MOQの意味と使い方とは
MOQとは?海外メーカーの受発注でよく使われる製造現場用語を解説
MOQは、製造現場、特に海外メーカーでよく使われる用語のひとつです。
製造業に携わっている人であれば日本でも認知しているかもしれませんが、製造以外の業種でも、専門用語を知っておくと役立つこともあります。
特に、企業の発注担当や物販を手掛ける事業を始めたい人は知っておきたいものです。
製造業の受発注でよく使う用語と意味を解説します。また、海外メーカーでの発注時の注意点を併せて確認しておきましょう。
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この記事の目次
MOQとは?
MOQとは「Minimum Order Quantity」の略語であり、意味は「最低発注数量」「最小発注数」です。MOQの単語が使われるのは、メーカーの見積書が多いです。
一番少ない発注数量の意味で、商品を注文する側は基本的にこの数字より少ない数の発注はできません。
SPQ・SNPといった他の関連する専門用語とともに、製造現場での受発注や物流業務の用語として使われます。
MOQという言葉を聞いたことのない人も多いでしょうが、これらの用語はメーカーとの取引条件を確認する際に注意が必要な言葉です。
そのため、これから仕入れを伴う物販を行うビジネスを始める場合は押さえておきましょう。
海外の取引で多くみられる
MOQは、英語の頭文字を取った用語であり、あまり日本人にはなじみがないように思えます。
それもそのはず、MOQなどの専門用語は、日本のメーカーよりも海外で多く使われる言葉なので、日本ではあまり見ない言葉です。
また、見積書や契約書の内容に記載されていても、自社の発注内容によっては知らなくても問題ないこともあります。
しかし、海外企業との取引は、言葉の壁を含めてトラブルの原因となることがたくさんあります。
できるだけ知らないことを減らしておき、スムーズで円満な取引が完了するように注意を払うことも必要です。
特に、MOQなどの専門用語は意味を十分に知っておくと、見積りや契約書が理解しやすくなり、発注条件の交渉にも便利です。
MOQとその他の受発注用語の違い
MOQは、「最小発注数量」を示す言葉ですが、発注や受注にかかわる英語表現の専門用語は他にもあります。
他の専門用語もMOQと組み合わせて使われることが多く、見積書や契約書の取引条件を知るためにはMOQと合わせて物流や製造現場で使われる「SNP」と「SPQ」も知っておくことが大切です。
MOQと同じように、アルファベット3文字で示す専門用語なので、区別が付きにくく、覚えにくいかもしれません。
しかし、これらの違いを区別できないと発注の仕方を勘違いしてしまうため、しっかりと理解しておきましょう。
MOQとSNPの違い
MOQと同じく、物流や製造現場の受発注業務で使われる専門用語に「SNP」があります。SNPは「Standard Number of Package」の略語です。
意味は標準の梱包量、つまり「出荷梱包単位」のことを指します。
どちらかというと物流でよく使われており、梱包する際に梱包材の中にいくつ単位で商品を入れられるかを示している言葉です。
MOQは、「これ以上の個数で発注するように」という条件ですが、SNPは出荷時の梱包1つ当たりの商品数を示しています。
梱包材とはカートンBOXやダンボールですが、これらの箱は会社や商品によって異なっており、さらに商品の大きさも同じではありません。
SNPは基本的に輸送の効率の良さを優先にして決められ、梱包材は輸送車やコンテナに合うサイズに設計されています。
また、生産ロットに合わせて値が決まることもあります。そのため、MOQは区切りの良い数字が多いのに、SNPは中途半端な個数になることも多いものです。
MOQとSPQの違い
MOQ、SNPとともに物流関係で使われる用語に「SPQ」があります。SPQは「Standard Packing Quantity」の略語で、意味は「標準の発注の位」です。
つまり、発注できる最も小さな単位の意味になり、日本語の用語としては「最小発注単位」と訳されます。
MOQは、発注する際の最低限の数でしたが、SPQは最小単位の個数です。
また、SPQは梱包材の大きさに関係なく、区切りの良い数字であることが多いです。
発注者側は、SPQで決められた個数ごとの単位で発注する商品数を決めることが必要です。端数やSPQの単位よりも小さい単位での発注はできません。
記載の仕方と意味
MOQやSPQ、SNPの記載のルールや書かれた表示の意味を、例題とともに解説します。
アルファベットと数字のみで記載されるため、若干分かりにくいですが、読み間違いをしないように注意しましょう。
MOQ / SPQ:1000 / 200
MOQやSPQ、SNPの用語は、見積書に「MOQ / SPQ:1000 / 200」のようにアルファベットと数字、記号のみで無機質に書かれていることが多いです。
この場合には、MOQが1000、SPQが200と読むことができます。
つまり最小発注数は1,000なので、1,000個以上で注文しなければいけません。
また、発注できる最低の単位は200なので、200の倍数ごとに発注数を増やすことができます。
具体的には、1,000個、1,200個、1,400個、1,600個、1,800個といった具合に発注することが可能です。
反対に900個や1,100個、1,300個といった単位では発注は原則としてできません。
MOQ / SNP:1000 / 200
物流関連では、MOQとSNPが一緒に記載されることもあります。
SPQと同じように「MOQ / SNP:1000 / 200」の場合には、MOQが1,000でSNPが200の意味です。
MOQは前述と変わりませんが、今回はSNPが200なので、出荷の際の梱包材(ダンボールなど)の一つあたりに入っている商品の数量が200個となります。
SNPの数量は、発注する際に個数の条件として付けられるものではありません。
SNPは業務効率の向上のために使われるものです。
SNPを記載することによって、数量をスピーディーに把握しやすくなるため、入出庫の検品が効率よくできます。
SPQとSNPを同じ意味として捉えるケース
SPQとSNPは異なる用語ですが、状況によっては同じ意味として使われることもあります。
たとえば、梱包単位がそのまま販売単位となっている場合では「SPQ:300」とし、梱包単位が300個であり、発注も300個ごとに可能であることを示します。
この場合は、発注数をプラス300個、プラス600個、プラス900個…といった具合に増やすことが可能です。
反対に300の倍数以外の個数で増やすことは原則的にできません。
また、梱包の箱の中には300個ずつ入って納品されることが分かっているため、検品もスムーズです。
MOQを設定する理由
MOQを設定するのは、受注者側にメリットがあるためです。
メーカーの利益や効率化のために設定するものなので、購入する側としては不便を感じることもあります。
仕入れ先としてメーカーを利用する場合には、MOQを設定する理由を理解しておきましょう。
MOQの目的が分かれば、納得して取引できますし、反対にどのようにしたらMOQの原則を変えて利用できるかが分かります。
利益が発生する量以上で注文してもらうため
MOQを受注者側が設定するのは、ロスや余計な手間を減らし、十分に利益が発生する量で発注してもらうためです。
最低の数量を設けることで、少量の受注が入らなくなり、まとまった個数で商売ができます。
もしMOQを設定していない場合には、顧客は自由に発注数を選べますが、受注側としては少ない個数の注文で人件費や輸送費が高くなってしまいます。
手間とコストばかりかかる注文が増えてしまい、儲けが出にくくなることもあります。
しかし、MOQを設定することで、まとまった数の注文を受けられ、人件費や輸送費を抑えやすいです。
中途半端な数の注文をさせないため
メーカーがMOQを設定するのは、中途半端な個数を注文させないためでもあります。
最小発注単位を設定することで、バラバラな数での発注を防ぐことが可能です。
中途半端な個数の発注は、ピッキングや数量の確認に手間が増え、ミスも起こりやすいです。
また、箱単位で梱包された商品をばらす必要もあり、在庫も管理しにくくなりがちです。
MOQを設定しておけば、受注側は自社にとって検品しやすい単位を設定し、ピッキングや個数の確認もスムーズです。
プラスしてSPQをSNPにしておくと、追加があった場合にも商品をそろえるのが楽です。
バラ売り希望の時は単価の条件を付けられる
MOQを設定していることで、顧客から柔軟な対応を求められた時に条件を付けやすくなることもあります。
顧客が個別にばら売りをしてほしいと希望した際に、MOQをルールとしてあらかじめ設定しておくことで特例として条件を付けることができるのです。
MOQを設定していても、顧客によってはそれより少ない個数で発注したいこともあるものです。
たとえば「MOQ:1000」の設定でも、500だけ欲しいこともあるでしょう。そのような時には、特例として単価を上げて、500での注文を受ける対応もできます。
購入者側のMOQへの考え方
購入者側、発注者側にも、MOQを設定しているメーカーとの取引で考えておきたいことがあります。
MOQはルールとして守る必要のある基準ですが、状況によっては交渉して柔軟な対応をお願いすることも可能です。
MOQへの購入者側の考え方や捉え方を整理しておきましょう。
見積書の段階でしっかりと確認する
MOQは、商品を購入する際に基本のルールとなるため、あらかじめ確認しておき、発注のタイミングでミスしないことが大切です。
特に、海外メーカーとの取引の場合には、時差によってコミュニケーションが上手く行かないことも多いです。
そのため、発注のミスがあると、その後の修正にも手間や時間がかかり、正式な発注から納品までが大幅に遅れることにもなりかねません。
MOQの表記を見積書の中に見つけたら、しっかりと確認しておき、自社の発注希望数と合うかどうか判断しましょう。
また、MOQの他にSPQやSNPについても確認が必要です。
希望数と発注単位が合わない時は交渉してみる
見積書でMOQを確認した際に、自社の希望する個数とMOQが合わないこともあります。そうした場合には、まずは希望数での発注が可能かどうかを確認してみましょう。
それまでの取引実績や、相手との関係性や発注数によっては、柔軟に対応してもらえることもあります。
バラ売りでは単価アップのリスクも
MOQの設定を無視してばら売りをしてもらえるか交渉する際には、相手から条件を出される可能性が高いです。
MOQは受注者側の利益のために設定しているため、その変更は受注者のリスク、デメリットとなることです。
そのため多少の単価アップの条件を出され、その条件を飲むことができれば交渉成立です。
交渉を試みる際には、自社がどこまでであれば条件を受け入れられるか、慎重に検討しておきましょう。
多少の単価アップであれば、死蔵在庫を増やすよりは良いこともあります。
海外メーカーへの発注業務で注意したいこと
MOQなどの専門用語は、主に海外メーカーが使用するものです。海外メーカーとの取引では、こうした用語を理解した上で良いお付き合いをする必要があります。
また、それ以外にも海外メーカーへの発注業務では注意したいことがあります。
トラブルを防いで快適な取引を続けるために、注意点をチェックしておきましょう。
取引先の言語での専門用語をしっかり学んでおく
海外メーカーとの取引では、言語の違い、言葉の壁にぶつかり、交渉や契約が上手く行かないこともあります。
取引先との交渉や契約では、取引先の母国語について学び、専門用語やニュアンスの違いをしっかりと理解しておくことが必要です。
言語のちょっとしたニュアンスの違いから、契約内容の誤認が起こり、トラブルになることもあります。
自社で対応できない場合には、輸入ビジネスのサポートを行う企業に相談してみることも一つの手です。
細かい点・異例の事例まで対応方法を合意しておく
海外メーカーとの取引では言葉だけでなく、行動様式も異なります。お国柄の違いによって、契約外のことでは予想外の対応をされることもあります。
そのため、トラブルや異例の事態も想定した契約書を作成することが大切です。
予測しない出来事の際の対応まで細かく契約書に盛り込むことで、リスクを最小限に抑えましょう。
常に数値は正確かどうか確認する
海外メーカーとの取引に関わらず、発注は常に数値が正確かどうか確認しながら行うことが重要です。
発注トラブルとして個数のミスや商品番号のミスが多いです。海外都の取引では勝手が違うため、特に慎重に確認を重ねて、ミスを防ぎましょう。
まとめ
MOQなどのメーカー受発注用語を知っておくと、商品の発注業務が分かりやすいです。
製造業や物流に関わる人は知っていても当たり前ですが、そうではない場合も物販を行っているのであれば、発注をスムーズに行うために知っておくと良いです。
特に海外メーカーとの取引で使われていることが多いため、輸入ビジネスを行う際には押さえておきたい専門用語です。
(編集:創業手帳編集部)