予定納税の減額申請を行うには?条件や手順、書き方について解説

資金調達手帳

予定納税が難しい場合は減額申請を検討しよう


予定納税とは、税額が一定を超えると見込まれる際に、前もって所得税の一部を納める制度です。
予定納税は自分で選択できるものではなく、要件を満たしている場合はその対象者になるため、事前に対象か把握しておかないと納税資金が不足する恐れもあります。

しかし、対象になることを理解していた場合でも、収入が不安定な状況だと納税が難しくなる場合もあるかもしれません。
そのような時に活用したいのが、予定納税の減額申請です。今回は、予定納税の減額申請について、条件や手順、書き方などを解説していきます。
予定納税の対象に含まれているものの、収入の減少によって納めるのが難しそうと感じている人は、ぜひ参考にしてください。

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

予定納税における「減額申請」とは?


予定納税における減額申請とは、予定納税を行うのが難しい場合に減額を求める手続きを指します。
所得税は通常確定申告のタイミングで納税を行いますが、予定納税だと原則年2回(7月・11月)に分割して納めることになります。

ここで納める予定納税基準額は、前年の申告納税額がそのまま用いられてしまいます。
そのため、例えば昨年度より現在の所得が下がっている場合、予定納税をするのも困難になる可能性が高いです。
しかし、一定の条件を満たした上で減額申請を行えば、予定納税額を減額してもらうことができます。

減額申請の対象者とは

減額申請の対象となるのは、その年の申告納税見積額が予定納税基準額と比較して少なくなると考えられる人です。
さらに減額申請は同一生計の配偶者分、または扶養親族分の予定納税特別控除額を追加する場合も、減額申請の対象に含まれます。

例えば、以下の項目に当てはまる人は減額申請できる可能性が高いです。

  • 廃業や休業、失業した場合
  • 業況不振などを理由に所得が前年よりも減少すると考えられる場合
  • 災害や盗難、横領などによって事業用資産や山林に損害が及んだ場合
  • 次の1~5のように、本年分の所得控除額・税額控除額が前年分より増加する場合
    1.災害・盗難・横領などで住宅や家財に損害を受けたなど、雑損控除が受けられる場合
    2.多額の医療費を支出し、医療費控除を新たに受けられる、または前年より増加する場合
    3.配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除・障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除を新たに受けられる、またはこれらの控除の対象者が増えた場合
    4.社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除・生命保険料控除・地震保険料控除の控除額が増加する場合や、一定の寄附金を支出したことで寄付金控除が受けられる場合
    5.(特定増改築等)住宅借入金等特別控除や住宅耐震改修特別控除、住宅特定改修特別控除、認定住宅等新築等特別税額控除などを新たに受けられる場合や、これらの控除額が増えた場合

上記の中には当てはまらず、特別な事情で納税が難しくなった場合でも減額申請ができるケースもあります。減額申請を希望する際には、所轄の税務局で相談してみてください。

減額申請の対象でも行わないほうがいいケース

上記の対象者に当てはまっている場合でも、減額申請を行わないほうがいいケースもあります。
例えば予定納税額がもともと支払うべき税額を上回っていれば、確定申告によって還付加算金を受け取れます。
還付加算金は利息に近いものも一緒に受け取れるため、減額申請を行わずに予定納税を支払っておけば、若干増えて戻ってくる可能性があります。

また、減額申請は予定納税額を減額するものであり、申請したところで所得税がなくなるわけではありません。
申請の手続きにもある程度時間がかかってしまうことから、条件に当てはまっていても資金繰りが可能な場合は減額申請をせず普通に予定納税を納めたほうが良いでしょう。

予定納税の減額申請をする手順


予定納税の減額申請をする場合、どのような流れで行えば良いのでしょうか。ここでは、減額申請の手順について解説します。

1.減額申請書を準備する

減額申請をするのに申請書を準備しておく必要があります。
減額申請書は国税庁のホームページに「予定納税額の7月(11月)減額申請書」のPDFファイルが用意されているので、ダウンロード・印刷することで申請書の作成に入れます。
税務署にも減額申請書が用意されていますが、税務署にわざわざ足を運ぶ必要があるため、ダウンロードするのがおすすめです。

なお、e-Taxソフトから申請書を作成し、そのまま提出することも可能です。書面で作成するのが面倒という人は、e-Taxの活用も検討してみてください。

2.減額申請書や添付書類を作成する

減額申請書が手に入ったら、必要事項を記入していきます。
減額申請書の書き方や流れについては後ほど詳しく説明しますが、記入するのは主に個人の基本情報と減額申請金額、申請の理由、申告納税見積額等の計算書です。
また、減額申請書を提出する際には添付書類が必要となる場合もあります。添付書類は、申告納税見積額を計算する際の基礎となる事実と根拠を示した書類になります。

3.税務署に提出する

減額申請書が完成したら、不備がないか確認した上で添付書類と共に所轄の税務署へ提出します。
ただし、そもそも予定納税額の通知書が送付されるまでに時間がかかっていた場合は、通知書が送付されてから1カ月以内であれば減額申請に対応可能です。

4.審査結果後、減額された税額で納付を行う

減額申請書と添付書類を提出したとしても、必ず減額申請が通るわけではありません。
税務署が申請内容をチェックし、減額は妥当だと判断されると通知書が届けられます。
減額申請を行ってから数週間以内には通知書が届き、結果を確認することが可能です。通知書の内容に従い、減額された税額で納付を行ってください。

減額申請書の書き方・流れ


減額申請書をダウンロードできたのは良いものの、初めてだとどこに何を書けばいいか迷うかもしれません。
そこで、減額申請書の書き方と流れについて紹介します。

1.所得金額や控除額などがわかる書類を準備する

減額申請書を作成する前に、まずは所得金額や控除額などがわかる書類を準備しておきます。
減額申請書にはその年の所得金額や控除額の見積もりを記入する項目もあるため、金額を証明する書類を準備しておき、すぐに書き込めるようにします。

また、所得金額や控除額などがわかる書類と共に、添付書類も準備しておくのがおすすめです。
主に、申告納税見積額の計算で基礎になる事実が記載された書類になります。
例えば売上の大幅な低下にともない減額申請をする場合は、その年の6月末までの損益計算書を添付します。

2.減額申請額を記入する

所得金額や控除額などがわかる書類を準備したら、減額申請書の記入に移ります。まずは住所や氏名、職業、電話番号を記入し、次に減額申請額を記入しましょう。
通知を受けている場合はその金額を転記するだけなので、通知書に記載されている金額をそのまま記載してください。

減額後の金額については、「申告納税見積額等の計算書」で計算した数字を記入することになるため、一旦金額は書かないようにします。

3.減額申請の理由と添付書類の名称を記入する

次に、減額申請の理由を記入します。減額申請の理由として、以下の項目が並んでいるため、該当するものを丸で囲んでください。

  • 廃業
  • 休業
  • 失業
  • 災害
  • 盗難
  • 横領
  • 医療費
  • その他(業況不振、控除対象扶養親族・障害者の増加など)

理由に丸をつけたら、次に減額申請の具体的理由を記載していきます。
例えば「主要取引先の倒産にともない、売上が○○%減少したため」「○月○日に個人事業を廃止し、法人組織に変わったため」などです。

減額申請の具体的理由も記入したら、最後に添付する書類の名称を書いていきます。添付書類の名称は4つまで書き込み可能です。

4.「申告納税見積額等の計算書」を埋める

申告納税見積額等の計算書にある項目を埋めていき、申告納納税見積額と予定納税額を算出していきます。
1~11は2025年分の所得金額の見積額を記入してください。
例えば「給与」欄を記入する際には、給料や賞与などの収入金額をもとに、国税庁ホームページの「給与所得の速算表」によって求めた金額を記入します。
ほかにも「営業等・農業」や「不動産」、「利子」などで所得を得ている場合は、金額を書いていきます。最後に合計所得金額を記入してください。

次に、所得から差し引かれる金額(控除)を記入します。第1期の場合は6月30日、第2期の場合は10月31日時点で、今年分の控除額を見積もって記入してください。
さらに、課税される所得金額も記入していきます。
所得見積額の合計から控除額を差し引いた金額を記入してください。なお、1,000円未満は切り捨てです。

課税される所得金額に対して税率を乗じた金額を、税額の欄に記入します。さらに税額控除の適用を受けている項目があれば、その金額も記入します。
最後に、申告納税見積額と予定納税額(第1期分・第2期分)の欄を埋めてください。
申告納税見積額は、再差引所得税額+(再差引所得税額×2.1%)で算出することが可能です。申告納税見積額が15万円未満の場合は、「0」と記入してください。
ここの金額が埋まったら、書類の上でまだ書いていなかった申請金額を書きます。

減額申請を行う場合の注意点


減額申請を行う上で、いくつか注意すべきポイントがあります。どのようなことに気を付ければ良いのか、事前に知っておくことも大切です。

第2期分のみの減額申請は提出期間が異なる

減額申請を行う際は、提出期間内に税務署へ申請書と添付書類を提出する必要があります。
令和7年度における第1期・第2期分の提出期間は7月1日~7月15日でした。しかし、第2期分のみ減額申請をしたい場合は、その年の11月4日~11月17日までとなっています。
つまり、第1期と第2期の両方で減額申請を行う場合と、第2期分のみ減額申請を行う場合とでは、提出期間が異なるので注意が必要です。

なお、令和6年度の第1期・第2期分の提出期間は7月1日~7月31日でした。
年によって提出期間が異なる場合もあるため、減額申請を検討する際は、通知書や国税庁のホームページなどから提出期間を確認するようにしてください。

所得が減少したことを証明する書類が必要

予定納税の減額申請を行う際には、所得が減少したことを証明できる書類を準備し、添付しなくてはなりません。
申請書の中でも具体的理由を記入しますが、根拠を示すための書類が必要となるので適切な書類を準備することが大切です。

例えば、1年間で売上が大幅に低下してしまった場合、損益計算書を準備することで会社の収益や費用、純利益などを示すことができます。
また、物価高の影響によって原材料費が高騰した場合はその証拠を示す領収書、病気に罹ったことで収入が激減した場合は診断書などを提出します。
所得が減少した理由によって提出する書類が変わるので注意してください。

よくある質問(FAQ)|予定納税の減額申請に関する誤解と注意点


ここからは、予定納税の減額申請に関するよくある質問に答えていきます。誤解していた点や注意すべき点などもあるため、ぜひ確認してみてください。

Q1. なんとなく売上が減りそうな気がします。それだけで減額申請できますか?

A.いいえ。減額申請には「具体的な根拠資料」が必要です。
売上帳簿や見積書など、収入減少の裏付けとなる書類がないと認められません。

Q2.減額申請をすれば、予定納税を完全に免除できますか?

A.免除ではなく「一部の納税額を減らす制度」です。
納税義務自体がなくなるわけではなく、再計算された金額の納付が必要です。

Q3. 提出期限を過ぎても減額申請はできますか?

A.いいえ。提出期限は厳格に決まっており、遅れると受理されません。
特に「第2期分のみ」の減額申請は期限が異なるため注意が必要です。

Q4.減額申請を出せば、すぐに新しい納付書が届きますか?

A.必ずしも届くとは限りません。
税務署によっては通知や納付書の送付が遅れることもあるため、自分で税額を確認して納付する必要があります。

Q5. 減額申請をすれば、すぐに結果がわかりますか?

A.審査には数週間程度かかることがあり、申請中であっても納付期限が来た場合は一旦納める必要があることもあります。

Q6.e-Taxで簡単に手続きできると聞いたのですが、本当ですか?

A.e-Taxでも申請は可能ですが、申請書の作成・添付資料の用意など準備は必要です。
「簡単そう」と思って準備不足で進めると、エラーや不備で受理されないことがあります。

まとめ・提出期限に注意して予定納税の減額申請を行おう

予定納税は納める所得税が多い場合に適用される制度ですが、個人事業主などは収入が不安定に陥るケースもあり、予定納税で納めるのが困難な場合もあります。
もし予定納税で納めるのが困難でもそのまま放置せず、減額申請を行うことで負担を軽減させることが可能です。
ただし、減額申請書を提出する期限は決まっており、期限を過ぎてしまうと減額申請に対応してもらえない可能性があります。
そのため、減額申請を検討している際は必ず提出期限を確認しておき、申請の準備を進めるようにしてください。

納税のタイミングになってから“もっと早く知っておけば…”と後悔するケースは少なくありません。創業手帳が作成した『税金チェックシート』では、今からでも取り組める節税の基本をまとめています。年間で数十万円変わる場合もある大切なポイントを、ぜひ確認しておきましょう。


税金チェックシート

関連記事
起業1年目にかかる税金・社会保険とは|見落としやすいポイントも解説
所得税とは?個人事業主の場合は確定申告を忘れずに!

(編集:創業手帳編集部)

創業手帳
この記事に関連するタグ
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す