法人税が支払えない場合どうなる?延滞税・猶予制度・対処法を解説
法人税が払えない時の正しい対処法

法人は年に1回、必ず法人税を納めることになります。
しかし、黒字決算でも売上回収や納税期限のズレから、法人税が支払えない状況に陥るのは、多くの中小企業で起こり得る問題です。
法人税は原則2カ月以内に現金で納付しなくてはならないため、利益と手元資金が一致しないことが原因になりやすいとされています。
放置すると延滞税や差押えなどのリスクがありますが、法人税を含む国税には正式な猶予制度なども設けられているため、正しい対処法を知っていれば問題ありません。
本記事では、法人税が支払えない場合のリスクやNG行為、正しい対処法について解説します。
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この記事の目次
法人税が支払えないとどうなる?

万が一法人税が支払えない場合、どのようなリスクが起こり得るのでしょうか。ここで、法人税が支払えなかった場合どうなるのか解説します。
延滞税が発生する
法人税は事業年度終了日の翌日から2カ月以内に申告し、納付を行わなければなりませんが、この期限を過ぎてしまうと翌日から日割りで延滞税が課されていきます。
延滞税額は、法人税額に延滞税の割合と延滞期間を乗じることで計算することが可能です。
税率は納期限から2カ月以内と2カ月以後で異なり、国税庁が毎年告示する「特例基準割合」に基づいて算定されます。
2026年1月1日〜12月31日の特例基準割合は、2カ月以内で2.8%、2カ月以後で9.1%です。
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- 納付期限の翌日から2カ月以内:7.3%または特例基準割合+1%でいずれか低い割合
- 納付期限の翌日から2カ月以後:14.6%または特例基準割合+7.3%でいずれか低い割合
税務署からの督促・催告
納付期限を過ぎても法人税の納付が確認できなかった場合、税務署から納付を求める文書・通知が段階的に送付されます。
最初は未納になっている法人税を支払うよう求める正式な通知であり、一定の期限までに納付するよう求められる流れです。
しかし、その後も未納の状態が続くと催告書が届いたり、電話や訪問による勧告を受けたりすることになります。
催告書は単に支払いを求めるだけでなく、法的手段に移行する旨が記載されているケースも多いです。
最終的には差押え・強制執行も
督促を受けても納税が行われなかった場合、国税徴収法に基づいて財産調査が実施され、最終的には差押えなどの強制執行が実施されます。
財産調査では法人が保有する財産を対象に行われる調査で、どれくらいの資産があり、滞納している税金を回収できるか調べます。
差押えの対象になるのは、法人名義の銀行口座や不動産、売掛金、株式、備品などの財産です。
事業運営に必要な設備なども差押えの対象となるため、事業を継続するのも困難になるケースも少なくありません。
特に税務署からの連絡を無視し続けると、差押えとなるリスクが高まるため注意が必要です。
法人税が支払えないときにやってはいけないこと

法人税を期限までに支払えない場合、誤った対応をすることで状況がさらに悪化する可能性があります。
特に税務署への対応を避けたり、無計画な資金調達を行ったりすると、延滞税の増加や資金繰りの悪化につながりかねません。
ここでは、法人税が支払えない時に避けるべき主な行動を解説します。
何もせず放置・連絡を無視する
法人税を支払えない場合、特に避けるべき行為が「何もせず放置・連絡を無視すること」です。
納付期限を過ぎると延滞税が発生し、税務署から督促状や催告書が送られてきます。
延滞税は日々加算され、納付総額は確実に増えていき、納付期限日から2カ月以内と以後で税率が大きく異なるため、これ以上負担を増やさないためにも放置しないようにしましょう。
また、督促状や催告書を無視し続けると、納付意思がないと判断され、差押えなどの強制措置を取られる可能性があります。
税務署に相談できれば、分割納付や納税の猶予などの制度が利用できる場合もあるため、早めに相談することが大切です。
猶予が認められれば、その期間中延滞税の負担も軽減されます。
誰にも相談せず自己判断で対応する
法人税の支払いが難しい状況だと、焦りからすべて自己判断で対応しようとするケースもあります。
しかし、税務や資金繰りに関しては専門的な知識が必要であり、誤った判断をすることで問題がさらに大きくなるかもしれません。
例えば、本来利用できたはずの納税猶予制度を知らずに放置したり、資金繰りを圧迫する方法を選んだりする可能性もあります。
このような状況に陥らないためにも、専門家に相談してください。
顧問税理士がいなくても、税務署に直接相談することは可能です。また、税務署へ向かう前に税理士や会計士、弁護士などに相談するのもおすすめです。
税務だけでなく、経営に関する相談がしたい場合は、中小企業向けの無料で経営相談ができる「よろず支援拠点」を活用してください。
返済計画なく無理な借入れで一括納付する
法人税を納めるために別の金融機関などを利用し、一括納付をしようと考える人もいますが、返済計画を立てない状態で無理な借入れを行い、まとめて納付するのは注意が必要です。
借入れをすることで延滞税の発生を抑えられるものの、無理な借入れからその後の資金繰りが悪化する可能性が高いです。
特に高金利の融資や短期返済の資金を利用すると、毎月の返済負担が重くなり、事業運営に大きな影響を与えてしまいます。
借入れを検討すること自体は良いのですが、今後のキャッシュフローや返済計画を十分に検討した上で判断することが大切です。
また、延納や換価の猶予などの制度を活用すれば、分割納付や資産の売却・差押えまでに猶予をもらえる可能性もあります。
そのため、借入を検討する前に税務署に相談し、利用可能な制度がないか確認することも重要です。
法人税が支払えない場合の対処法

どうしても法人税の支払いが難しい場合でも、適切な対応によって状況の悪化を防ぐことも可能です。ここで、法人税が支払えない場合に検討すべき主な対処法を解説します。
まず税務署に相談する
法人税の納付が難しいとわかった時点で、すぐに税務署へ相談することが大切です。
中には「滞納後に税務署へ相談しても意味がない」と考える人もいますが、タイミングによっては換価の猶予を申請できる場合もあり、猶予期間中にかかる延滞税の負担を抑えられる場合もあります。
対処の仕方は早く相談すればするだけ、自社にとって負担の少ないものを選ぶことができます。
逆に税務署へ何も連絡せず放置してしまうと、「納付する意思がない」と税務署も判断する可能性が高いです。
税務署に相談することで会社側に不利益が被ることはないので、できるだけ早めに相談するようにしてください。
なお、相談する際には分納の計画書や事業計画書、現在の預金残高がわかる資料などを持参すると良いでしょう。
納税の猶予・分割納付を申請する
災害や資金繰りなど、一定の要件を満たしている場合、国税の納税猶予制度を活用できる場合があります。
例えば、「納税の猶予」は猶予期間中の延滞税が軽減または免除が認められ、財産の差押えや換価(売却)の猶予も受けられる制度です。
納税の猶予を利用するには、以下の要件にすべて該当している必要があります。
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- 以下のいずれかに該当する事実がある
- 本来の期限から1年以上経過後、修正申告などで納付すべき税額を定めて確定させた
- 猶予該当事実に基づき、納付者が国税を一時的に納付できない状況だと認められる
- 申請書が提出されている
- 原則担保が提供されている
1.納税者が震災・風水害・落雷・火災・その他の災害を受け、または盗難に遭っている
2.納税者またはその者と生計を一にする親族が病気または負傷している
3.納税者がその事業を廃止または休止している
4.納税者がその事業について著しい損失を受けている
5.納税者に上記1~4に類する事実がある
申請は所定の書類を提出し、原則として税務署長から許可を受ける必要があります。
また、猶予申請をする際には納付する意思を明確に示すことで、審査する際の重要な判断材料となることから、納付する意思があることを説明するようにしてください。
資金繰りを改善する
法人税を支払うためには、資金繰りを根本的に改善することも重要です。
資金繰りが悪化している原因は各企業によって異なるため、まずは何が問題で資金が不足しているのか、現金の流れに問題はないかを確認します。
資金繰りを改善させる方法としては、売掛金の回収を早めたり、不要な支出を見直したり、在庫管理を適正化するなどが考えられます。
また、金融機関への相談や資金調達の検討によって、一時的でも資金不足の問題を解消できるかもしれません。
借入れを行う場合は事前に返済計画を立て、将来のキャッシュフローに無理が出ないよう注意することが大切です。
長期的な視点で資金管理を見直すと、安定した経営にもつながります。
法人税が支払えなくなる主な原因

法人税が支払えなくなるケースは、必ずしも会社の業績が悪いことだけとは限りません。ここでは、法人税が支払えなくなる主な原因を解説します。
黒字なのにキャッシュが足りない
黒字で利益が出ているにも関わらず、キャッシュが不足していることで法人税を支払えなくなる場合があります。
例えば、売掛金が回収できていない場合や大きな設備投資を実施した場合、帳簿上は黒字でも実際には回収できていないため、現金が不足している状況に陥ります。
法人税は利益を基準に計算されることから、キャッシュが不足していると納税資金を確保できなくなるため、注意が必要です。
税金の見積もり・準備が不十分
法人税は決算後にまとめて納付するケースが多く、事前に税額を見積もっておき資金を確保しておくことが大切です。
特に、利益が大きく増えた年度は、想定していたより税額が上がってしまうことも少なくありません。
納付期限が近づいてから資金が足りないことに気付き、資金準備が間に合わず期限を過ぎてしまう場合もあるのです。
また、予定納税や中間申告なども失念していると、想定外に納付負担が重くなる場合もあります。
日頃から税理士と連携を取り、決算前の段階でおおよその納税額を把握することが、納税資金の確保につながります。
成長期・環境変化による資金不足
事業規模が拡大し、成長している企業であっても、急激な売上の増加や市場環境の変化にともない、資金繰りが厳しくなることもあります。
例えば、SNSで話題を集めたことで多くのユーザーが殺到した場合、仕入れや人件費などの運転資金にお金がかかってしまいます。
取引先が突然倒産するなどの予測が難しい要因も、資金不足につながる要因の1つです。
また、金利や為替の変動による原材料価格の高騰や、景気悪化による売上の減少など、外部環境の変化も資金不足に影響します。
事業自体は問題がなかったとしても、一時的に手元資金が不足し、法人税の支払いが難しいケースもあります。
今後、法人税で困らないための対策

法人税が支払えない状況を防ぐためには、日頃から納税を見据えて資金管理を行うことが重要です。ここでは、法人税で困らないための対策を紹介します。
決算前から納税額を把握しておく
法人税は決算の結果次第で税額が決まりますが、決算後になって初めて税額を知ると想定していた税額よりも多く、支払えない状況に陥る可能性が高いです。
このような状態を回避するためにも、決算前から納税額をある程度把握しておく必要があります。
納税額や現在の資金を把握するには、月次試算表の活用がおすすめです。
月次試算表は月別に経営活動を管理するための試算表で、未回収の売掛金や不良在庫の状況、納税額の予測なども可能です。
また、決算前に税理士とどれくらいの納税額になるのかシミュレーションを行うことで、早めに資金を準備できるようになります。
早めに自社の現状を把握することで、不要な資金不足リスクの回避につながります。
納税資金を計画的に確保する
納税資金は決算後に急いで準備するよりも、日頃から計画的に資金を確保しておくことで、資金が不足していると慌てることもありません。
例えば、利益が出ている場合はその一部を納税資金にして、別口座で積み立てるようにします。
また、「納税準備預金」と呼ばれる納税資金専用の預金口座があるため、この預金口座を使って納税資金を確保するのもおすすめです。
納税準備預金は一部金融機関で扱っており、一般的な預金と違って利息にかかる所得税が非課税になります。
予定納税や中間納付の時期を把握し、計画的に資金を積み立てることも大切です。
同時に資金繰り表を作成すれば、収支予定も把握できるようになるため、手元資金が不足する状態を防ぐためにも資金繰り表を作成してください。
キャッシュフロー経営を意識する
法人税の支払いトラブルを防ぐためには、利益だけでなくキャッシュフローを意識した経営を行うことも重要です。
売上や利益自体は増えていても、キャッシュの流れを把握・管理できていなければ、資金不足に陥ってしまいます。
まずは売掛金回収サイトと支払いサイトを管理し、資金滞留を防ぎます。
設備投資や在庫を確保するタイミングも調整し、資金が一気に流出することを抑えるようにしてください。
特に事業が成長している時期ほど、運転資金を厚く確保するように意識することが大切です。
税理士など専門家と日常的に連携する
税金や資金繰りに関する問題は、経営者1人で解決しようとするよりも、専門家にサポートしてもらうことで解決できる可能性が高いです。
税理士と問題が起きる前から相談できる関係性を構築することで、早期対応もしやすくなります。
また、税理士だけでなく金融機関や認定支援機関と連携を取ることも重要です。
日常的に連携を取り、定期的に経営状況を共有していれば、納税額の予測や資金計画に関するアドバイスも受けられるでしょう。
よくある質問(FAQ)

最後に、法人税が支払えない場合に関するよくある質問とその回答を紹介します。
法人税だけ払えないのは違法?
法人税を期限までに払えないことで、憲法の納税義務違反に該当しますが、故意でなければ逮捕される可能性は低いです。
ただし、いつまでも未納状態が続いていると、差押えなどの強制執行が行われる可能性もあります。
期限を過ぎた翌日から延滞税もかかってくるため、早めに税務署へ相談するのがおすすめです。
赤字でも法人税を払うケースはある?
法人税は企業の所得に対して課せられる税金なので、課税所得がゼロまたはマイナスになった場合、法人税は発生しないことになります。
ただし、法人住民税の均等割に関しては、利益に関係なく法人であれば等しく支払い義務が発生する税金のため、赤字でも納めなくてはなりません。
代表者個人が立て替える必要はある?
法人に課せられた税金は、基本的に支払い義務が生じるのは法人に対してであり、代表者個人が立て替えなくてはいけないという法的義務はありません。
代表者個人が法人の経費を立て替えるケースはありますが、処理を間違えると会社と個人の資金が混在してしまうリスクもあるため、個人資金を投入する前に専門家へ相談すると安心です。
分割納付の申請は必ず通る?
法人税は原則一括で納める必要がありますが、法定要件を満たしていれば分割納付が認められる可能性があります。
ただし、申請をすれば必ず通るというものではなく、税務署から認めてもらう必要があります。
分割納付の申請を通りやすくするためには、納付する意思と現実的な返済計画が重要です。
まとめ・法人税が支払えなくても早期対応で解決できる
法人税が払えない場合でも、すぐに違法となるわけではありません。
法人税が支払えない場合において最も大きなリスクとなるのは、「放置」です。延滞税の加算や差押えの執行につながります。
このリスクを回避するためにも、法人税が支払えないと気付いた段階で早めに相談し、適切な対処法を講じることが大切です。
(編集:創業手帳編集部)






