【2024年最新】人材確保等支援助成金とは?9コースの助成対象・金額・要件などを表でわかりやすく解説
人材確保等支援助成金を利用して魅力ある職場づくりに取り組もう
人材確保等支援助成金は、人材が職場に定着するようにしたい、業務効率化を図りたいといった事業主にとって強い味方になってくれる制度です。
職場の制度改革や設備への投資には、必ず資金が必要になります。
助成金制度をうまく活用して、コストを抑えながら従業員が働きやすい環境を整えてください。
人材確保等支援助成金の各コースや注意点をまとめました。
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この記事の目次
人材確保等支援助成金とは?
人材確保等支援助成金は、雇用創出や人材の確保、定着を目的とした助成金です。
サービス業や建設業など、少子高齢化によって人材不足に直面している業種は多くあります。
人材確保等支援助成金は、企業の設備、機器の導入、体制づくりの取組みをサポートしています。
人材確保等支援助成金は、9つのコースが設置されている点が大きな特徴です。
コースごとに主な要件や受けられる助成金額が違うので、それぞれを確認して自社の取組みに適したコースを選択してください。
【一覧表】人材確保等支援助成金・9コースの助成額・受給要件など
人材確保等支援助成金には、以下の9コースが用意されています。それぞれのコースごとの特徴や助成金額を紹介します。
雇用管理制度助成コース
雇用管理制度助成コースは助成金を受給するために、一定の要件を満たさなければならない目標達成助成の制度です。
令和4年4月1日より整備計画の受付を停止していて、令和6年3月現在まで引き続き休止措置が取られています。
対象 | 雇用管理制度の導入、実施を通じた従業員の離職率の低下に取り組む事業主 雇用管理制度とは、諸手当等制度・研修制度・健康づくり制度・メンター制度・短時間正社員制度(保育事業主のみ)などが該当 |
助成金額 | 57万円(離職率の目標値を達成した場合) |
主な要件 | ①雇用管理制度整備計画の認定 ・諸手当等制度 ・研修制度 ・健康づくり制度 ・メンター制度 ・短時間正社員制度(保育事業主のみ) 上記の雇用管理制度の導入を内容と下雇用管理制度整備計画を作成して、管轄労働局の認定を受ける ②雇用管理制度の導入、実施 |
介護福祉機器助成コース
介護福祉機器助成コースは、介護労働者の身体的負担を軽減して、従業員の離職率低下を目的としています。
介護福祉機器助成コースは令和3年度から機器導入助成を廃止していて、現在は目標達成助成のみになっています。
対象 | 労働者の身体的負担を軽減するため、新しい介護福祉機器の導入などを通じて従業員の離職率の低下に取り組む介護事業主 |
助成金額 | 離職率低下 導入費用20%(賃金要件を満たした場合は35%)(上限150万円) |
主な要件 | ①導入・運用計画の認定 ②介護福祉機器の導入 ③①、②の実施の結果、離職率低下目標を達成すること |
中小企業団体助成コース
中小企業団体助成コースは、雇用管理の改善を推進して雇用創出を図ることを目的としています。
対象 | 雇用管理の改善を推進し、雇用創出を図ることを目的として、その構成員である中小企業者に対して労働環境の向上を図るための事業を行う事業主 |
助成金額 | 1年間の中小企業労働環境向上事業の実施に要した経費の2/3の額 ただし、以下の支給限度額が定められている。 大規模認定組合等(構成中小企業者数500以上):上限1,000万円 |
主な要件 | ①から③の措置のすべてを実施した事業協同組合など
①改善計画の認定 |
中小企業団体助成コースの中小企業労働環境向上事業は、次の①~④で構成されています。
①計画策定・調査事業
②安定的雇用確保事業
③職場定着事業
④モデル事業普及活動事業
要件として雇用関係助成金共通の要件もあるので、まずは窓口に問い合わせてみてください。
人事評価改善等助成コース
人事評価改善等コースは、2022年4月1日より整備計画の受付を休止しています。2024年3月現在、引き続き休止の措置が取られています。
対象 | 生産性の向上、賃金アップ及び離職率の低下を図る目的で、生産性向上に資する人事評価制度を整備して定期昇給などのみではない賃金制度を設ける事業主 |
助成金額 | 目標達成助成 80万円 |
主な要件 | ① 人事評価制度等整備計画の認定 ② 人事評価制度等の整備・実施 ③ 賃金の増加及び増加した賃金を引き下げていないこと ④ 離職率の低下 ①の人事評価制度等の整備・実施の結果、人事評価制度等の実施日の翌日から起算して1年経過するまでの期間の離職率が、人事評価制度等整備計画を提出する前1年間の離職率よりも目標値以上に低下させること |
建設キャリアアップシステム等普及促進コース
建設キャリアアップシステム等普及促進コースでは、建設労働者の雇用改善や、建設労働者の技能向上などを図るための取組みを行った建設事業主や建設事業主団体などを助成しています。
対象 | 建設キャリアアップシステム(CCUS)の事業者登録、技能者登録、能力評価(レベル判定)または見える化評価の登録費用の全部又は一部を補助する事業 |
建設キャリアアップシステム(CCUS)の事業者登録、技能者登録、能力評価および見える化評価の事務手続を支援する事業 | |
建設キャリアアップシステム(CCUS)の就業履歴蓄積に係るカードリーダーなどの各種機器やアプリなどのソフトウェア等の導入を促進する事業 | |
助成金額 | (中小建設事業主団体) 支給対象経費の2/3 (中小建設事業主団体以外の建設事業主団体) 支給対象経費の1/2 1団体につき1事業年度(4/1~3/31)の上限額 |
主な要件 | 建設事業主団体で一定の要件を満たす団体(任意団体も可) ①事業推進委員会を設置し、同委員会で「計画届」を作成 ②計画届を管轄する労働局に提出、実施 ③②の実施後、事業推進委員会において効果検証を行い、原則支給申請書と同時に「事業目標・効果検証報告書」を、管轄する労働局に提出 |
若年者および女性に魅力ある職場づくり事業コース
若年者および女性に魅力ある職場づくり事業コースは、労働者が働きやすい魅力ある職場づくりの推進を目的としています。
対象 | 若年および女性労働者の入職や定着を図ることを目的とした事業を行った建設事業主または建設事業主団体 | 建設工事における作業についての訓練を推進する活動を行う広域的職業訓練を実施する職業訓練法人 | |
助成金額 | 建設事業主 (中小建設事業主) 支給対象経費の3/5(3/4) (中小建設事業主以外の建設事業主) 支給対象経費の9/20(3/5) ※雇用管理研修などを受講させた場合、1人あたり日額8,550円加算(最長6日間) ()内は賃金要件が認められる場合の額 |
建設事業主団体 (中小建設事業主団体) 支給対象経費の2/3 (中小建設事業主団体以外の建設事業主団体) 支給対象経費の1/2 |
支給対象経費の2/3 |
主な要件 | ①計画届の提出 ②支給申請書の提出 |
若年者および女性に魅力ある職場づくり事業コースで対象となる措置は以下のものです。
①事業主経費助成
若年および女性労働者の入職や定着を図ることを目的として年間を通じた計画を策定して取組みを実施すること
②事業主団体経費助成
若年および女性労働者にとって魅力ある職場づくり事業を実施すること
③推進活動経費助成
建設工事における作業に係る職業訓練の推進のための活動を行うこと
作業員宿舎等設置助成コース
作業員宿舎等設置助成コースでは、能登半島地震の被害が甚大な地域である石川県と主要都市から離れていて、復旧、復興に当たって建設労働者を確保する目的の支援が実施されています。
対象となる被災三県は、岩手県、宮城県、福島県です。
また、女性建設労働者の入職と定着が課題となっており、工事現場で作業を行うために必要な更衣室や浴室などの設置に対しても支援が行われています。
対象 | ①被災三県に所在する作業員宿舎、作業員施設、賃貸住宅を賃借した中小建設事業主 | ②自ら施工管理する建設工事現場に女性専用作業員施設を賃借した中小元方建設事業主 | ③認定訓練の実施に必要な施設や設備の設置又は整備を行った広域的職業訓練を実施する職業訓練法人 |
助成金額 | 支給対象経費の2/3 | 支給対象経費の3/5(3/4) ()は賃金要件が認められる場合の額 |
支給対象経費の(1/2) |
主な要件 | ①計画届の提出 ②支給申請の実施 |
外国人労働者は、言語の違いや日本の労働法や雇用慣習への知識不足から労働条件、解雇などに関してトラブルが生じるケースがあります。
そこで、外国人労働者就労環境整備女性コースでは、外国人特有の事業に配慮して修了環境の整備、職場定着に取り組む事業主に対して経費の一部を助成します。
対象 | 外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備(就業規則などの多言語化など)を通じて、外国人労働者の職場定着に取り組む事業主 |
助成金額 | 支給対象経費の1/2(上限57万円) 賃金要件を満たした場合は2/3(上限72万円) |
主な要件 | ・就労環境整備措置の導入・実施 雇用労務責任者の選任、就業規則等の社内規程の多言語化など ・離職率目標の達成 |
テレワークコース
テレワークコースでは、テレワークの実施によって雇用改善などに取り組む事業主を支援しています。
助成となる経費にはテレワーク用端末(PC、タブレット、スマートフォン)のレンタル・リース費用も含まれています。
対象 | 良質なテレワークを制度として導入、実施することによって、労働者の人材確保や雇用管理改善などの観点から効果をあげた中小企業事業主 |
助成金額 | ・機器等導入助成 1企業あたり、支給対象となる経費の30% ・目標達成助成 |
主な要件 | ・機器等導入助成 評価期間(機器等導入助成)において、1回以上、テレワーク実施対象労働者全員がテレワークを実施など ・目標達成助成 |
テレワークコースでは、以下の取組みの実施に要した費用が支給対象です。
①就業規則・労働協約・労使協定の作成・変更
②外部専門家によるコンサルティング
③テレワーク用通信機器などの導入・運用
④労務管理担当者に対する研修
⑤労働者に対する研修
人材確保等支援助成金は「返済義務」がない
人材確保等支援助成金は助成金であるため、金融機関からの融資や借入れのように返済義務はありません。
つまり、後から返済負担に苦しむこともなく事業コストを圧縮できる制度です。
なぜ助成金に返済義務がないのかというと、助成金は主に企業や従業員が支払う雇用保険の一部から拠出されているからです。
雇用保険は、事業として雇用安定事業と能力開発事業を実施しています。
雇用保険の事業では、労働者が安定して長期的に働ける環境整備や人材育成、企業の生産性を高める仕組みづくりなどを、制度設計を通じてサポートしています。
人材確保等支援助成金を申請する時の流れ
人材確保等支援助成金は、コースごとに必要な書類は手続きに違いがあります。
基本的には、以下の流れで申請します。
①各都道府県労働局への雇用管理制度計画の提出
②実施
③目標を達成する
④終了後、2カ月以内に各都道府県労働局への助成金の支給申請書の提出
詳しい手続きや要件の詳細は、各都道府県労働局の窓口に問い合わせてください。
人材確保等支援助成金を利用する際の注意点
人材確保等支援助成金は、人材確保に悩む企業や経費の圧縮を目指す企業にとって魅力的な制度です。注意点も理解した上で手続きを進めてください。
計画書の提出は計画開始日の1~6ヶ月前まで
計画書の提出は、計画開始日の1~6カ月前までと一定の期間が設けられています。
例えば2025年1月1日からスタートする計画であれば、申請期限は2024年の7月1日~11月30日です。
提出が遅れてしまえば、計画自体も後ろにずれ込んでしまいます。
助成金の申請スケジュールを考えて、機器の導入や制度の改善、工事などを計画してください。
事業開始(創業)直後は受給不可
人材確保等支援助成金は、申請した会計年度の前後の年との比較が求められます。
これは前会計年度と計画実施後を比較して支給要件を判断するためです。
つまり、実施前のデータがそもそも存在しない創業して間もない企業は、助成金を受給できません。
利用できるようになるまでに経過を記録して、次年度以降の申請を目指してください。
設備を整えるための時間と初期費用が必要
助成金は、事業計画を立てて実施し、計画が完了してから支給申請を行います。
つまり、助成金を受け取れるのは最後の段階で、自己資金を一度は拠出して事業を実施、完了しなければいけません。
加えて、事業を完了するための設備を整える時間も計画する必要があります。
事業完了してすぐに助成金が支給されるわけではないので、助成金が支給されるまでの間、資金不足に陥る可能性もあります。
助成金を受け取るまでに支払うことになる費用やかかる時間、手間などを事前にシミュレーションしておくようにしてください。
【2023年3月31日まで】生産性要件が廃止され「賃金引き上げに関する要件」が適用
以前は、人材確保等支援助成金を申請するために生産性要件を理解する必要がありました。
生産性要件とは、企業の生産性が向上しているかを評価する指標です。
しかし、2023年3月31日までに生産性要件が廃止され、代わりに「賃金引き上げに関する要件」が適用されるようになりました。
つまり、制度を実施することで企業の付加価値を向上させるだけでなく、労働者に賃上げとして還元する取組みを企業に対してを求めているのです。
さらなる雇用安定に向けた取組みであり、以前とは違う部分なので注意してください。
まとめ・雇用創出と離職率低下を図るなら人材確保等支援助成金を活用しよう
人材確保は企業の戦略性が問われる問題です。雇用創出や離職率低下を図るためのアプローチは、いろいろな方法があります。
人材確保等支援助成金は、単に助成金を受け取るためだけではなく、長期的に労働環境改善、企業価値を上げるために利用したい制度です。
どのコースが自社に適しているか検討した上で、コースによっては廃止や要件の変更がある可能性もあるので、必ず最新の情報を確認してください。
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(編集:創業手帳編集部)
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