スルミ 石塚つばさ|取引先がいきなり倒産!創業直後に1,000万円を失う経験も乗り越え、「女性がより活躍する場」をつくる
女性ならではの強みを活かせる「プロジェクトマネージャー」と「マーケター」の働き方とは
一般的に女性と男性では、200万円も収入に開きがあると言われていますが、必ずしも能力に差があるわけではありません。特にプロジェクトマネージャーやマーケターという職種においては、女性ならではの気配りや気づき、コミュニケーションスキルを活かせるため、女性との相性が良いと言われています。
このような時流の中で、女性限定でプロジェクトマネージャーやマーケターの育成を行うのがスルミの石塚さんです。
そこで今回は、石塚さんが起業に至った経緯や、女性ならではの強みを活かした働き方について、創業手帳の大久保が聞きました。
株式会社スルミ 代表取締役CEO
日本大学 法学部法律学科卒業。日本大学大学院法学研究科知的財産専攻博士前期課程修了。経営者の祖父の影響を受け大学在学中に起業。スルミを創業し代表取締役CEOに就任。女性活躍・DX領域でAIを活用したプロダクトの開発を行っている。
大学では心理学・法学を専攻。大学院では知的財産を専攻。大学在学中に芸能活動を経て横須賀市観光大使と防衛省広報支援に就任。
世界的ミスコンでSDGs・ESGに関して世界に向けて発信し、受賞歴もある。青年版ダボス会議”One Young World”Manchester Summit 2022及びILS TOP100スタートアップにも選出された。
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
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この記事の目次
経営者である祖父の影響で起業!ミスユニバースの経験が今に活きる
大久保:起業までの経緯を教えてください。
石塚:私は母子家庭で育ちました。しかし、会社を経営していた祖父が様々な支援をしてくれて、経営者ってすごいんだなと、子供のころから思っていました。
大学に入り、一般的な就職活動をしていましたが、周りと考え方が違うというところを感じ、馴染めずにいました。
その時に、東京都がやっているインキュベーション施設のメンターさんと話し、起業に至りました。
大久保:いわゆる学生起業だったのでしょうか?
石塚:はい。大学院まで進みましたが、大学4年次に起業しました。
大久保:芸能活動もされていたということですが、今の活動に繋がる部分もありましたか?
石塚:大学2年のときに出たミス日大法学部をきっかけに、ミスワールド、ミスユニバース等の世界的ミスコンテストで様々な女性と出会いました。
このミスユニバースの研修では「オピニオンリーダーの創出」をスローガンに、SDGsや女性の活躍について学びました。
大久保:青年版ダボス会議に参加されたのですか?
石塚:青年版ダボス会議”One Young World”のセクションの一つに出させていただき、全て英語でプレゼンする経験もさせていただきました。
あとは、ミスユニバースの活動の一環でライブ配信をやっていたこともあり、今では、ライブ配信の企業さんへコンサルティングさせていただいています。
また、ライブ配信をしている方やミスコンに出ていた方など、スキルを活かしきれていない方も多くいます。そういった方々の経験と知識、ノウハウを活かして、SNSマーケティングに繋げることもしています。
インフルエンサーには、ポテンシャルのある方が多いため、その強みを活かさないのは本当に勿体無いです。
創業初期に依頼した開発会社が倒産!投資額1,000万円が消えた
大久保:今やられている事業について教えてください。
石塚:Z世代とミレニアル世代の女性限定でプロジェクトマネージャーとマーケターを育成して、企業に輩出をする事業をしています。
大久保:今の事業は、起業時から同じことをやられているのでしょうか?
石塚:最初は、女性向けのメンタルケアサービスの開発をしていました。
就職活動時に「生理は重たい方か?」と質問され、女性の生理が未だに就職活動に影響するのかと衝撃を受けました。女性の生理とメンタルは繋がっているため、自分で管理してケアしていくサービスを開発していましたが、開発会社が倒産してしまいました。
大久保:取引先がいきなり倒産するとは大変なご経験をされましたね。その経験を踏まえて、やばい会社の見分け方などはありますか?
石塚:開発を依頼する時、指定の言語でコードを書けるか質問したところ、今いないが調達しますと回答され、その時はできる企業だと思いました。しかし今思えば、できないことをできると言っているので要注意ですね。
大久保:リソースがないのに、無理して仕事を取ろうとしていたということですね。
石塚:開発費の総額が1,000万円近くかかるということで、事前に総額を支払ってしまっていたので、当時は頭が真っ白になりました。
大久保:駆け出しで大きなお金がなくなるのは、本当に辛いですよね。しかし、起業を続けていると、1,000万円くらいはかすり傷くらいになると思います。
ですが、これから起業する方々は特に、取引先選びには気をつけましょう。
高度人材を効率的に採用したい企業へ、副業として働くマーケターを紹介
大久保:スルミさんのサービスを利用する、おすすめの使い方を教えてください。
石塚:人材を探して、採用して、育成するまでに、膨大な時間とお金がかかってしまいます。そうではなく、デジタル人材としての基礎は学び終えた当社の人材を選んでいただいた方が失敗はしづらいですし、副業での働き方を見ているため、需要と供給が一致していると思っています。
弊社では、デジタル人材を探している企業にはぴったりのサービスですので、ぜひご活用いただきたいです。
大久保:採用に困っている企業は多くあると思いますが、こうすると良い、といったアドバイスがあれば教えてください。
石塚:TikTokを使って、事業や採用の説明をやられているところは増えています。そのため、マーケターを使って、SNSなどを活用しながら、知名度を上げていくのが良いと思います。
大久保:スルミさんには、どのようなマーケターがいるのでしょうか?
石塚:アパレルや美容やITなど、様々なジャンルに特化したマーケターを教育しているため、何かやりたい、という相談でも大丈夫です。
また、インフルエンサーの育成もしており、マーケティングをしながらも、広告を打ってくれる方もいるため、一気通貫の支援も可能です。
マーケターの仕事は女性に相性が良い
大久保:なぜそういった方々を育成しようと考えたのでしょうか?
石塚:まず「マーケター」と「女性」は、相性の良い職業だと思っています。特に、Z世代向けの商品のマーケティングで困っている企業さんが多く、ニーズがあります。
また、プロジェクトマネージャーに関しては、企業と開発会社の中間に立つ職業になるため、コミュニケーション能力が必要となります。そこで、コミュニケーションが取りやすい人を育てることに決めました。
例えば、女性用の下着を作っているメーカーの担当者が男性だった場合は、機能性など大丈夫?と不安になったりします。
そのため、マーケティング領域から、女性目線として入っていくことが大事だと考えています。
大久保:人材を育成する際に特徴はありますか?
石塚:仮想メンターという生成AIを使って当社が独自開発したプロダクトで教育を行っています。
仮想メンターとは、簡単にいうとマーケティングやエンジニアなど専門性を持たせたAIが人間の先生の代わりとなってチャット形式で教えてくれるというものです。
人間の先生には聞きづらい質問を24時間いつでも質問できたり、人間とは違い質のばらつきがなく標準化できていることが特徴で、コスト削減につながります。
また、企業独自の情報やアイデンティティを学習させる事によりより企業の特性に合わせたメンターを構築できる事もあり、多くの企業様からお問合せを頂いております。同様の技術をつかって、企業のマーケティングや営業活動にも活用する事ができます。
現在は、博報堂グループ様と共同開発の取り組みも始めています。
当社のスクール入会の際も、生徒さんの過去の経歴や強みを分析して、最適な職業を割り出し、その方にあったカリキュラムも提示するようにしています。
これは、業界初の仕組みです。
大久保:無料で教育をされていると思いますが、理由を教えてください。
石塚:将来の見通しが立っていない子たちは、やはりお金がないんです。
そういった方々を集めて、活躍できそうな方を囲い込んでいくためです。
最初は人力で紹介していましたが、来年以降はプラットフォーム化して「マーケターが欲しい企業」と「マーケターになりたい人材」をマッチングできるようにしたいと考えています。
大久保:スカウトで人を増やしていると伺ったのですが、どのような方を狙っているのでしょうか?
石塚:実力のある人材を副業やフリーランス案件として受託できるようにスカウトしています。スカウトしている方の多くは、マーケティングの界隈の方で、その大半が大手企業の方です。
そして、生徒さんにプロのマーケターの仕事ぶりを見させることにより、学ぶ場としても活用しています。
女性の強みを活かしたプロジェクトマネージャーの役割とは
大久保:プロジェクトマネージャー、マーケターを育成する仕事の素晴らしいところはどこですか?
石塚:一般的に女性と男性の収入は200万円ほど開きがあると言われています。そのため、副業でキャリアやスキルの底上げを狙って事業をしており、やる意義を感じています。
大久保:どこかの研究で、女性は自己評価が低い人が多く、男性はその逆だということを聞いたことがあります。
石塚:脳科学の分野で言われていますが、プロジェクトが成功しても、女性はみんなのおかげだと思います。逆に男性は、俺がすごい、俺の力だ、と考えがちです。
大久保:一歩引くことが美徳という考え方もありますよね。
石塚:プロジェクトマネージャーだとそれが効いてきて、一歩引いてみんなの話を聞くことができます。
大久保:給料が良い仕事は少ないが、起業家からすると人が少ないという構造があります。
そこで、プロジェクトマネージャーやマーケティングができる人材が増えると、社会にとって良いですよね。
石塚:大企業で働いているマーケターなどで、しっかり高い収入を得つつ、副業で100万稼いでいる人もいます。一方で、手取り20万しかない方もいるのが実態です。
そのため、スキルとキャリアがあれば、収入はどうにでもなるんだろうなと思っています。
大久保:学歴社会という部分もあると思いますが、その点いかがお考えですか?
石塚:プロジェクトマネージャーやマーケの世界は、技術の世界なので、学歴は関係ありません。結果を出せばそれでOKという世界です。
大久保:スキルが高くなり、稼げる人が増えると、日本は良くなっていきそうですね。
石塚:おっしゃる通りです。そして、それが起業家の義務だと思っています。
女性にとって日本は起業しやすい国?
大久保:日本は女性が起業しやすい国だと思いますか?もしくは、しにくいですか?
石塚:起業しやすいと思います。むしろ女性起業家向けに、利息が安くなる融資があったりします。
投資家の中にも、女性を応援したいという方もいるため、男性より起業しやすいのではと思っています。
大久保:世の中、こうあるべきといった考えなどはありますか?
石塚:日本はどうしようもないから海外行きます、という若い方がいらっしゃると思いますが、アメリカと比べても、そこまで遅れをとっていないと思っています。
また、将来的に親の元を離れた小学生、中学生を引き取り、大学まで出すNPO法人をやりたいと思っています。若者の力をもっと発揮させれば、日本は良い国になると思います。
そして女性起業家はブルーオーシャンです。
業務委託のマッチング事業でIPOを目指す
大久保:今後の夢などがあれば、教えてください。
石塚:ピボットしたばかりではありますが、IPOを目指しています。
リスキリングやデジタライゼーション市場は年々拡大しています。
今までの副業やフリーランスは、違う数社と相見積もりを取って依頼先を考えるというのが通常だと思いますが、弊社の場合は、弊社内に女性チームを複数持っており、弊社のみで相見積もりを取るような形を目指しています。
そこで働きぶりを気に入っていただけたら、人材を紹介することもできます。
大久保:様々なバックグラウンドの方をマネジメントされていると思いますが、大変なところはどういったところがありますか?
石塚:女性の働くモチベーションが落ちる一番の理由はメンタルです。生理がきっかけで、メンタルが落ち込んで鬱になることはよくあります。
そのため、ピボット前の事業を活かして、しんどくなったら独自のヘルスケアメンターに吐き出せる場を設けています。
大久保:今後の展望について伺わせてください。
石塚:女性限定のスタートアップスタジオをやろうと思っています。
女性の起業家が少ない理由は、周りに起業している女性がいないという点だと考えています。
そこで、繋がりを持てるようなコミュニティを設けて、女性起業家のことや、活用できる支援などを知ってもらえるようにしていきたいです。
大久保:投資される側ではなく、投資する側ということですね。
副業で成功するには「自分を信じる力」が必要
大久保:これからキャリアを築いていこうとしている方に向けて、アドバイスはありますか?
石塚:「ポジティブでいること」と「自分の力を無限に出させること」が大事です。
今副業やフリーランスでしっかり稼いでいる人は、自分に自信を持っているからやれていると思います。そのため、自分の力を信じるということが必要になってきます。
人生は短いので、全部力を出し切りましょう。
そして、スタートは若ければ若いほど良いです。記憶力も若い方が良いですし、キャリアも若い方が有利です。
副業をするのであれば、スキルを積みつつ、稼げるスルミのサービスをぜひ利用していただきたいです。
今が人生のどん底でも大逆転のチャンスはある
大久保:最後に起業家へのメッセージをお願いします。
石塚:私は高校時代、どん底に落ち込んでいた時期があります。起業って、本当に大変なのですが、それと比べると大したことない、と思っています。
そのため、どん底を経験している方は、有利だということをお伝えしたいです。
また、企業様に対しては、どんなことでも弊社に相談していただきたいです。
未経験からの育成をしていることもあり、手数料を安く発注していただくことが可能です。
女性に対しては、弊社に入っていただければ、必ずキャリアを築かせます。興味のある方は、ぜひお問い合わせください。
大久保の感想
(取材協力:
株式会社スルミ 代表取締役CEO 石塚 つばさ)
(編集: 創業手帳編集部)
「日本は人手不足なのに、給料が上がらない」という不思議な状況です。
正確に言えば、マーケ・プロジェクトマネージャーのような成長分野の専門スキルは高賃金でチャンスも多い職業ですが、一方で男性が多いのもこの世界。石塚さんはそんな世界で女性が活躍できる場を作ろうとしています。
今後、スキルで稼げる成長領域の人材が増えてくると日本も良くなってくると思います。