愛媛宇和島の真珠がクラファンで人気沸騰!元コンビニの敏腕マーチャンダイザー中山香織さんに聞く「事業の強みの伸ばし方」
宇和島産の真珠ネックレスのブランド「UNIQTOUS」を立ち上げ事業を展開する中山氏にインタビュー
日本には埋もれた伝統産業が多くあります。地方は特に深刻で、承継にも大きな問題がある状況です。そんな中、愛媛・宇和島の真珠をプロデュースしてクラウドファンディングで大きな話題となり、現在も販売中なのが元大手コンビニで商品開発を手掛け、現在は愛媛県南予(なんよ)地方の産業支援を行っている中山香織さんです。アパレル業界出身の小林直樹さんと真珠ネックレスのブランドを立ち上げた中山さんに、今のプロジェクトと事業の強みの伸ばし方を聞きました。
大手コンビニエンスストア本部に入社し、現場で5年間店長や事務を経て、その後商品開発の部署に配属。マーチャンダイザーとして食品や日用品を担当。マーチャンダイザーを10年勤めた後退社し、現在はコンサルタントとして、商品開発の業務に携わる。
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この記事の目次
宇和島の真珠をターゲットにした理由
中山:愛媛県宇和島産の高品質な真珠を使った、ジェンダーレスでカジュアルな真珠のネックレスを企画しました。宇和島は全国で最も多くの真珠を養殖していますが、一般の方はなかなか知ることがありません。
近年、養殖に必要なあこや貝の稚貝(貝の赤ちゃん)の突然死が起こり、いまだ原因不明で養殖業の方々を悩ませています。また、新型コロナウィルスの影響で海外との取引も減り、国内の需要も落ち込んで、非常に厳しい状況が続いています。真珠養殖の産地が盛り上がるような取り組みをしたいと、真珠ネックレスのブランド「UNIQTOUS(ユニクタス)」と今回のプロジェクトを立ち上げました。宇和島の優良な真珠を多くの方に届けたいと考えています。
中山:私の父方のルーツが愛媛県の現在の西予(せいよ)市にあります。幼少の頃、何度か西予市や宇和島市を含む愛媛県の南予地方を訪れたことがありました。父が亡くなり、今となってはお墓参りで訪れるぐらいになってしまったのですが、不思議と懐かしさを感じる場所が愛媛県の南予地方です。
新型コロナウィルスの影響で養殖の鯛の出荷が減ってしまったり、真珠の入札会が延期になったりというニュースを見るたびに、自分でも何かできないかと思っていました。宇和島産の真珠は10年ほど前から少しずつ買い集めて、サラリーマン時代から身につけており、若い方にも知っていただければもっとニーズが掘り起こせるのではないかと思い、今回新しくブランドを立ち上げることを決めました。
中山:宇和島の魅力はなんといっても豊かな海です。鮮やかなブルーの海ではないですが、癒され度ではハワイや沖縄の海に負けないんじゃないかと勝手に思っています。その雄大な自然の中で、養殖の貝の中から真珠が出てくるのを見たときに、真珠がキラキラと力強く輝いた気がしたのです。養殖業者様のところで真珠ネックレスをオーダーしたのですが、当時30歳を少し過ぎたくらいの私には、豪華すぎてしばらく身につけられないくらい、真珠のパワーは凄まじかったです。
実は真珠養殖の元となるあこや貝を、養殖に使えるまで育てているのは宇和島の海です。日本に流通しているあこや貝のうち約9割が、宇和島の海で生まれたものだそうです。宇和島は日本の真珠養殖の要所でもあるのです。
若い養殖業者の方々はその技術を高めるべく、勉強会を継続して行っているそうです。ゆくゆくは私たちのブランドの収益の一部を、地元宇和島の真珠産業の支援に還元していきたいと考えています。
クラウドファンディングで目標の支援額を5日で達成
メインの商品である真珠ネックレス
中山:クラファンのリターンについては、担当の方にアドバイスをいただきながら作成しました。「身近な方々からの支援がプロジェクトの立ち上がりの時期に必要」と聞いたので、真珠ネックレスは早期割引プランを用意しました。
また、真珠ネックレスは購入できないけれど、私たちの活動を支援したいという方々向けにクラファン限定のプチアクセサリーを用意しました。このプチアクセサリーは取引先の社長が直々に目利きをして買い付けていただいたのですが、市場で出ている価格と比較してかなり割安なので、とても人気になっています。
限定のプチアクセサリー
中山:ひとつは商品の完成度だと思います。今回は真珠については、真珠卸の大手企業様のご協力があって手配することができました。真珠は流通過程でさまざまな産地の真珠を合わせ、色や形を合わせて真珠のネックレスを作っていきます。真珠のトレース管理ができて、宇和島産を名乗れる真珠を取り扱える企業様はとても少なかったのです。商品の質へのこだわりが重要だと思います。
もうひとつは思い込みを排除することです。真珠は従来からプラスチック製の仰々しい箱に入って売られています。私の家にはそうした真珠の空箱がたくさんあります。日常で身につけるようになると、自分のジュエリードレッサーに移したいからです。今回私たちのブランドでは、再生紙を利用した紙の箱を採用しました。
もちろん購入後、真珠ネックレスを保管しておくこともできますし、不要になれば紙としてリサイクルもできます。真珠が海から生まれることを考えたときに、不要なプラスチックを使用しないということも私たちのブランドメッセージになっています。私たちが業界の人間ではないからこそ、顧客目線で商品を開発できると考えています。
商品開発、そして事業展開に大事なものとは
中山:どこの誰が答えたかわからないアンケートよりも、目の前の顧客の率直な反応が私の商品開発の支えでした。取引先の人でも、古くからの友人でも、顧客として忖度なしに商品を評価してくれる内容が1番のマーケティングです。本物のインサイトは紙の資料からはわかりません。リアルな声にたどり着くことができたら、商品開発はほぼ成功したと思っています。
中山:私たちもまだまだ未熟ですが、事業の「得たい成果」を先に考えるようにしています。この「UNIQTOUS」というブランドでは海外展開を見据えています。そのために、海外の商標を取る準備をしていたり、今後海外でどのような展示会があって、自治体からどういう助成があるのかなど、税理士さんと打ち合わせをしながら情報収集しています。
ゴール設定から今ある課題を明確化し、そのステップとして補助金や助成金をどのタイミングで使うのかを考えていくと、やりたいことが明確になると思います。
中山:事業を起こすには仲間が必要だと思います。私はビジネススクールで様々な分野で活躍している仲間と出会い、この事業に参加してくれる同志にも出会いました。また、この真珠の取り組みをする中で地域の方々、真珠産業に関わる様々な企業の方を出会い、商品を完成することができました。
起業家としてひとり悩む時間も大事ですが、仲間と目標を掲げて議論する時間は何にも変えがたい重要な時間だと考えています。ぜひ、創業手帳を通じて様々なスペシャリストと繋がり、ご自身の考えられるベストな事業を展開できるよう願っています。
(取材協力:
合同会社ウワノヒト/代表 中山 香織)
(編集: 創業手帳編集部)