体や企業をつなげ、新たな住民や働き手を増やす取組みです。
プラットフォームでは、移住希望者に住宅や就職、起業や子育て支援といった情報を獲得できます。
マッチングプラットフォームは、移住者と地元の人がつながるきっかけにもなり、里海づくりの体験や地域課題の勉強会といったイベントも実施されています。
地域課題をビジネスで解決するポイント

地域課題をビジネスで解決する取組みは多くの人がはじめています。ここでは成功するために押さえておきたいポイントをまとめました。
地域住民との信頼関係を築く
地域での事業成功には、住民との信頼構築が不可欠であり、共感を得る姿勢が求められます。
住民参加型のワークショップや説明会を開催することで、課題共有と合意形成が進みます。
継続的な対話を重ねることは手間も時間もかかるので負担に感じるかもしれません。
しかし、サービスの利用促進と口コミによる広がりも期待できるので可能な限り根気強く取組んでください。
地域資源を最大限に活用する
地域ビジネスを成功させるためには、地域資源を最大限活用することが大切です。多くのビジネスは誰かが手を付けていて、差別化が課題になります。
一方で他地域にはない資源を活かすことで、競争優位性を持ったビジネス展開が可能です。
地域固有の自然や文化を商品やサービスに組み込むことで、ブランディングでき独自性を確保できます。
既存の地域資源の中には、ビジネスになるとは思われていないものも多くあります。それを再定義することで、観光や教育など新たな需要を喚起してください。
行政や企業との連携を重視する
地域課題のビジネスは、自分だけでなく行政や企業の力を借りてください。自治体や商工会議所と連携することで、補助金や情報提供などの支援が得られます。
官民連携は事業の信用力を高め、資金調達や人材確保にプラスに働くでしょう。
また、その地域にある企業も力を借りられないか考えてみてください。地域企業にはすでに販売網や工場といったインフラがあります。
地域企業とうまく協業すれば、販路拡大や雇用創出など相互に利益をもたらせるかもしれません。
持続可能性を意識した仕組みを作る
地域でのビジネスは一過性の事業として成功するだけでなく、収益が継続するモデルを設計することが重要です。
経済や雇用を一時的に良くするだけではなく、地域課題の解決と同時に雇用や教育など複数の効果を生み出す仕組みが望ましいといえます。
環境配慮や地域循環を意識したビジネスは、長期的に支持を得やすい特徴があります。どういった仕組みであれば、その地域に価値をもたらせるかを意識してください。
まとめ|地域課題はビジネスの「原石」
地域課題は制約ではなく、新しい市場やサービスの出発点となる「原石」です。 課題解決と収益化を両立できる仕組みを構築すれば、地域と事業の双方に利益をもたらします。
自分とその地域全体に価値を生み出せるような仕組みでなければ、成功も一時的に終わってしまいます。
長期的に持続可能な事業モデルを設計することで、地域に根差した成功を築けるはずです。
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(編集:創業手帳編集部)







