フリーランスは雇用保険に加入できる?代替制度・サービス6選や注意点も紹介
原則フリーランスは雇用保険に入れない
ケガや病気などによって仕事ができなくなってしまった場合、会社員なら雇用保険に加入していることで、失業中・休業中の給付支援を受けられます。
雇用保険は加入義務がある強制保険ではあるものの、フリーランスは原則雇用保険に加入することはできません。なぜフリーランスだと雇用保険に加入できないのでしょうか。
そこで今回は、フリーランスが雇用保険に加入できない理由や、雇用保険の代わりとして使える代替制度・サービスを解説します。
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この記事の目次
フリーランスは雇用保険に入れる?基本と加入条件を確認
冒頭でも少し説明したように、フリーランスは原則雇用保険に加入することはできません。
まずは雇用保険とはどういったものなのか、なぜフリーランスは加入できないのかを解説します。
雇用保険とは
雇用保険とは、労働者のために設けられた保険制度です。
被雇用者を保護することを目的とする「労働保険」の一部であり、雇用された労働者がいる場合は強制的に雇用保険へ加入しなくてはなりません。
雇用保険に加入するには、以下の2点を満たす必要があります。
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- 1週間の所定労働時間が20時間以上ある
- 31日以上の雇用見込みがある
所定労働時間とは、雇用契約によって定められた特別休日を含まない週の労働時間を指します。
そのため、例えば、残業や休日出勤によって実労働時間が20時間以上だったとしても、雇用契約上の所定労働時間が20時間以下であれば加入条件に該当しません。
なお、雇用保険は正社員やパート・アルバイトなどの非正規雇用などの雇用形態に関係なく、条件に当てはまっていれば必ず加入することになります。
フリーランスが雇用保険に加入できない理由
フリーランスが原則雇用保険に加入できないのには理由があります。それは、雇用保険が非雇用の労働者を保護するための制度だからです。
つまり、雇用保険に加入するためには、事業主から雇用されている必要があります。
一般的に従業員は企業と「雇用契約」を結んで働くことになりますが、フリーランスは取引先と「業務委託契約」を結んで案件を受けます。
業務委託契約は雇用契約と異なり、委託する事業主側はフリーランスに対する指揮命令権などを持っていないことから、自分の裁量によって仕事を決めることが可能です。
【フリーランス】労災・雇用保険の代わりになる制度・サービス6選
フリーランスは原則雇用保険に加入することはできませんが、万が一の時のために備えておきたいものです。
そのような場合に雇用保険の代わりとして活用できる制度やサービスを紹介します。
【中小企業基盤整備機構】小規模企業共済
小規模企業共済は、個人事業主や会社の経営者・役員が事業をやめた時のために活用できる制度です。国の機関となる中小機構が運営しています。
具体的には毎月1,000円~7万円までの間で、500円単位で自由に掛金を設定でき、積立を行うことで退職金代わりとして共済金を受け取れるようになります。
掛金は加入してからも増額・減額が可能であり、掛金全額が所得控除になることから節税効果も期待できるでしょう。
共済金は退職または廃業時に受け取ることができ、一括または分割、一括と分割の併用から受け取りが可能です。
また、小規模企業共済に加入していると、掛金の範囲内で低金利・即日貸付も可能な制度を利用できるようになります。
【国民年金基金連合会】iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoとは、国民年金・厚生年金とは別に任意で加入できる私的年金です。
自分で設定した掛金を拠出して積み立てていき、その掛金を使って定期預金や投資信託、保険商品などを運用します。
掛金の積み立て+運用益によって60歳以降に老齢給付金として受け取れるようになります。
60歳にならないと給付金として受け取れないという注意点はあるものの、掛金は毎月5,000円から開始でき、全額所得控除となるので税制メリットは大きいです。
また、運用益には通常税金が発生しますが、iDeCoであれば非課税で再投資することも可能になります。
【フリーランス協会】所得補償プラン
フリーランス協会が提供する保険として、病気やケガをして万が一働けなくなってしまった場合に、喪失所得を保険金として受け取れる「所得補償プラン」があります。
フリーランス協会に所属している正会員が対象です。個人で加入することも可能ですが、会員は団体割引が適用されているため、約32%も割安で保険を受けられることになります。
また、仕事中のケガだけでなく、日常生活や旅行中に発生したケガや病気、天災によるケガで働けなくなってしまった場合にも補償してもらうことが可能です。
【あんしん財団】事業総合傷害保険
一般財団法人のあんしん財団は、中小企業・個人事業主に対してケガの補償や労災事故における賠償責任の補償、企業向け福利厚生サービスなどを提供しています。
その中でもフリーランスが使える保険として、「事業総合傷害保険」があります。
事業総合傷害保険は、被保険者および遺族の生活保障と、保険金受取人となる契約者が負担する資金の財源確保のために備える保険です。
なお、事業総合傷害保険を利用するためには毎月2,000円の会費を支払う必要があります。
しかし、会費を支払っていれば事業総合傷害保険だけでなく、あんしん財団のすべてのサービスが利用することが可能です。
【商工会議所】休業補償プラン
商工会議所会員向けの保険制度に「休業補償プラン」があります。
これは、病気やケガで働けなくなってしまった場合に、休業する前の所得分と公的保証の差額をカバーするための所得補償です。
国内外を問わず、24時間365日補償してもらうことができ、仕事以外の病気やケガでも補償の対象です。
加入する際には医師による診査も不要なので、わざわざ病院を訪れなくても加入手続きを進められます。
また、医療機関に入院している最中だけに限らず、医師から治療を受けている就業不能期間も対象に含まれます。
【日本フルハップ】災害補償事業
日本フルハップは、中小企業の健全な発展および福祉の増進に寄与することを目的とする公益財団法人です。
そんな日本フルハップではケガの補償や福利厚生の充実に関するサービスを提供しています。
中でも「災害補償事業」は、仕事中以外に交通事故やレジャー、家庭内で負ったケガなども補償してもらうことができ、最高1年間の長期補償も受けられるサービスです。
通院や入院など、病院から治療を受けた初日分から保険金を支払ってもらうことができ、また最高で1,000万円まで補償してもらえます。
毎月一律で1,500円の会費を支払うことで、災害補償事業や福利厚生の充実など、様々なサービスを利用できます。
フリーランスで労災・雇用保険に加入できるケース
フリーランスは原則雇用保険に加入できないことを紹介してきましたが、人によってはフリーランスとしても活動しつつ、雇用保険に加入できるケースもあります。
企業に雇用される場合
フリーランスとして活動しながら、副業や兼業などで企業に雇用されていた場合、その会社の雇用保険に加入できます。
企業に雇用される形態は正社員でなく、パート・アルバイトだったとしても条件さえ満たしていれば加入対象です。
ただし、企業に雇用されている場合でも、以下の条件に該当していると雇用保険の加入条件を満たしていても加入できないので注意が必要です。
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- 季節的に雇用された労働者で、4カ月以内の期間を定めて雇用されている場合や、1週間の所定労働時間が30時間未満
- 学生で学校教育に類する教育を受けている
- 特定漁船以外の漁船乗組員として雇用されている(船員として1年以上雇用されていると雇用保険に加入できる)
- 国・都道府県・市町村などの事業に雇用されており、離職後の諸給与が雇用保険給付の内容を超えている
- 前職の事業主が雇用保険資格喪失手続きを行っていない
特定フリーランス事業の対象になる場合
特定フリーランス事業を手がけている人は労災保険に特別加入することが可能です。特定フリーランス事業というと、以前までは一部の業種・職種に限られていました。
しかし、2024年11月1日より企業などから業務委託を受けているフリーランスは、業種・職種を問わず労災保険へ特別加入ができるようになりました。
労災保険に特別加入をすれば、仕事中のケガはもちろん、通勤中のケガや病気、死亡などに対して補償を受けられるようになります。
業種・職種を問わなくなった特定フリーランス事業ですが、すべてのフリーランスが労災保険に特別加入できるわけではありません。
特定フリーランス事業の対象外となるのは、以下に該当する人です。
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- 企業から業務委託を受けていない(消費者のみから業務委託を受けている)
- 企業から委託を受けている仕事が、特定フリーランス事業以外の特別加入の事業、または作業に当てはまる
「特定フリーランス事業以外の特別加入の事業または作業」とは、例えば、個人タクシー業者や建設業の一人親方、ITフリーランスなどが挙げられます。
ただし、これらの事業は特定フリーランス事業ではなく、別途特別加入団体が存在するので、そちらを通して特別加入団体に加入すれば労災保険に加入できます。
退職してフリーランスになる場合の雇用保険の注意点
企業に勤めていた人が退職し、フリーランスとして仕事を始めようと考えている人は、雇用保険における注意点についても事前に知っておく必要があります。
ここで、退職してフリーランスになる場合の雇用保険の注意点を解説します。
フリーランスになると失業手当を受け取れない
会社員として働いていた人が退職し、フリーランスとしてすぐに働き始めると、失業手当を受け取れない可能性があります。
失業手当とは、就職する意思といつでも就職できるスキルがあり、積極的に仕事を探しているものの就業できていない人に対して支給されるものです。
フリーランスとして独立する場合、雇用保険制度における求職活動を行っていないことになるため、原則として失業手当が受け取れません。
フリーランスでも失業手当を受け取れる条件
基本的にフリーランスとして独立する際には失業手当を受け取れないものの、条件を満たしていれば受け取ることは可能です。
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- 失業しているが働ける能力と就労に積極的な意思がある
- フリーランスになるまでの過去2年間で通算12カ月以上雇用保険に加入していた
フリーランスとして開業する前に独立の準備や副業として事業を行っていた場合は失業手当を受け取れなくなってしまいます。
上記は自己都合退職した場合の受給要件となりますが、会社の経営問題や転勤などの会社都合による退職の場合は若干条件が異なります。
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- 失業しているが働ける能力と就労に積極的な意思がある
- フリーランスになるまでの過去1年間で通算6カ月以上雇用保険に加入していた
フリーランスでも再就職手当を受け取れる条件
再就職手当とは、失業手当の受給資格を得てから開業した際に受け取れる給付金を指します。
失業手当の受給資格がない人は、基本的に再就職手当も受け取れません。
しかし、再就職手当の条件を満たしていればフリーランスになる場合でも再就職手当を受け取ることは可能です。
再就職手当を受け取れる条件は以下になります。
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- 待機期間後に事業を開始している
- 事業を開始する前日までに失業認定を受け、その後の基本手当の支給残日数が所定給付日数のうち3分の1以上を占めている
- 離職前の事業主に再就職したものでなく、また離職前の事業主と資本や資金、人事、取引などで関わっていない
- 雇用保険の給付制限を受け、求職の申し込みから待機期間1カ月の期間内だった場合、ハローワークからの紹介で就職している
- 1年以上の勤務が確実と認められる
- 原則雇用保険の被保険者となっている
- 過去3年間のうち再就職手当あるいは常用就職支度手当を受けていない
- 求職の申し込みよりも前に採用が内定した事業主への再就職ではない
失業手当・再就職手当が支給されるまでの流れ
失業手当・再就職手当が支給されるまでの流れは以下のとおりです。
まずは失業保険の手続きを行うためにハローワークへ訪れます。受給資格が決まると、雇用保険受給者初回説明会に参加してください。
雇用保険受給者初回説明会が終了すると、今度は雇用保険受給資格者証と失業認定申告書を受け取れます。
実際に失業手当を受け取るためには、求職活動を最低でも2回以上は行わなくてはなりません。
次にフリーランスとして開業するための準備を行います。開業するためには開業届と青色申告承認申請書を準備し、書類がすべて用意できたら最寄りの税務署へ提出します。
最後にハローワークで再就職手当を申請してください。
申請するとハローワークから「再就職手当の申請書類」が届けられ、内容に沿って申請することで再就職手当も受けることが可能です。
再就職手当の申請時にはすでに事業を行っている証明が必要となるため、開業届だけでなく業務委託契約書などの仕事に関する書類を準備しておくと良いでしょう。
まとめ・フリーランスは雇用保険の代替サービスを活用しよう
フリーランスは原則雇用保険に加入できないものの、特定フリーランス事業に該当していれば労災保険に加入できます。
また注意すべきポイントはあるものの、失業手当や再就職手当が受け取れる場合もあります。
フリーランスがケガや病気をして一時的にでも働けなくなってしまう可能性は十分にあります。
雇用保険に加入できなかったとしても、代わりとなるサービスも用意されているので、うまく活用して安心して働ける環境を整えましょう。
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(編集:創業手帳編集部)