法人税と所得税を比較|5つの視点から違いを徹底解説

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法人税と所得税を比較して法人化のタイミングを図ろう


法人税は、法人が得た所得に対して課される税金であり、国に納める税金です。
一方の所得税は、個人の所得に対して課される税金なので、給与や個人事業などの収入も含まれます。
これを聞いて、法人化を検討している事業者はどのように税金が変わるのか、どのタイミングで法人化すべきかなど検討する人もいるでしょう。

本記事では、法人化のタイミングを知りたい人に対して法人税と所得税の違いについて解説します。法人化のタイミングを図りたい人はぜひ参考にしてください。

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法人税・所得税とは?


まずは、「法人税」と「所得税」にはどのような違いがあるのかを解説します。

法人税とは

法人税とは、法人が事業活動を通じて得た所得に対して課される税金です。国税なので国の税収の重要な要素となり、国税全体の約20%が法人となっています。
そのような国を支える法人税は、個人ではなく法人が納めている税金であり、利益に対して課税される仕組みとなり、法人が自ら税額を計算して申告や納付を行うという3つの特徴があります。
法人税を支払う義務があるのは、以下となります。

  • 内国法人
  • 外国法人
  • 富裕法人
  • 協同組合等
  • 公益法人等
  • 人格のない社団等

所得税とは

所得税は個人に課される税金であり、毎年1月1日から12月31日までの1年間の所得を基準に決められています。
給与所得、個人事業主、株、不動産、その他の財産などを売却して利益が出た場合が対象なので、所得がない人は税金もかかりません。
会社員の場合、毎月の給料から引かれていて、年末調整でこれらを精算します。個人事業主、フリーランスでは確定申告で、所得税を正しく納める義務があります。

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法人税と所得税の違いとは?比較表でわかりやすく解説


法人税と所得税には、ほかにも違いがいくつかあります。以下の比較表で違いを確認してみてください。

比較項目 法人税 所得税
課税対象 法人の利益 個人の所得(給与・事業所得)
納税義務者 法人(株式会社・合同会社など) 個人(会社員・個人事業主など)
税率の仕組み 原則比例税率(一定) 累進課税(所得で税率が変わる)
税率の目安 約15~23%(小・中法人) 5~45%(段階的な所得による)
住民税の扱い 法人住民税(均等割+法人税割) 住民税(原則一律10%)
控除・調整 繰越控除などが中心(欠損金) 各種所得控除による
経費の範囲 役員報酬、退職金、社宅など広範囲 事業関連の支出中心
赤字の場合 原則法人住民税の均等割りは発生 原則所得税がかからない
申告・納付時期 事業年度終了後(原則2カ月以内) 翌2月16日~3月15日
事務負担 会計、税務が複雑 比較的簡易的

1.課税対象の違い

法人税は、事業活動において得た所得について税金が生じますが、法人税の対象になるのは株式会社、有限会社、合同会社、合資会社、医療法人、協同組合などです。
日本政策金融公庫など公共法人は、同じ法人という名前が付いていても法人税がかかりません。
一方、所得税はあくまで個人の所得を対象に課税されるものであり、給与や事業所得に対して課されます。

2.税率の違い

法人税と所得税では、税率も異なります。
法人税は、一律23.2%で固定されていますが、資本金が1億円以下の中小法人では800万円以下の所得に関しては15%という優遇税制の適用がされる仕組みです。
中小法人では、2027年3月31日までこの軽減税率の適応があるので800万円のラインで税率の大きな違いが生じることになります。

所得税は所得金額に応じて税率が変わるので、195万円以下なら5%、195万円以上330万円以下なら10%と所得が増えれば税率も高くなるという仕組みです。
所得が4,000万円以上の場合は最高税率の45%で計算されます。

3.控除の違い

法人税と所得税は、控除の仕組みや目的なども大きく異なります。法人税の場合、事業活動に関連する支出や損失の調整を目的に控除が行われます。
例えば、欠損金の繰越控除や各種税額控除(外国税額控除、試験研究費の特別控除など)、寄附金の損金算入限度額などです。

所得税の場合、納税者本人や家族構成、生活状況などを踏まえた控除が数多く設けられています。
例えば、基礎控除や配偶者控除、扶養控除、医療費控除、生命保険料控除などです。
所得税の控除は課税所得を直接減らすようにできており、さらに適用可否が個人によって細かく分かれています。

4.計算方法の違い

法人税の計算方法は、「課税所得×税率-税額控除額=法人税額」で計算します。
計算式にある「課税所得」は、法人税法上の所得である「益金-損金」で算出されたものです。
企業会計上の税引前当期利益とは必ず一致するわけではありません。当期利益から加算や減算などを行って算出することが必要です。

所得税の計算方法は1年間で得た所得に対しての計算で、収入の合計から必要経費を引きます。
必要経費を引いた所得から基礎控除、扶養控除、社会保険料控除、生命保険料控除などを引き、課税所得に所得税額をかけて税額控除前の所得税額の算出を行います。
さらに税額控除前の所得税額から住宅ローン控除などの控除を引いて、復興特別所得税を足して所得税額の算出が完了する流れです。

5.申告期間の違い

法人税は法人ごとに定めた事業年度を課税期間としています。事業年度は会社設立時に自由に決められるため、必ずしも暦年と一致する必要はありません。
法人税の申告期限は原則として事業年度が終了した日の翌日から2カ月以内となります。例えば、3月決算にしている企業は、5月末が申告・納付期限です。

所得税は毎年1月1日~12月31日までの1年間を課税期間とし、この期間に得た所得を翌年2月中旬~3月中旬までの間に確定申告を実施します。
個人事業主や副業収入で所得を得ている場合はこの期間内に申告・納付する必要がありますが、給与所得者は年末調整が行われていれば申告しなくても問題ありません。

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法人と個人事業主でかかる税金の違い


法人と個人事業主では、かかる税金にも違いがあります。
個人事業主の場合、必要経費を売上げから差し引いた利益が自分の所得になるので事業所得となり、これに対して所得税という税金が必要です。
これが法人となった場合は、会社の利益に対して法人税という税金がかかり、利益は会社の売上高から経費を差し引いた金額が計算されるので事業所得そのものの計算が大きく変わることもありません。
ここでは国に納める国税、それぞれの地方自治体に納める地方税の分類と詳細について解説します。

法人にかかる税金の種類

税金の種類 内容
法人税 法人が事業活動を行って得た所得に対して課せられる税金。国税で法人の種類、資本金、年間所得金額などで税率の変動がある。
消費税・地方消費税 会社が消費者から受け取った税金を代わりに納める国税で、会社の損益に関係なく支払うもの。法人では期首資本金1,000万円未満の場合、設立第1期は原則納税免除になる。
特別法人事業税 2019年10月1日以降に開始する事業年度から設立された国税。地方税となる法人事業税と一緒に申告と納付する。
法人事業税 法人が事業を行う際に公共サービスに関係する経費を負担するための税金。
法人住民税 事業所を定めている自治体に納める税金で、会社が行政からのサービスを受ける代わりに納める地方税。
地方消費税 売上にかかってくる消費税額から仕入れなどにかかった消費税額を差し引いて納める地方税。

個人事業主にかかる税金の種類

税金の種類 内容
所得税 1月1日から12月31日までにあった所得に対して課される国税で、収入から経費を差し引いた金額。
住民税 前年の所得に対して課税される所得割、定額課税の均等割りで合算した金額を自治体に納付する。
個人事業税 地方税法で法定業種などに課される地方税で、一般的には個人事業主の税率は3~5%が中心。
消費税 課税事業者が納める税金。
復興特別所得税 東日本大震災の復興施策の財源確保のための税金で2013年から2037年まで納税義務がある場合は合わせて納付。

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法人と個人事業主は経費の違いもある


法人と個人事業主では、税金だけでなく経費に対しての違いもあります。
特に、法人に比べて個人事業主のほうが経費計上できる範囲が広くなっていますが、その理由は対象の税金の種類が異なっているからです。
基本的に法人は利益を出す組織であり、支出が事業所得を得るためのものなので、個人事業主よりも経費にできる部分が必要となります。
ここでは、法人と個人事業主の経費について詳しく解説します。

家賃・社宅費用

法人は社宅を用意できて実際に利用することで一定の割合を経費計上できる仕組みです。
ただし、役員が個人で契約した物件に関しては社宅として認めることができません。そのため、法人化にする際に経費として含めるなら名義変更が必要となります。

一方、個人事業主の場合は自宅の家賃を経費計上できない仕組みです。
自宅を店舗兼住宅にしている場合は、店舗該当部分のみを経費計上して水道光熱費に関しては面積分で按分します。

福利厚生費

福利厚生は、従業員に対して働きやすさや生活を支援するための制度であり、住宅手当、育児支援、健康診断などを充実させることで満足度向上や離職率の低下などへの効果が期待できます。
健康保険、雇用保険などの法定福利厚生、介護、子育てなどの法定外福利厚生があり、これら両方の費用が福利厚生費の対象にできるのです。

個人事業主の場合本人や青色事業専従者の家族に対する支出は生活費にみなされてしまうため、経費計上することができません。
もし、事業主が健康診断を受けた場合などは福利厚生費に含まずに事業主貸での処理が必要です。
そもそも、福利厚生の定義が会社や従業員の労働環境や生活環境の向上や支援を目的とした費用になるからです。

一方、法人では従業員のレクリエーション、社員旅行などで支出した費用を福利厚生として処理できます。

車両関連費

車両関連費とは、事業用の車両の運用や維持に関係する費用を経費計上するものです。
業務上、車両を日常的に使用する場合は以下のものが該当します。

  • ガソリン代などの燃料費
  • 車検や定期点検などの整備・修理費
  • 任意保険や自賠責保険などの保険料
  • 営業活動や配送時などで利用した高速道路料金
  • 業務用車両の駐車代など

個人事業主の場合、経費にできる範囲は仕事として利用した事業利用部分のみです。
所有している車をプライベートで使用する場合は家事按分が必要になり、合理的な基準のもとで事業とプライベートで消費した費用を区分して事業に関係する部分のみを車両費として経費計上ができます。

一方の法人では、業務で使用する車は名義を法人にしてから経費計上が必要です。
法人が車を購入した場合、リサイクル料は購入時の経費に計上できないので、預託金科目での計上となるので注意してください。

生命保険料

生命保険料は、個人契約に加えて法人契約も可能です。
個人事業主の場合、自分を被保険者として生命保険料の支払いを行った場合は支出した保険料を経費計上することはできません。
個人事業主本人や家族へのメリットはあっても、事業との関連性がないことから認められていないという理由があるからです。
ただし、個人事業主が従業員を対象にした保険に加入して従業員に対して支給するという目的であれば経費計上が可能になります。

一方の法人は、役員や従業員を対象とした生命保険契約を締結して保険料を負担することができます。
その理由は、退職金の準備や将来のリスクへの備えなど事業を円滑にする目的などで加入しているからです。
法人にとって生命保険そのものが事業存続に関係しているため、保険金の受取人次第で経費の対象になります。

経営者の出張旅費

経営者の出張などの場合、個人事業主と法人では異なるケースが多いのがこの経費です。
出張手当は、出張時に会社から支給された金額で規定ルールに従った金額が支払われる仕組みとなります。
個人事業主の場合、事業主本人に対して出張手当の支給はできませんが、法人の場合は、代表者に対しても出張手当を支給できる点が大きな違いです。
個人事業主でも、代表者本人ではなく従業員に対しては支給できるので間違えないようにしてください。

退職金

退職金についても法人と個人事業主では差がある部分です。
個人事業主の場合、退職という概念がないことから代表を退いたり廃業したりした際にも退職金の支払いは行われません。
しかし、法人である場合は役員でも従業員でも退職者に対して退職金の支払いが行われます。
個人事業主から法人成りとなった場合は、原則的に個人事業期間と法人期間に分けて退職金の計算が必要です。

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個人事業主が法人化を考えるタイミング


上記のように個人事業主と法人になった場合には、税金に対しての考え方などが異なる点がいくつもあります。
そのため、個人事業主が法人化したことにより節税効果が期待できるケースもあります。

一般的には、年間所得800万円以上となった場合は法人化を決めるひとつのタイミングとされていますが、安易に金額だけで決めるのは良くありません。
法人化によって節税効果は高まるものの、運営にともなって手間や費用もかかることを考えてから判断すると良い結果に結びつきます。

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まとめ・法人税と所得税の違いを理解し、適したタイミングで法人化を検討しよう

同じ税金でも国に納めたり地方自治体に納めたりするだけでなく、法人と個人事業主では経費にできる範囲も異なります。
税金の負担が大きくなりがちな個人事業主ですが、所得額を基準に法人化に切り替えることで優遇されるケースもあるので個別の状況から判断や検討が求められます。


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(編集:創業手帳編集部)

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