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教えて先生!Q&A2015年7月22日
「稟議と決裁」や「稟議書と決裁書」の違いは?
稟議(りんぎ)と決裁(けっさい)は、企業や団体の活動において、提案と決定の方法を示すものです。
稟議とは、担当者から提案された内容を複数の関係者で順に閲覧し、承認と決定をすることです。それに伴って作成された資料や書類を稟議書と呼びます。
一方、決裁とは、部下からの提案について決定権や権限を持つ上司などが決定をすることです。それに伴って作成された資料や書類を決裁書と呼びます。
これらの違いは、稟議が複数名の承認を重ねて決定となるのに対して、決裁は決定権を持つ1名による決定となる点が異なります。
企業の活動では、様々な契約や取引がありますが、これらの決定は通常、会議または書類によって行われます。一般的に、重要な決定は関係者を集めた会議で、重要でも熟慮や証拠が求められるものに書類が用いられます。ここで、書類による決定に使用される方法が稟議と決裁です。
まず、稟議は担当者が案を作って関係者にまわし、文書で承認を得ること、という意味があります。この案を文書にしたものが稟議書で、他に起案書や立案書といった呼び方もあります。ちなみに、稟議書「りんぎしょ」は慣用の読み方ですが、広辞苑での正式な読み方は「ひんぎしょ」とされています。
たとえば、担当者が事業に必要な物品を購入する場合を考えてみます。対象の物品が少額であれば自身で購入を決定することもできますが、ある程度高額なものであれば上司の承認が必要となります。
そこで、物品の購入案を稟議書にまとめ、上司である課長や部長など複数名の承認を得ることで組織の決定となり、実際に購入をすることが可能となります。
このとき、稟議書の内容は一般的に、承認の目的と内容や理由、メリットやデメリットなどが必要です。そして、承認にあたって複数名の上司の承認欄を設ける必要があります。
また、稟議で承認を求めることを「稟議にかける、または稟議を上げる」、稟議が承認、決定されたことを「稟議がおりる」と呼びます。このような稟議の方式は、書類においても関係者全員で確認、合議を行うという、日本の風習や文化から生まれた独自の決定方法と言えます。
次に、決裁は上司が部下の出した案の採否を決めること、という意味があります。この案を文書にしたものが決裁書です。
たとえば、先ほどと同じく担当者が事業に必要な物品を購入する場合を考えてみます。中小企業やベンチャー企業において、素早い意思決定が必要な場合などは、購入の立案を決裁書にまとめて、上司や代表者など権限のある1名から直接決定を得ることで、購入が可能となります。
決裁書の内容は、稟議書と同じく案の目的と内容や理由、メリットやデメリットなどで、決裁欄は決裁にあたる1名分のみが必要です。
ここで、稟議と決裁の違い、メリットおよびデメリットについて説明します。
これらの違いは、案に対して決定をする者が複数名か1名か、と言えます。稟議は上司の複数名が順に承認をして、関係者全てまたは最終の承認によって決定がされます。言い換えると、関係者の承認の積み重ねによって案が決定されるものです。
一方、決裁は上司や代表者の1名のみが案を決定することができます。このように、案を決定する手順と人数が異なりますので、それぞれのメリットやデメリットを考慮して使い分ける必要があります。
稟議としては、契約や購入など頻繁に発生する業務について、定型の稟議書によって素早く正確に処理をし、証拠も残るというメリットがあります。しかし、書類の作成に時間がかかる場合や、承認者が複数名のため責任の所在が不明確になるといったデメリットもあります。
逆に決裁では、決定の素早さや責任の所在の明確さがメリットですが、複数名による検討や確認ではないため、ミスなどのデメリットも考えられます。
ここまでで、稟議と決裁のそれぞれの意味、違いについて説明しましたが、まとめると次の通りとなります。
・稟議は担当者が関係者に提案をし、複数名から承認、決定を得る。
・決裁は部下が上司に提案をし、上司や企業の代表者1名から直接決定を得る。
・稟議と決裁の違いは承認、決定をする上司が複数名か1名かである。
その他、稟議や決裁と間違いやすい用語として、「承認」と「決済」についても補足します。
承認はその事柄が正当だと認めること、という意味です。稟議の場合にも、上司による案の承認、つまり案を正当だと認められる必要がありました。しかし、承認と決裁または決定は異なるもので、承認は決定の前段階となり、稟議の場合にも承認の積み重ねによってはじめて決定となります。
また、決済は売買取引を完了すること、あるいは単に支払いを意味します。決裁と同じ読み方ですが、取引と金銭のやり取りに関するもので、意味は全く異なります。実際の使い方としては、「決裁」がされた取引について、金銭の受け渡しをして取引を終える「決済」をした、などとなります。
このように、稟議と決裁、そして承認や決済について、それぞれの意味を理解して正しく使い分けをする必要があります。
カテゴリ | 法律・労務 |
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