士業の種類を解説! 税理士・行政書士・社労士・弁護士の違いとは?
どの専門家に頼めばいい?「税理士・行政書士・社労士・弁護士」士業の種類を解説
(2020/07/06更新)
創業前~創業後数年の創業者にはある共通する悩みがあります。
それは、「本業以外の手続きが多すぎる」、「税務や法務などに関わることを誰に頼めばいいのか分からない」というものです。
具体的には、
- 士業の専門家に頼みたいけど高そう
- どのような範囲の仕事をしてくれるか分からない
- 士業に頼むメリットがわからない
といった悩みを抱えているようです。
そこで今回は、弁護士、行政書士、税理士、社会保険労務士(社労士)の仕事の役割と事業内容、費用などを解説します。創業前や創業期、依頼するならどのようなタイミングが良いかも考えていきます。
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この記事の目次
士業とは?
士業とはその名の通り「○○士」という名前が付く職業のことで、専門的な知識を必要とします。
士業には主に国家資格が必要で、資格がなければ取り扱うことができない業務を担います。会社として創業前や創業後に専門的な知識を求めて依頼するのは、税理士、行政書士、社会保険労務士、弁護士などでしょう。
士業に仕事を依頼するメリット2つ
士業に仕事を依頼するメリットは大きく2つあります。
具体的には、
- 士業に依頼するメリットその①:自分の時間を確保できる
- 士業に依頼するメリットその②:専門家の正しい判断を受けられる
ということです。
それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
士業に仕事を依頼するメリットその①:自分の時間を確保できる
創業前や創業時の目の回るような忙しさの中で最も貴重な要素が「時間」です。
書類の作成方法や申請方法などを初めから調べるのは非常に時間と労力を必要とします。
この専門知識を必要とする領域を士業に依頼することで、本業で結果を出すためのマーケティングやリクルートなど最も必要なところに会社のリソースを費やすことができるようになるのです。
士業に仕事を依頼するメリットその②:専門家の正しい判断を受けられる
事業の経営には多くの要素が複雑に絡み合っています。
特に、契約の更新・満了などの雇用に関する事柄や、定款や著作権などの事柄を取り扱うケースでは後に大きな問題となるケースがあります。
自分の判断軸を基に感覚で進めると、後々大きな問題を引き起こしてしまう可能性があることを認識しましょう。
このようなことを防ぐためにも、専門知識に基づいた的確な判断ができる士業に仕事を依頼することをおすすめします。
各専門家の仕事内容や料金の相場を紹介
ここからは士業へ実際に依頼する際に、「税理士、行政書士、社労士、弁護士」に依頼できる仕事内容とかかる相場の目安を紹介していきます。
税理士とは
税理士は所得税、法人税、事業税などの税金に関するコンサル業務を行います。
また、創業前や創業直後の経営者の方に対して節税対策や経営改善へのアドバイスも行ってくれます。
税理士だけが行うことができる「税務代行」、「税務書類の作成」、「税務相談」という独占業務の存在も業務依頼の際の参考としてください。
税理士に依頼できる仕事内容
税理士に依頼できる主な依頼内容は以下の通りです。
- 法人税申告代行:納税者に変わって税の申告を行う
- 税務書類作成代行:税務署に提出する書類を作成
- 税務相談:税の計算法や手続きなどをアドバイス
- 会計面のサポート業務:決算書類の作成代行など
税理士の報酬相場
税理士への報酬は売上高で大まかな報酬が決まります。また、作業量や契約形態によっても変動しますが、法人への報酬としては以下のような報酬体系が一般的です。
毎月 | 3カ月に一度 | 半年に一度 | ||
1000万未満 | 2万5千~ | 2万~ | 1万5千~ | 月額の4~6カ月 |
1000万~3000万 | 3万~ | 2万5千~ | 2万~ | |
5000万~1億 | 4万~ | 3万5千~ | 3万~ | |
1億~5億 | 6万~ | 5万 | 4万~ | |
5億~ | 相談 | 相談 | 相談 |
(参考:株式会社free 経理コンパス)
依頼するタイミングは?
税理士に依頼するベストなタイミングは創業時だと言えます。
期の途中での依頼は税理士報酬が1年間分必要になるケースが多く、決算の直前に依頼すると十分な時間的余裕がないために万全な節税対策などができないことが多いからです。
行政書士とは
創業前や創業後の経営者が最も取引をする相手が行政書士かもしれません。「行政」の字が表す通り官公署といった行政に提出する書類の作成などを担当します。
行政書士に依頼できる仕事内容
行政書士に依頼できる仕事内容は1万種類以上あるとされていますが、ビジネスに関する領域では主に会社設立や開業など許可や認可に関する公文書の作成代行や申請代行を行ってくれます。
行政書士は主に以下の内容の手続きを代行してくれます。
- 法人関連の手続き:定款の作成など法人の設立代行
- 知的財産権の手続き:著作権に関する申請代行
- 外国籍雇用の手続き:入国管理局への書類作成・申請代行
- 運輸関連手続き:運送・タクシーに関する営業許可申請代行
- 電子申請手続き:電子署名の申請及び手続き代行
- 許認可申請手続き:建設業や飲食店等の許可申請手続き代行
行政書士の報酬相場
行政書士の報酬は各御製事務所が独自に価格の設定をしているために決まりはありません。
しかし、「日本行政書士会連合会がアンケート調査」をした主な依頼内容の平均相場は以下の通りとなっています。
- 会社設立:10万
- タクシー経営許可申請:40万
- 留資格取得手続き:2万
- 子内容証明作成:3万
- 食店営業許可申請:10万
- 設業許可申請:10万
- 約書作成:3万
(参考:報酬額の統計|日本行政書士会連合会)
依頼するタイミングは?
依頼するタイミングは「手続きにかかる時間」と「申告の期限」を基準に早めに依頼することをおすすめします。
例えば、相続には「死亡届」や「年金」などのように法律で申告期限が決められているものがあります。期限を過ぎてしまうと手続きが複雑になり、労力と時間も多くかかってしまいます。このように官公署の申請には期限つきのものが多くあるため、それを見越して早めに依頼を検討しましょう。
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社労士とは
社会保険労務士(社労士)は労働や社会保険についての専門家です。就業規則や労務管理、入社、退職時の手続きから給与計算に至るまで会社経営に必要不可欠な業務を代行してくれます。
社労士に依頼できる仕事内容
ビジネスの領域で社労士に依頼できる主な依頼内容は以下の通りです。
- 就業規則の作成・変更:就業規則の作成・変更を代行
- 人事労務管理:入社・退社の手続きなどを代行
- 助成金関係:利用可能な助成金の提案や申請手続き代行
- 給与計算事務:従業員の給与計算代行業務
社労士の報酬相場
顧問契約料や依頼する業務によって、また社労士事務所によっても金額の違いがありますが、ここでは、おおむねの報酬相場をご紹介します。依頼元の会社の従業員数によって金額が変わることが多いです。
- 顧問契約料 2万円前後/月
- 給与計算を依頼した場合 1~4万円程度(従業員数が多ければ金額が上がる)
- 労働保険の年度更新を依頼した場合 3~7万円程度(従業員数が多ければ金額が上がる)
(編集部調べ)
依頼するタイミングは?
起業と同時に複数の従業員を雇う予定であれば、起業前に依頼できるとベストです。雇用前に労働条件などを決めておく必要がありますが、最初の段階できちんとしておかないと、のちのち自分で決めたルールに束縛されてしまうケースがあるからです。
労働条件を決める際には、専門家である社労士を利用して取り決めを行っていくことで問題を未然に防ぐことができるのです。
弁護士とは
法律の専門家としてビジネスの領域では、創業前後の法律相談や訴訟管理、コンプライアンスの制定など幅広く活躍してくれます。
また、近年では顧問弁護士以外に、企業に所属する企業内弁護士を採用している会社もあります。
弁護士に依頼できる仕事内容
ビジネスの領域で弁護士に依頼できる仕事内容は、法律を用いて解決する企業間のトラブルや契約書関係、労働者との関係など多岐に渡ります。
主な依頼内容は以下の通りです。
- 広告表現校正:広告の表現やコンプライアンスに則した記載方法を提案
- 労使問題・交渉:労使問題への対応・交渉代行
- 就業規則:就業規則の作成・見直し
- 訴訟対応:訴訟に対する対応・解決
弁護士の報酬相場
ビジネスの領域で弁護士に仕事を依頼した場合の報酬相場は以下の通りです。弁護士に仕事を依頼する際には報酬の他に「着手金」がかかることを知っておくことも必要です。
今回は、「訴訟」に関して弁護士会の定めたルールを最も反映しているとされる「第二東京弁護士会の旧報酬会規」と同様の内容を参考にします。
経済的利益の額 | 着手金 | 報酬金 |
---|---|---|
300万円以下 | 8% | 16% |
300万円を超えて3000万円以下 | 5% | 10% |
3000万円を超えて3億円以下 | 3% | 6% |
3億円を超える部分 | 2% | 4% |
(参考:第二東京弁護士会報酬会規)
例えば300万円の裁判請求だった場合に上記の方法で計算すると、
- 着手金:24万円(300万の8%)
- 報酬金:48万円(300万円の16%)
- 合計・72万円
となります。
また、創業前後に就業規則や労使などの文書作成を頼む場合には平均で20万円程度、顧問弁護士として契約する際には月30万円程度が相場となっていますので併せて覚えておくと良いでしょう。
依頼するタイミングは?
弁護士の高度な知識と的確なアドバイスは「万が一」を未然に防いでくれます。事業規模が拡大し、関係先が増えてきたら顧問弁護士を検討する時期かもしれません。
法的にどうかなと感じた際に相談できるように、信頼できる顧問弁護士を雇うことをおすすめします。
まとめ
創業前や創業当社はやらなければならない業務がたくさんあります。自分の時間を確保し本来の仕事に専念するためにも、専門知識が必要でなおかつ重要な税務や法律関係などは、士業の専門家の力を借りましょう。
様々な問題を未然に防ぐためにも「士業」に仕事を依頼するメリットは大きいと言えます。
仕事を依頼する際は、依頼の報酬相場や担当領域をよく確認して進めましょう。
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(編集:創業手帳編集部)